2019年06月08日

第93話 暗躍するリームP5

 
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 中央世界東側海域

 多数の航跡が海を行く。仮に敵国の監視員がそれを見た場合、「海が見えない」そう表現することが正しいだろう。
 グラ・バルカス帝国の海軍史上においても最大とも言える大艦隊が異界を東へ進む。

 のんびりと海に浮かんでいた海鳥たちはその行軍に怯え、すぐに海域を立ち去った。

 近代の異世界史上においても最強、日本国にとってはかつての沖縄戦に参加した米軍に匹敵する大艦隊。

 グラ・バルカス帝国日本侵攻艦隊は、日本国の都市を滅するため、進軍するのだった。


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第93話 暗躍するリームP4


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 リーム王国 王都ヒルキガ

 王の執務室において、リーム王国国王 バンクス は満足そうに書類に目を通していた。
「フハハ……これでリーム王国も安泰か、日本がどうなろうと知ったことではないが、グラ・バルカス帝国ほどの国に敵対するとは……哀れでもあるな」

 静かな執務室、不意にドアの外から、微かに声が聞こえた。

「ええい、どけ、緊急事態だ!!」

「しかし、陛下の本日の予定にキルタナ様のご訪問は入っていません」

「国の行く末がかかっているのだ!!どけ」

 ドアがノックされ、総務を任せている王都諸侯の1人、キルタナが入室してくる。
 顔は汗にまみれていた。

「陛下、急な訪問をお許し下さい。しかし、時間をおいて精査した後の報告で、国の舵取りを誤ってもならぬので、急遽参りました」

 キルタナの表情から、急ぎの事態が発生したと推測出来た。

「どうした?」

「実は、本日朝連絡が2件入りました。
 1件はグラ・バルカス帝国から、かねてより整備していた港に、1ヶ月後、駆逐艦52隻と補給艦12隻を入港させると……」

「ほう?実務者協議でも決定していたあれか?もう協議は終わり、いつ来るかの問題であったろう?
 飛び地の港を最大限活用すれば、それくらいは収容出来るだろう」

「は、しかし帝国からは、帝国から港までの経路に関してはリーム王国に供与し、港においてグラ・バルカス帝国への返還を受けるとありまする」

「どういうことだ?」

「つまり、グラ・バルカス帝国から我が国までは我が国の国旗を掲げ、リーム王国内においてグラ・バルカス帝国へ返還、再びグラ・バルカス帝国の国旗を掲げるという意味ございます」

「道中の安全確保か、良いのでは無いか?神聖ミリシアル帝国に狙われたら、駆逐艦という艦種なら被害を受けるだろうからな。
 しかし、少ないの。もっと来ると思ったが……まさか、港の掌握はリームだけではないのか?」

「解りませぬが、数が少ないのには何か考えがあるのでございましょう。しかし、問題はもう一つの魔信でございます」

「何だ?」

「神聖ミリシアル帝国より魔信が入りました」

 キルタナは、魔信を見せる。

 文書番号 神聖外3文大第 12545号
 神聖ミリシアル帝国外務省第3文明圏文明国対応部 大陸国家課

 貴国が先日行ったグラ・バルカス帝国艦艇を受け入れの選択に是正を求める。
 攻撃用、親善訪問用という振り分けは詭弁である。
 万が一貴国に親善訪問したグラ・バルカス帝国艦艇が帰国する事無く他国を攻撃した場合、グラ・バルカス帝国の同盟国と判断し、神聖ミリシアル帝国は貴国に宣戦を布告する。 
「なっ!!なっ!!なっ!!!」
 
 国王バンクスの理解が追いつかない。
 中央世界、神聖ミリシアル帝国といえば、グラ・バルカス帝国ほどでは無いが、近い国力を持つとてつもない国家。
 グラ・バルカス帝国出現前は明らかに世界一であった。
 しかも、グラ・バルカス帝国よりも遙かに我が国に近い。
 
「陛下、神聖ミリシアル帝国は日本国のように甘くはありませぬ。
 第3文明圏文明国を滅ぼす事など、造作も無く、今まで滅ぼされた国もとてつもない量に上ります。
 一度敵と認定されると、商船であろうが、艦船であろうが、どんどんと撃沈され、神聖ミリシアル帝国、いや、中央世界内で行商を行っている王国の民はすべて拘束されます」

 放心状態となる国王バンクス
 神聖ミリシアル帝国は、他国へ対する影響力もとてつもないものであった。

「陛下、神聖ミリシアル帝国が本格的に手を回してくるとなると、非常にまずい。グラ・バルカス帝国の来港をご再考出来ませんか?」

「む……無理だ……我が国の国旗を掲げていても、帝国の航空基地は我が国の中にあるのだぞ!!
 今反対したら、奴らはこの王城を簡単に破壊するだろう」

「では軍で制圧を……」

「現実的に勝てると思うか?相手はあのパーパルディアが全盛期だった頃を遙かに上回る相手なのだ……もう、このまま行くしか無い。
 神聖ミリシアルの艦隊も、帝国が進駐していると簡単には手を出して来まい。
 そして奴らもグラ・バルカス帝国との大海戦で疲弊している。
 数年は手が出せないはずだ!!」

 リーム国王は眠れぬ夜を過ごすのだった。

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第93話 暗躍するリームP3


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 日本国 防衛省

 防衛省に勤務する鈴目は、いつものように偵察衛星が撮影した画像を注視していた。
 最近のグラ・バルカス帝国の駆逐艦建造速度と、タンカーの軽空母への改装能力は目を見張るものがある。
 しかし、生産設備の位置はすでに突き止め、量産された船達が集まる港も把握した。

 グラ・バルカス帝国本国海軍基地及び、レイフォルに駐留する大艦隊の監視、いつもの仕事、画像を確認する。

「ん??」

 いつも写っているはずの物が、そこには無かった。
 何度も見直すが、見つからない。

「こ……これは!!!ついに動き出したか!!!」

 報告はすぐに上へ駆け上がり、即日内閣総理大臣まで上がった。


 日本国 首都 東京 首相官邸 緊急閣僚会議

 緊急に開かれた閣僚会議、各大臣が並び、国の行く末を決定づける会議が行われていた。 概要を、防衛省幹部が説明する。

「昨日未明、グラ・バルカス帝国内の各基地から空母機動部隊の出港が確認されました。
 また、レイフォルに展開する艦艇もその大半が消えています。
 事前に準備も確認されていましたので……満を持して出港した模様です」

「……何処へ向かっている?」

「東へ向かっている模様ですが、現在地までは特定に至っておりません!!」

「数は?」

「艦艇総数は相当数に上ります。西側に展開中の艦隊も動員した模様で、消えた艦艇がすべて攻撃に参加した場合、軽空母も含めて空母98、戦艦23、巡洋艦74,駆逐艦828、補給艦不明、リームへ供用されたとされる爆撃機、航空機も含めるならば、空母の想定搭載機数からして航空機は全1620機に上ります。
 大戦力です。」

 絶句……。
 グラ・バルカス帝国はリームへ供用という名目の元、自国の兵で爆撃機、航空機を運用し、リーム王国内に基地を建造していた。
 名目のみのリーム王国軍であり、実質グラ・バルカス帝国軍が掌握している。

「待て!!前回に報告のあった敵の想定艦艇数を上回っているぞ!!いったい何があったのだ!!」

 総理大臣は、過去に報告のあったグラ・バルカス帝国の予想される侵攻艦艇数を遙かに上回る戦力に戦慄する。

「第2次世界大戦中のアメリカのように、タンカーを無理矢理短期間で空母に改造したようですので、防御力は低く、足は遅いと推定されます。
 また、駆逐艦は大量に量産しており、信じられないような速度で増えていきます。
 世界会議から相当日数も経っているため、これほどの大戦力まで拡大した模様です」

 戦時体制に入ったグラ・バルカス帝国は改造空母を大量に量産し、駆逐艦も大量に量産していた。
 その総戦力は、当初の想定を遙かに上回る。

「来るのか!!」

「防衛省では日本国への攻撃を想定しています」

「くっ!!それほどの大艦隊……防げるのか?」

 圧倒的とも言える数の暴力。
 技術格差はあるとはいえ、日本国の誇る護衛艦の艦艇数はそれに比べて酷く少なく感じる。

「この時のために我らは存在したといっても過言ではありません。必ず防ぎきります」

「意気込みは良いが、現実問題どうなのだ?」

 護衛艦の対艦ミサイル発射筒の改良はまだ間に合っていない。
 正直とてつもない物量差、不安が無いとは言えなかった。

 白ひげを生やし、眼光鋭い総務大臣が不意に立ち上がる。
 視線が集中した後、ゆっくりと話し出す。

「衛るのだ。我が国転移後初の本格的な軍事的危機といっても過言ではない!!
 この戦力……かつての沖縄戦に参加したアメリカ軍と同程度か。
 先の大戦、70年前の侵攻では沖縄は落ちた。住民達は地獄を見た。
 しかし、我々には70年の長きにわたり、培った技術がある。
 決して日本国民を……1人たりとも敵の手によって死なせてはならぬ!!!
 国難のこの時、今こそ団結すべき時である」

 総務大臣は総理大臣へ向く。

「総理、よもやこのような国難に、兵器使用制限などと発言はせぬな?」

 ……。

「当然だ!!」

 大きな声はビリビリと響き渡る。普段は温和な総理大臣が意を決し、語気を強めた。
 静まりかえる首相官邸、総理は力強く話し始める。

「武器の使用制限は行わない。陸・海・空3自衛隊にあっては、その持てる力すべてをもって、日本国を防衛せよ!!
 各関係機関は全面的に自衛隊に協力するよう関係省庁に通達、全国力をもって日本を守り抜くぞ!!」

「はっ!!!」

 日本国政府は、迫り来る大きな敵に立ち向かうため、全力で働く。


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