2017年09月30日

第69話バルチスタ大海戦2P5


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊 旗艦 グレード・アトラスター

 おそらく敵の主力艦隊であろう、神聖ミリシアル帝国の艦隊……この世界で飛びぬけて強いとされる同艦隊に対しても、空母機動部隊の有効的な運用により、それなりの被害を与えた。
 現在戦艦を中心とする水上打撃部隊も同艦隊に向かっており、更なる戦果をもたらしてくれるだろう。
 やはりグラ・バルカス帝国は強く、今回の神聖ミリシアル帝国の軍を打ち破れば、大戦の流れを掌握する事も可能……。
 本戦いは、世界支配のための重要な一戦であり、敵がいかに弱かろうと決して手を抜く事は出来ない。
 連合艦隊司令長官カイザルは、そう考えていた。

 通信員が慌ただしく偵察機に問いかけている。

「嘘だろう……」

 戦場にあるまじき独り言も聞こえ、何度も確認を行っているようだった。
 確認を終えた通信員は、信じられないといった表情で、偵察機が見た状況を報告した。

「偵察機より報告、超大型の飛行機が敵艦隊に向かっています。同飛行機に刻印された紋章により、神聖ミリシアル帝国の航空機と判明、しかし……」

「?どうした?続きを読め!」

「はい……同飛行機は、大きさが目測で200メートルを超えています。飛行機というよりも、戦艦……空中戦艦が向かってきていると報告が……」

「な……何だと!!?数は!!」

「1機です。海上約200から300m上空を、目測速度約200kmで敵艦隊に向かっている模様です」

 一瞬の沈黙……。

「信じられんな……」

「航空力学以外の方法で空中を飛んでいるとしか思えませぬ……司令、戦艦水上打撃部隊に敵空中戦艦が到着する前に叩きましょう。戦闘機及び急降下爆撃機で攻撃を行いたいと思います。空中にいるのであれば、雷撃機は意味をなさないでしょう」

「……解った、許可する。しかし、まさか空中戦艦とはな……とんでもない世界だな……」

「この世界には魔法があります。もしかすると、偵察機の隊員が幻惑しているだけなのかもしれませんが、いずれにせよ本当であれば脅威です。装甲や攻撃方法等、詳細が判明していないため、なんとも言えませんが、まずは航空兵力で様子見をしましょう。
 空中に浮かんでいるという事は、重さが重要です。装甲は対した事がないかもしれません」

「了解した、攻撃を実施……撃ち落とせ」

「了解!!」

 グラ・バルカス帝国連合艦隊の空母から次々と発艦する攻撃隊……彼らは世界最強たる神聖ミリシアル帝国の保有する発掘兵器……空中戦艦パル・キマイラを撃沈するため、透き通るような青空に向かい、飛び立っていった。

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第69話バルチスタ大海戦2P4


◆◆◆

 嵐のようなグラ・バルカス帝国の猛攻、波状的にやってくる航空機の攻撃は「猛烈」そのものであり、最強を誇るはずの神聖ミリシアル帝国魔導艦隊の被害は拡大し続けていた。

「小型艦ミロク、パルミダ、轟沈!」

「空母プーミア、被弾!炎上中!!」

「バ……バカな……そんなバカな!!!」

 最強のはずの魔導艦隊が燃える。あり得ない光景が眼前で広がり、司令レッタル・カウランは自らの価値観が音をたてて崩れゆくのを感じていた。
 
 複数回にもわたる猛攻の後、空からの敵は去って行った。

 〇 戦艦  轟沈1 小破3
 〇 空母  轟沈2 中破3
 〇 小型艦 轟沈5
 〇 重巡洋艦 操艦不能1 後自沈
 〇 巡洋艦 大破2

 信じられないほどの甚大な被害、必ず一矢報いなければと、彼は心に誓うのだった。

「偵察機から入電!我が方に航行中の艦隊を発見!!
 戦艦4、重巡洋艦4、巡洋艦8、小型艦20、計36隻の艦隊が我が魔導艦隊に向かって航行中!!」

 司令レッタル・カウランと参謀の目が光る。

「来たな……艦隊決戦だ!!」

 最も自信のある艦隊同士の殴り合い、数々の強国を滅ぼして来た……そして、何れ来るであろう全種族の敵、古の魔法帝国との戦いで、世界で唯一まともに戦える可能性のある艦隊を整えて来た。
 艦隊決戦に特化した戦力で敵を叩ける。
 司令レッタル・カウランは必ず敵を倒すと、心に深く決意を刻んだ。

「ムーより報告!世界連合艦隊に対しても、大規模艦隊が向かっている模様!!なお、報告中、ムーの偵察機は撃墜されたため、規模等詳細判明せず。」

「……主力艦から隊を2つに分けたか……。」

 元々世界連合に戦力など期待していなかったが、グラ・バルカス帝国の艦隊を引き付けたという意味においては役にたった。
 世界連合は数だけは圧倒的なため、旨く隙をつけば、ムーであれば少しは帝国にダメージを与える事が出来るかもしれない。

 めまぐるしく入る報告、彼の頭はフル回転を始める。

「司令!!」

 慌てた声で通信士が話しかける。

「今度は何だ!!」

 次々と上がる報告、今度は何だと、彼は少しうんざりした。

「第1級通信が入っています!!!!」

「な……なにっ!!一体何事だ!!!」

 第1級通信……国家における最優先事項が伝達される通信であり、その通信はすべてに優先する。
 たとえ戦闘中であったとしても、その受信は義務付けられていた。

「こんな海域で、どうやって通信してきたというのだ!!!」

 現在地は本国から直通の魔信が届く海域ではなく、さらに第1級通信は、第3国を通じて送る事を禁じられていた。
 司令と参謀の頭は多少の混乱に包まれる。

「映像付き通信です。開きます……しかし、なんて出力……。」

 艦橋に設置されたモニターに映像が映し出される。

「つっ!!」

 奇妙な光景……モニターの映像に、その場の全員が固まる。
 モニターの先では、全員が薄気味悪い仮面をかぶり、同じ服を着て動き回っていた。

 艦橋の軍人は、それが何かが理解出来なかったが、軍幹部たちはそれを見て緊張に包まれる。
 他の者とは異色の服を着用し、別種の仮面を被る人物がモニターの先で話始めた。

「軍の諸君……君たちは少し苦戦しているようだねぇ。」

 他の者たちに囲まれたその人物は、その人員配置から考えて、おそらくその通信先の代表なのだろう。

「あ……あなたたちは……何の御用でしょか?」

 司令は尋ねる。

「レッタル・カウラン君……これは皇帝陛下の御慈悲だよ。」

 腕を後ろに組み、独特の話し方をするその者は続ける。

「軍の諸君、自己紹介が遅れたねぇ……。
 私は対魔帝対策省古代兵器戦術運用対策部……運用課……古の魔法帝国の遺産、古代兵器、空中戦艦パル・キマイラ2号機の艦長……メテオスという。
 今回、諸君らが苦戦をするかもしれないと予想された皇帝陛下から直接派遣を命ぜられた者だ。
 空中戦艦パル・キマイラは2艦派遣されている。内1隻……我々の船は間もなく諸君らのいる空域に到達するだろう。」

『パ……パル・キマイラ!!!』

 司令レッタル・カウランも含めて全員が驚愕に包まれる。
 一般兵にあっては噂程度しか知らない空中戦艦パル・キマイラ、古の魔法帝国が開発した兵器とされ、そこで働く者たちは軍と身分を変え、全員がそれぞれを特定しないように暗号で呼び合い、そして顔の特定さえも防ぐため、仮面をかぶると言われる。
 現在の神聖ミリシアル帝国の技術水準では決して作れぬ発掘戦艦である超古代兵器の投入、各兵はこの戦いに掛ける皇帝陛下の思いを感じるのだった。

「へ……陛下が援軍を……しかもパル・キマイラを送って下さるとは……まさか古の魔法帝国の兵器が投入されるとは……。」

「フッフッフ……軍の諸君、我々は、間もなく君たちのいる艦隊上空を通過する。攻撃しないでくれたまえよ……陛下の大切な剣なのでね、ところで、今貴君らに向かっている艦隊があるようだね……君たちの進路の邪魔だから、
彼らは我々が片づけよう。」

!!!!!!
驚く一同、パル・キマイラは、確かに古の魔法帝国の遺産であり、空中戦艦と呼ばれるほど強力という噂がある、しかし、我が艦隊も対古の魔法帝国戦のために磨かれた軍隊、発掘戦艦がいかに強力であろうと、自分達と互角に渡り合う敵に対して……しかも36隻もいる敵艦隊に、たったの1隻で立ち向かうのは無謀に思えた。
 まして、操っているのは軍幹部ではなく、いわゆるお役人なのだから……。

(戦いの素人が何を言っている……)

 レッタル・カウランは、口に出しかけた言葉を飲み込んだ。

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第69話バルチスタ大海戦2P3


■ 2時間後〜

神聖ミリシアル帝国 魔導連合艦隊 旗艦ロト

 艦橋は怒号が飛び交い、あわただしく報告が飛び交う。

「第6飛行隊、全滅、被撃墜機3」

「第8飛行隊より入電、敵の機数は150機を超える。
 現在地、艦隊南西方向約50km、間もなく目視範囲に入ります!!」

「直掩隊、向かいます!!」

 魔力探知レーダーに敵が写らないため、敵航空機の迎撃効率が上がらず、どうしても後手に回ってしまう。
 今まで1度も負けた事の無い神聖ミリシアル帝国海軍は、かつてない敵に焦りを感じ始めていた。
 敵は我が方の天の浮舟の位置が手に取るように解るらしく、攻撃隊はことごとく迎撃され、甚大な被害にあっている。
 戦争の技術において、初めて劣勢に立たされようとしている事を痛感する。

「対空戦闘用意!!」

 各艦の対空魔光砲にエネルギ―が充填され始める。

「エネルギー充填完了!属性振り分け完了!」

「自動呪文詠唱開始!!」

 超高速で、呪文が自動的に詠唱される。その声はあまりにも速く、人が聞くと不快以外の何物でもない。

「対空魔光砲、発射準備完了!」

 上空ではすでに、直掩隊が戦闘に入っている。
 敵、味方の機体が空中で爆発し、戦士たちはその命を空に散らす。
 やがて数機の敵が迎撃隊の隙を付いて急降下を開始した。

 対空戦闘開始!

 対空魔光砲の砲口に粒子が吸い込まれていく……一定時間経過の後、連続して光弾が空に向かい、発射された。
 各艦から一斉に打ち上げられる光弾、多くの光が空に無数の線を引く。

 グラ・バルカス帝国の急降下爆撃機が近づく音は、ドップラー効果により高音に至る。

「面舵一杯!!!」

 艦は爆弾投下の射線を外すべく、舵を切り、旋回を開始する。
 無数に投下される爆弾の雨、投下前に炎に包まれる飛行機もいれば、投下直後に炎に包まれる飛行機もいた。

「魔素展開!装甲強化!!!」

 対空魔光砲を発射しつつ、もう回避も不可能と判断したゴールド級魔導戦艦フリルラはその魔力を装甲に回す。

 タタタタタ……

 急降下爆撃機の一番前を行く敵機がフリルラに機銃掃射を浴びせる。

 ギン!という金属と金属がぶつかり、削られる音と共に機銃弾が跳弾(装甲で跳ね返され、別方向に飛んでいく)する。
 戦艦そのものにはダメージは無いが、対空魔光砲の銃座に座る兵は、その一撃で沈黙した。

 魔力が注入された魔導体を多量に含む金属は、その属性を変化させ、硬く、そして粘りを持つ。
 次の瞬間、海上に大きな爆発が出現した。

「左舷被弾!!!」

 艦橋に猛烈に響く爆発音、外の視界は赤く染まり、艦はビリビリと揺れ、内部でさえも少し熱を感じる。
 甲板の兵は相当に傷ついているだろう。

「重要区画装甲に命中した模様、小破!!」

 最も装甲の厚い部分に命中し、見た目に比べて比較的軽微な損傷に艦長は胸をなでおろした。

◆◆◆

 旗艦ロト

「戦艦フリルラ被弾、戦闘に支障なし」

 司令レッタル・カウランは胸をなでおろした。

 上空を見上げると、他空母から発艦した友軍が数を増し、高空の敵を駆逐しつつあった。

「よし、今回の攻撃は耐え凌いだな……」

 ほっと息を吐く。

「見張員より報告!10時の方向、低空より敵機多数侵入!!

「なんだとっ!!」

 味方の機はすべて上空の敵に張り付いている。
 今から急降下しても間に合うまい。

「対空魔光砲、水平射撃!」

 敵機に降り注ぐ光弾……外れた光弾は海にぶつかり、水しぶきを上げる。
 付近は雨のような攻撃と猛烈な水しぶきにより、視界を遮った。

 しかし当たらない。

「危険の多い水平爆撃か!」

 友軍の弾幕密度からして、おそらく爆弾投下前に撃墜できるはず……。

「ん?」

 敵機が艦から相当離れたところで爆弾を海に捨て、離脱を開始した。

「何をしている?」

 不可解な行動に頭を悩ます。
 ともあれ、一時的な危機は去った……?
 敵の爆弾投下地点から、何か白い航跡がこちらに向かって真っすぐに伸びて来る。
 レッタル・カウランがそれを確認した矢先、見張り員が気付いたらしく、報告があがった。

「爆弾投下地点から白い何かが伸びて来ます!海中を走っている模様!!」

 爆弾では無く、魚雷なのだがその知識のない見張員はこのように表現した。

「よ……避けろ!!」

 何かは解らない。解らないが本能的に危険を察知し、叫ぶ。
 艦は彼の感覚からして、もどかしいほどにゆっくりと回避運動を始めた。

 海を疾走する魚雷は白い航跡を引き、まるで海神の槍のごとく、真っ直ぐに伸び、神聖ミリシアル帝国海軍へと向かった。

 旗艦ロトは、なんとかそれを避ける事が出来た。
 しかし……。

 鈍い炸裂音と共に、右側を走っていたゴールド級戦艦フリルタに水柱が2本上がった。





 ゴールド級戦艦フリルラ

「白い海中の線、我が方に向かって進行中!!
 だめです、避けきれません!!!」

 艦橋は騒然となる。

「魔素を左舷に展開!!出力をすべて装甲に回せ!!!!
 総員衝撃に備えよ!」

 魔導戦艦フリルラは全魔力を左舷に集中させた。

「だめだ!!ぶつかる!!!」

 誰かが叫ぶ。
 次の瞬間、船体が僅かに振動し、左舷に水柱が上がった。
 グラ・バルカス帝国の放った魚雷は比較的装甲の弱い喫水線下で爆発、大きな破孔を開ける。

「左舷第四区画、多量の浸水!!」

「第四区画隔壁大破!」

 戦艦内には、艦の異常を知らせる警報音が鳴り響く、魚雷の攻撃を想定していなかった魔導戦艦は、外から目に見えて速度を落とす。

「本船に、白い航跡が伸びて来ます!!」

 追い打ちをかけるかのように魚雷が襲来する。
 
 神聖ミリシアル帝国、ゴールド級戦艦フリルラは、バルチスタ沖大海戦において、グラ・バルカス帝国の魚雷4発の攻撃を受け、轟沈した。
 かの攻撃は、同海戦における初の戦艦撃沈という屈辱を神聖ミリシアル帝国に与える事となった。
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第69話バルチスタ大海戦2P2


 神聖ミリシアル帝国 魔導連合艦隊 ミスリル級戦艦 旗艦ロト

 魔力探知レーダーを見ていたエルメラは、友軍機の動きに違和感を感じる。

「ん?」

 眼前のレーダー画面に敵の姿は写っていない。しかし、友軍機の動きは明らかに乱れ、やがて1つの点が大きく光って消えた。

「え!!撃墜!?」

 確か、事前の作戦説明で、敵はムーのような科学技術文明であり、人間程度の微弱な魔力しか発していないため、近距離に近づかないと探知できない可能性を指摘されていた。

「しかし……まさか……そんな!!!」

 画面を見て慌てるエルメラ、どうしても最強たる帝国の……しかも探知されていないはずの、第1次攻撃隊が空中で迎撃を受け、撃墜されたという事に納得がいかない。
 仮にレーダーの故障だったら?この現象が時々起こるレーダーに現れるノイズのようなものだったら?

 ミスリル級戦艦には最高の魔力探知レーダーが積んである。自分の報告で戦場が動く、しかし、もしも敵の侵攻だったらとんでもない事に……。
 彼女が悩んでいた時、次々とレーダー上から光点が光を放ち、消え始めた。

 エルメラは意を決し、報告しようとした矢先。

 ガタッ!

 音をたて、彼女の横にいた魔力通信士が立ち上がる。

「報告!第一次攻撃隊より入電!我、攻撃を受けつつあり!!
 繰り返す、我、攻撃を受けつつあり!!!
 100機近くの敵に襲われている模様!」

「なっ……なんだとぉ!!!!」

 初撃が必ず届くと考えていた司令レッタル・カウランはこちらの動きを悟られていた事に衝撃を受けた。
 エルメラはすぐに報告を行う。

「レーダー上の機影、動きが乱れています。すでに十数機が撃墜された模様。」

「続報入電、友軍機多数撃墜され、劣勢、敵機の撃墜未だ無し」

 無機質な魔力通信士の言葉は司令の焦りを誘う。

「部隊長カノン、応答しなくなりました。」

「レーダー上、反応すべて消えました。全滅した模様」

 絶句……。
 艦橋にも沈黙が流れた。

「まさか……まさか奴らは質において我が方の機を凌駕するというのか!!!」

 前回の戦いでは、奇襲であったという点と、数で追い込まれたという考えが主流であり、旋回性能が我が方を凌駕していた……や、加速能力において我が方を凌駕していたという報告は、負けた部隊の言い訳として、軍部で本気にしている者は少なかった。
 ただ、相手の戦力を過小評価する訳にはいかず、同等の航空戦力を有すると仮定し、本作戦は立案された。
 ここにおいて航空機の性能優勢が敵にあるかもしれないという事実に、司令は衝撃を覚える。

「参謀!どう考える!!」

 横に立つ参謀は目を閉じ、ゆっくりと口を開いた。

「おそらくは制空型の船……数の暴力でやられたのでしょう。しかし、質も高いようだ……フム……少し被害を覚悟する必要があるかもしれません。」

 司令、参謀等上層部は話を続ける。
 敵、航空機の位置が解らず、そして我が方は空で迎撃を受けるとなると、厳しい戦いが予想されていた。

 古の魔法帝国が開発していると言われる魔力を電力に変換し、その電波を照射、電波の跳ね返りを測定する事によって魔力の無い無機質な物体でも探知可能な兵器、発掘されているにも関わらず、その構造が良く理解出来ないが故に未だ試作段階にも至っていない「電探」が無い事が悔やまれる。

 彼らが今後の方針について熱い議論を交わしていた時だった。

「魔力探知レーダーに反応、微弱な信号をキャッチ、機数1、南西方向!」

 エルメラの報告とほぼ同時に、艦橋上の見張り員より同様の報告が入る。
 やがて艦隊上空に1機の飛行機械が現れた。

「……見つかってしまったか!!!」

 艦隊の位置が敵にバレてしまった。これで、敵は大量の航空機を送り込んでくることだろう。

 現れた敵機はムーの戦闘機のように前部にプロペラと呼ばれる送風機能を持つ機械が高速回転している。しかし低翼で、ムーのそれに比べて圧倒的ともいえる速度で付近を飛ぶ。

「これは……」

 レッタル・カウランは嫌な予感に包まれた。
 初めて見る敵航空機、帝国の天の浮舟に比べても遜色のない速度、しかし、旋回性能や加速性能は、明らかに最新式の天の浮舟を上回っているように思えた。

「思った以上に……これは……手こずりますぞ!!
 まさか……形まで……似ていますな」

「何に似ているというのだ?」

「神話にある、魔帝の生物兵器『魔王』に追い詰められた種族間連合を救った……太陽神の使いが使用していた「神の船」、形が似ているのです。速さも音速の半分程度とたしか伝承にはありましたな」

「神話の話か……仮に敵が太陽神の使いであろうと、神聖ミリシアル帝国は敗北せぬ!」

 横に立つ参謀は、グラ・バルカス帝国の航空機を前に冷汗を流す。
 味方機の迎撃を振り切り、飛行機械は飛び去って行った。

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第69話バルチスタ大海戦2P1

神聖ミリシアル帝国第1魔導艦隊 旗艦 ロト艦橋

 荒れる海、比較的波は高く、通常の船であれば大きく揺られる事だろう。
 しかし、世界一の超大型魔導戦艦を含む神聖ミリシアル帝国艦隊は、海を裂くかの如く揺れずに進む。

 ミスリル級魔導戦艦、旗艦ロトの艦橋から、司令レッタル・カウランは海を眺めていた。

「天の浮舟ベータ3発艦中」

 無機質な声により、報告がなされ続ける。眼前に写る先進的な空母から神聖ミリシアル帝国の剣が放たれた。

 天の浮舟ベータ3型、急降下による敵艦に対する爆撃を目的とする。
 ベータ2型に比べ、機体の大型化、翼面積の増大、エンジンの高出力化により、高威力の爆弾を搭載できるようになった。
 先進的なキャノピーに流線形の機体、しかし翼は第二次世界大戦のレシプロ戦闘機のように横に突き出ている。(後退翼ではない)

 新旧をつなぎ合わせたような機体、日本人が見たならば酷く違和感を感じるだろう。

 護衛にはアルファ3型制空戦闘機が付く。

 神聖ミリシアル帝国は世界の敵、グラ・バルカス帝国軍に格の違いを見せつけ、神罰を下すためにその剣を解き放った。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊 旗艦 グレード・アトラスター

 魔法文明が中心のこの世界から見て、異世界からの転移国家である科学文明国、グラ・バルカス帝国……。
 その技術の推移を集めた機械、他国に対して極秘とされている対空用の電波探知機(レーダー)を見ていた技官は目を丸くする。
 艦隊から北東の方向に、多数の飛行物体が画面に光点として映し出された。

「レーダーに感あり!!北東方向、10時の方向、距離200km、飛行物体多数!!これは……100機を超えています!!!」

 司令カイザルの口元が吊り上がる。
 彼は横にいた作戦参謀に話しかけた。

「見つけたか……どう考える?」

「やはり、先に落とした敵の偵察機はこちらを見つけていたようです。機数からして……空母機動部隊がいるようですな……。
 しかし、敵の位置……神の導きがあったとしか思えませぬ……第3潜水艦隊の近くです。
 迎撃機と偵察機の発艦はもちろんの事として、
第三潜水艦隊の派遣、そして相手の数が判明したならば、比較的距離も近いようなので、戦艦を中心とした打撃部隊も派遣が必要でしょうな。」

「そうだな……まずは迎撃をするとしよう。」

 風上に向かって空母艦隊が爆進する。
 グラ・バルカス帝国は迎撃と偵察のため、アンタレス型艦上戦闘機を発艦させた。



 この世界にとって、恐怖の編隊が空を進む。
 魔光呪発式空気圧縮放射エンジンの音はカン高く、時速400kmを超える空の進軍……文明圏外国家はそれを見ただけで、撤退の意志を固めるだろう。

 列強と呼ばれし国家の強軍であっても、それを止める術は無い。

 神聖ミリシアル帝国「天の浮舟」部隊長カノンは自らの操るアルファ3型制空戦闘機の中で、グラ・バルカス帝国に対する「初撃」の成功を確信していた。
 編隊の上空約100mから眺める部下たちの編隊は、一糸乱れておらず、誰が見ても練度は高いだろう。

 皇帝陛下から授かった剣、「天の浮舟」は間違いなく世界最高性能であり、彼は自信を強めていった。

「いかんいかん、先の戦いでは敵に遅れをとった部隊がいたらしいからな。」

 かれは戦に油断は禁物だと自戒する。

「ん?」

 微かに影がさす。
 今日は晴天……今飛んでいる空域は雲1つ無い……はず。

 さらにまた、一瞬影がさす。

 カノンは目を細めて太陽を見た。

「敵影!!!」

 一瞬見えた機影……急降下してくる!!!

「敵襲!!!!!!!!!!!!太陽から来るぞ!!!」

 吠えるようなエンジン音と共に、上空から下へ向かう敵が通過する……速い!!
 刀のように研ぎ澄まされた機体、ムーの戦闘機のようにプロペラが前についている。戦闘機の発するエンジン音は、高く、何かが唸っているようにも聞こえた。
 一瞬……美しいと感じてしまう。

 タタタタタタ……

 鈍い射撃音と共に、敵から光弾が放たれた。我が方に比べ、圧倒的ともいえる連射速度……しかしその弾は僅かに放物線を描く。

 飛び行く光弾は、ベータ3型爆撃機に向かって飛翔し、機体の抱える魔導爆弾に着弾、弾は魔力回路を傷つけ、内包された魔力が暴走を始める。
 制御不能に陥った魔力爆弾はその威力を開放、空中に大きな爆発が出現した。

「お……おのれ!!」

 次々と爆発するベータ3、護衛の戦闘機も攻撃を加えようとするが、旋回能力、そして加速能力が我が方を上回る。
 落ち行く飛行機……そのほとんどが……友軍!!!
 魔力通信機からは、狼狽に満ちた声が聞こえて来た。

『くそっ!後ろに回り込まれた!』

『速すぎる!!ちくしょぉぉぉ!!!』

 また1機、部下が炎に包まれる。
 魔信からは悲劇が流れ続けた。

『何て旋回性能だ!!ぐぎっ!!』

 1機が炎に包まれて雲の海に落ちる。

「も……モルアっ!!くそっ!!」

 部下のモルアは先月子供が生まれたと喜んでいた。帰ったら初めて自分の子供を抱けると……。
 奥さんに何て説明すればいいんだ!!!
 考えながらも彼は操縦レバーを動かし続けた。
 やがて照準器の中に敵を捕らえ、引き金を引く。
 通常の機銃音とは異なる、高音と共に連続して光弾が放たれた。しかし、それは敵に当たる事無く空を切る。
 圧倒的な加速力、そして旋回能力を持つ敵に彼は翻弄される。
 不意に機体が大きく揺れ、激しい振動が彼を襲う。反射的に音のした方向を見た。

「しゅ……主翼が!!!」

 片翼を失ったカノンの操る天の浮舟は、バランスを崩し、機体を回転させながら雲の海に落ちて行った。


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