2018年02月04日

第71話 古の超兵器P5

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国海軍 本隊 戦艦グレードアトラスター

「旗艦から入電、敵空中戦艦と第一打撃群36隻は本日1011時に合敵、1112時、通信途絶、全滅した模様、なお、敵空中戦艦は本隊に向かって進行しつつある。との事です」

 艦長ラクスタルの目が光る。

「航空部隊も落とされ、打撃群もたったの1隻に全滅させられたか……副長、どう考える?」

「はっ!強力な敵です。決してなめてはならないかと……しかし、数が違う、勝つでしょう」

「そうだな」

「間もなく、第8打撃群42隻が、敵の数だけは主力の艦隊に到達するでしょう。海戦はますます複雑になりますね」

「世界連合……だったかな?本当に数は多いようだな。しかしこの敵はこの世界そのものと言って良い。勝てば我が国に敵はいなくなるだろう」

「東の果ての国……日本国は考慮しないのですか?」

「ああ、あの対空砲が優れていたあの国か……装甲が紙のようだった……巡洋艦であのような設計思想をもっているならば、現有艦は恐れるに足りんだろう。
 ただ、研究期間を得れば、帝国の脅威となりうる艦を作れるかもしれんな……軍上層部もそれは承知しているだろうから、数年以内には決着をつけるだろう」

「いずれは日本国ともぶつかる事になるのでしょうな」

「そうだな……そして、いつものように我が国が勝つ」

 帝国最大にして最強の戦艦に乗艦するグレードアトラスター艦長ラクスタルは、空中戦艦パル・キマイラを待ち構えるのだった。

◆◆◆

 ムー大陸北側 ムー国艦隊旗艦ラ・エルド

『敵艦42隻を捕捉、世界連合艦隊西側約120kmの海域です。まっすぐこちらに向かって来ます!!!』

『第2文明圏連合竜騎士団、全500騎を使用して敵艦に攻撃を加える模様』

『各艦隊は、戦闘配置に移行中!!!』

 先の戦闘で、多くの味方機を落としたグラ・バルカス帝国、今度は艦隊がやって来る。

「艦隊決戦か……」

 敵はとてつもなく強力であることは間違いないく、レイダーの胃が痛む。

「総員戦闘配備!!!帝国艦の数は少ない、連合艦隊で敵を撃ちとるぞ!!!」

 世界連合艦隊は、総力戦に移行するのだった。

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第71話 古の超兵器P4


 空中戦艦 パル・キマイラ

『魔砲撃、20発が命中、効果確認のため一時射撃を中断します』

 たまたまではあるが、風向きが敵艦と並走するように吹いているらしく、艦を覆った煙はなかなか晴れない。
 着弾の爆炎に包み込まれる敵艦。

 今までの敵中型艦であれば、爆炎の中にあっても、砲の爆発とは明らかに異なる内部からの「爆発」が認められたため、敵の被害が解りやすかったが、この旗艦については内部からの爆発は無く、砲弾の爆発煙のみが艦を包み込んでいた。

「……内部からの爆発が無いようだねぇ」

 メテオスがつぶやく。

「もしかすると、燃料に引火しにくい構造なのかもしれません……しかし、これほどの攻撃を食らい続けている。魔素展開による装甲強化技術を持たぬ者達であれば、上部構造物は無くなっていることでしょう」

 技術部長コルメドが返答した。

 時折下部に当たる敵の対空火砲が不快な音をたてるが、強力な魔力により強化された金属による装甲は、敵対空火器をはじき返していた。
 やがて、戦艦を包み込んでいた煙を割き、敵艦が出現する。

「おお……お……」

 無機質な勤務員に感情が宿ったかのように、艦橋に驚愕の声が響く。

「なんという硬さだ……致命傷を与えていないではないか!!」

 驚愕するメテオス。

「魔素による装甲強化技術を使用せずにこの硬さ……信じられません」

 技術部長コルメドの額にも、驚きのあまり汗が流れた。

 画面に映る敵は、脱出用ボートや、高射砲等の非装甲物は壊れていたが、主砲や艦橋は健在であり、小破程度のダメージしか負っていないようにすら見える。

「なるほど……第零式魔導艦隊に土を付けただけの事はあるようだねぇ……敵戦艦を倒すには、魔導戦艦の主砲並みの火力が必要という事か……」

 一瞬の沈黙。

「ジビルを使用したまえ」

 艦橋がざわつく。

「よろしいのですね?」

 コルメドが確認を取る。

「もう一度言おう。ジビルを使用して敵艦を消滅させたまえ」

「はっ!!」

 古の魔法帝国の技術を解析し、近年実戦配備に結び付ける事が出来た超大型魔導爆弾「ジビル」古の魔法帝国のコア魔法に比べると、大幅に弱いが、現在の神聖ミリシアル帝国の中では最大にして最強の爆弾だった。
 通常の天の浮舟では重すぎて運ぶ事が出来ず、空中戦艦パル・キマイラに搭載した帝国の切り札的な存在……。
 パル・キマイラはグラ・バルカス帝国の戦艦ベ・テルギスの直上に進出し、空中に停止した。

◆◆◆

 旗艦べ・テルギス

 ゴウン…ゴウン……ゴウン……

 不気味に上空に停止する敵空中戦艦……。

「くそっ!!一体何をするつもりだ!!!」

 敵艦は上空に停止している。
 本艦の高角砲や対空機銃はさきほどの攻撃で大破し、使い物にならない。
 主砲や副砲は仰角が足りないため、撃つ事が出来ずにいた。

「くぅ……あまり言いたくは無いが……今各艦の判断で攻撃を控えていますが、今が絶好の的ですね……」

 参謀バーツがつぶやく
今直上に停止している艦……艦隊程度に低速になった物体は、絶好の的であり、指示すれば、確実に有効弾を与える事が出来るだろう。
しかし、この旗艦よりも大きい飛行物体が落ちて来る……確実に死の覚悟を伴う命令を出さなくてはならなかった。

 もちろん、直下から離れるために、旋回を行う等の努力はしている。しかし、上空にいる敵艦の運動能力は我が方を明らかに凌駕していた。

「……皆、すまんな……あの敵は明らかにグラ・バルカス帝国の脅威となり得る。数がたったの1艦というのは、奴らにとっても虎の子である証拠だ。奴らは強い……この機を逃すと、確実に帝国に仇をなす存在となろう。今は各艦の独自の判断で攻撃を控えているようだが……帝国の未来のため、私は各艦に攻撃指示を出す」

 司令カオニアの心は、乗務員への懺悔で満たされる。
 しかし、このまま奴を生かすと、今までよりも遥かに多くの帝国民が犠牲になる事だろう。
 彼に反論する者はおらず、皆覚悟を決めた。

「各艦へ指示、攻撃を続行せよ!!!!」

 各艦に指示が伝達された。


 
 派遣艦隊巡洋艦ピペリオン

『撃ち方やめ!!撃ち方やめ!!!今撃つと旗艦に落ちる!!!』

 べ・テルギスの上空で停止する敵艦、一時艦長の判断で攻撃中止の指示が飛ぶ。

「何をするつもりだ!!!」

 上空に停止したそれは、ゴウン……ゴウン……といった、重低音のような音を響かせ、停止している。
 狙いやすい、しかし落ちれば確実に旗艦は沈むだろう。
 べ・テルギス上部の対空火器は、すでに先ほどの攻撃で沈黙してしまっている。

『各艦旗艦上空にいる今が絶好のチャンスだ。攻撃を続行せよ』

 艦橋に、旗艦からの指示が流れた。
 このまま攻撃すれば仲間を殺す事になる……しかし、この空中戦艦を放置すると、帝国の脅威となるのは目に見えて明らかだった。
 
 攻撃指示を行おうとしたその時、ピペリオンの艦橋から敵を眺めていた艦長は、空中戦艦に異変を感じた。

「なんだ!?」

 敵中央部の艦橋から、とてつもなく長い何かが下に向かって落ちる。

「!!!」

 グアッ!!ズオォォォぉ!!!!!!

 投下されたそれは、旗艦べ・テルギスに当たると同時に猛烈な光を放つ。
 次の瞬間、旗艦よりも遥かに大きな火球が出現し、旗艦を包み込む。
 遅れて凄まじいまでの衝撃波と、見た事も無いほど大きなキノコ雲状の爆炎が出現した。
 海上が衝撃波で波打ち、音響がこだまする……やがて、大音響の後に爆炎の煙の出現とは裏腹に、静粛があたりを支配した。



 パル・キマイラ

『敵旗艦、艦内の魔力反応すべて停止、全滅した模様です』

 乗務員が全員死亡した事を伝えるその報告。

「フン、当たり前だ。ジビルが直撃したのだよ、もう跡形も残ってはいまい」

 煙が晴れる。

『おおお……ば……ばかな!!!』

 艦橋に驚きの声が走る。
魔力反応が無いため、中の乗務員は死亡している。
 しかし、敵べ・テルギスは船の形を保ち、海に浮かんでいた。

 旧日本帝国海軍の戦艦長門に酷似した船体構造はとてつもなく強いものであり、ビキニ環礁での2回にもわたる核実験の直撃を受けてもなお、すぐには沈まなかった艦である。
 強力な船体構造は、神聖ミリシアル帝国の超大型魔導爆弾ジビルの直撃にも耐えていた。

「どうやら……敵に対する評価を少し改める必要があるようだねぇ……一時的射程圏内から離脱、旋回しつつ、敵を攻撃し、1艦ずつ撃沈せよ」

「了解」

 一度離脱し、各艦に砲撃を加え、各個撃破していく。
 40分後……グラ・バルカス帝国第1打撃群36隻は神聖ミリシアル帝国、空中戦艦パル・キマイラ1隻を前にして全滅した。
 第1打撃群を滅したパル・キマイラは、本隊に向けて飛行を開始するのだった。
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第71話 古の超兵器P3


◆◆◆

「駆逐艦ディオネ、轟沈!!!」

 また1隻の駆逐艦が爆発、炎上して多数の死者を出す。
 主砲が届く艦は応射はしているものの、空を飛ぶ敵には全く当たらない。

 司令カオニアと参謀バーツは、その圧倒的とも言える単艦の戦力差になす術が無く、敵を睨みつけるのみだった。

「敵、進路を変えます!!」

 敵艦が進路を変え、旗艦に向かい始める。
 このまま進むと、外周にいる駆逐艦の対空砲射程圏内に入るのは明らかだった。
 
 微かに訪れた勝機。

「引きつけろ!!必ず射程距離に入った後に射撃を行い、必ず当てるんだ!!!」

 指示が飛ぶ。

「やっと射程内に敵が入りそうですな」

「砲が当たらぬから慢心したな……対空砲で必ず落とすぞ!!!」

 なおも続く進撃、やがて敵は駆逐艦フェ―ベと巡洋艦ヒペリオンの対空砲射程圏内に到達した。

「馬鹿め!!撃て―っ!!!」

 グラ・バルカス帝国にとって、海戦とは艦攻、艦爆などの艦にダメージを与えうるほどの航空機との戦いである。
 そのような飛行機との戦いに特化したグラ・バルカス帝国海軍は、ついに空中戦艦パル・キマイラに向けて射撃を開始した。


 巡洋艦ヒペリオン

 対空銃座に座る兵、ダフニスは、照準器をはみ出す大きさの敵艦を正確にとらえていた。
 感覚的には敵が大きすぎて、本来の射程距離に入る前に射程距離に入ってしまっていたような錯覚を覚える。

「これだけ的が大きければ、必ず当ててやるぞ!!!」

 化け物討伐の一番槍は俺がもらう!!!

『撃てぇ!!』

 攻撃指令が聞こえる。ダフニスは、逝った友軍に祈りを捧げつつ、発射ボタンを強く押し込んだ。

 
 艦隊から火線が空に向けて走る。
 巡洋艦ヒペリオンの放った40mm機関砲は、正確に空中戦艦の下面に命中する。

 曳光弾を交えて発射された光線は、空中戦艦に着弾、激しい音と共に、斜め後ろに跳弾する。

「まさか!!奴は堅いのか!!!」

 近いからはっきりと見える。
 当たった曳光弾は弾かれ、着弾部分がほのかに波打っている。

「ば……化け物め!!!」

 艦に設置された40口径127mm高射砲も射撃を開始している。
 時限信管が作動し、空中戦艦近くで爆発を起こすが、効果が薄いようだった。

 兵が慌ただしく動く。
 高射砲の弾種を通常砲弾に詰め替えているようだった。

 戦場には怒号がこだまし、高射砲が火を噴く……しかし……しかし、絶望的なほどに当たらない。
 これほど近いのに……これほど大きいにも関わらず、全くと言って良いほど当たらなかった。
 
「くそっ!!」

 連射される機関砲は当たるが効果は無く、効果が高いと思われる高射砲は当たらない。
 やがて、パル・キマイラは機関砲弾を弾き返しながら艦上空を通過した。

◆◆◆

 炸裂する対空砲弾……信管作動の爆圧では効果が無く、機関砲弾も跳ね返す。かと言って通常弾ではとても当たらない。
 厄介な敵は、機関砲弾をはじき返しながら旗艦べ・テルギスに向かってきた。

「撃ち続けて当てるしかない!!」

 カオニアは覚悟を決めた。

「敵艦、リング回転開始!!!」

「攻撃が来るぞ!!!」

 カオニアは吠える。次の瞬間、敵艦が発砲した。
 耳をつんざく轟音、敵から放たれた砲弾は、旗艦べ・テルギスの重要区画装甲に着弾し、その威力を開放、しかし40cm砲もの大口径主砲弾の直撃さえも耐えるように設計された、グラ・バルカス帝国技術の結晶は、敵の攻撃に耐える。

 しかし、攻撃は1発では無く、何度も何度も連続して被弾する。

「左舷第3高角砲大破!!」

「右舷第11機関砲大破!!」

 非装甲部分の上部構造物が破壊されていく。
耳をつんざく轟音……爆発し、激しく振動する艦橋……しかし船の重要な部分は装甲が厚く、敵の攻撃を跳ね返し続けていた。

「お……おのれっ!!爆炎が多すぎて何が起こっているのか解らん!!」

「しかし、敵の攻撃は思ったよりも威力が弱いですな、べ・テルギスであれば耐えきれるかもしれません!!!」

 重巡洋艦や、駆逐艦は倒せても戦艦は倒せない。
 カオニアに、微かな自信が生まれるのだった。

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