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グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 特殊殲滅作戦部
「カイザル将軍から直々に、超重爆撃連隊の出動要請がまいりました」
執務室で、幹部職員が作戦部長アーリ・トリガーに報告する。
「ほう??何故今頃……」
超重爆撃連隊……その歴史は新しく、この世界に転移する直前に発足した。
敵の戦闘機の届かぬ超航空から敵本土を爆撃する。
無誘導弾の爆弾を大量にばらまくため、戦略目標への爆撃というよりは、都市そのものの殲滅爆撃。
大規模無差別爆撃に使用される。
新型重爆撃機グティマウン……帝国で量産され始めた新型機関をエンジンが使用される。
少し旧軍に詳しい日本人がグティマウンを見たならば、第2次世界大戦中に日本軍が計画した幻の超重爆撃機「富嶽」に見える事だろう。
空気をエンジン内に強制的に送り込む過給器は空気の薄い上空で燃焼不良によるエンジン出力の低下を防ぐ効果がある。
通常の戦闘機では上がれぬ超高空を飛行する事が可能になった。
防弾装備が施された大型爆撃機に6発のエンジンを取り付け、帝国の戦闘機ですら届かぬ航空を飛行して爆弾の雨を敵基地に降らす。
その航続距離は極めて長く、帝国内でも「空の要塞」の異名を持つ。
超高空から落とす殲滅爆撃。神聖ミリシアル帝国の空中戦艦対策としても、考えられていた。
同新型重爆撃機は、特殊殲滅作戦部にのみ配備されていた。
帝国の皇太子殿下、グラ・カバルが日本国によって身柄を拘束されるという前代未聞の事態。
当初は連合艦隊派遣前に、超重爆撃連隊で1つ都市を灰にしてしまおうという案が出た
。
しかし、リーム王国やその他の国での空港燃料整備状況が見えなかった事と、整備された後は陸軍航空隊の爆撃のみでも十分に効果が発揮出来そうな事、そして戦艦による威圧効果を考慮し、無理に虎の子の部隊が参加することは無いと立ち消えになっていた。
「司令、どうされますか?」
カイザル将軍が発案し、海軍本部を経由してきた命令ならば聞かざるを得ないだろう。
ただ、報告文の一部に日本国は誘導弾を使用し戦闘の際は十分に注意が必要だとある。
「艦隊はどの程度の被害が出たのだ?」
「まだ作戦途中であり、軍秘にあたるので情報は来ていません」
「ふーむ……誘導弾の射程距離、そして到達高度、推進方式。そして誘導方式。
未知だらけだな」
「はっ……」
「有視界飛行で誘導弾を撃ったのか、それとも見えぬ距離から撃ったのか。それだけでも知りたい。情報を集めてくれ。
国をあげた作戦。行かぬ訳にはいかんだろう」
「はっ!!超重爆撃連隊は、ユグドにおいても無敵でした。
今回も見事日本国の都市を殲滅爆撃してきてくれる事でしょう。
日本国を攻撃する場合、出発後、ダールミラ、レイフォル、チエイズで補給を行い、リームへ到達、その後陸軍航空隊、53隻の駆逐艦隊、82隻のリーム王国魔導戦列艦隊による攻撃と呼応して日本国の都市、名古屋を目指します」
「ほう?要請は首都ではないのか?」
「はい、首都近辺は防空も厚いでしょうし、名古屋は日本国の技術都市……ダメージも大きい。そして、なにより……空爆は艦砲射撃に対して精度が悪いためです」
「万が一にでもカバル殿下を我が特殊殲滅作戦部が攻撃してしまっては、確実に左遷されるからな。
名古屋攻撃、良い案だ」
グラ・バルカス帝国 特殊殲滅作戦部 超重爆撃連隊は、日本国攻撃に参加する事を決定した。
posted by くみちゃん at 21:05|
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