2016年11月07日

第57話 各国の動きP4


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 グラ・バルカス帝国 レイフォル地区

 この世界の魔信器と呼ばれる機械を使い、これより恐怖の放送がなされようとしていた。レイフォル地区から発信された魔信は、ムー等を中継地点とし、各国に流れる仕組みとなっている。すでに重大な放送があると、各国には通達しているため、おそらくこの放送は、全世界の者たちが知ることになるだろう。
 
 シエリアは、罪なき者達の処刑を発言し、世界に発信しなければならないという本国の命令に、心を痛める。
 彼女の前に、目隠しをされ、自国の重要情報を話さなかった者達、グラ・バルカス帝国の上層部に言わせれば、不必要な捕虜たちが前に並ぶ。彼らは自分たちが何をされるか、まだ解っていないようだった。
 彼女は、本国のために身を粉にして働いてきたつもりだった。すべては国のため、しかし、今回の捕虜殺害の命を発しなければならないという状況に、心は折れそうになる。
(いやだ!こんな虐殺ともとれる仕事をするために、私は外交官を目指したのではない!!!)
 心が叫ぶ。しかし、口は、仕事のため、いつものように、何事も感じていないかのように話始める。

「捕虜たちよ。今からおまえたちの処刑を行うが、最後のチャンスをやろう。先ほど聞かれた事柄について、話す気があれば、申し出るがよい。」
(全員手を挙げてくれ!!!)

 何人かが手を挙げる。
 シエリアは、捕虜に目を配る。日本人は……誰一人として申し出る者がいなかったようだ。

「もういないのか?これから殺されるのだぞ?答える気があるならば、知る、知らないは問わぬ。申し出るがよい。」
(早く手を挙げるんだ馬鹿ども!!本当に死んでしまうぞ!!!)

 日本人は誰も申し出ない。体は震え、妻の名前だろうか?女性と思われる名前を何度も繰り返している者もいる。

「そうか……ではしょうがない。」
(いやだ!!いやだ!!殺したくない!!!)

「これから帝国と戦う者どもよ!!捕虜になり、帝国に従わぬ愚か者たちの処刑をこれより行う。愚か者の末路をその目に焼き付けるがよい!!!そして、我が国が怖ければ、自国政府に、帝国に降るよう働きかけるがよい。降らねばこれからの光景は、未来のお前たちだ!!!
 我が軍門に降れば、永遠の繁栄を約束しよう!!!」
(殺したくない!!殺したくない!!!)

 シエリアは、僅かに目に涙をためる。

「構え――!!!」
(神様、ごめんなさい。)

 処刑人が、銃を構える。

「撃てーーっ!!!」

 発砲音の後、捕虜たちは、血飛沫を上げ、あっさりと崩れ落ちる。

「帝国に逆らう国は、皆こうなる。お前たちが、利口な事を願おう。」

 放送は終わる。
 その光景は、全世界に放送された。
 世界の民は激高する。
 日本国民にとって、その光景は、先の悲劇を彷彿とさせ、グラ・バルカス帝国、そしてシエリアに対する怒りとなって国民は纏まるのだった。



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第57話 各国の動きP3


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 第2文明圏列強ムー 中央軍事司令部 とある部屋

 ムーの技術士官マイラスは、上司と2人で話をしていた。

「では、君は、我が国の誇る最新鋭戦艦ラ・カサミの修理は日本国に任せるべきだ、そう言いたいのかね?」

「はい、今回、グラ・バルカス帝国は日本国に対しても明確に宣戦を布告しました。それが原因とも思えますが、幸運な事に日本国経由でも、限定的な技術支援の話は来ています。」

「確かに、日本国の技術は高いのだろう。しかし、機械文明列強を誇るこのムーが、最新鋭艦を同盟国とはいえ、他国に公開する事の危険性くらい、君にも解るだろう。」

「はい、解ります。しかし、それでも日本国から部分的技術支援は受けるべきです。ラ・カサミは確かに優秀な戦艦です。しかし、私は日本国へ行き、彼らの技術水準をこの目で見ました。彼らの国を基準にすると、ラ・カサミクラスの戦艦は、約100年前の骨董品になります。
 100年先の技術で……いや、最新式のシステムは載せてはくれないでしょうが、それでも100年先の技術で蘇る新生ラ・カサミは我が国の発展に大きく寄与します。
 少なくとも、このまま国内で修理するよりは、はるかに有用です。」

「うーむ……解った。検討しよう。」

「それと、艦上戦闘機マリンも、日本国の車の部品を応用するだけで、エンジン出力が上昇する事が判明しました。」

「な!!なんだと!?」

「過給機というシステムを使えば、簡単に出力を向上させる事ができます。この過給機は、軍用では輸出してくれない可能性もあるため、マリンのエンジンに合う過給機を使用するような鉄道……機関車を新たに開発し、その機関車用の過給機として、日本の部品会社に発注いたします。
 これで、優秀な部品で過給機が出来るため、マリンのエンジン出力と、実用上昇限度が劇的に上がります。」

「日本の法の抜け穴を突くつもりか。先方の心証が悪化するかもしれんな。」

「国家存亡の危機です。日本も解ってくれるはず……、我が国、ムーを対グラ・バルカス帝国の防壁とする方が、日本にとっても有用でしょう。」

 話はつづく。

「また、エンジンだけでも、日本国から輸入できるならば、次世代戦闘機として、複葉機ではなく、低翼を主体にした航空機を開発できると思います。日本国としても、なるべく本人たちは戦いたくはないでしょう。エンジンだけでも輸出してもらえるように掛け合ってはもらえませんか?」

「しかし、我が国の航空機開発部門の人材は少ない。それに、そんなに進んでいる日本国が、70年も前のレシプロ戦闘機に合うエンジンを持っているとも思えない。本戦いには間に合わないだろう。」

「確かに、間に合わないかもしれません。しかし……機体だけでも設計図があれば、どうでしょうか?」

「日本国は、技術の流出を罰しているではないか。どうやって設計図を入手するのだ?」

 マイラスは、笑みを浮かべる。

「日本国の古本屋で、すばらしい発掘をいたしました。」

「というと?」

「日本国の転移前、前世界で70年前、大戦争が行われました。その時の終戦間際に開発された優秀な戦闘機の設計図を2機分入手しました。その名は……四式戦闘機「疾風」と、局地戦闘機「震電」です。」

 上司の顔は驚愕に包まれる。

「現在の我が国の工業技術では、作成は難しいかもしれません。しかし、緊急時です。なんとか日本国に技術支援をお願いしたいと思っております。四式戦闘機「疾風」は時速600kmを超えたと言われています。局地戦闘機震電に関しては、航続距離こそ短いものの、時速700kmを超えたそうです。
 これが実用化し、量産できれば、グラ・バルカスの航空戦力を超える事も可能なのです!!」

 上司の顔が険しくなる。

「機体の設計図があっても、エンジンを日本自体が持っていなければ意味が無いだろう。1から日本に開発してもらっていては、どのみち本戦いには間に合わない。」

「間に合わないかもしれない、しかし、もしかすると可能かもしれません。四式戦闘機「疾風」に合うエンジンは、確かに無いでしょう。しかし、局地戦闘機震電は、元々ジェットエンジンを付ける予定だったと聞きます。私としては、日本国で練習機と使われているT-4のジェットエンジン、もしくは自動車メーカー「ホーンダス」が作ったビジネスジェット機「ハミングスーパーバード」に使用されているジェットエンジンを使用し、出力が大きすぎるので、出力を絞って使えば機体も耐えきれる。空中分解はしないでしょう。
 日本が過去の大戦中に、終戦で幻となった戦闘機を、我がムーが作り出すのです。日本国に敬意を払い、名前も「震電改」にしたい。
 優秀な要撃戦闘機となるでしょう。」

 マイラスは、熱く上司に語るのだった。

◆◆◆

 夜、とある酒場

「やあ、お疲れ様。」

 一人の日本人がマイラスに話しかける。ムーに進出している八菱重工業の、技術者大山。技術士官マイラスとは、彼が日本に来ている時に、知り合い、意気投合し、大山がムー出張になったため、時々酒屋で語っていた。

「大山さん……。」

 マイラスは、彼の横に座り、日本のビールを手に取り、乾杯しながら語り出す。

「日本のおかげでムーは、随分と変わりましたね。この前街に出来た本屋は、あのような大型店舗は今までこの国に存在しなかった。」

 第3文明圏や、中央世界には日本式の本屋が数多く出店し、(取り扱う本は、その国の物や、技術流出に関係ない日本の本)激戦を繰り広げていたため、この第2文明圏のムーでは、TUTAYANが勢力を大きく伸ばしていた。

「ああ、日本には大きな書店はたくさんありますからね。」

「そういえば、TUTAYANは本屋ですよね?今度、携帯電話という、無線機を我が国で販売するという話を聞きました。本屋が携帯電話など、大丈夫なのでしょうか?」

 世界各国は、日本国の携帯電話方式の通信方法は、魔信に比べてコストが極めて低いと判断し、ドコモンや、アーウー、ソフトバンバンといった大手は、第3文明圏で大きく勢力を伸ばしていた。
 日本国政府は、スマートフォンや、インターネットを普及させる事を現時点では禁止していたため、各国では機能は電話のみに限定されていた。それでも、圧倒的な速度で携帯電話は普及しつつあった。
 大手通信会社は、日本の隣国の開発に手いっぱいであり、TUTAYANは、ブルーオシャンを求めて第2文明圏で知名度を上げようと取り組む。

「たしか、電波塔などのハード部分は、ムー国政府が整備し、回線をTUTAYANに貸し出す方法でしたよね。それならば問題ありませんよ。日本国内でも、ドコモンの回線を使い、月約1000円という格安の通信料でシェアを伸ばしつつありますから。
 私も日本ではそこの会社のスマートフォンT−ONEモバイルを使用していました。特に問題はありません。
 しかし、大手は電話を基としていますが、TUTAYANの電話は、インターネット屋(フリービッツ)が作った電話ですから、方式は異なるでしょうが、運用コストは極めて安くなるでしょう。
 ムー国政府も考えましたね。電話のみの限定的技術供与しかないのに、わざわざ日本から光回線を輸入し、国内で整備自らを行う。今は明らかなオーバースペックですが、将来インターネット技術が解禁されたとき、一瞬で劇的な情報革命が起こせる。
 先見の目があります。日本国政府もこうあってほしいものです。」

「そんなムーですが、グラ・バルカス帝国との最前線にいます。日本国が参戦せずに、ジェットエンジンの販売を拒否したら、本当に亡国となってしまうかもしれません。」

「私は、技術供与は行われると思いますよ。国際会議に軍艦を差し向け、街を空爆、そして、日本国へも宣戦布告している国です。ムーを防波堤として、防ぎたいという考えは、当然するでしょうから。それに、そんな戦争の最前線にいる私に、我が社からは、本国への帰還命令が来ていません。むしろ、航空機の技術陣を派遣してくるような話も入っています。
 どうなるかはわかりませんがね。」

 損得勘定の無い2人の会話は夜まで続く。
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第57話 各国の動きP2


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 第2文明圏 文明圏内国家 ソナル王国

 第2文明圏列強国レイフォルに国境を接するソナル王国、ムーの南側に位置するこの国、王の間では、緊急の王前会議が行われていた。
 レイフォルを落とし、そして先進11ヵ国会議外務大臣護衛艦隊が実質的に全滅した事について、緊急会議が執り行われていた。

「以上が、先進11ヵ国会議での外務大臣護衛艦隊が受けた被害と、戦闘の軌跡です。」

 ソナル王国にとっては、先進11ヵ国会議は強国たちの会議であった。そして、戦った11ヵ国はその中でも精鋭艦隊と想定される。

「なんと……ムーの機動部隊ですら全滅したというのか?」

 王は60隻を超える精鋭艦隊が実施的に全滅した事に唖然とする。

「はい、相手は、多数の航空機と、あの列強レイフォルを単艦で滅ぼしたグレードアトラスター型超弩級戦艦です。」

 会議室は静まり返る。

「列強レイフォルを、たったの1隻で滅ぼした、伝説の艦か……その強さは本物である事が証明された形となった訳だ。」

「その艦名を聞いただけで、第2文明圏の海軍は震えあがると言わています。
唯一ムーの艦隊だけは、これに対応可能と思われていましたが、本戦いではムーの機動部隊が手も足も出ずに全滅しており、各国の海軍には、グラ・バルカス帝国に対する恐怖が広がっています。」

「第3文明圏列強パーパルディア皇国を無傷で解体した日本軍の超高性能と言われる「軍艦」も、戦艦グレードアトラスターを前に、なす術もなくあっさりと撃沈されています。あの日本国でさえ、グレードアトラスター型戦艦に、通用しませんでした。」

 日本国は、パーパルディア皇国を無傷で解体したため、世界では強国と認められていた。故に海上保安庁の巡視船撃沈は、日本の軍艦が撃沈されたと思われており、グラ・バルカス帝国の恐怖に拍車がかかる。

「さらに……これは、確定情報ではありませんが、神聖ミリシアル帝国に放っているスパイによると、神聖ミリシアル帝国の第零式魔導艦隊が、グラ・バルカス帝国の機動部隊に襲われ、全滅したと……。
繰り返しますが、これは不確定情報です。」

 王の間は絶望に包まれる。

「第零式魔導艦隊が全滅したのであれば、世界で彼らに抗するすべはないではないか……。」

 沈黙。

「外務卿!」

「はっ!」

「民のためだ……状況によっては、戦わずして降伏の道も、考慮しておいてくれ。」

 王の間では、泣き始める者も出てくる。

「解りました。降伏する場合の道筋も、検討いたします。1200年続く、伝統ある国家が……失われるのは、心苦しいのですが……。」

 ソナル王国は、戦わずして降伏する事を検討する。

◆◆◆

 神聖ミリシアル帝国 港町 カルトアルパス とある酒場

 帝国始まって以来、初の空襲に見舞われた港街カルトアルパスのとある酒場は空襲を免れていた。

「うおー今日も、復興作業で疲れたぜ。」

 ドワーフのように見える男が話始める。
 最近日本国から輸入されたビール、麒麟さん一番に搾るのジョッキを飲み干す。

「美味い!!やはり日本国のビールは、一級品だな。」

 彼は、キンキンに冷えたビールを褒めたたえる。
 肉体労働で、疲れた体にビールの香りと美味さが染みていく。
 カルトアルパスに対する空襲は、目的として政府施設と港湾施設が重点的に狙われたため、酒場は助かっていた。

「しかし、まさかこの国が空襲を受ける事になるとはな。」

「しかし、我が国には地方隊しか戦っていないようだ。」

「でも、ミリシアルの地方隊を滅するだけでも、とんでもない相手だ。皇帝陛下は、民に被害が出たことについて、ひどく悲しみ、グラ・バルカス帝国に対して、烈火のようにお怒りになられたそうだぞ。」

「皇帝陛下の怒りを買った国で、滅びなかった国は無い。グラ・バルカス帝国もこれで終わりだな。」

 彼らは神聖ミリシアル帝国が、負ける可能性は、全く考えず、想定すらしていなかった。
 それほどまでに、帝国への信頼は、空襲が一時的になされたとはいえ、厚い。

「グラ・バルカス帝国は強いな。先進11ヵ国の一部を除く連合艦隊を、ほぼ滅してしまったからな。」

「日本国の巡洋艦は、対空能力がたいそう高かったようで、敵の機をバンバン落としていたらしいぞ。その艦でも、敵の超弩級戦艦に撃沈されてしまったらしい。」

「日本国がグラ・バルカス帝国に負けてしまっては困るな。こんなうまいビールを作る国が無くなってしまっては困る。」

「しかし、グラバルカス帝国が日本を落とすとしたら、ムーや、この神聖ミリシアル帝国を落とさなければ、地政学的に無理だ。まあ、この酒が途切れることは無い。安心だよ。」

「ははは、違いねぇ。」

 神聖ミリシアル帝国の民は、空襲は一過性の奇襲と捉えていたため、帝国の行く末に対して楽観していた。
 酔っ払いどもの話はつづく。

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