2018年06月18日

第76話迫る戦火2P4


 そのテレビはグラ・バルカス帝国人の見慣れた大きい箱、小さい画面、白黒で、画質の悪いテレビに比べ、厚さが無いのではないかというほどに薄く、故に最初彼らはそれがテレビだとは気づかなかった。

「これより、日本国についてまとめた簡単な映像を見ていただきます」

 朝田の説明により、会議に同席していたシエリアが、テレビだと気付く。

「そ……それはテレビか?」

「ええ、そうですよ」

「……電源の規格が会わないのではないか?」

「これは電池を内蔵しているので、ご心配無く」

「本国から中継するつもりか?大型機械の持ち込みは許可されていないはずだが」

「いえ、データの映像を見てもらうだけです。
 これにデータは入っていますので」

 朝田はシエリアにSDカードを見せた。

「!!!」

 絶句―。

 朝田は黙々と、準備を進めるのだった。

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第76話迫る戦火2P3


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 レイフォル領 外務省レイフォル出張所

「と、言う訳で我が国はグラ・バルカス帝国、帝王グラ・ルークス様に忠誠を誓おうと思います。
 どうか……どうか、国民の命、そして衣食住だけは……確約して頂きたい」

 特殊な民族衣装に身を包んだもの達が、グラ・バルカス帝国外交官、ダラスに深々と頭を下げる。
 小国がグラ・バルカス帝国に降った瞬間だった。

 いつものように冷酷な目で眺めながら、ダラスは対応する。

「帝王グラ・ルークス様は偉大であり、そのお言葉は絶対だ!!
 お前らのような文明レベルの低い現地人であっても、理由なく命を奪うような事はするなとおっしゃられた。
 そこは安心するがよい」

 彼は続ける。

「それでは、さっそく征統府(グラ・バルカス帝国が他国を統治するために作られた機構)員を派遣する。
 受け入れ準備を整えよ。
 きちんともてなせよ」

 第2文明圏の小国、ヒノマワリ王国の使者は、国としての形、プライドを捨て、国民の命を守ることが出来た。
 彼らは安堵の顔をして退室した。

「やはり「力」を見せるという事は、実に仕事がやりやすくなるな……。」

 神聖ミリシアル帝国を柱とした連合軍と、グラ・バルカス帝国の戦い。
 帝国の誇る歴史上最大にして最強の戦艦、グレードアトラスターは、その主砲をもって、敵が絶大な信頼を置いていた空中戦艦を粉砕した。
 
 世界最強と言われた国が、秘密兵器を使用したにも関わらず、敗走した。

 この事実、帝国に勝てる国は、世界に存在しないと各国は分析したのだろう。

「まあそのとおりだがな……」

 とりわけ、現在帝国の勢力圏に近い国が次々と降伏してくる。
 国に戦火を及ぼす前に振る。賢い選択だ。

 ダラスは仕事の整理に入る。
 ドアがノックされ、ダラスの上司であるシエリアが入室してきた。

「ヒノマワリ王国は何と?」

「降りました。詳細条件はこれからですが……」

「そうか」

「……シエリア様、何か御用で?」

「いや、本日は日本国大使が来る予定があっただろう?私も参加しようと思ってな」

「!?シエリア様が参加するほどの国ではないと考えますが、私でも十分かと」

「まあ、通常の国ならば私は出まい。ただ、彼らも転移国家であり、勢力圏の遥か外側にある国の申し出、何を言ってくるのか、少し気になる」

「解りました……席をもう一つご用意させます。
 私は……ムー国と日本国の通商破壊作戦で、日本が実害を受け、帝国の力を実感するに至った……遠いため、無条件では降らぬでしょうが、属国程度の措置で何とかならぬかと交渉しに来たと考えますけどね」

 ダラスは日本国との会合に向け、準備を行うのだった。

■ 同日 午後1時10分

日本国の外務省職員、朝田他5名は席に着く。
簡単な自己紹介の後、外交交渉が始まった。
グラ・バルカス帝国側の席には、シエリア、ダラス他4名が対応し、日本サイドは朝田をはじめとし、5名が出席していた。

 ダラスが話始める。

「良くいらした、日本国のみなさん。
 今、先の海戦が原因で、我が国に降る国が多すぎてね……外務省は多忙を極めている。
 要件を、手短に話してもらえると助かる」

 朝田はゆっくりと話始めた。

「先の……バルチスタ沖海戦で、貴国と世界連合が、痛み分けで終わった事は聞いています。
 貴国は当初、世界会議で全世界に向けて……我が国を含めて宣戦布告を行った。
 しかし……我が国や、第3文明圏、南方世界が参加していない連合軍と衝突し、かなりの損失を出している。
 もう世界征服なんて、大それたことを成し遂げるのは無理だと気付いているのではないですか?」

 少しだけ挑発する朝田、ダラスの表情が変わった。

「フン……お前たちは海戦の詳細を知らないようだな……。
 我が国が苦戦したのは空中戦艦のみだ、それも軍部ではすでに対策を考えているぞ。
 神聖ミリシアル帝国以外の国は、いくら数が増えようとものの数ではないわ!!!」

 空中戦艦対策など、未だ何も出てきていない。
 しかし、ダラスは外交上の発言として、朝田を揺さぶろうとする。

「貴国は転移後、軍事技術格差を生かして無敵を誇った。
 貴国が強く、外交的に決して舐められぬ事は証明出来ているはずだ。
 もう良いだろう?
 貴国の目指すべき所は何なのだ?」

 ダラスは不気味に微笑み、話始めた。

「お前らには解るまい……すべては帝王グラ・ルークス様の御意志のままなのだ。
 グラ・ルークス様の書にはこうある。
 いさかいが起こるのは、国家単位で意識が細分化し、それぞれが国益のみに囚われて行動するからであると。
 真の平和を望むなら、圧倒的な力で各国家を統治する事が必要であると。
 しかし、民度によって同一の支配方法では国に混乱を与える事例が散見されるため、その土地に会う統治方法を認めた上で、圧倒的な力で管理するのだ。
 我が国が目指すところ、それは永遠の平和であると断言しよう」

 戦争を仕掛けてきておいて、平和を目指すという言葉に絶句する朝田達……。

「しかし、貴国は支配地から富を吸い上げているではないか、これで真の平和が得られると思うのか?」

「日本国は、地方自治体から税を吸い上げていないのか?
 本社が首都にあるという理由から、地方で得た富を、首都あるいは国が吸い上げてはいないのか?
 日本国も一定の文明レベルにあると聞く。
 大体の国がそうだが、貴国も過去に内乱を経験し、統治しているのではないのかね。
 我が国は、それを世界レベルで行おうとしているに過ぎない」

 ダラスは続ける。

「茶番は良いだろう。日本国が今回来た目的は何だ?我が国を挑発しにきただけでもなかろう」

 朝田の眼付が変わる。

「……我が国の事を、少しでも知ってもらおうと……そして……貴国に多大な死者を出す前に、再考してもらおうかと思ってね」

「今、我が国が何を見ようが、何を説明されようが、国家の目指す世界統治の目標は変わらぬ。
 もちろん、征服範囲には日本も含まれるがな……。
 弱き国の外交官よ、本来ならば追い返しても良い所だが、この帝国の強さを知り、なおもたてつく貴国に敬意を表して説明を許す」

 苦笑いをする日本の外交官たち……彼らはバッグに入れていた小型有機ELテレビを取り出し、SDカードを入れる。
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第76話迫る戦火2P2

◆◆◆

 ムー国 日本大使館

 1人の男が上司の命令に対し、強く質問していた。

「何故ですか!?我が国はすでに宣戦布告を受けている。
 この状況下において、グラ・バルカス帝国に行って、いったい何を交渉するというのですか!!」

 男の名は朝田……転移後、外交においてここぞと言う時に投入され、確実に成果を上げているため、上司からの信頼は厚い。

「帝国は外交窓口について、いつでも開いておくと言っていた。
 実の安全は保障されている。
 宣戦布告を受けているこの状況下で行く理由は簡単だ。
 グラ・バルカス帝国と、我が国が本格的な戦闘に突入する前に、回避の道を模索……」

「無理です!!状況を考えてください!!!」

 上司の話を遮って、朝田は反論した。

「話は最後まで聞け!!!無理な場合、時間稼ぎをしてほしいのだよ」

「時間稼ぎ?」

「まだ報道発表はなされていないが、自衛隊のムー国への派遣が、先日正式に決定された。
 今回は、日本近海で行われたロウリア王国戦や、パーパルディア皇国戦とは訳が違う。
 戦後日本の本格的かつ大規模な……派兵だ。
 陸上自衛隊等も数が多く、民間船舶を徴用して行ったとしても、兵力がきちんと展開完了するまでに相当の時間を要する。
 配置完了までの時期については、各国との調整もあるため、正確な試算が出せない状態だ。
 しかし…てグラ・バルカス帝国は、アルーの街近くに基地を作りつつあり、近いうちに完成させるだろう。
 そこで、外務省の出番となるのだよ」

「……かなり難しい案件です」

「敵国の性質から考え、かなり難しい事は解っている。
 しかし、外務省として何もしない訳にもいかない。これも解るな?」

「はい……」

「今回は、多少技術を見せつけて揺さぶる事も許可されている。
 朝田、頼んだぞ!!期待している」

(また……俺なのか……)

 国、そして自分の交渉が上手くいくかどうかによって、ムー国人の多くと、国益が多大に左右されるという重圧……。
 今回は、圧倒的な技術格差があったパーパルディア皇国とは訳が違う。
 多少の技術格差を見せつける事は許されていると言っても、国益を損なう情報は一切出してはならない。
 例えば、人工衛星の存在や、衛星写真等、相手に対策をされると軍事情報が得にくくなってしまうような情報は出す事が出来ないし、ジェット機やロケット等、相手に技術の方向性を明確に与えてしまう可能性のある情報も出す事が出来ない。
 朝田は、使える外交カードの少なさに苛立ちを覚えながら準備を行うのだった。

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posted by くみちゃん at 22:36| Comment(9) | 小説