2020年11月29日

第110話ヒノマワリ王国2P5

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 ヒノマワリ王国 王都 ハルナガ京 夜

 制統府を訪れていたグラ・バルカス帝国外務省のダラスは仕事を終え、宿泊先のホテルへ歩いて向かっていた。ふと空を眺める。

 ハルナガ京は首都というのにグラ・バルカス帝国に比べると遙かに明かりが少ない。
 空気は澄み、星は夜空にちりばめた宝石のように美しかった。
 今宵は月が明るいため、町は月明かりに照らされる。 

「明かりが少なすぎる。これが首都か。
 まったく、早く帝都の本省勤務になりたいものだな」

 ここは戦場の最前線とも言える場所。
 堕とされたバルクルス基地からも近い。
 危険性がある事は本国も承知しているが、ヒノマワリ王国に関する事務が無くなるわけではない。
 軍関係者だけではなく、帝国から派遣された事務員も未だ多く働いていた。
 
 ダラスは足を止め、制統府の方向へ振り返る。
 ここからでもはっきりと見える。王城と見間違うほど立派な建物であり、ヒノマワリ王国における帝国支配の象徴だった。

「うむ、やはり帝国はすごい。辺りの建物に対して遙かに重厚で、品がある」

 自国の素晴らしさを再認識する。
 彼は笑みを浮かべ、制統府を眺める。

「え?」
 
 目がつぶれそうになるほどの猛烈な光が現れる。

「がぁっ!!な……なにっ!!??」

 閃光の後、大火球が建物を包み込む。

 ズガアァァァッァァァァン!!!!!!!!!!
 
 遅れて鼓膜がどうにかなりそうな程の爆発音。

「あああっ!!!」

 燃える炎に包まれ、制統府の建物が飛び散り、崩れ落ちる様がはっきりと解る。
 統治の象徴が、力の象徴が、決して崩れるはずが無いと確信していた建物が、あっさりと、いともあっさりと崩れる。

 先ほどまで残業で、そこで仕事をしていた。時間が十数分ズレたから助かった命。
 そして自分も巻き込まれて死ぬかも知れないという恐怖。ダラスの背中に悪寒が走った。
 日本国航空自衛隊F-2戦闘機はハルナガ京上空で日本版LJDAM(誘導爆弾)を投下。
ヒノマワリ王国内、グラ・バルカス帝国制統府の建物をを精密爆撃し、これを破壊した。

 攻撃は……開始された。 

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第110話ヒノマワリ王国2P4

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 ムー国 エヌビア基地

 太陽が沈み、闇が辺りを支配する。
 今宵は月明かりが明るく、遠くまで見渡せるほどだった。

 ムー国にあるこの基地は、現在反撃の最前線として第2文明圏連合国家の拠点となっていた。
 空港郊外には竜舎も設けられ、ムー国の最新鋭機マリン型戦闘機も整然と並ぶ。

 日本国用に作られた一角で、対地用に爆装されたF-2が離陸準備に入る。
 連合国家の者達は、夜間に日本軍が出撃すると聞き、その姿を一目見ようと自国に与えられたスペースから望遠鏡で眺めていた。

「おいデルカー、見えてるか?あれが日本の飛竜、いや戦闘機か
 初めて見たが、大きいな」

 ニグラート連合の飛竜隊のベテラン隊員が、新人に話しかける。
 噂では聞いたことがあっても、日本国の戦闘機等を見たことがある者は一握りだったため、無機質なF-2は注目を集めた。

「噂どおり、マリンと違ってプロペラが無い。
 神聖ミリシアル帝国の兵器に近いらしい。しかし、あれが本当に強いんですかね?
 我がワイバーンロードの方が強く見えます」

 飛竜の訓練課程を主席で卒業したデルカーは、自分の竜に絶対の自信を持っていた。
 
「日本は強い、それは間違いなく強い。お前の気持ち的にはどうであれ、グラ・バルカス帝国との戦果がそれを物語っている。
 俺もあの戦闘機が離陸する姿は見たことが無いが、あれが飛ぶ姿を見た後にお前が勝てると思うかもう一度聞きたいな」
 
 ゆっくりと戦闘機3機が滑走路に向かった。
 配置につく。

 キィィィィィィイイインーーーーーーーー

 ジェットの高音が辺りにこだまする。
 聞き慣れない音に、デルカーは固まる。

 エンジン後部が開き、ジェットエンジン内には大量の空気が前方から流入する。
 猛烈な勢いで後方に空気をはき出し、F-2は加速を初めた。
 離陸後にアフターバーナーを点火した。

 ゴォォォォォォォォ!!!!
 
 燃料を噴射して燃やすアフターバーナー。
 一気に燃料を消費するデメリットはあるが、猛烈な推力が得られる。
 雷鳴の如き轟き。デルカーは無意識に耳をふさいだ。
 
 轟きは耳を覆っていても聞こえ、体が震えるほどの大音量だった。
 漆黒の空に1本の炎を後方にはき出しながら進む様子は幻想的に見える。

 日本の戦闘機は猛烈に加速。デルガーの常識を遙かに超える速度で西の空へ消えた。

「…………」

「おい、デルガー。勝てそうか?」

「……いえ、失礼しました。飛竜の方が上だと思い込んでいた自分を恥ずかしく思います。 速度が違いすぎる。
 もはや次元が違う。
 我が飛竜では、あの速さはとてもとらえられないでしょう。
 私の言葉が他国の兵に聞かれていなくて良かった……本当に恥ずかしい」

 正直な意見だった。

「確かにありゃ凄いな。俺の想定も遙かに超えた。
 あれにはグラ・バルカス帝国も勝てない訳だ」

 次々とF-2戦闘機が離陸していく。
 
 日本国航空自衛隊F-2戦闘機はヒノマワリ王国王都 ハルナガ京におけるグラ・バルカス帝国軍を爆撃するため、漆黒の空へ離陸していった。

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第110話ヒノマワリ王国2P3

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 同日夜ーーー

「会議は上手くまとまって良かったですね」

 フレイアとの会談の後、第2文明圏連合軍との午後の会議を終え、大内田と国武は、事務室で話しをしていた。 
 
「しかし、今回の作戦は本当に大規模ですね、陸さんも大変だろうけど、私の所も作戦が複雑かつ大規模で、準備にてんてこ舞いですよ。
 海の方も本国が頑張って、神聖ミリシアル帝国との調整も上手くいったようです」

 国岳も、仕事に追われていた。

「限られた空港での海自と連携も、思ったより大変ですね。しかしやらなければ!!!」
 
「第2文明圏連合とも調整が取れた。しかし最後の部分が上手くいくか……」

「やるしかないでしょう」

 大内田は眼前にあるメモを手に取り、考える。
 メモにはヒノマワリ王国奪還作戦だけではなく、その後の流れも記されていた。

「それにしても、ヒノマワリ王国のグラ・バルカス帝国軍の施設が事前情報より具体的に解った事は本当に良かった。
 把握していない施設も含まれていましたし」

「フレイア王女の正式要請で政府もやりやすくなったと感じている事でしょうね」
 
「とにかく、自分たちに出来る仕事は、作戦の完全なる遂行、そして部下から死者は出さないようにしなければ」

 敵は第2次世界大戦レベルの兵器を所持している。
 陸上戦闘はハイテクが空や海に比べて効果が低くなる傾向がある。
 大内田は決して部下を死なせないと決意するのだった。

 準備は進む。

◆◆◆

 日本国 防衛省 作戦会議室

 会議室モニターに映し出されたムー大陸の地図。
 地図上に自衛隊の配置状況が繁栄される。

「第1、第2潜水艦群、ムーのパテル港を出港、イルネティア王国海域へ向かいます」

 ムー国北側の港町、パテルから潜水艦隊が出撃する。

「神聖ミリシアル帝国艦隊、出撃準備完了」

「各基地への燃料、弾薬は規定の数値に達しました」

「ムー国エヌビア基地、空自F-15,F-2出撃準備完了、海自P-1部隊燃料補給完了、対艦兵装装着開始」

「AWACS(早期警戒機)離陸、ハルナガ京周辺空域の警戒開始」

 無機質な報告がなされ、モニター上に何処に何がいるのかが映し出される。
 着々と準備は進んでいた。

「いよいよですね」

 自衛隊幹部の三津木は、隣に立つ幹部に話しかける。
 彼等は思い出す。

 日本国による度重なる和平交渉はことごとく無視され、グラ・バルカス帝国は全世界に宣戦布告、さらなる交渉も、弱者のたわごとだと一蹴さた。
 そして彼等は日本国へ大艦隊を派遣するに至る。

 激戦だった。
 日本国はミサイルを雨のように打ち込み、グラ・バルカス帝国の大艦隊を退けた。

「我々が守ってばかりでは無いと……彼等に気づかせなければ。
 本気にさせた彼等が悪い」

 三津木はまるで自分に言い聞かすように話す。

 彼はこの作戦で多数のグラ・バルカス帝国軍の死者が出ると見積もっていた。
 レイフォル奪還ともなると、他国軍も参加するため、民間人にも相当な死者が予想される。
 作戦立案者の一人として、人の命という意味合いにおいての責任の重さを感じずにはいられなかった。
 今帝国を排除しないと、等の刃は日本国民に向いているのだ。
 
(彼等にも家族がいるんだろうな)

 ふとした考えが脳裏に浮かび、胸が締め付けられる。
 日本国を守るため、極めて短期間での効率的破壊を立案した。
 おそらく効率的に敵は破壊され、命を散らすだろう。
 守るため、日本を守るためと自分に言い聞かせるが、想定される死者の多さに震えが来る。
 前回の大艦隊は純粋な軍人が相手だった。
 艦隊が東京に至った場合、敵を消滅させないと20万の単位の日本人が命を落とす試算がなされ、やらざるを得なかった。
 しかし、今回は攻める側となる上に、レイフォル等の民間人が巻き込まれる可能性がある。
 日本の為とは言え、解っていても気持ちは沈む。
 
 三津木はグラ・バルカス帝国上層部の頭の硬さに苛立ちを覚えた。

 奴らが対話に最初に応じていれば、今から行われる作戦で大量の兵が死ぬことも無かったろうに。
 敵には残忍な人もいるだろうが、気さくな者もいるに違いない。

 こんな考えをする事事態間違っていると自分に言い聞かす。

 三津木の脳裏に、様々な思いが交錯した。

 個人の思いなどとは関係なく、作戦の第1段階、ヒノマワリ王国攻略作戦の開始が宣言されるのだった。

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