2017年07月12日

第67話 大戦前夜 P2

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 グラ・バルカス帝国  情報局技術部 レイフォル出張所

 職員のナグアノは、昨日徹夜で作成した報告書と、ムーで入手されたとされる日本国で作成されたと思われる書籍、『別冊宝大陸』を手に取り、上司に報告のため、席の前に座って説明を開始していた。

「以上、この本に記載されている兵器が仮に実在した場合、我が帝国は破滅的な被害を受ける可能性があります!!」

 ナグアノは説明に力が入る。
 超音速で飛行する航空機、マッハ4以上の速度で飛来する誘導弾、そして重巡洋艦をたったの1発で大破させるほどの威力を持つ対艦誘導弾……。
 仮にこれらの兵器が実在すれば、軍は壊滅的な被害を受けるに違いなかった。
 彼の上司、バミダルはこの報告書を見て頭を抱える。

「ナグアノ君……君はこの本の信憑性についてはどう考えているのかね?」

「はい、我が軍に対する予想、規模はともかくとして兵器の性能は極めて的を得ていると考えます。
 しかも、この本では日本国は70年も前に我が軍の軍事水準に達していたとあり、極めて脅威となる存在かと……」

「バカモノ!!!」

 執務室にバミダルの怒号が響く。
 付近にいた者達は、何事かと彼の方向を見た。

「お前は現実と空想、同盟国への民衆の安心と混乱防止のための欺瞞情報と、現実の区別もつかないのかっ!!!それでも情報局技術部の職員か!!」

 一括、彼はつづける。

「本件の一番の問題は、我が軍の情報が何処からか第3国に漏れているという事実だ!!!
 君の報告書はともかくとして、軍上層部への伝達は、情報漏えいの視点で適正になされるだろう。」

 静まり返る執務室、そして沈黙……上司は諭すように話始めた。

「ナグアノ、お前はまだまだ勉強が必要だ。
 例えば、この本が偽情報かと思われる箇所がいくつかある。」

「と、いいますと?」

「この……イージス艦の記述を読んでみろ、同時に200以上の目標を追尾してその中から12目標を同時に攻撃可能とある。
 しかも、うち漏らした敵は個艦防衛を行い、それでもうち漏らした場合は砲を打ち、最後は20mmバルカンファランクス……飛行する敵の未来位置をも予測して迎撃する。これを行うためには敵の飛行速度、砲の安定、そして弾丸の飛翔速度までもを計算する必要が出て来る。
 君は今の我が国の電算機の計算速度を知っているかね?」

「…すいません、電算分野に関しては、勉強不足で解りません。」

「仮に、この本に書いてある事を実現しようとした場合、電算機械だけで戦艦を超えるサイズになる事は間違いなく、下手をすると高層ビルレベルの大きさになる。」

「70年にも及ぶ技術格差があれば、それも可能かもしれません。」

「いや、70年では現実の電算速度はそこまで上がらない。
 真空管の小型化にはどうしても限界があるのだ。
 そして、仮に真空管に変わるものが出たとして、コインほどの大きさまで小型化に成功したとしても、とても大きなものになる。これほどの計算能力のアップは、70年ではとても不可能なのだ。
 400年差があると言われるならば、産業の発達度合いが未知数となるため、解らないが、70年という数値は想像可能な数値なのだよ。」

 黙り込むナグアノ、バミダルは続ける。

「まあ、軍部には参考としてこの本は送られる。軍には色眼鏡無しでこの本の分析結果を伝えよう。」

 電算機の構造について、知識の乏しいナグアノはうなだれる。
 しかし、彼の本能は、全力で日本に対する危険信号を送っていた。

「し……しかし、もしも!もしもこれが本当ならば、欺瞞情報では無かった場合、我が国の根幹を揺るがすほどの被害が出てしまいます!!」

「まあそうだな、被害が出たら軍幹部も考えるだろう。
 情報は適切な分析をして上に報告する。我々の出来る事はこれだけだしな。」

 話が終わりそうになる。ナグアノは、食い下がった。

「繰り返しますがもしも、これが本当ならば、我が国は多大なダメージを食らいます。情報の信用性を確かめるためにも、諜報員の日本国への潜入や、周辺国家からの情報収集強化も併せて軍部に報告したいと考えます。
 軍部から情報が漏れていたとして、逆サイドから漏えい者を捕らえる事も可能かもしれません。
 戦闘状態にある敵国への潜入が難しければ、周辺国家からであっても良いので情報収集強化を!」

「解った解った。それは軍部に私からきちんと報告しておこう。しかし、ナグアノ、心配には及ばんかもしれんぞ?」

「と、言いますと?」

「今、レイフォルの我が軍を攻撃するため、異世界どもの大艦隊がここへ向かってきている。我が国は東方艦隊と、帝国監査軍合同で、この異世界艦隊の殲滅に当たる予定だ。本戦いの後には、ムーへの陸上侵攻が予定されている。
 ムーが落ちたら、いやでも日本国の情報は多く手に入るだろう。」

「ならば、異世界艦隊が来るならばすぐに軍部にこの情報を!!」

「いや、異世界艦隊には日本軍は混じっていない。心配しすぎだ。」

 上司に説得されたナグアノ、不安がぬぐえない。

タグ:日本国召喚
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第67話 大戦前夜 P1

神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス

 世界の富が集まる神聖ミリシアル帝国……その中でも最も栄し首都ルーンポリスの中心部に、皇帝の住まう皇城があった。

 帝国の対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部の部長、ヒルカネ・パルぺは皇帝陛下からの直々の呼び出しがあり、皇城を訪れていた。
 陛下からの直々の呼び出しとあって、緊張しながら部屋の前に立つ。
 ドアが開き、皇帝陛下の従者の指示に従って部屋に入った。

 部屋の中にはテーブルと椅子が設置してあり、テーブルの上には帝国の名産品の紅茶が置かれ、微かな湯気を上げていた。
 その先には世界の王たる皇帝ミリシアルが座っていた。

「座るがよい、茶でも飲みながら話そう。」

 彼は陛下に言われるまま、椅子に腰かけた。

「緊張しているのか?まあ茶でも飲め、うまいぞ。」

 世界の中心に住まう帝の前で緊張せぬはずがない。
 1省庁の1部長を皇帝陛下が呼びつける事態、異例中の異例なのだ。
 彼は1口お茶を口に含む。緊張で味など感じなかった。

「陛下、このたびはどういったご用件でしょうか?」

 対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部……帝国の各地で発掘される古の魔法帝国の超兵器……この超兵器を分析し、自国の国力増強に使用するのはもちろんの事、時々未だ使用可能な状態で発掘される兵器の補修、分析、そして運用までもを担当している部署。
 来るべき古の魔法帝国との戦いの際には最も必要とされる部門の長が呼ばれたという事は……。

「余が君を呼びつける理由、想像がついているのであろう?」

「魔帝復活の兆候を掴んだのでしょうか?」

「いや、グラ・バルカス帝国の件だ。」

 ヒルカネ・パルぺはたかが1文明圏外国家のために、神聖ミリシアル帝国の超兵器運用部門の長である自分が呼ばれる意味が良く理解出来なかった。

「港町カルトアルパスを急襲した野蛮な民の国ですか、アグラ国防長官が3艦隊を派遣し、さらに世界連合がレイフォル沖合に展開する艦隊を殲滅するために向かっていると伺っています。」

 沈黙……。
 皇帝陛下がゆっくりと話はじめる。

「余は念には念を重ねる主義でな、本大戦に古代兵器の投入をしようと思っている……このグラ・バルカス帝国艦隊を殲滅するために、空中戦艦パル・キマイラを、そうだな……2隻ほど派遣せよ。」

「なっ!!!!」

 古の魔法帝国の発掘兵器、『空中戦艦パル・キマイラ』、国内で7隻が発掘され、運用可能な数はたったの5隻しか無い古代兵器、このうち2隻もの超戦力の投入、しかもそれが対文明圏外国家であることに、彼は耳を疑った。

「失礼ながら陛下、パル・キマイラはまだ良く構造が理解できない部分があります。万が一にでも撃沈されたら代わりはありません。新たに作る事が出来ないのです。どうかご再考を!!」

「作れない事も、代わりが効かない事も解っておる。私は嫌な予感がするのだ。」

「と、いいますと?」

「国防長官アグラは3艦隊もあれば十分に撃滅できるとの試算を出した。
 しかし……我が帝国は来るべき全種族の……種としての存亡をかけた戦いを少しでも有利に進めるために、発掘された遺跡群から古の魔法帝国の力を推測し、世界史上最大の帝国を仮想敵国として発展してきたため、他国と大きな力の差がついている。」 

 ヒルカネは皇帝陛下の言葉をかみしめるように頷く。
 彼は続ける。

「差が付きすぎて、他国に対して性能面において勝ちすぎているのだ。」

「しかし、それは良い事ではないのですか?」

「国家としては極めて良い事、最高と言っても良く、解析も技術も軍も、良くやってくれていると思う。 
 しかし……連戦連勝は、仮に気を付けていても目をくらます場合がある。
 国防長官アグラは優秀だ。決してグラ・バルカス帝国を侮ってはいないだろう。だが、心の奥底に油断があるように感じるのだ。
 科学文明国家……侮ってはいけない敵だ。」

 ヒルカネは皇帝の言葉をかみしめる。

「かしこまりました。仰せのままに……古代兵器、空中戦艦パル・キマイラを2隻、グラ・バルカス帝国討伐に派遣いたします。」

「頼んだぞ、軍部の方には話をしておこう。万が一、1隻でも落とされるような事があれば、すぐに撤退せよ。」

「古代兵器が落とされるような事は考えられませんが、承知いたしました。」

 出撃日の許可をもらい、多少のやり取りの後、ヒルカネは部屋を退室した。

「……これで負ける事はあるまいが……傲慢なる異界の帝国は殲滅せねばな……。」

 皇帝ミリシアルは窓の外を眺める。
 繁栄を極めし帝都を眺めながらそうつぶやいた。

 神聖ミリシアル帝国は、第2文明圏旧レイフォル沖合に展開するグラ・バルカス帝国海軍を滅するため、世界史上最強の国家、古の魔法帝国(ラヴァーナル帝国)の発掘兵器、『空中戦艦パル・キマイラ』2隻を同海域へ派遣する事を決定した。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 20:06| Comment(13) | 小説