2018年06月21日

第77話迫る戦火3P2


「ク……クックック……フフフ……フハハハハ!!!」

 ダラスが笑い始めた。

「……何がおかしい?」

「フッフッフ……ふざけた事を!!こんな映像……偽情報など、簡単に作れるわ!!!」

 ダラスは、この映像を欺瞞情報と理解したようだった。

「現に、日本国巡洋艦は、戦艦の主砲により、たったの1撃で沈んでいる」

「あれは、軍艦では無いと、何度も伝えたが?」

「フン、貴様らは映像技術だけは高いようだな……。
 仮にこの映像が本当だったとして、貴様らは過去戦争に負けて、牙を抜かれたのではないのか?
我が国が支配者側ならば、必ずそうする。
 すべての軍備と軍事技術を取り上げ、二度と立ち上がれないようにする。
 現に、昔は世界有数の軍隊を持っていたらしいが、現在は憲法で戦力を保持しないと書いているそうではないか。
 軍に関する技術を禁じ、作れなくなる、ロストテクノロジ―とする事で、もう二度と作れない事となる。
 確かに、映像等一部技術は帝国を上回っているところもあるだろう。
 しかし仮に、日本国が帝国を上回る軍事技術を有するならば、バルチスタ沖海戦に参加しなかった理由の説明がつかぬのだよ。
 もしも、貴国が強いならば、世界連合を勝利に導けば、他国からの株も上がり、帝国を弱体化させる事も出来たはずだ。
 でもそれをしなかった。
 強いならば、貴国の行動は合理的ではないのだよ。
 ムーを攻めるなだと?
 日本国も参加するだと?
 弱小国が偉そうだな……出来るものなら、止めてみるがよい。
 今までのお前たちの行動が……お前たちが弱いと証明しているのだ!!」

 ダラスは言い放つ。

「自分達とは異なる価値観を持っているとは想像しないのか?
 真に平和を愛し、戦争以外の外交によって共に和する。
 共存の道を探る国があるとは思わないのか?
 なるべくならば、武力を使いたくない国もある。
 しかし……我が国も、自国、そして同盟国を守る義務がある!!
 帝国の行いは、完全に侵略だ!!
 無法者には……我が国も自衛行為を行うだろう」

 議論は平行線をたどる。
 互いに譲れない外交目標があるため、互いに納得する事はない。
 ひと時の沈黙……。
 その場で聞いていたシエリアが口を開いた。

「ダラス、帝国の意見、立場を良く表明した。貴君の言う通りだ。
 ここから先は私が話そう。
 ちょっと下がっていてくれ」

「なっ!!!いくらシエリア様とはいえ、本件担当は私です!!!私にはグラ・ルークス様より賜った、帝国を導くお手伝い、職務を全うする義務があります!!」

 グラ・ルークスを妄信的に信じているダラスは、シエリアの命に反発する。

「解っている……しかし、上司の言う事を聞くのも職務だ。
 挑発だけではこれ以上何も引き出せぬ、少し下がっていてくれ」

「ぐっ!!わ……解りました」

 困惑するダラスをよそに、シエリアはゆっくりと話始めた。

「仮に……先ほど貴国が見せた映像技術が本物で、貴国の軍事技術が……仮に我が国を上回っているとして、貴国が我々に求める事は何だ?」

「海上保安庁員に対して処刑した者……責任者の引き渡しと同遺族に対する賠償、そして第2文明圏からの完全撤退だ」

「帝国はすでに第2文明圏に入植を開始している。
 利害の絡む者もいよう。
 貴国は、帝国がその条件を飲むと思っているのか?」

「……私が思う思わないは、どうでもいい事だ。
 我が国の意志は先ほど伝えたとおりだ」

 朝田は続ける。

「良く考えてほしい。
 一部技術は帝国を凌駕している、それはあなた方にも共通した認識だと思う。
 で、あるならば、軍事技術も遥かに上である可能性があるという事を、よく考えてほしい。
 技術が上で、圧倒的格差があった時、帝国が被るダメージを、良くよく検討してほしい。
 我が国を知り、自らの意志で戦闘を回避できたなら、あなた方は自らを救う事となる。
 決して破滅の引き金を引かぬよう、良くよく検討するべきだ」

「……今回の会議は、軍の上層部にも届くよう計らおう」

 会議はその後も、平行線を辿った後に終わる。

 シエリアとダラスの報告は、東部方面に展開する軍上層部に伝えられた。

 が……「もしかしたら強いかもしれない」程度の情報で、帝王の指示が覆る訳も無く、侵攻準備は進む。

多くの帝国軍人は、この情報を一笑に付した。ただし、『仕事として』ムーを攻める陸上兵力及び基地の規模は、万が一日本軍が強く、参戦した場合の可能性も考え、予定よりも増強され、帝国はさらに準備期間を要する事となる。
 敵兵力は増えるが、「ある程度」の時間は稼ぐ事が出来、外交は一定の成果を上げた。
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 22:35| Comment(11) | 小説

第77話迫る戦火3P1

 映像を流すためには、テレビ局で大掛かりな装置を使い、大きなテープにそれを記録し、再生にももちろん大きなサイズの機材を要する。

 それが、赤ちゃんの手よりも小さいサイズのカード状の装置に記録され、劇的に薄いテレビが再生機能も備えているなど、グラ・バルカス帝国では考えられない事だった。
 帝国においては、VHS(ビデオテープ)ですら遥か未来の技術であるため、この圧倒的に小さい映像再生装置にシエリアは、驚愕する。

 一方、同席していたダラスは、文系出身の人間であり、この技術格差に気付いていないようであった。

 映像が流され始める。

『グラ・バルカス帝国のみなさん、これから日本国について、説明をいたします』

 ナレーションが始まり、映像が流され始めた。

 見た事が無いほどの美しい……自国のはるか先を行く精細な解像度と色鮮やかな映像……。
 まずは日本国の自然について解説が始まった。
 四季により変化する色合いを見せる日本国の自然、美しかった。
 
 映像は神話、日本国の成り立ち、2度に渡る蒙古襲来、戦国時代と、時を追って進む。

 やがて、映像はカラー画像から彼らの見慣れた白黒画像となり、70年前の大戦争……第二次世界大戦の映像が流れ始めた。

「ば……そんなバカな!!!はっ!!」

 思わず声の漏れるダラス。
 映像には……グレードアトラスターに酷似した戦艦が写っていた。
(戦艦よりも航空機の方が優勢となる)
 といった情報は上手く遮断され、映像は続く。

 アンタレス型戦闘機に酷似した機体が、猛烈な対空砲火、正に光の雨とも言える、とてつもない弾幕をかいくぐり、爆弾を抱えたまま空母に突っ込む。
 己1人の命と引き換えに、より多くの敵を倒す。
 まさに必死の戦闘。
 あまりにもすさまじい「意志」を感じる戦闘に、彼らは釘付けとなった。

 絶望的な沖縄戦……。
 そして敗戦……(原爆の投下シーンは、技術のヒントを与えてはならないので、カットされた)

 更地だった東京都は、たったの30年で復活し、70年後には……帝都ラグナを超えるのではないかと思えるほど、超未来的な発展を遂げる。

 街には帝国を遥かに上回る量、そして質の高い車が行き交い、鉄道は時速300kmと、比較にならないほどの速さで走る。
 映像が終わった時、シエリアは汗でびっしょりと濡れていた。
 朝田は畳みかける。

「現在……グラ・バルカス帝国軍は、ムーとの国境の町、アルー西側約30kmの位置に、基地を作りつつありますよね?
 我々の「技術」ですでに把握をしています。
 決してアルーに……ムー国に侵攻する事が無いよう、上の方々にしっかりと伝えていただきたい。
 日本国は同盟国、ムーを守るために、本格的に参戦する準備がある。
 重ねて申し上げる。
 あなた方の技術はすでに、我々が70年前に通過した場所だ。
 70年もの技術格差がどういったものか、あなた方でも理解して頂けるだろう。
 帝国が……ムーへの侵略を開始した時、グラ・バルカス帝国の……終わりの始まりとなるだろう」

 ある程度技術に精通しているシエリアは、絶句する。
 まだ、日本国の全体の規模や国力、継続戦闘能力は解らない。
 しかし、もしも映像が真実であった場合、少なくともこれまでのように簡単に勝てる相手ではないという事を理解した。
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 22:34| Comment(14) | 小説

2018年06月18日

第76話迫る戦火2P4


 そのテレビはグラ・バルカス帝国人の見慣れた大きい箱、小さい画面、白黒で、画質の悪いテレビに比べ、厚さが無いのではないかというほどに薄く、故に最初彼らはそれがテレビだとは気づかなかった。

「これより、日本国についてまとめた簡単な映像を見ていただきます」

 朝田の説明により、会議に同席していたシエリアが、テレビだと気付く。

「そ……それはテレビか?」

「ええ、そうですよ」

「……電源の規格が会わないのではないか?」

「これは電池を内蔵しているので、ご心配無く」

「本国から中継するつもりか?大型機械の持ち込みは許可されていないはずだが」

「いえ、データの映像を見てもらうだけです。
 これにデータは入っていますので」

 朝田はシエリアにSDカードを見せた。

「!!!」

 絶句―。

 朝田は黙々と、準備を進めるのだった。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 22:38| Comment(432) | 小説