2017年07月29日

2017年07月12日

第67話 大戦前夜 P4

◆◆◆

 第2文明圏、ムー大陸北方 バルチスタ海域 グラ・バルカス帝国海軍

 大艦隊が東へ向かっていた。
 現代の日本人がそれを見たならば、ため息が出るほどの力強さを感じるだろう。
 帝国海軍の誇る戦艦や重巡洋艦の主砲は、海上自衛隊の所有する護衛艦の主砲よりも遥かに大きく、そして力強く見える。

 上空には数多くのアンタレス型艦上戦闘機が一糸乱れぬ編隊を組み、上空で警戒を行っている。
 艦隊も乱れは無く、異世界軍主力艦隊と戦えるとあって、兵たちの志気も高い。

 幸いにして空は晴れ渡り、見通しも極めて良好だった。

 グラ・バルカス帝国の誇る最大にして最強の戦艦、グレードアトラスターの艦橋において、艦長ラクスタルは海を睨む。
 かつてないほどの嫌な予感がする。

「副長……気を引き締めろ、本戦いは今までのように一筋縄ではいかない気がする。」

「戦いに油断は禁物であるため、心してかかります。しかし艦長、油断は決してしませんが、我が国の優位性は揺るがないと考えます。何か気になる事でも?」

「……カンだ。長年のカンがそう告げている。」

「怖いな、艦長のカンは良く当たる。」

 2人が話していると、通信兵が声をあげた。

「報告いたします。最前列艦前方1時の方向、250km先海域に、敵の大艦隊を発見、第1次攻撃隊が発艦準備を開始しました。」

「ついに戦闘だな……。」

 ラクスタルの眼光が鋭くなる。
 グラ・バルカス帝国海軍はバルチスタ海域において、世界連合艦隊を捕捉した。

 後に壮絶な戦いと記録された「バルチスタ海域の戦い」が幕を開ける。


タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 20:08| Comment(1796) | 小説

第67話 大戦前夜 P3

◆◆◆

 第2文明圏 列強国ムー 東の工業都市マイカル

 海岸は、軍の出発を一目見ようと多くの人々で賑わっていた。
 軍人の家族と思われる者たちが、心配そうな目で彼らを見送る。
 不安になり、泣き出す母と子も多く見かけた。
 5隻ある空母の上にはムーの最新鋭艦上戦闘機マリンが所狭しと並ぶ。
 空母5隻、ラ・カサミ級戦艦4隻、装甲巡洋艦8隻、巡洋艦12隻、軽巡洋艦16隻、補給艦5隻、計50隻にも及ぶ第2文明圏列強国ムーの艦隊は、グラ・バルカス帝国海軍を滅するための世界連合艦隊と合流するため、工業都市マイカルを出港していった。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国海軍
 
 神聖ミリシアル帝国が発案者となり、中央世界と第2文明圏と連合で艦隊を組み出港した。
帝国の第2文明圏への足掛かりとなる旧レイフォル地区へ向かった事を探知したグラ・バルカス帝国は、空母機動部隊による打撃及び戦艦等の打撃力による艦隊決戦を行うべく、レイフォル西側海域に集結を開始していた。

 帝国監査軍所属の、帝国で最も強力な超戦艦『グレードアトラスター』の艦橋で、艦長のラクスタルは前方の海を眺める。

「……すごいな。」

 超巨大戦艦を最も見慣れた彼をもってしても、感嘆するほどの光景。
 上空には刃を研ぎ澄ましたかのような、美しい戦闘機が一糸乱ぬ編隊飛行をしている。
 その乱れない美しさから、帝国航空兵の練度の高さが伺えた。

 視線を海に向ける。
 海を覆いつくさんとするほどの艦艇数、帝国監査軍と、帝国海軍東方艦隊の連合軍が展開していた。
 巨大戦艦や空母が多数集結するその姿は見る者たちを圧倒し、決して負けぬと信じさせる力強さがあった。
 
 戦艦10隻、空母9隻、重巡洋艦18隻、軽巡洋艦20、駆逐艦112……ここには見えぬが潜水艦64隻も参加する。
 戦闘可能な艦だけで233隻あり、補給艦等補助する艦艇を入れればその数は遥かに膨れ上がるだろう。

「帝国監査軍と東方艦隊……異世界の主力とも言える連合軍を撃破するにしても、過剰戦力のような気がしますね。」

 超戦艦グレードアトラスターの副長が艦長に話しかける。

「この戦いは、我が国がいかに強力かをこの世界に真に知らしめる結果になるだろう。
 本国の人間は、本当はもっと出したかったのではないかな。」

「とはいえ、西方艦隊も本土防衛隊も必要ですからね。
 本土を完全防衛している事を考えると、今回の派遣は相当戦力を捻出したと私は考えます。
 まあ、有り得ない事ですが、すべての艦隊が派遣されたら、補給艦を除く戦闘可能艦艇だけでも790隻にも及びますから、どんな国でも滅んでしまいますが。」

 艦長ラクスタルはフッと笑う。

「では、帝国に刃向かった愚か者たちを殲滅しに行くとするか。」

「そうですね。」

 グラ・バルカス帝国、帝国監査軍及び帝国東方艦隊233隻と補給艦は、同海域に集結した後、決戦海域のなる可能性の高いバルチスタ海域に向かい、出撃していった。

◆◆◆

 神聖ミリシアル帝国 バネタ地区 対魔帝対策省古代兵器分析運用対策部直轄 秘密基地 エリア48

 広大な敷地に巨大な建造物群が立つ。
 その中で2隻の古代兵器……古の魔法帝国の遺産が出撃しようとしていた。

 現代の日本人が見たならば、中央部に円形構造物があり、三菱重工のマークのような形が三方向に延びて、リング状の物体が付く。
 言い方を変えるならば、メルセデスベンツのマークを横にしたような飛行物体。
 
 中央部には円形構造物の上に城のような艦橋構造物がある。

 今、古代兵器である空中戦艦パル・キマイラが皇帝陛下の命を受け、出撃しようとしていた。
 パル・キマイラ2隻は徐々に高度を上げていく。
 基地には出撃を見守るヒルカネ・パルぺが立つ。

「ヒルカネ様、無礼を働いた異界の軍を相手に、世界連合のみならず、対魔帝の要となるような古代兵器まで投入するとは……。
 皇帝陛下のやり方に文句を言うつもりはございませんが、少しやりすぎのような気がします。」

「確かに、やりすぎ感はある。
 陛下は魔法文明の有益性をこの戦いで証明したいのかもしれないな。
 新たに出現した科学文明国家、日本国がこのところ、文明圏外国家からの求心力を高めていると聞く。
 グラ・バルカス帝国に対しても絶対勝利の必要性を感じておられるようだ。
 それにしても……。」

 彼は空を見上げる。
 空中戦艦の名にふさわしく、空気力学以外の方法で空中に浮くその姿は見る者を圧倒する。
 軍部の者、いや、情報局の者でさえも、噂には聞けど見た事のある者はほとんどいないであろう。

 対空魔光弾に対する装甲を持ち、時速にして200km/hもの速度で移動するため、対艦用砲撃は当たらない。
 半径130m、全長にして260mもある巨大な物体が、2隻も連続して出撃し、「実戦」に向かう様は、それを見慣れたはずのヒルカネですら感嘆するほどに力強く、そして美しかった。

 レイフォルやパーパルディア皇国程度の列強国であれば、この2隻の出撃で勝敗を決してしまうだろう。
 パル・キマイラ2隻はあっという間に先行している連合軍に追いつき、おそらくは時間的に戦闘が始まった時間帯に戦場に到着し、その圧倒的な力、戦術をもって敵を殲滅し、他国を震撼させる事になるだろう。

 世界で最も栄えし中央世界の列強国、神聖ミリシアル帝国は、国のプライドをかけ、自国の保有する古代兵器の一部を投入した。

 古の魔法帝国(ラヴァ―ナル帝国)の超兵器、空中戦艦パル・キマイラ2隻は旧レイフォル沖合に展開するグラ・バルカス帝国軍を滅するため、暁の空に向かって飛び去って行った。

◆◆◆

 日本国 首都 東京 防衛省

 防衛省が運用する偵察衛星、他国の脅威から身を守るために現在運用されている。
 この星は地球に比べてもとても大きく、一周するのに地球の倍以上は時間がかかる。
 現時点の運用基数では、敵性国家の常時監視等はとても不可能なものであり、各国の状況、首都、地理や、基地の定点撮影を行い、分析するのが精一杯であった。

 人工衛星の撮影した画像を解析していた横田は、20秒おきに3回撮影されたある写真を見て、戦慄を覚えていた。
 自分の考えが間違いでは無いかと思い、横田は解析を進める。

「ばっ!ばかな!!!おい!これ、これ!これを見てくれ!!!」

 興奮した口調で横に座る同僚、堀山に話しかける。

「何を興奮しているんだ?」

 堀山は写真を覗き込んだ。

「なんだ?これは。」

 不可解な物体が写真に写る。

「これと見比べてみてくれ!」

 横田の出した他の2枚の写真と見比べた。

「なっ!なんだ!!これはまさか!!!」

 驚愕。

「神聖ミリシアル帝国の基地を写した写真だ。
 これが1枚目、そしてこれが20秒後の写真、そしてさらに20秒後の写真。
 この物体は動いているんだ。
 しかも、解析した結果、高度約100mに浮いている。」

 上から見たその写真は中央部に丸、そこから3方向に細いひし形の物体でリングにつながっている。
 リングはその物体を囲むように円形に機体を構成していた。

「こ……この大きさって……。」

「直系260.2mもある。こんな化け物みたいに大きい物体が、浮いて移動している、しかも2基も。
 信じられるか?」

「信じられんが信じるしかあるまい。
 いったいどういった原理で浮いてるんだ?」

「解らん。しかし、移動方向がムー大陸方向だから、対グラ・バルカス帝国戦に参加するつもりかもしれないな。」

「こんなデカいものが浮くなんて……。まるでUFOだ、恐ろしい世界だな。」


 神聖ミリシアル帝国の投入した空中戦艦パル・キマイラはすぐに日本国の知るところとなった。

 画像から脅威度が非常に高いと防衛省は判断、空中目標にも対応可能な対艦ミサイル用プログラミングを急ピッチで進める事となった。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 20:07| Comment(19) | 小説