2017年08月13日

1巻特典 その3

■ クワ・トイネ公国 経済都市マイハーク

 小さな石畳の上を、馬車や陸鳥が離合する。
 街は活気に溢れ、行き交う人々の顔も明るい。
 私服で歩くマイハーク防衛騎士団団長のイーネ、今日は休日である。
「はー……」
 昨日のことを思い出し、イーネはため息をついた。
 聞いてしまった……いや、聞こえてしまったのだ。隊員たちの本音が。

「――だよな」
「ああ、受付のミーちゃんは確かに可愛い。狙うならあの子だな」
「でも身近にも美人はいるじゃないか。団長はどうよ?」
「イーネ団長? 可愛いけど、ちょっと無理かな……気が強いし、男を立てるという必要性がわかってない。やっぱり女は一歩引くくらいが良いよ」
「気が強いのは団長の立場上だろ? 2人きりになると上目使いで猫のようになるかもよ」
「いや、立場上だけではないのは見ていれば解るだろう。やはりコルメス公爵家の娘だからかな……あれは行き遅れるに違いない。すでに27歳でやばいけど……40代でも独身だったら、きっと鬼団長になるぞ――」

(失礼な奴らだ。特にキースの奴め、鬼団長だと? 「行き遅れる」なんて言いすぎだ! 私だって……私だって男の1人や2人くらい……)
「はー……」
 やっぱり自信がない。団長職について十数年、色恋沙汰と無縁に生きてきて、もはや殿方の心の掴み方など、わからなくなって久しかった。
(このまま行き遅れるのかな……。ええい!! せっかくの休日に悩んでいても仕方ない。買い物でもしよう!!)
 イーネは裏道に入った。少し入り組んでいて、先を曲がると彼女のお気に入りの服屋がある。
「ん? あれは……」
 緑色のまだら模様を着た人物が、焦った雰囲気でキョロキョロと何かを探していた。
 ロウリア王国の魔の手から我が国を救った、日本国の兵だろう、確か親善訪問をしていると聞いていた。
 兵にしては高齢に見える。40代中盤から後半といったところだろうか――
「――ん!?」
(やばい!! 顔がドストライク!!!)
 あの年でまだらの服を着ているということは、出世できなかった兵だろう。顔は好みだし、ちょっと引っかけて男の気持ちを理解する練習台にはちょうど良いとイーネは考えた。
 どうせ異国の兵だ、恥があったとしてもすぐに国に帰る。
(まずは話しかけて……おっと、女は1歩引いて、だっけ。ミーちゃんが良いとあいつらも言っていたな。ミーちゃんみたいに……ミーちゃんみたいに……)
「あのぉー……何かお困りですかぁー?」
 満面の笑みと上目遣い、そしてちょっと語尾を伸ばしつつ甘ったるい声で、イーネは日本人に話しかけた。
「え? あ、はい……帰る方向……マイハーク青年宿舎の方向がわからなくなってしまいまして」
「それは大変〜。何時までに帰らなきゃいけないんですぅ?」
 自分で話していて、この言葉使いは鳥肌が立つ。我ながら気色悪いと思いつつ、話し始めたらあとには引けない。――ミーちゃんはいつもこんな気分で話しているのだろうかと不穏なことを考えていた。
 もう辞めてしまいたいが、男に慣れなければ……一生独女なんて嫌だ……と、イーネは必死だった。
「17時までに帰れれば問題ないのですが、大体この街の雰囲気もつかめたし、帰ろうかと」
「そうなんですねぇ〜。ところでおじ様ぁ、マイハークの有名な観光場所なのですが、ディスウール教会はもう行かれましたぁ?」
「いえ、行ったことはありません」
「じゃあー……お時間もあるようなので、寄り道しませんかぁ? お帰りの場所と同じ方向なんですよぉ〜」
「え……ええ、ありがとうございます」
 イーネは日本国の兵と思われる者を、有名なデートスポットへ半ば強引に連れて行った。

■ 数日後

「イーネ団長、本日は日本国自衛隊員の幹部たちと、マイハークに住む貴族たちの晩餐会が開催される。晩餐会にはロウリア王国との戦争で自衛隊の救援部隊を指揮していた日本国の猛将、大内田和樹陸将も参加される。マイハーク防衛騎士団の団長として、君も参加してくれたまえ。あと……騎士キースをエスコートに使うといい。キースもあれで貴族の出だ、作法は心得ているだろう」
 国の軍務担当からの依頼により、彼女は晩餐会に参加することとなった。

 空気は澄み、2つある月がはっきりと見える。
 晩餐会会場に向かう外廊下で、イーネは騎士キースに釘を刺す。
「キース、くれぐれも失礼のないようにな」
 イーネの言葉を聞いていたのかいなかったのか、若き騎士キースは胡乱な目を彼女に向けた。
「イーネ団長……私、見てしまいました」
「何をだ?」
「……甘い声で異国の兵を逆ナンパする団長の姿です。オフでは凄く行動的だったんですね、公私の差が激しくてびっくりしました……」
「ッッ――――!!!」
 イーネの顔が引きつり、あまりの恥ずかしさと衝撃に声にならない悲鳴を上げた。
「い……いや、あれは……」
「団長、部屋に入りますよ」
 キースにエスコートされて、彼女は晩餐会の広間に入る。
 しかしイーネは内心慌てふためき、晩餐会どころではなくなっていた。
(やばい!! キースに見られた!! やばい!!!)
 すでに司会が何かを話始めているがほとんど耳に入っていない。
「――では、我が国を救った猛将、大内田和樹陸将の登場です!!」
 割れんばかりの拍手が巻き起こり、40代くらいに見える男性が広間に入ってくる。
 イーネは彼の顔を見て、血の気が引くのを感じた。
「あ……あ……あの人は!!」
 ミーちゃんの真似をし、恥はかき捨てとばかりに生まれて初めて逆ナンパした男性。その彼が、檀上で講演を始めている。
 講演後には大内田陸将との挨拶を控えている。イーネ団長は慣れないことをするものではないと、一時卒倒してキースに抱えられた。

 顔から火が出る思いをした団長イーネだったが、後日、大内田和樹陸将と国の垣根を超え、いじらしくも親密な関係に発展していくのだった。
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1巻特典その2

■ クイラ王国 王都バルラート

 荒涼とした風景、吹きすさぶ乾いた風……辺りを見回すも森は見えず、木と呼べるものは疎らにしか生えていない。
 砂の海、砂の街、作物の育たないやせた土地。人々の暮らしは貧しく、他国からは蛮国の呼称のみならず、貧国≠ニさえあだ名される王国、クイラ王国。
 人々はあまりの貧しさで日々の暮らしに絶望し、生きることに必死である。「今日より明日を良くするために頑張って働こう」などとは微塵も思わない。
 この国で生まれ育った者たちは、緑に溢れた豊かな隣国、クワ・トイネ公国に出稼ぎに向かう。
 国を挙げての人材派遣、傭兵稼業などで外貨を稼ぎ、公国から食料を輸入する。
 クワ・トイネ公国は格安で食料をクイラ王国に売ってくれるため、王国の生命線と言って差し支えなかった。

 クイラ王国の外交を司る王宮貴族メツサルは、『急な要件』ということで会談を希望してきたクワ・トイネ公国の大使を部屋で待つ。
(急な要件とは一体何だろうか? まさかロウリア王国に変化が?)
 彼の頭の中を、様々な可能性が駆け巡る。
 ロウリア王国は、人間種以外の種を亜人(人間に満たない存在)と蔑む人類至上主義の国である。ロウリア、クワ・トイネ、クイラが存在するロデニウス大陸の統一を目論む覇権主義国で、特に最近は緊張状態が続いている。メツサル自身もドワーフと呼ばれる種なので、もしロウリア王国の支配に陥ればどうなるか、わかったものではない。
 会談内容について思いを巡らせていると、部屋の扉が開いた。クワ・トイネ公国の外交官ペインが、緊張の面持ちで入室してくる。
 メツサルも立って出迎え、挨拶もそこそこに二人は席に着いた。
「急な要件とは一体何でしょうか?」
「実は『日本国』という新興国家が我が国へ来訪し、国交開設を求めてきています」
「ほう」
 新興国との国交を結ぶことは特に珍しいことではない。そんなことが国家間同士の会合で『急な要件』とはならない。
 ペインは続ける。
「我が国は国交を開く前に、日本国への使節団の派遣を決定いたしました。国交を結ぶかどうかはそのあとで決める予定です」
「なるほど……」
「その日本国ですが、クイラ王国とも国交を結びたいらしく、我が国に仲介してほしいと頼んで来たので参りました」
 まだ『急な要件』とは言えず、それが引っかかっていたメツサルが切り出した。
「して、当初お急ぎのお話だったようですが……何か特異な事態でも?」
 先手を打たれたペインは、しばし沈黙する。ややあって、重い口を開いた。
「実は……その日本という国があまりにも特殊すぎるのです」
 身構えていたメツサルだが、『特殊な新興国家』という形容が理解できず肩透かしを食らう。
 ペインは突如飛来した日本国所属の飛行物体と、大使を乗せてやってきた超大型船の存在を話した。曰く、前者は羽ばたかずに時速600kmで飛行し、後者は全長250mほどもある鋼鉄製の船だという。
 メツサルはにわかに信じられず、目を剥いた。
「……信じられません。その話が本当だとすると、文明圏内国家……いや、列強国と同等……もしかしたらそれすら超える国ということになる。そんな国が今まで知られなかったはずがない!!」
「その通りです。しかし彼らは『突如、異世界から国ごと転移してきた』と申し立てているようで……。ちょっと不明な国であります。使節団の結果が出ましたら、また情報をお届けしようと思います」
「ありがとうございます。しかし新たな脅威ですな、日本国の種族構成はどのようになっているのかはご存じでしょうか?」
 メツサルは人間種以外の比率が気になって尋ねた。
 仮に人間種の比率が多い国の場合、他種を迫害している可能性も考慮する必要がある。
「それが……人間種のみで構成されているようなのです」
「な……なんと!! ではドワーフや獣人族、エルフは存在しないというのでしょうか?」
「……はい」
「ロウリア王国のように人間種以外は迫害しているのか、もしくは攻め滅ぼしたのかもしれません。そんな国とは関わりたくないものです」
 メツサルの強まった語気を、ペインは穏やかに制する。
「彼らがどういった国かはまだ不明ですが、列強国に迫る技術を持ち合わせているのは確かです。そして彼らは我々に興味を示しているという事実があります。ロウリア王国と日本国、2つの国と敵対したら、国は持ちませぬぞ」
 一国の外交を預かる身として、メツサルは冷静さを取り戻す。
「む……少々熱くなりすぎたようです。では私どもも、日本国の使者を受け入れ、まずは話だけでも聞いてみようと思います。ありがとうございます」
 後日、クイラ王国と日本国のファーストコンタクトとして、会談の場が設けられることとなった。

■ 約1週間後

 クイラ王国と日本国、初会談の日がやってきた。
 日本国大使は海岸から離れた王都バルラートに来るため、事前に飛行許可を取ったあと、海上の船から(と言うのは日本国側の説明だ)ヘリコプターと呼ばれる飛行機械で乗り付けてきた。轟音と暴風を巻き起こして空を飛ぶ物体を初めて見たクイラ王国軍は、驚愕に包まれる。
 場所をクイラ外務局の応接室に移し、日本国外務省の担当者と正式に挨拶を交わして、会談が始まった。
「改めまして、日本国外務省の宇田です。このたび貴国との国交開設を目的とした事前協議に参りました」
 いまだ警戒心を解かないメツサルは、人間種を相手に片眉を軽く吊り上げる。
「クワ・トイネ公国から、あなた方は技術力の高い国だと聞きました。その日本国が、我々のような貧しい国に何を望むのでしょうか?」
 日本国が「生贄のための人的資源がほしい」や、「政治体制に対する介入」もしくは「領土的野心」があれば、お引き取り願うつもりでいた。
「まず第一に……我々は友人に豊かさや貧しさを求めてはいません。とにかく多くの国々と窓口は開いておきたいのです。次に、クワ・トイネ公国からお伺いしたのですが、貴国には『燃える水』が大量に溢れ出ていますね? サンプルも見ました。これを我が国に輸出して頂きたい。為替――お金のレートが未決定なので、これらが決定するまでの間、我々は『インフラ』を輸出いたします」
 懸念していた事態にはならなさそうでメツサルは安心する。しかし取引の対象が『燃える水』と聞き、今度は困惑することになった。クイラ王国では『燃える水』は路傍の石と同義だったのである。
「確かに……作物を作るのには使えぬ燃える水は、我が国に大量に噴き出しています。ただ、あれは液体なので使い勝手は極めて悪いですぞ。桶に入れても長時間運ぶ際に染み出すし、仮に水道を作って吸い上げようとしても、継ぎ目から液体が漏れ出て、臭くてかなわない。『燃える石』もございますが、こちらはどうでしょうか?」
「いえ、石もすばらしいのですが、我々が求めているのはあくまで『燃える水』のほうです。ええと……」
 日本国の大使は上質な紙を2枚取り出す。
「この条件でいかがでしょうか?」
 1枚はメツサルが読めない字で書かれていた。もう1枚は大陸共通言語のいくつかが記載された対訳表らしく、日本国は本来言語が違うのだと初めて気づく。
 対訳に沿って読み進めると、その条件はクイラ王国にとって苦痛の種であった各種インフラの整備内容が書かれ、にわかには信じられないような好条件の内容だった。
(これは……使えない燃える水の池を数個差し出すだけで、国が相当に豊かになる……)
「この条件は本当なのでしょうか? これほどの大規模工事をしてもらうとなると、相当の人的資源と期間を要すると思うのですが……」
 提示された工事内容は、どれも人の手がかかるものばかり。とても実現するものとは思えずに彼は尋ねる。
「日本国について資料をお持ちしましたので、簡単にご説明いたします」
 宇田は日本国を紹介した映像をノートパソコンで再生し、メツサルに見せる。
 天を貫かんとする高層建設物、豊かな自然、そして美しい四季。インフラ整備のための工事方法や順序を納めたその映像を見て、メツサルは驚愕につつまれる。
 どれもこれも見たこともないような風景、技術であり、『日本国』という国が、世界の列強国に匹敵するほどの国だと理解するに至る。
 映像の真偽は日本国に使節団を派遣したクワ・トイネ公国から聞くことができるだろう。
 人間種以外の種族は元々国内におらず、差別が原因ではないと知って、メツサルはようやくクイラ王への上申を決めた。

 後日、クイラ王国は日本国と国交を結び、有り余るほどの支援を得て、クイラ王国史始まって以来の豊かさを手にした。世界の貧国だった同国はクワ・トイネ公国に並ぶ日本国の友好国として、世界に名を轟かせることとなる。
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1巻特典その1

■ ロウリア王国東方征伐海軍 海将 シャークン

 戦場に爆炎と悲鳴がこだまする。
 ロウリア王国竜騎士団の波状攻撃をあっさりと防いだ日本国の艦隊は、その圧倒的ともいえる牙を、ロウリア王国の艦隊へ向けていた。
 大きな音が海上に鳴り響くと、ほぼ同時に味方の軍船が爆散、轟沈する。
「ちくしょう!! 化け物どもめ!!!」
 このままでは軍船4400隻、総兵力14万人にも及ぶロウリア王国の主力艦隊が全滅してしまう。
「……ここまでか……」
 国に帰ったら無能のレッテルを貼られ、死刑となるだろう。しかし、それでも多くの兵たちを救うために彼は決断する。
「全軍撤退せよ。繰り返す、全軍撤退せよ」
 魔力通信で、友軍に撤退命令を下した。
 シャークンが搭乗する旗艦も回頭を始めるが、直後に何かに押されるような感覚に襲われる。海水が口に入り、彼が意識を取り戻したとき、その目には旗艦が真っ二つに折れて沈みゆく状況が写る。
 ロウリア王国東方征伐海軍海将、シャークンは海に漂いながら、友軍が撤退していく状況を眺めていた。
 撤退を開始した途端、敵からの攻撃が止まり、撤退完了後は海に生存者たちを吊り上げているようだった。おそらく、将である私は捕まれば拷問を受け、情報を引き出したのちに、兵の志気を鼓舞するために首を刈りとられるのだろう。我が国ではそうする。即座に撤退して死刑になったほうが楽だったかもしれない。
「まったく、ついていない……だが」
 我が海軍をここまで追い詰めた日本国とはどんな国なのか、一体どのような兵器を使用しているのか、好奇心が勝った。あわよくばその一端に触れられるかもしれない。
 シャークンは、近づいてきた大型船に救助された。

 シャークンたちは武装を没収され、船の甲板に座る。目の前には日本国の兵と思われる男が立ち、こちらを睨むように見つめていた。
 ケガをしている者たちは別の場所に連れていかれたようであるが、もしや生かすか殺すかの選別が行われているのだろうか。
「この中で、指導的立場の者はいるか?」
 敵兵の一人が声を上げる。
 味方の兵たちが、一斉にシャークンへ視線を集めた。
(……やはり隠せぬか)
「私が指揮していた。ロウリア王国東方征伐海軍、海将シャークンだ」
 敵の目が見開かれる。
「では、こちらへいらしてください」
 他の護衛の兵とともに、シャークンは船の中へ通された。
 船内は太陽の光が差し込まないのが常識だが、この船の中は昼のように明るく、快適そのものだ。ロウリアの軍船とは別格の技術力で作られた船であることは疑いようがなく、そこでようやく魔導船であることに気づいた。
 ある部屋に通され、中には日本国海軍の指揮官と思われる人物が座っていた。
 連行されたシャークンを前に立ち上がると、敬礼で迎える。
「まさか、あの大艦隊の海将殿にお目にかかれるとは思いませんでした。本来の戦争であれば、我々はあなた方を捕虜として扱いたいと思いますが、日本国政府はあなた方を武装勢力と位置付けています。処遇については現時点で私の口からは何とも言えませんが、日本国に移送するまでの間、身の安全は保障いたします」
 当面は拷問を受けないとわかっただけで、シャークンは安心する。
「貴国は強いな……このような魔導戦艦を持っているとは。列強国は文明圏外国家に武器を売っていなかったと記憶している。いったい何処から購入したのかね?」
 シャークンは、この船を列強国から購入したものだと考えていた。もしかするとパーパルディア皇国と敵対する列強国が、代理戦争のために売ったのかもしれない。
「? この護衛艦は我が国で造られたものですよ。それに魔導戦艦とは何なのか、よくわかりませんが……しかし、この護衛艦のような船を持つ国がこの世界にもあるのですね」
「馬鹿な……文明圏外国家で、このような船を造れるはずがない!!」
「そう言われましても……まあ、今からあなたは我が国に移送されます。我が国をその目でよく確かめてから、判断してください」
 シャークンはまだ聞きたいことがあったが、質問は強制的に打ち切られた。

■ 後日 ロデニウス大陸でベストセラーとなった本「海王戦記」より(一部抜粋)

 日本国に連れてこられた私が最初に見たものは、天を貫かんとするほどの高層建築物が大量にそびえ立つ姿だった。
 列強国を遥かに凌ぐ、人が造ったとは思えない構造物群の脇を、『高速バス』と呼ばれる馬の全力疾走よりも圧倒的に速い乗り物によって駆け抜ける。乗り物はそれほどの速度で走っているにも関わらず、揺れは少なく大変快適であった。
 やがて私は強制収容所に収容された。我がロウリア王国の強制収容所とはまったく似つかず、空調が完備された清潔な空間だった。海将としての特別待遇ではなく、他の乗組員も同じ空間で暮らし始めた。食事も上等で、真に先進的な国とは、捕虜の扱い一つとっても大変紳士的なのだと思い知らされた。
 拷問は法律で禁止されていると聞いて安心した私は、この国の軍事力について情報収集を行い、あまりにも無謀な戦いを挑んでいた現実を知る。
 この国、日本国は今後世界に出るだろう。その時は世界の常識、列強国と衝突することも十分に予想される。
 世界の無知は悲劇となってその国を襲うだろう。
 ロウリア王国と日本の戦闘が集結し、何度か尋問を受けたあと、私は解放された。
 生きて帰れたことが奇跡であり、この生を神に何度も感謝したものだった。
 
 ロウリア王国海将シャークンは、日本との戦闘終結後帰国し、晩年は世界に名を轟かせる強靭な海軍艦隊創設の立役者となった。
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