2018年06月27日

第78話終わりの始まりP1

ムー国 国境の町アルー

 少し高原に位置する国境の町アルー。
 この高原には平野部が多いが、町はやや小高い丘に作られている。
 近代戦では用がなくなった古い城壁の外側は、丈の低い草が生え、所々土がむき出しになっていた。
 小高い丘の上部にわずかにある森、その中に設置された砲兵陣地で、2人の兵が話をしていた。

「なあ、聞いたか?グラ・バルカス帝国とムーが衝突した場合、このアルーが最前線になるらしいぜ」

 同僚の発するこの言葉に、砲兵アーツ・セイは身震いする。

 突如としてムー大陸の西から現れたグラ・バルカス帝国
 周辺国家を瞬く間に制圧し、列強レイフォルをも打ち破る。
 それでも、ムー国は余裕を持って対応していた……しかし、神聖ミリシアル帝国カルトアルパス沖合において、ムー国の誇る最新鋭艦隊が、壊滅的な打撃を受ける。
 軍部に激震が走った。

 さらに、神聖ミリシアル帝国さえも参加した世界連合とグラ・バルカス帝国の戦い。
 神聖ミリシアル帝国と、ムー国は……世界1位と2位の強国の意地とプライドをかけて戦った。
 しかし、結果は痛み分け……神聖ミリシアル帝国に至っては、古の魔法帝国の超兵器を投入したが、それさえも撃沈されたと聞く。
 軍上層部は絶望的な技術格差を埋めようと、躍起になっているらしい。
 一般兵の間では、自分が戦わなくてはならず、伝説的な強さを誇るグラ・バルカス帝国は恐怖の対象となっていた。

「敵は強いだろう……それでも……アルーの民の守護者は我々だ!!砲兵として、絶対に敵に当ててやる!!!
 いかに敵が強いと言えど、同じ人間だ。
 砲が当たれば必ず死ぬし、陸上で砲が通じぬ武器など、あるわけがない!!!」

「でもな……この前日本国の本が、ムーでも販売されていたが、戦車と呼ばれる、装甲を持った車みたいなのが、砲をつけているという変な兵器が日本にはあるらしい。
 この装甲は、ムーの放つ砲をはじくほどに強いらしいぞ。
 カルトアルパス沖海戦で、グラ・バルカス帝国に日本の巡洋艦は撃沈された。
 帝国は日本よりも強力な可能性があると言うことだ。
 ……もしも、戦車と呼ばれる兵器、敵が投入してたら……」

 砲兵たちは、戦う意思を固めながらも、まもなく来るであろう圧倒的ともいえる敵の影におびえるのだった。

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2018年06月21日

第77話迫る戦火3P4


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国領 レイフォル地区 東側 帝国陸軍第8旅団

 空は晴れ渡り、雲が所々に見える。
 空気は少しだけ肌寒い。

 ムー国の国境の町、アルー西側約30kmに位置するグラ・バルカス帝国陸軍の、最前線基地、バルクルスで、帝国陸軍の砲兵部隊が整然と並ぶ。
 先には第4師団の戦車隊がエンジンをかけ、いつでも出撃出来る状態となっていた。
 また、陸軍航空隊は、新設された飛行場から発進し、上空で旋回、戦闘準備を完了していた。
 そう、グラ・バルカス帝国は、今、ムーへの侵攻を開始しようとしていた。
 軍が整然と並ぶ壮観な風景を眺めながら、帝国陸軍第8旅団長のガオグゲルは、部下の第4師団長ボーグと話をしていた。

「ボーグ君、帝国陸軍は強い」

「はっ、その通りであります!!!」

「その中でも、君の第4師団は飛び抜けて強い、君たちにかかる期待は大きいぞ!!」

「ははっ!!帝国最新鋭の戦車を主体とした機械化師団であります。最前線は、戦車で突破し、ムー国陸軍など、あっさりと撃破して見せます!!」

「通達では、日本国も参戦する可能性があると言っているが……日本国の強さは未知数だがな……」

「日本国は、ムー国に陸軍を送ろうとしているらしいのですが、まだ準備が出来ていないと伺っています。
 どちらにせよ、『戦力を放棄』すると憲法で詠っているような軟弱な国の陸軍など、恐れるに足りません!! 
 仮に敵対したならば、我が最新の機械化師団であっさりと滅してみせましょうぞ!!」

「時にボーグ君、君の師団では、兵にストレスがたまっていないか?」

「ははっ!!皇帝陛下のため、士気は極めて高いのですが、やはり望郷の念から、精神的にストレスが高いのも事実でありますが、我が軍は屈強です。
 それは肉体に止まらず、精神面でも屈強でありますのでご心配には及びません」

「ボーグ君、兵の精神衛生は、強さに直結するのだよ。少し考えを改めたまえ。
 今回の、ムー侵攻作戦では、多数のムー国民の難民が出るだろう。
 君たちが敵国人を、どう扱おうが、私は全くとがめるつもりはない」

「……はっ!?」

 ガオグゲルの発言が理解出来ずに固まるボーグ。
 ガオグゲルは小さな声で発言した。

「ここには前世界のような戦時国際法などない。略奪を一切咎めないと言っているのだよ」

 ボーグの顔がにやける。
 ガオグゲルも、ゲスのような顔を浮かべた。
 

 外務省が入手したとされる日本国の情報は、軍上層部に的確に伝えられた。
 万が一を考慮し、軍はムー侵攻部隊を増強したが、内心それはよくある欺瞞情報であると判断していた。
 この時、グラ・バルカス帝国陸軍に、日本国が脅威であると感じる者は一人もいなかった。

「さあ、殺戮の宴をはじめようか……この瞬間、私が一言声を発すれば、多くの者の人生が終わるこの決定権……たまらんな……」

 彼は小さくつぶやいた。

「……攻撃開始」

「てーーーっ!!!」

 最前線基地バルクルス前に設置された、榴弾砲、平和に暮らそうとするムー国人を時刻にたたき落とす業火が火を噴く。

 この日、グラ・バルカス帝国は、ムー国国境アルーの街に砲撃を開始、侵攻を開始した。
 
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posted by くみちゃん at 22:38| Comment(1177) | 小説

第77話迫る戦火3P3


◆◆◆

 神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス 謁見の間

 異様な空気の中、厳しい顔を崩さない皇帝ミリシアル。
 その前には4人の男がひれ伏していた。

 皇帝の怒りが彼らに伝わり、4人の額にはびっしりと汗がにじむ。

 世界最強の名の元、各国に呼びかけ、中央世界と第2文明圏の大艦隊を率いて出撃した。
 それでも十分すぎる戦力だった……が……念には念を入れる皇帝ミリシアルの指示の元、古の魔法帝国が作りし超兵器、空中戦艦パル・キマイラまで投入、しかし……にもかからわず、戦闘は痛み分けで終わり、グラ・バルカス帝国を叩きだすといった、戦略目標も未達に終わる。
 外交的に考え、この結果は帝国の国益を大きく損なうだろう。

 国防長官アグラ
 軍務大臣シュミールパオ
 対魔帝対策省兵器分析戦術運用部長ヒルカネ・パルぺ
 そして、グラ・バルカス帝国と直接対峙した空中戦艦パル・キマイラ艦長メテオス、彼らは怒れる皇帝を前に、言葉を失っていた。

「……今後の計画を申せ」

 皇帝の思い言葉……。
 国防長官アグラは思考を巡らす。

 軍事的に立て直し、グラ・バルカス帝国を滅した後、外交的にも失いかけている信頼を取り戻すための具体的対策……。

 現時点では、まだ失った兵や艦の損失穴埋めや、敵の兵器性能の再考が終わっておらず、とても今後の具体策など決定してはいなかった。

 それでも、「解りません」などと、口が裂けても言える状況にも立場にも無く、国防長官アグラは声を絞り出す。

「当面は……この度就役する新型魔導戦艦を兵力の充填にあて、失った兵補填、人事面も含めての兵力の早期育成に努め、兵力が再び揃うまでの間は、本土防衛に徹します。軍事予算を効率的に配し……」

「たわけがっ!!!」

 皇帝の怒号が謁見の間に響き渡る。
 あまりの迫力に、国防長官アグラは固まった。

「敵の戦力は再考が必要だ。現有戦力では足りぬ事くらいは理解しておる!!
 新造戦艦で穴埋めだと?自分の仕事の範疇だけで考えるな!!!余に、艦船の大幅な量産体制の確立を上申するするなど、そういった話が何故出ないのか!!
 お前たちは国の幹部だ!!!
 国の幹部が皇帝の顔色を伺いすぎると、本来の国家運営に支障を来す可能性がある。
 お前たちは、帝国臣民の命、そして行く末を導く立場にあるのだと、よくよく理解しろ!!!」

 ビリビリと部屋に響く。
 
「……ところで、アグラ、日本国から、面白い提案がなされたぞ。日本の事は知っているか?」

「日本国は……魔法を使用しない科学技術立国ですね?」

「そうだ……グラ・バルカス帝国もそうだがな」

 皇帝ミリシアルは続ける。

「日本国は、グラ・バルカス帝国を第2文明圏からたたき出すために、我が国にも艦隊派遣の要請をしてきたぞ」

 沈黙……パーパルディア皇国を下したとはいえ、文明圏外の国家にいったい何が出来るというのか、確かに科学技術は高い水準にあると聞いている。
 しかし、カルトアルパス沖での海戦結果を見るに、海戦では、対空性能以外に特筆すべきところは無い。
 日本国ではグラ・バルカス帝国には決して勝てないだろう。
 もはや、文明圏外や、第3文明圏……いや、世界第2位のムー国でさえも通用しない領域の戦いなのだ。
 そう思いながら、アグラは返答する。

「……現在戦力は相当に減少しており、立て直している途中です。
 敵の強さの詳細が判明するまで、大規模戦力の派遣は延期するべきであると考えます」

「もちろん、大規模艦隊は送らない。
 だが、世界最強たる我が国が、何もしない訳にはいくまい。
 しかも……だ。
 詳細資料は後で渡すよう外務省に指示しているが、今回の派遣で、レイフォル近辺のグラ・バルカス帝国艦隊を撃滅する役は日本国が引き受けるそうだぞ?
 我が国は、撃滅後の海上封鎖を行えばよいとな」

「陛下……仮に、日本国が敵を撃滅したとしても、海上封鎖中にグラ・バルカス帝国本国より艦隊が来る可能性もございます。
 万が一にでも、日本国の行う作戦が成功したとして、海上封鎖にもやはり大規模な艦隊が必要です。」

「仮に……絶対的な制空権と制海権があれば……どうだ?」

「?それならば、少数の艦艇……地方隊でも任務を遂行出来るでしょう。
 ムーの艦隊のレベルでも可能です」

「日本国は、制空権と、制海権をとった後、小規模でも良いから長期間張り付く事の出来る艦隊を派遣してきてほしいと申しておるらしいぞ?」

 一同は困惑する。
 
「陛下……恐れながら、日本国は先の戦いに参加しておりません。
 戦いの次元を理解していない可能性すらあります。
 一度、軍の者が戦いの詳細と、敵兵器の推定性能について、教示する必要があるかと考えます」

「フフフ……余は、本戦いに地方隊を参加させたいと考えている」

「!!!」

 皇帝の正気とは思えない言葉に、一同は絶句する。

「日本国は、グラ・バルカス帝国の艦船、航空機の推定性能を我が方に伝えてきたぞ。
 おおむね、私の考えとも近い。
 そして、おそらくこの性能が正しければ、今回の軍の被害も納得がいく。
 それを知った上で、日本国のみでグラ・バルカス帝国海軍をたたき出すと申したのだ。
 単体でたたき出すため、安全になった後に海上封鎖作戦を行ってほしいとな。
 だが、帝国がそんな恥ずかしい真似を出来るわけがない!!
 しかし、正直現在、急に大規模な艦隊を派遣出来る準備はない。本土防衛もあるでな」
 
 話は続く。

「日本国は、魔帝の作りし『僕の星』のような人工衛星とよばれるものを、空力の届かぬ星々の世界に浮かべたと聞く。
 余は彼らの力を見てみたい。
 来たるべき魔帝との戦闘に、彼らが本当に役に立つのか……見極める必要がある」

 しかし、仮に日本国の強さが、彼ら自身が言うよりも遙かに弱かった場合、派遣された地方隊は生け贄となってしまう。
 アグラは言葉を飲み込んだ。

「アグラよ、旧式魔導戦艦を主体とした地方隊を派遣せよ。
 日本国に同行させるのだ。ああ、足の速い戦闘艦もきちんと混在させるようにな。
 ……今回の作戦は、日本国が失敗すれば、隊は全滅するだろう。
 日頃から問題のある者を集めれば、たとえ失敗したとしても、人事上のゴミが消えて良いだろう?
 ただし、日本国の動向、戦力を正確に分析する必要があるため、武官は目の利く者、正確な分析が出来る者を派遣せよ」

 話し合いは終わる。
 
 神聖ミリシアル帝国は、日本国を主体とし、旧レイフォル沖合に展開する、グラ・バルカス帝国海軍殲滅作戦に参加する事を決定した。
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posted by くみちゃん at 22:36| Comment(49) | 小説