2016年10月17日

第56話列強のプライド5P5

 
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 日本国 首都東京 首相官邸

 首相官邸に集まる国の幹部、彼らの見つめる視線の先にあるテレビでは、キャスターが緊迫した声でまくしたてる。

『まもなく、世界に従属を求めてきたグラ・バルカス帝国は重要発表を行う模様です。』

 日本国だけでなく、世界が注目する放送、生放送で重要な発表があるとの事であり、日本国民もテレビを見つめる。
 魔信器、そして電波で同時に流される映像に、国民は釘づけとなるのだった。


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第56話列強のプライド5P4


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 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ

 異界の大帝国、グラ・バルカス帝国の帝都ラグナにある外務省の一室で、2人の者が話をしていた。

「以上、神聖ミリシアル帝国での先進11ヵ国会議とそれに伴う戦況の報告になります。」

 外務省東部方面異界担当課長シエリアは、上司である異界担当部長ゲスタに報告を行う。

「そうか、ご苦労だったな。」

 吊り上がった目、シワシワの顔、いかにも性格の悪そうな文官、ゲスタは机の前に立つシエリアの報告を興味無さそうに聞く。

「ところで……捕虜は全部で72名にも上るようだが、何か各々の国の機密情報を話したか?」

「協力的な者もいますが、一切何も話さない者もいます。特に、日本国の軍人は15名ほどいますが、珍しく1人たりとも自国の情報を全く語りません。優秀な軍人を持っているようです。」

「そうか……シエリア、情報が引き出せない捕虜は利用価値が無い。そうだな、恐怖を引き立たせるためにも、公開処刑を行え、全世界に放送しろ。我が国に歯向かう愚か者どもの末路をな。」

 シエリアの顔が引きつる。

「ゲスタ部長!捕虜に拷問は加えない。これが我がグラ・バルカス帝国の方針だったはず。いくら部長の命令といえど、この方針を曲げる事は出来ません。まして、これは軍部の管轄です。」

「この世界に早期に我が国の盤石な基盤を築く。そのためには多少蛮族どもの国に合わせる事は、問題ない。これは皇帝陛下、帝王グラルークス様のお言葉だ。それに、私が言えば、軍部も動くよ。」

「しかし、それでは蛮族と同じ土俵に立つ事になります。我が栄えあるグラ・バルカス帝国がそのような事をすべきではありません!!!」

「解っていないな、シエリア。お前は目の前の小さな正義にこだわり、大局を見失っていないか?帝王グラルークス様は、帝国の未来を盤石にしたいのだ。」

「それは、これまでの方法でも達成する事ができます。それと捕虜を処刑する事に、何の関係があるのでしょうか?」

 シエリアは、興奮してまくしたてる。

「落ち着け、お前ほどの者が、取り乱すな。これだから女は……と言われるぞ。」

 シエリアは黙る。ゲスタは続ける。

「軍部では、脅威は神聖ミリシアル帝国のみであり、他の国はさしたる脅威ではないとの論調が広がっているが、皇帝陛下は違った見方をしている。」

「と、いいますと?」

「皇帝陛下は、逆に神聖ミリシアル帝国はさしたる脅威と感じておられない。これは、彼らが我が方からは別種の文明、魔法文明に起因する国家であり、あくまで過去の超文明の解析のみにより、成り上がっているからだ。自国のみでの基礎技術を持ち合わせていない。
 しかし、第2文明圏の列強国ムーは、我々と同じ機械文明、しかも、この国はただの1国のみで、車、鉄道、そして飛行機を発明している。この意味は解るか?」

「全発明をただの1国で成したのであれば、驚異的な技術者集団、技術国家と思われます。」

「そうだ。そして、かの国と我が国の技術レベルはおそらく50年くらいの差がある。下手に戦闘を長引かせると、敵はどんどんと強くなっていく。早期に配下に置く必要のある国だ。」

 ゲスタは続ける。

「そして皇帝陛下は、日本国についても懸念されておられる。今回の海戦では、日本国の巡洋艦は我が国の戦艦によってあっさりと葬りさられたが、対空能力は我が方の近接信管を使用した対空砲火よりも当たっていたという。部分的に帝国の技術を凌駕している部分があり、この国が本格的に対艦巨砲主義に関して研究を開始した場合、大口径砲が作れないとは思えぬ。
 つまり、一定の研究開発期間を与えれば、我が軍に匹敵する軍を創出する可能性がある。
 皇帝陛下はこの2国を脅威とみなしておられ、早期に攻略する事を望んでおられるのだ。
 軍部では、まずはムーから落とす作戦が現在立案中である。
文明圏国家、列強国家は強いという現像がこの世界の共通認識だが、神聖ミリシアル帝国さえいれば大丈夫、列強ムーならば大丈夫、といった幻想を、早期に破壊し、敵対国家は徹底的に破壊されるのだという事を、世界に知らしめ、決心のゆらぐ国家を早期に列強国から離反させるためにも、帝国は強い、そして脅威的であるという事を世界に知らしめる必要がある。
 今後、捕虜が発生した場合、一々取り調べを行う事は非効率であり、情報が引き出せないと判断したらすぐに殺される。しかし、協力的な者達は生きながらえる事が約束される。そんな共通認識を持たせた方が、良いと判断したため、今回は見せしめも兼ねて処刑する事とする。
 これは、早期決着の手段のためであれば、蛮行すらも認めるという皇帝陛下の強い意志の現れだ。
 これは、すべて帝国臣民の未来のためなのだ。」

 シエリアは黙り込む。

「シエリア、お前は若い。自らの正義に反すると思っているのだろう。しかし、お前は帝国の将来を左右する外務省のしかも課長クラス。仕事に私情を挟むな。
 決定事項だ。協力しない捕虜は公開処刑しろ。」

「はい……解りました。」

 シエリアは力なく答えるのだった。
 
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第56話列強のプライド5P3


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 第2文明圏 列強国 ムー 

 首都に存在する重厚な建物、海軍本部において、軍の主要幹部が集まる中、本戦いの報告が行われようとしていた。
 本会議には、軍の主要幹部の他、外務省幹部、技術士士官のマイラス、そして戦闘を直近で見たムーの誇る戦艦ラ・カサミの副艦長シットラスも参加する。
 世界の列強国たるムーの誇る空母機動部隊が手も足も出ずに壊滅的被害を受けたとの概要報告を受けていたため、会議に参加する軍幹部たちの顔は一様に暗い。

 たったの1国に強国連合といっても差し支えない艦隊、しかも最新鋭艦隊が壊滅的被害を負わされた。あまりにも強いグラ・バルカス帝国、その帝国が第2文明圏に宣戦布告しているという事実。
 なす術の無い現実に、国家存亡の危機に、軍幹部は頭を悩ませる。

 今回の海戦は、グラ・バルカス帝国の圧倒的強さを世界に知らしめると共に、列強国の彼らに対する無力さが浮彫にされた戦いだった。詳細な戦闘報告書の提出は後日されるとして、まず当事者からの生の意見を聞く事と、今後の大まかな方針決定のために会議は開催される。

「それでは、これより緊急会議を開催します。」

 司会進行が開始を宣言する。

「本戦いの概要を説明します。
先日、神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパスにおいて、先進11ヵ国会議が開催されました。我が国は、戦艦ラ・カサミを旗艦とする空母機動部隊を外務大臣の護衛として派遣いたしました。
 同会議において、グラ・バルカス帝国は全世界に対して従属を求めるという、歴史上始まって以来の暴挙に出ます。そればかりではなく、各国大臣がいる港街カルトアルパスに対し、攻撃を行いました。
 虚を突かれた神聖ミリシアル帝国は、巡洋艦8隻からなる艦隊と、航空機による攻撃しか戦力を集める事は出来ず、主力としては各国の外務省護衛艦隊計53隻と神聖ミリシアル帝国の艦隊を加えた総計61隻もの艦隊で対応にあたりました。」

 会議室がざわつく。司会は話を続ける。

「結果は、我が国の艦載機はすべて帝国の航空機によって叩き落され、彼らの航空攻撃によって、各国の連合艦隊は壊滅的被害を受け、突然島影から現れた彼らの巨大戦艦によって、艦隊は文字通りすべて壊滅いたしました。なお、日本国の戦艦も同巨大戦艦によって撃沈されたと第1報では入っています。」

 会議室のざわつきは、さらに大きなものとなる。

「戦闘結果については以上です。戦闘推移については、戦場を生で見たシットラス副艦長からお話をお願いしたいと思います。」

 ムーの誇る機械文明の粋を集めた戦艦ラ・カサミ副艦長シットラスが壇上に上がり、場が静まる。

「副艦長のシットラスです。これより、戦場の状況についてお話しようと思います。
 戦場において、グラ・バルカス帝国の航空機の接近を探知した我々は、すぐに艦上戦闘機「マリン」を発艦させましたが、敵の戦闘機との性能差は歴然としており、すぐに全滅いたしました。」

「な……何だと!!そこまで差があるというのか!!!」

「最新鋭機マリンがそんなにあっさりと全滅するはずがない!!!」

 会議室に大声がこだまする。

「静粛に!!静粛に!!!」

 司会進行が場を沈める。

「敵の航空機は時速にして500km以上出ていたと推察されます。また、その旋回能力も恐るべきものがあり、技量も高く、我が国の戦闘機はまるで、我々が文明圏外国家のワイバーンを相手にするかの如く、文字通り戦闘になりませんでした。
 他国のワイバーンロードも参戦していましたが、戦果はあがりませんでした。
 神聖ミリシアル帝国の航空機でさえ、彼らの戦闘機の前になす術が無く、バタバタと墜ちていきました。」

 一同は衝撃に襲われる。
 神聖ミリシアル帝国の魔光呪発式空気圧縮放射エンジンを使用した高性能戦闘機でさえ、グラ・バルカス帝国に刃が立たなかったという。
 彼らの思う強き力、信じる力が通用しない衝撃。

「唯一通用していたのが、エモール王国の風竜騎士団です。ただ、彼らの風竜は数が少なく、私の見た所、敵戦闘機とのキルレシオは1対1でした。」

「さ……最強の風竜騎士がキルレシオ1対1だと!?1騎当千と言われた風竜騎士がか?」

「はい、間違いありません。」

 シットラスは続ける。

「艦隊空戦闘も、悲惨な結果に終わっています。アガルタ法国は、謎のベールに包まれていた艦隊級極大閃光魔法を使用しました。空に閃光の剣がほとばしり、その威力は凄まじかったのですが、敵機を2機撃墜した頃に魔力切れを起こし、艦隊の機能が停止したところに攻撃を受け、全滅いたしました。
 ただ、日本国の戦艦しきしまだけは、事前の情報どおり、凄まじいまでの対空戦闘能力を発揮いたしました。
 単艦で相当数を撃墜しております。
 が、しかし、グラ・バルカス帝国の超弩級戦艦を前に轟沈し、敵戦艦へ射撃はしておりましたが、被害を与える事は出来なかった模様です。」

 技術士官マイラスの片眉が吊り上がる。
 シットラスは続ける。

「奴らは……奴らは強すぎるのです!!!我が国も、宣戦布告されている手前、この脅威は本気で認識する必要があります!!神聖ミリシアル帝国の艦も、我が国の艦も、そしてパーパルディア皇国を無傷で降した日本国の艦も、奴らの艦隊の前に刃がたちませんでした。」

 大半が死んだ戦場を経験した者の生の発言は、軍部の心の奥に突き刺さる。
 会議場にいた者たちは、絶望的な気分になる。

ただ一人、技術士官マイラスを除いて。

「議長!シットラス副艦長への質問をしてもよろしいでしょうか?」

 マイラスは、手を挙げる。

「認める。」

「シットラス副艦長、日本国の今回作戦に参加した艦ですが、戦艦とおっしゃいましたね。日本国の護衛艦、軍艦に間違いは無いのですか?」

 会議室の面々は、質問の意味が良く理解できない。

「そうでしたね。日本国は戦艦も、軽巡洋艦も護衛艦と一括りにしていましたね。間違いありませんよ。」

 シットラスの答えに、マイラスは困惑する。

(おかしい。日本国の護衛艦が1隻でも参戦していれば、何故帝国の航空機が全滅していないのだ?敵味方識別装置が無く、誤射防止のため、戦闘が出来なかったのか?連合艦隊が、逆に足を引っ張った形になったのか?いや、グラ・バルカス帝国の戦艦グレードアトラスターも、日本国の護衛艦で撃沈は出来なかったとしても、上部構造物をスクラップにする事は出来るはずだ。
 何かがおかしい。)

「シットラス副艦長、その……戦った日本の船の特徴を教えてもらえませんか?」

「はい、我が国の誇る戦艦ラ・カサミよりも太さはありませんが、全長は長く、砲は前部に小口径砲が存在するのみでした。ほかに機関銃は見受けられましたが、主兵装はそれだけに見えました。」

「ま……まさか!!!」

 マイラスは大きな声を出す。

「どうかしましたか?」

「その船は、砲は35から40mm程度しかない機関砲で敵戦艦を攻撃していませんでしたか?船体は白かったでしょうか?」

「はい、おっしゃる通り、船体は戦場に似つかわしくないほどに白く、小口径砲でのみ攻撃を行っていました。」

「そうか、そういう事か。」

 マイラスは1人納得する。

「どういう事だね?」

 軍幹部は尋ねる。

「みなさん、今後の国の運営について、同海戦は考慮されるとは思いますが、誤解により運営方法を誤ってはいけないので、ここではっきりと皆さんにお伝えします。」

 彼は一呼吸おく。

「グラ・バルカス帝国と戦った日本の艦は、軍艦ではありません。」

「軍艦ではない?マイラスさん、何を言っているのかよく理解できないのですが……。」

「帝国と戦った船は、我が国で言うところの沿岸警備隊です。ゆえに、機関砲しか装備していなかった。日本国の護衛艦が1隻でも参加していれば、おそらくグラ・バルカス帝国の航空機は全滅に近い被害を受け、戦艦グレードアトアスターも、上部構造物はスクラップになっていたでしょう。
 白い船は、日本国では海上保安庁と呼ばれる省庁の管轄であり、いわゆる海の警察機構であるため、戦いのための船ではない。」

「しかし、白い船の全長は、戦艦ラ・カサミよりも長かったのです。対空戦闘能力も、列強を遥かに超え、神聖ミリシアル帝国の巡洋艦よりも明らかに上でした。警察機構がそこまでの対空能力を持つとは考えれらないのですが。」

「日本国の自衛隊の持つ護衛艦に、白い船体でかつそれほど大きい船はありません。」

 会議室は静寂につつまれる。

 軍幹部がマイラスに質問をする。

「マイラス君、今回沈められた船が、警察的な船という事は理解できた。しかし、護衛艦の強さについてだが……君が日本びいきなのは解るが、いくらなんでもそれは過大評価ではないのかね?確かに日本国は強い国だが、たったの1隻でそこまで強いというのは、信じがたい。」

「我が軍には、まだ電子計算機とレーダーを連動させた正確な射撃は導入されていないので、理解が難しいかもしれませんが、日本国の護衛艦は、いや、戦車等の兵器全般に言える事ですが、レーダーで敵の的確な位置を把握し、射撃管制システムで、砲弾の射出速度、そして敵の未来位置を算出、砲安定装置により、海の揺れに関係なく砲身を固定し、射出します。
 その命中率は凄まじく、航空機でさえ大砲で撃ち落とす事が可能です。
 他にも誘導弾等多々ありますが、今申し上げた事は、日本にとっては、可能なのです。
 軍幹部の方々は、資料では把握しておられるとは思いますが、技術的見地からすれば、日本国は世界で突出しています。
 対艦誘導弾と呼ばれる日本国の兵器は撃てばほぼ命中し、その弾は名の通り敵艦に向かって誘導します。射程距離は100kmを超え、当たれば巡洋艦クラス……我が国の基準では戦艦でさえも1発で大破します。
 それを踏まえて、今後の対策を練るべきだと思います。」

 軍の会議は終わり、対グラ・バルカス帝国では、日本国と親密に連携を取っていく方針となった。

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