2018年05月16日

第75話 迫る戦火P4


◆◆◆

 日本国 首都東京 防衛省

 連日の激務により、防衛省幹部の神経はすり減っていた。
 それでも何とか日本のために……日本国の脅威を取り除くために、彼らは激論を続ける。

「無理だ……シーレーンが長すぎる!!!
 ムー国と日本国の間の敵潜水艦の脅威を完全に取り除くのは、実質的に不可能です!!!」

「しかし、何か手を打つ必要がある。護送船団のように、護衛艦による船団護衛で往復するしか無いのでは?」

「経済界が納得しないぞ!!!」

「納得してもらうしかない!!!死ぬよりマシだろう!!!」

「待て待て、すぐに終わるならばともかく、いつまで続くか解らない作戦を行い続けるほど、兵員も艦艇数も足りていない!!
 日本近海の警戒も強める必要がある!!!」

 各人は、日本を第一とし、何が出来るのか、必死で知恵を絞る。

「待って下さい!!皆さん落ち着いて下さい。
 皆さんは防衛という部分に頭が行きすぎて、グランドデザインが出来ていませんよ」

 若手防衛省幹部、三津木が横から口を出す。
 細身の体、場の空気を読まずに発言するため、時々人をイラつかせるが、ごくまれに的確な発言をすることもあった。
 彼は続ける。

「これは陸、海、空が協力し、政府も的確に動いてくれる必要がありますが……。
 要はグラ・バルカス帝国を第2文明圏から叩きだせばいい訳ですよね?
 皆さん『防衛』に頭が行き過ぎています。
 彼らを叩きだす事は、私は比較的簡単だと考えています。

 彼に目線が集中した。
 一呼吸置き、三津木はゆっくりと、持論を展開し始めた。

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第75話 迫る戦火P3


◆◆◆

 日本国 首都東京 首相官邸

 総理大臣官邸には、各大臣と関係省庁の幹部が集められ、緊急の対策会議が開かれていた。
 司会進行約が、本件概要の説明を行う。

「以上がバルチスタ沖海戦での現時点確認されている双方の被害状況になります」

 大臣たちは、双方の艦艇と人的被害の損失に、顔が青くなる。
 仮に、自衛隊の艦艇が他国と同様に損失したならば、国内の動揺は計り知れないだろう。
 
 今回の海戦で、神聖ミリシアル帝国に至っては、空中戦艦というSF的な兵器を投入していたにも関わらず撃沈されているため、基本的に軍事に疎い各大臣たちの動揺は大きかった。

「現在確認されているグラ・バルカス帝国の残存海軍ですが……」

 進行役が、単純に確認されている艦艇数、推定される総トン数、そして作戦機数を読み上げていく。
 単純な「数」だけでは驚くほどの戦力差があり、動揺はさらに大きくなった。

「防衛大臣、日本はグラ・バルカス帝国が本格的に侵攻して来たとして、守り切れるのかね?」

 説明を遮り、たまりかねた農林水産大臣が質問した。

「現時点で……現時点において、グラ・バルカス帝国が攻めて来たとして、日本国を守れるか、これについてはかなり余裕をもって守れると断言できます。
 ただ、地球史の発展を元に推定した場合、40年、50年後に守れるかというと、相手の数によっては苦戦を強いられるため、判断に苦しみます」

 多少の安堵の空気が場に流れる。
 いずれにせよ、グラ・バルカス帝国との戦争は、可能な限り早く終息させなければならない。
 
 一通りのバルチスタ沖海戦の説明の後、ムー国の要望、近況について報告が始まった。

「現在ムーの北西、国境の町アルー西側約25kmの位置に、グラ・バルカス帝国陸軍が集結しつつあります。
 ただ、防衛省の分析では直ちに侵攻が行われるものではなく、どちらかと言うと基地を作っている……航空兵力、そして陸上侵攻のための基地を建設中かと考えています。
 第2次世界大戦時の文明レベル、そしてデータから予想される現在の兵力では、ムー国を侵攻するには少なすぎます。
 ただ、この位置はムー国の街アルーに火砲が届く距離であり、ムーからの火砲は基地に届かないという距離にあるため、アルーの街に限っては、時間をかければ少数兵力で落とすことも可能でしょう」

「ムーは本件に関し、本格侵攻の準備と捉え、日本国政府に対してグラ・バルカス帝国を第2文明圏から叩きだす効果的な軍事支援を求めています」

 経済産業大臣が手を挙げ、質問を始める。

「ムーは独力で自国防衛が可能でしょうか?防衛省としてはどう考えますか?」

「無理です。技術水準が違いすぎます」

「と……とんでもない事です!!!現在の好景気は、ムーが各国から集めた富を、自国の発展のために日本製品を買いまくっているからに他なりません。
 圧倒的な技術格差を生かし、言い値で買ってくれており、さらにムー国が各国に用意した空港も格安で使わせてもらっている。
 各国に整備された空港も、無料でジェット機発着可能な状態にするために拡張工事すら行ってくれているというサービスの良さ、言うまでも無いが、ムーは最も重要な友好国の一つです!!!
 今、もしもムーを失えば、転移直後のような金融混乱と大恐慌が生じます。
 すぐに!!ムーを助けるために自衛隊を派遣するべきです!!!」

「簡単に言わないでいただきたい!!!
 法整備も追いついていないし、何より……自衛隊の装備は守るには強いが、攻めるのはとても弱い。
 補給が無ければ戦えないのです。
 どうやって2万km以上先に展開する、しかも陸軍を国から叩きだすのですか?空爆が効果的とはいえ、陸軍を蹴散らすには至りませんぞ。
 想定の1つとして、隊の派遣とグラ・バルカス帝国軍の効果的排除は、案を考えるように下命しますが、今すぐにというのは装備の面から考えても無理がありすぎると私は考えます」

「しかし、それをやるのがプロだろう!!!
 どのみちムーが落ちるとグラ・バルカス帝国は大陸を手に入れる。
 国力を増し、神聖ミリシアル帝国に戦いを挑み、もしも勝ってしまえば日本国は重大な脅威に晒されます」

 多少の物量差ならば技術でカバーできるだろう。
 しかし、圧倒的すぎる物量差は核でも使用しない限り、決して埋まるものではなかった。

「出来る事と出来ない事がある事は理解していただきたい!!!
 現実は物語のようにはいかないのだ!!!」
 
 議論は白熱し、場はざわつく。
 内閣総理大臣が手を挙げると、場が静まった。

「防衛大臣、私は無理な事をしろとは言わない。
 しかし、グラ・バルカス帝国からは、ムーのみではなく、我が国も宣戦布告を受けている。
 現在は経済的な脅威程度でも、放っておけば必ず大きな脅威となるだろう。
 各国との連携も含め、何が出来るのか……知恵を絞ってほしい」

「……解りました」

「しかし、海外派遣となると、反対する者達も多く出て来るでしょうな」

「パーパルディア皇国戦後、世論は大分海外派遣に理解を示すようになりましたが、やはり自衛隊員の命が明確な危険にさらされる可能性があるのだから、明確な理由が必要です」

 ガタッ!!!

 若手外交官職員が、ドアを強く開けて駆け込んで来た。
 また頭の痛くなるような案件が増えるであろう事は、容易に想像できた。

「会議中失礼します!!!
 先ほど入った情報によりますと、ムー国東側約300kmの海上で、自動車運搬中の日本国籍の貨物船が消息を絶ちました。
 消息を絶つ寸前に、救難信号と、航空機から攻撃を受けているという無線を傍受しており、現在詳細確認中です」

「くそっ!!」

「なんて事だっ!!!」

「やれやれ……休ませてはくれないようだな……。
 詳細な報が入りしだい、記者会見を行う。
 防衛大臣!!先ほどの話は少し急いでくれたまえ」

「解りました」

 戦火は飛び火する……日本国政府は、国家と国民を守るため、最大限の努力を行うのだった。

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第75話 迫る戦火P2


 グラ・バルカス帝国 第2潜水艦隊所属 第24番艦 E-400 搭載機  試作型水上戦闘機

 アンタレス型艦上戦闘機をベースに翼を折りたたみ式に改良し、水上フロートを付けた試作型水上戦闘機……。
 グラ・バルカス帝国の大型潜水艦E-400の格納庫に収納されていたそれは、水上で翼を広げ、哨戒のために飛び立っていた。
 日本人の少しだけ旧軍に詳しい者が見たならば、二式水上戦闘機のように見えるだろう。(二式水上戦闘機に翼を折りたたむ機構は無い)

「クックック……見つけたぞ!!」

 パイロットであるアストルは舌なめずりをする。
 彼は昔を思い出す。
 帝国飛行隊を目指し、パイロット試験に合格した日は誇らしかった。
 きっと自分は空母機動部隊に配属され、帝国の世界制覇のため、異界の空を縦横無尽に駆け回る、天翔ける戦士となる。そう思っていた。
 
 しかし、自分が配属されたのは、アンタレス型に比べ、鈍足な試作型水上戦闘機、しかも潜水艦から単機で飛び立って索敵するという地味すぎる仕事だった。
 彼は、ストレスと、敵を倒すという実績に飢えていた。
 白地に赤丸の旗を掲げる船、敵国日本国の船に間違いは無いだろう。

 迅速的確に母艦に現在地の報告を行い、攻撃にうつる。
 初の実戦に、血が沸騰するかのような興奮を覚える。

「……大きいな……」

 敵の商船は、帝国の商船に比べてもかなり大きく、先進的な形にも見えた。
 通常は、商船に対して攻撃する事を嫌がる者もいる。しかし、彼はワクワクしながら攻撃に移った。
 
 ブーーン!!
 
 甲高い音が付近にこだまする。
 船にいる者からすると、その音はドップラー効果によりさらに高音に聞こえる事だろう。

 風を切り、飛行機は急降下していく……。
 急角度で海に向かって進む航空機……彼は、胴体に設置してあった2発の60s爆弾を投下した。
 何度も練習した成果は着実に現れ、爆弾2発は一直線に商船に向けて吸い込まれていった。

 試作型水上戦闘機から投下された、2発の爆弾は、屋根を突き破り、内部でその威力を開放、満載されていた車などを吹き飛ばし、ガソリンタンク内のガソリンに引火する。
 一度着いた火は次々と延焼を起こし、船は短期間の間に大きな煙に包まれた。



 自動車運搬船 船内

「もはやこれまでか!!総員退避!!!」
 
 各車にある程度のガソリンを積んでいたため、火の回りが早く、船からはもうれつな煙が噴き上げている。
 抗する武器ももちろんなく、鈍足な商船は飛行機から逃げる術も無い。
 ムーは戦闘機を離陸させてくれたらしいが、決して間に合わないだろう。

「くそっ!!何で非戦闘員を攻撃するんだ!!!卑怯者め!!!」

 空飛ぶ敵に悪態をつく船員がいる。

「つべこべ言わずに、さっさと救難ボートの準備をしやがれ!!!」

 悪態をついていた船員に激が飛ぶ。
 船長は、ふと嫌な予感に囚われた。
 救難ボートは攻撃して来ないだろうな……。

 ここは地球では無い。戦乱渦巻く異世界……。
 パーパルディア皇国は、フェン王国で日本人観光客を容赦なく殺した。
 自分達の常識が通用するような場所ではない。増して、グラ・バルカス帝国からは宣戦布告を受けている。
 そう、今は戦時なのだ……。
 ここはグラ・バルカス帝国の勢力圏内ではなく、安全と聞いていた。
 そう、自衛隊の非戦闘地域よりも安全な、政府が指定した区域であり、問題が無いとも聞いていた。
 しかしどうだ!?今自分たちは明確な攻撃を受け、救難ボートで脱出しなければ、煙に巻かれて死んでしまう。
 
 考える暇は無かった。
 彼らは複数の救難ボードを使い、脱出を試みる。
 



 短期間で燃え広がる船を見たアストル。

「……モロイ船だな……ん!?」

 炎と煙に覆われた船から、何か鮮やかな色の小さな船が広げられ、人が乗って海へと落ちる。
 脱出装置により、船から船員が脱出を試みているようだった。

「フハハハハ、逃げるのかい?逃さないよ……敵前逃亡は死刑だよぉ」

 軍人では無いため、敵前逃亡のなにもないのだが、アストルはつぶやき、再び急降下を開始した。
 鮮やかな色の目標物を照準器の中心に持ってくる。
 後は指を1本動かすだけで、多くの命が消える。

「フフフ」

 彼は狂人のように、笑いながら、容赦なく引き金を引いた。

 タタタタタ……。

 曳光弾を交えて発射された7.7mm機銃は、一直線に救難ボートに吸い込まれていく。
 ボートがはじけると同時に、海が赤く染まった。

「アハハハハ!!面白い!!面白いよ!!!」

 一度上昇する。
 他の救難ボートからは、恐怖に染まった形相で、こちらを見上げる顔も見える。
 再び急降下を開始し、1隻、また1隻と、救難ボートを撃つ。

 次々と赤く染まる救難ボート。

「ん!?」

 救難ボートから、海へと飛び込み、泳いで逃げようとしている者もいた。
 その動きから、必死に泳いでいることは理解できる。

「僕から逃げれると思っているのかい!?」

 再度上昇し、海へと機銃掃射し、逃げていた者の付近が赤くなった。

「ハハハ、弱い国に生まれた事を嘆くのだな……おっと、ムーが来たか……」

 空に先に、砂粒ほどの小さな点が複数確認できた。

 機銃の残弾は少なく、アストルは反転して、ムーの戦闘機を引き離した。
 
 自動車運搬船イカイクルーザーはこの日、グラ・バルカス帝国の航空機によって炎上させられた。
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