ムー国の中では南方に位置するハット空軍基地。
日本国は航空自衛隊をムー国に派遣していたが、他国の領域すべてをカバー出来る訳ではなく、首都から遠く離れたこの基地に彼らはいない。
ビー・ビー・ビー
空軍基地に異様な電子音が鳴り響く。
パイロットたちは迅速に自分たちの信頼する愛機に向かって走り出だした。
空軍基地内には、女性の声で緊迫した放送が鳴り響く。
『至急・至急……グラ・バルカス帝国軍が本基地方向に向かって進行中。距離203km、機数212、各機は至急離陸、帝国機の迎撃にあたれ!!』
走り出したパイロット達は、愛機に飛び込み、すぐさま駐機してあるマリン型戦闘機のプロペラが回り始める。
加速する戦闘機は、透き通る青空へ離陸していく。
「頼むぞ、迎撃してくれ!!」
航空管制室で、基地司令イエローは飛び立つ友軍を見る。
編隊を組んで颯爽と飛び立つ様子……力強い。
日本国の技術書を参考に作られたムー国誇る最新捜索レーダーにより、200km以上も先で敵航空機を捕らえた。
今更ながら、レーダーの有用性には驚かされる。
「これより高度を測定します」
捜索レーダーにより捕らえた方位に、高度を図るレーダーを照射する。
これにより、高度を測定出来ることから、3次元レーダーと同じ役割をこなすことが出来るようになった。
ゆっくりとレーダー装置が敵の方向を向く。
ムー国のレーダーは初歩の機械式であるため、日本の技師が見たならばあまりにも時間がかかり、もどかしくも感じるだろう。
日本国が使用しているフェイズドアレイレーダー……電波の位相変化により全方位を瞬間的に測定する方式は、遙か未来の技術であった。
「高度測定開始……っっ!!」
ムー国のレーダーがグラ・バルカス帝国の機体を捕らえる。
……絶句。
「ど……どうした!!!」
「高度、速度算出完了。高度……14000m、速度……時速700km以上!!」
「な……なにっ!!化け物かっ!!!」
マリンの実用上昇限度、いや、最大上昇記録を大きく上回り、速度も遙かに超える。
いくら迎撃機を上げたところで全く届かない。
そして、現存するムーの高射砲も全く届かないような超高空だった。
「なんてことだ!!」
圧倒的な技術差、迫りくる絶望、基地司令イエローの脳裏には一方的に破壊される基地の姿が浮かぶ。
攻撃を回避出来ぬと悟ったハット空軍基地は蜂の巣をつついたような騒ぎになったが、
帝国の航空機は眼中に無いと言わんばかりに彼らの基地上空を通過していった。
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