2018年08月23日

第81話駆け抜ける衝撃P4


◆◆◆

 空に溶け込むような機体……この世界にあらざる速度でそれは飛ぶ。
 青い迷彩用の模様が施された「それ」は、グラ・バルカス帝国航空機の及ばざる空域、海抜高度17000mを飛ぶ。
 事前にジャミング(電子妨害)を行っているため、おそらく帝国の迎撃は無いだろうと予想されたが、第2次世界大戦レベルの対空砲火を持つ国相手にパイロット達は緊張に包まれていた。
 機内に響く轟音の中に、自分の息が混じる……荒くなっているのだろう。
 
 敵の航空戦力を一時不能に陥れるため、F−2戦闘機15機は飛ぶ。
 見た目はアメリカのF−16に酷似しているが、中身の全く異なる戦闘機F−2……開発当初は支援戦闘機(海外におけるジャンルは戦闘爆撃機)と呼ばれ、現在は単にF−2戦闘機と呼ばれる。
 対艦攻撃に特化した機体であるが、制空戦闘もこなす優秀な戦闘機でもあった。

「まもなく、爆弾投下地点か……」

 パイロットはつぶやく。
 現在は無線封鎖で飛行中であった。
  
「3.2.1投下!!」

 パーパルディア皇国戦後、精密誘導兵器の不足を痛感した日本国政府は、積極的に誘導兵器の量産を行った。

 帝国を破滅に導く一撃……自機の放つレーザーの反射波を捕らえ、そこに向かって正確に投下される誘導爆弾(LJDAM)は、F−2戦闘機を離れ、眼下にあるグラ・バルカス帝国最前線基地、バルクルスへ向かい、落下していくのだった。
 


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第81話駆け抜ける衝撃P3


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 最前線基地バルクルス 航空作戦司令室

「何が……何が起こった!!!」

 パースの額からは、汗がこぼれ落ちる。
 突如としてレーダースクリーンの一部、第1次攻撃隊付近が飛行しているあたりが真っ白になった。
 レーダーの故障では無く、一部のみという部分が金属片を撒く等の、何らかの妨害を受けている恐れがあると判断された。

 文明レベルの低い国から電波妨害など、あり得ないと考えていたが、まもなく司令部を恐怖に陥れる無線が飛んでくる。

『……撃を受けつつあり、攻撃を……り……速い……本国の戦闘……は日本国……全滅に………』

 程なくして、レーダーは正常に作動し始めたが、レーダースクリーン上に、友軍機を示すはずの光点は無かった。

「第1次攻撃隊は、空洞山脈上空でレーダーの反応が全て消失しました」

 悲痛な声で、軍幹部が報告してくる。
 栄えあるグラ・バルカス帝国陸軍航空隊が全滅など、あってはならない事だった。
 文明圏外のワイバーンと呼ばれる航空戦力を粉砕し、ワイバーンロードと呼ばれる品種改良型も敵では無く、世界第2位と呼ばれる国の空軍も、我が国に手も足も出なかった。

 この世界において、世界第1位と呼ばれる神聖ミリシアル帝国の戦闘機でさえも、性能的には我が国のアンタレス型戦闘機には遠く及ばないと聞いている。

 にも関わらず……栄えある陸軍第1次攻撃隊が、全滅……損耗○%ではなく、全滅である。

「し……信じられるか!!!」

 思わず漏れ出る声……。

「ま……まさか……神聖ミリシアル帝国が、空中戦艦を繰り出したのか?」

 噂には聞いている。
 神聖ミリシアル帝国の空中戦艦……海軍航空隊が、多大な被害を被ったらしい。
 仮にそれが相手であれば、もしかすると全滅もあり得るのかもしれない。

「いえ、神聖ミリシアル帝国の空中戦艦が相手だとしても、無線によりどんな敵で、どんな攻撃をしてくるか、等の報告くらいは出来るはずです。
 今回の攻撃隊は、無線を入れる間も無く全滅した……何かが起こっているとしか思えません。
 レーダー上の、妨害も無線に影響を与えるのかもしれません」

 何が起こっているのかが理解できない。
 未知への恐怖が司令室に蔓延する。

「いずれにせよ、敵の正体が判明するまで、第2次攻撃隊の出撃は控えるべきであると、進言します!」

「そ……そんな事、そんな事が出来るか!!!これは陸上部隊と連携した攻撃なのだぞ!!
 ある程度の空爆で、敵の戦力を削がねば……それに制空権は絶対に必要だ!!
 敵に制空権を奪われた状態で、陸上部隊を送るとどれほどの被害になるか……」

 パースの頭はフル回転する。

「基地への攻撃の可能性もある。
 直掩の戦闘機を、30機ほど上げよ!!」

「はっ!!!」

「第2次攻撃隊は……出撃可能状態でしばらくの間待機、続いて……」

「ほ……報告いたします!!!レーダースクリーンが!!!」

 部下が、パースの命令を遮って報告を行う。
 明らかな緊急事態。

「どうした!!!」

 パースがレーダーをのぞき込む。
 スクリーンは、真っ白になり、何も写っていなかった……自身が発するレーダーの軌跡さえも……。

「ま……まずい!!速く戦闘機を上げろ!!!攻撃が来るぞ!!!」

 確かな攻撃の予感、パースは吼える。

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第81話駆け抜ける衝撃P2


◆◆◆
 
 ムー国 リュウセイ基地南側 上空

 ムーでは見慣れぬ航空機が空を飛ぶ。
 双発のプロペラを回転させ、飛行機の上には円盤状の物体が取り付けてある。
 この世界にあらざる性能を誇る3次元レーダーは、旧レイフォル地区に建設された、グラ・バルカス帝国の基地バルクルスから、多数の航空機が離陸していく様をとらえていた。

「すげぇ……なんて数だ!!」

 総勢80機を超える大編隊……現代戦では見ることの出来ない量の編隊が、レーダースクリーンに映し出される。
 ロウリア王国戦や、パーパルディア皇国戦を経験した隊員であれば、それほど驚く事も無かっただろうが、レーダーを監視していた隊員にとって、それは初めての実戦だった。
 進路から考えるに、おそらく敵の侵攻目標は、大陸南北を結ぶ大動脈がある駅、キールセキの街だと推測される。

 E−2Cホークアイが得たデータは適切にリュウセイ基地に伝達された。

 リュウセイ基地

 けたたましくブザーが鳴り響く。
 敵の侵攻が近い事を察知していた航空自衛隊は、F−15戦闘機12機、F−2戦闘機15機の出撃準備をすでに整えていた。
 滑走路に向かい、ゆっくりと戦闘機が地を走る。
 データはすでにムー国空軍にも伝えられており、彼らもまた、自国を守るために離陸の準備をはじめていた。

 ムー国の誇る最新鋭戦闘機 マリンのパイロット、パーテリム……滑走路に向かう日本国の戦闘機が彼の視界に入る。

「ぬ?日本軍も動き始めたか!!!助力はありがたいが貴君らの出番は無い!!」

 ベテランパイロットである彼は、ムー国用に設置されている滑走路に出る。
 出力を全開にし、プロペラは回転を強める。
 体が椅子に押しつけられた。
 
「ムー国は……儂が守る!!!」

 グラ・バルカス帝国……噂には聞いている。
 とてつもない強さを誇る、異界の軍、しかし人一倍愛国心が強く、士気の高いパーテリムは、ムー国の技術の結晶であるマリンに信頼をおいており、遅れをとる事など微塵も考えていなかった。

 マリンは順調に加速し、離陸した。

「侵略者どもへの今日の一番槍は、儂がもらうぞ!!!」

 室内にはエンジン音が吹き荒れ、機体に当たる合成風は、室内を轟音にする。
 そのときだった。

 ゴォォォォォォオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーー

 彼の後ろから、日本軍の機が追い抜いた後に、急角度で上昇していく。
 その上昇角度は、今まで彼が見たことも無い角度であり、その速度も圧倒的だった。

「ば……バカな!!化け物か!?……次元が違いすぎる!!」

 彼の機とは明らかに次元の異なる速度を出したそれは、後ろから2本の炎を発しながら、透き通るような青空……上空に消えた。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 キールセキ第1次攻撃隊

 大山脈の上空を、無機質な物体が飛ぶ……総勢85機にも及ぶ、キールセキ第1次攻撃隊……機体の発する重厚な音は、付近に響き渡り、不気味な雰囲気を醸し出す。
 アンタレス型戦闘機19機、シリウス型爆撃機41機、ベガ型双発爆撃機25機で構成された爆撃隊は、順調にキールセキに向け、進路をとっていた。
 眼下には空洞山脈に引っかかった雲が、雲海を形成していた。

 アンタレス型戦闘機、小隊長のスペースは、周囲を監視する。
 相手は、世界第2位の列強だの、文明圏だの言っているが、はっきり言って弱い。
 おそらくは問題なく爆撃し、問題なく基地に帰還する事が出来るだろう。
 
 対空砲は脅威のため、主に下を気にしていた……そのとき……。
 一瞬左前の下空を飛行していた編隊あたりが、強く光った。

「ん?」

 何が起こったのか、一瞬考え、顔を上げる。

「なっ!!!」

 それを目視すると同時に、彼の耳に爆音が飛び込んでくる。
 猛烈な爆発と共に、ベガ型双発爆撃機は四散し、雲の海に燃えながら落下する。

 急に無線が慌ただしくなった。

『なっ!!何が起こった』

『解らん!!』

『周囲を警戒し……ぐぎゃっ!!』

 何が起こったのか、全く理解出来ない。
 次から次へと友軍機が爆発をはじめる、あっさりと訪れるダース単位の死に、編隊は恐慌状態に陥った。
 編隊が乱れる。

 日本国航空自衛隊F−15J改(MSIP改修機)戦闘機12機から発射された中距離空対空誘導弾(AAM−4)計48発は、正確に飛翔し、グラ・バルカス帝国軍に襲いかかる。
 巡航ミサイルでさえも迎撃可能な国産ミサイル、AAM−4は1発が飛翔中に不具合を起こしたが、ほか47発は、正確に狙った機体に着弾した。

「ばっ!!ばかな!!敵は何処から攻撃している!!」

 何が起こっているのか、理解が追いつかない。
 ただ眼前に広がる光景は、次から次へと爆散し、炎の雨を降らす友軍の姿……。
 
 国産ミサイルは、発射直後はともかく、終末誘導は白い軌跡すらミサイルから出ず、その速さもマッハ4から5に及ぶため、目視出来ない。

 編隊は崩れ、正体不明の攻撃から逃げるため、各航空機は各々の方向へ飛んでいった。
 攻撃は爆撃機だけではなく、アンタレス型戦闘機に対しても例外無く及ぶ。

「うおぉぉぉぉ!!!」

 スペースは、見通しの良い高空にいるのは危険であると判断し、反転急降下を開始していた。
 後方では、爆発が続き、多くの命が空で失われる。
 雲海の下は、どうなっているのか、全く解らない……しかし、このまま飛ぶと確実に
攻撃にさらされるため、彼は雲海に突入した。

「うおっ!!」

 雲海を抜けると、下は僅かな空間の後、空洞山脈となっていた。

「あ……あそこを抜けるしかない!!!」

 このままでは地上にぶつかる!!彼の頭はフル回転をはじめる。
 すでに垂直に近い急降下体勢をとっていた彼は、機首を持ち上げながら、空洞山脈の上に伸びた1本の石を……まるでトンネルをくぐるかのように抜ける。
 直後……。

 ズガァァァン!

 さっき彼が崩れた場所……空洞山脈の柱に敵の正体不明の攻撃が当たったようだった。
 振り向くと、石の柱は、爆発と共に崩れ落ちていた。

「あ……危なかった……俺たちはいったい何と戦っているんだ!!」

 一度は恐怖した彼だったが、攻撃をかわした後、編隊に合流すべく、雲海に向かって上昇を開始した。

 
 機内にいても音が伝わるほどの爆音が、時折聞こえ、炎の塊が山へ落ちていく……雲海に近づくにつれ、雷鳴の如き轟きも聞こえるようになってきた。
 無線機からも、悲鳴か報告か良く解らないような声が聞こえていた。混乱しているのだろう。

「帝国軍を子供扱いするとは……何者だ」

 スペースは恐怖と戦いながら、自分の職務を全うするため、上昇し、やがて雲海を抜けた。

「な……なんだ!?あれは!!!」

 帝国が誇るアンタレス型戦闘機……そして、多くの高性能爆撃機は、前世界においても、そして今世界にあっても、圧倒的な戦力を誇っていた。
 高出力エンジンから繰り出される速さは敵を寄せ付けず、猛烈な旋回能力は他の機体を圧倒して来た。
 眼前の友軍は決して弱く無く、間違いなく強軍である。

 強軍であるはずの友軍が……圧倒的機体性能と、地獄のような訓練で得られた練度を誇る友軍が、まるでお前たちの存在は無力であると突き付けられたかのように、火だるまとなり、雲海に落ちる。

 1機や2機ではない。
 連続して炎に包まれて撃墜される。

 そして、友軍の速度を遥かに上回り、信じられないような速度で、飛び回る正体不明の敵がそこにあった。
 鏃のような尖った機体、後ろに向かって伸びた羽、後退翼を持ち、機体にはプロペラが存在しない。
 飛翔速度は途轍もないの一言であり、もはや次元が違うとしか表現のしようが無かった。

 残存しているアンタレス型戦闘機は、敵機を撃墜しようと敵の方向に機首を向けているが、速度差がありすぎ、あっさりと撃墜される。

「あ……あれか!!」

 味方機を撃墜したロケットのような兵器……、友軍機は回避しようとしていたが、明らかに味方機に向きを変えて突入していた。
 敵から放たれた機銃も、とてつもない射程距離と威力があるようで、友軍爆撃機をバラバラに粉砕する。

「し……信じられん!!このままでは帝国は……はっ!!」

 機体に控えめに描かれた赤色の丸、周りに僅かに白い円が描かれる。
 
「こ……このマークは……日本軍かっ!!!」

 グラ・バルカス帝国が宣戦布告した日本国、同じ転移国家にしてムー国の同盟国、大した戦力は存在しないとされてきた。
 しかし、彼の目に映った日本国との戦力比はとんでもない開きがある。
 しかも、目に映る範囲の敵は、たったの10機弱……たった10機弱に、85機の友軍は、全滅に近い被害を受ける。
 絶望的な兵器の性能差。

 このまま戦争を進めると、帝国は多大なダメージを被る。直感した彼はすぐに無線を手にとった。

『司令部!!司令部!!我、攻撃を受けつつあり!!我、攻撃を受けつつあり、敵はとてつもなく速い!!
 日本国の戦闘機!!敵は日本国!!!
 全滅に近い……がぁっ!!』

 スペースが報告中、空に光りの線が走る。
 F−15が放った20mm機関砲が、アンタレス型戦闘機右翼をかすめる。
 翼の先は消滅し、機体は右翼から炎を吹きながら回転をはじめる。

 スペースの操るアンタレス型戦闘機は、再び雲海に回転しながら落ちていった。


「ぐうぅぅぅ!!落ちぬ!!落ちぬぞ!!!」

 回転し続ける機体、空力の一部を失った右翼が原因で、機は大きく振動する。
 右翼からは、炎が吹き出ていた。
 妻と、小学生になったばかりの子供の顔が、脳裏に浮かんだ。

「死んで……死んでたまるか!!!」

 必死に機を制御する。右翼のエルロンが動かない……左翼のエルロン、ラダー、エレベータを駆使し、ようやく機は水平飛行に移る事が出来た。

『司令部!司令部!!くっ!!』

 彼が無線機を操ろうとしても、壊れたのか、無線機が全く動かなくなっていた。
 彼は、燃料が気になりながらも、基地に帰投すべく、全神経を集中するのだった。

 
 グラ・バルカス帝国軍 キールセキ第1次攻撃隊85機は、空洞山脈上空において、日本国航空自衛隊F−15戦闘機の12機の迎撃を受け、全滅した。

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