2020年05月15日

第101話 日本海海戦P5

◆◆◆

 日本海 夜

 漆黒の闇の中、超低空をこの世界の常識においては在らざる速度でそれは飛ぶ。
 日本国航空自衛隊 F-2戦闘機15機。
 各戦闘機にはそれぞれ4発の空対艦誘導弾(ASM-2)が取りつけられてる。
 攻撃隊の遙か後方では、半径800km以上をカバーすると言われるE-767空中早期警戒機(AWACS)が飛行していた。

 グラ・バルカス帝国海軍第44任務部隊は44隻はリーム王国領海を出る。
 
『攻撃開始!!攻撃開始!!!』

 対艦番長とも揶揄されるF-2戦闘機から、対艦誘導弾が切り離される。
 ミサイルのターボジェットエンジンに灯が灯った。
 射程距離170kmを超えるとされる93式空対艦誘導弾(ASM-2)60発は、敵艦隊
を滅するため、西の空へ飛翔していった。

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第101話 日本海海戦P4

◆◆◆
 
 日本国 首都 東京 防衛省 深夜

「グラ・バルカス帝国が動きます」

 緊迫した雰囲気、防衛省のとある一室で、待機中の幹部達が話をしていた。

「しかし、グラ・バルカス帝国には驚かされる。
 今回日本に向かった爆撃機……衛星写真によれば幻の超重爆撃機、富嶽ですよ。
 しかも200機以上、通常機ならともかく、あんなものを大量に作ってよく国が傾かないですね。
 普通は国が傾きそうなものですが」

 技術開発には金がかかる、若手幹部が帝国の開発力、そして運用資金に舌を巻く。

「お前は防衛以外は知らないようだな。平時の発想だ。
 グラ・バルカス帝国も転移国家、そして前世界ではそのほとんどを支配していたという。 国土の広大さから考えて、国力は第2次世界大戦時代のアメリカ以上と思って良い。
 第2次世界大戦時代、アメリカはB-29を3600機以上生産し、マリアナ諸島を中心に2000機以上配備したのだ。
 名古屋大空襲の時も、一回の攻撃で310機以上の爆撃機を投入している。
 敵の爆撃機はB-29よりも一回り大きい、が、量産に入れば劇的な費用差は生まれない。
 200機の投入は、国力から考えると特段驚くべき事では無い。
 その程度で国が傾くだと?その辺の弱小国家と同一に考えるな」

「しかし、富嶽クラスはB-29と大きさも技術水準も違います。
 金がより多くかかるはずです」

「日本とグラ・バルカス帝国の技術格差は地球基準で70年と言われている。
 仮に、奴らの技術が想定以上に進んでいたとしたら?
 十年の誤差は国力を大きく増大させる。
 技術に誤差があれば、国力も大きく変わる。
 アメリカのB-52は富嶽を遙かに超える能力を持つが、700機以上生産されたぞ。
 その程度の機数、大国には問題は無い。
 単純な数だけでは比べられないが、過去にパンデミックが世界規模で起こった時、日本国政府は補正予算100兆円を出した。
 仮にこれが戦争で、防衛費に当てたとしたら……100兆そのうちのたったの5%、5兆円を戦闘機配備に回したら、F-15が500機買える事になる。
 日頃防衛費が少ないからピンとこないかもしれんが、国がその気になれば、大した額では無いのだ」

 若手幹部は黙る。
 
「問題は、富嶽クラスを200機投入してきたことでは無く、想定される現代のグラ・バルカス帝国の技術水準を遙かに超えると思われる航空機がどうやって登場したのかだ」
 
「今までは前線に旧式機を投入していただけではないでしょうか?」

「その可能性は否定できないが、人工衛星で型の異なった航空機は現在まで確認できていない。
 技術の隔絶したものが何で出てきたかが問題だな」

 会話中にデスクの電話が鳴った。

「帝国が行動を開始しました」 

「雑談は中止だ。作戦室に移動する」

◆◆◆

 防衛作戦司令室には、多くの幹部が詰めていた。
 戦時状況はリアルタイムで集中的に意思決定機関に集められる。

「リーム王国艦隊は、北西から来るようです。
 グラ・バルカス帝国の艦隊50隻も、リーム王国を出撃し、我が国へ向かっています」

「リーム王国領海を出るのは?」

「あと1時間ほどでリーム領海を出ます。敵駆逐艦隊については、F-2戦闘機15機が初撃を担当します」

 F-2戦闘機は、小さな機体に対艦誘導弾を4発搭載し、450ノーチカルマイルもの航続距離を誇る。
 初撃で終わる可能性すらあった。

「日本国へ向かうグラ・バルカス帝国艦隊については、リーム領海を出た瞬間に航空機による対艦誘導弾の飽和攻撃を実施し、これを殲滅する。
 第2、第3護衛隊群については日本海に張り付き、海、空から敵の侵攻に備える」

「陸自についても日本海側への配置は完了しています」

「リーム王国海軍が邪魔だな」

「竜母艦隊であるため、海保にも荷が重い。しかし、ミサイルを使うにはもったいない」

「位置は……なんとかなるか。
 リーム王国海軍には、BP-3C哨戒爆撃機により、竜母を撃沈、その後舞鶴地方隊と、大湊地方隊のミサイル艇で対応せよ。
 撃ち漏らした場合のみ護衛隊群で対応」

「了解!!なお、海上保安庁にあっても後方、街の近くに配備するとの事です」
 
「敵航空機はまだ出ていないか?」

「はい」

「決して見逃すなよ。
 敵航空機を発見した場合、海上ですべてを終わらせる。
 決して日本本土上空に入れてはならない。
 出撃した後は、一気に基地までたたくぞ」

「了解!」

 日本国 防衛省は、全力での防衛を決意するのだった。

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第101話 日本海海戦P3


◆◆◆

 リーム王国 王城 夜
 
「リバル大将軍閣下、グラ・バルカス帝国の我が国に対する非礼の極み、先ほどの会議は聞くに堪えませんでした!!」

「そうです!!我らの力を低く評価しすぎている!!何様かっ!!それほどまでに彼らは偉く、そして強いというのですかっ!!」

 帝国の日本本土侵攻作戦に参加していた若手幹部が耐えかねてリバル大将軍に訴える。 中には怒りでワナワナと震えながら訴える者もいた。

「お前たちは国外勤務経験が無いからわからんのだ。神聖ミリシアル帝国率いる世界連合艦隊……とてつもない戦力で、仮にパーパルディア皇国の全盛期と彼らが戦っていたら、一瞬でパーパルディアは全軍を失うほど強力な戦力だった。
 それを、グラ・バルカス帝国はただの1国で退けたのだぞ。
 確かに、戦力外通告や、我が国への非礼の極みは聞くに堪えない。
 しかし、我が国はそれを覆す力も無いのだ。
 はっきり言うと2択だったのだ。
 日本へ付くか……グラ・バルカス帝国へ付くか。
 私は冷静に分析した結果、グラ・バルカス帝国が圧勝し、世界の覇者になると考えた。
 国を守るために、何度も何度も考察した結果だ。
 今は……今は耐えてくれ」

「しっしかし!!!」

「確かに日本は強い。パーパルディア皇国を降した強さ……圧倒的とも言える。
 しかし、砲撃の精度は日本が上であるものの、砲の威力、防御力、数共にグラ・バルカス帝国が圧倒している。
 日本に味方し、国滅ぼされるのを座して待つ訳にはいかない。
 解ってくれ。
 ちなみに、お前たちが未舗装の800m級滑走路を作ろうとした場合、何日で出来る?」

「え?滑走路でありますか?
 帝国基地のような舗装をしなくて良いのであれば、3000人を投入し、1ヶ月あれば作り上げれるでしょう」

「そう、800m級なら練度の高いリーム王国人ならば1ヶ月で作り上げる事が出来る。
 我が国の高い土木技術が成せる技であり、他国では不可能だろう」

「それが何か?」

「グラ・バルカス帝国はな……重機と呼ばれる機械を13機投入し、3日で作り上げる事が出来るぞ」

「なっ!!!た……たったの3日で??」

「そう、たったの3日だ。
 だから、帝国は各国に脅しをかけ、準備期間に借り上げた空き地に滑走路をどんどんと作り上げた。
 グラ・バルカス帝国と、神聖ミリシアル帝国共に中立を保っている国は多々ある。
 彼らは中立国の土地を借り上げ、勝手に滑走路を作る。
 中立国としては土地を貸しているだけであり、滑走路には目を瞑る。
 他国に公表されていないグラ・バルカス帝国の滑走路、補給基地は多々あるのだ。
 この圧倒的国力、補給の力こそが、奴らの強さを支えている。
 彼らはその気になれば、滑走路を経由してどんどんと空からの戦力を前線まで投入できる力があるのだ」

 若手幹部は帝国の本当の力に戦慄した。

「リバル大将軍閣下……国を思い、行動して下さる閣下の思いを知らず、生意気な事を言って申し訳ありませんでした」

 幹部はリバルの国思う気持ちに涙を流す。
 
「良い……明日の今頃国は勝利に沸き立っていることだろう。
 ただ、お前たちには……日本国との戦い、そしてパーパルディア皇国とも戦うという重大な作戦を任せる事になってしまった。」

 大きな犠牲を科すこととなってしまい、リバルは申し訳ない気持ちになる。

「構いません。我らがリーム王国の誇り、日本国とパーパルディア皇国に見せつけてやりましょうぞ!!」

 それぞれの思いを乗せて、夜は更けていく。


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第101話 日本海海戦P2


「竜母以外のリーム王国竜騎士団は、パーパルディアの港に停泊中の日本船舶の攻撃にでも行ってくれ。
 また、パーパルディアの日本総領事館にも合わせて攻撃を行え」

 沈黙……慎重派と言われる陸軍航空隊空将マキナが話す。

「命令である以上、もちろん実行しますが……今回の日本国への警戒……海軍本部が当初出していた情報からすると、警戒しすぎの感がある。
 アリを踏みつぶすのに戦車を使用しているようだ」

 海軍司令ゼムがマキナの疑問に同調する。

「確かに、何かしらの情報を得て評価を変えることは多々考えられるが、今回のケイン神王国並みとは、いささかやり過ぎではないか?
 日本の島は実はカモフラージュで、東に本土の大陸でもあったかのような変更だ。
 敵の想定される数が跳ね上がったとしか思えん」

「通達ではすでに出しておりますが、日本国は、数の上ではさしたる驚異はありませんが、精密射撃能力は侮れません。
 その精度は、我らを超える。
 また、ムー国で陸軍が被った被害を知らぬ訳では無いでしょう。
 この時、皇太子殿下の身柄が日本に渡ってしまいました」

 軍本部幹部は力を込める。

「油断や……傲慢による敗北を帝国が繰り返す訳にはいかない!!
 たしかに、今回の作戦は帝王府の……皇帝陛下の顔に泥を塗らぬ為、万全を期している。 帝国の強固な意志を……例え世界の果てであっても、皇太子殿下の身柄を引き渡さないと表明した、帝国を侮辱した国には確固たる意思で望む姿を世界に見せつけるのだ!!
 本攻撃は、必ず成功させなければならないのだっ!!」

 響き渡る声、ビリビリと伝わる。

「解った。熱い思いは伝わった。
 我らは与えられた任務をこなし、日本国の「あらわ市」だったか?灰にしてやろう。
 上がってきた航空機もすべて護衛戦闘機で撃墜して見せましょうぞ!!
 我らが練度は高い。例えケイン神王国が相手だったとしても決して負けぬ」

 陸軍航空隊隊長 マキナ は軍本部の方針に理解を示す。

「そうですな、ならば我らは敵海軍を消滅してやりましょうぞ」

 海軍司令ゼムも、重き任務に燃える。

「我ら超重爆撃連隊の空爆、バーベキュー作戦を名古屋市に実施しようと思う。
 日本人にはしっかりと焼け焦げて頂かなければな」

「バーベキュー作戦?」

「ええ、名古屋市に円形状に焼夷弾を含んだ爆弾を投下、これほどの炎を受ければ、いかなる建物でも内部の可燃材に着火する。ドーナッツ状に延焼した建物は、ドーナツの中心部に向かい、中の人間を焼き尽くす。
 巨大な炎は、火炎竜巻すら引き起こすでしょう。
 バーベキューの出来上がりです。焦げて食えないでしょうがね」

 場に笑いが出た。

 グラ・バルカス帝国の日本本土攻撃作戦会議は続く。


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第101話 日本海海戦P1

リーム王国 王都 ヒルキガ グラ・バルカス帝国基地

 基地において、日本攻撃作戦に関する会議が開催される。
   グラ・バルカス帝国陸軍航空隊空将  マキナ
   グティーマウン超重爆撃連隊作戦部長 アーリ・トリガー
   帝国海軍本部第44任務部隊司令長官 ゼム
 を初め、帝国幹部が並ぶ。
   末席にはリーム王国王下直轄大将軍  リバル
 他
  リーム王国海軍、陸軍、竜騎士団長達、軍の錚々たる幹部達が顔を揃えていた。
 
「それでは、日本本土攻撃作戦概要の確認と、今後の大方針をご説明します」

 作戦会議室には、リーム王国が転移初期に入手した日本国の地図、そして空撮された地図が広げられていた。
 帝国軍本部の幹部が説明を開始する。

「現在航空機に関し、リーム王国王都基地に陸軍航空隊第1大隊と、超重爆撃連隊34機、北部航空基地に123機、西部の都市、アリーナ航空基地に陸軍航空隊第2大隊と超重爆撃連隊43機がある」

「まずはリーム王国竜母艦隊に、北回りで日本国方面へ向かってもらう。
 リームの竜、航続距離や速度、交戦性能はとるに足りない。離陸するために本土まで接近しすぎるため、当然日本はこれを探知し、迎撃してくるだろう。
 竜が出撃出来る距離まで近づく事が出来れば即時出撃する。
 リームの竜は、日本上空に到達出来ればそれでよい。
 お前たちの戦力には期待していない。あくまでも攪乱が目的だ。
 呼応して陸軍航空隊及び超重爆撃連隊が出撃、最短距離で日本本土に向かう」

 話は続く。

「日本国は我が国と同じ転移国家である。
 軍本部は、敵を近代軍との評価し、警戒するよう通達を出した。
 つまり、ケイン神王国と同程度の脅威度と判定し、最大限の警戒をもって臨む作戦となる」

「バカな、この世界でケイン神王国と同程度の敵がいるだと?」

「警戒しすぎなんじゃないか」

「カルトアルパスの海戦では日本軍の巡洋艦は取るに足らないと出ていたが」

 場がざわつく。
 常に現場に身を置いていた軍人達にとって、日本国がケイン神王国並みという軍本部の評価は受け入れがたいものがあった。

 ムー国の陸軍基地、バルクルス陥落は軍部でも隠しようが無く、陸軍の油断による汚点として広く知られていたが、ムーの都市オタハイトを急襲した本国艦隊敗北については箝口令が敷かれ、海軍の、特に前線にいる物達は知らない。

 バルクルス陥落は、軍本部の幹部クラスは日本国の強さを再評価し、恐怖さえも感じていたが、荒唐無稽だった報告には対応のしようが無いものも含まれていたため、前線の幹部達には知らされてはいなかった。
 また、士気に影響があってはならないとの視点から、先日帝国海軍先遣隊が日本の攻撃によって全滅したとの情報についても、彼らは知らない。

 本部の幹部は続ける。

「マキナ空将、陸軍航空隊にあっては敵レーダー網をかいくぐるため、海面に近い超低空で日本本土に向かって頂く。
 護衛戦闘機も合わせて超低空で向かう。
 航空隊は日本領土に到達直前に上昇し、福井県あらわ市を爆撃離脱する。
 また、超重爆撃連隊作戦部長アーリ・トリガー殿には、グティーマウンの超高性能を存分に生かしてもらうため、対流圏のさらに上、成層圏……敵の刃が届かぬ超高空から日本へ向かい、内陸に侵攻、大都市名古屋を灰にして頂きたい。
 これは陸軍航空隊の攻撃機を遙かに超える超重爆撃連隊の圧倒的投射力、超高空航行能力、そして戦闘機を超えるほどの圧倒的なる速度が成せる作戦である」

 説明はつづく。

「また、海軍第44任務部隊については本日夜出撃し、無線封鎖を実施、明日日の出の作戦開始時には日本国から300kmの距離まで接近、航空攻撃が行われた場合、エアカバーはリーム王国から行い、出撃してくる敵海軍の迎撃にあたる。
 敵を迎撃出来きた場合はこれと交戦し、可能であれば最寄りの都市、福井県あらわ市を砲撃する。
 これは日本本土に帝国の刃が届くことを知らしめる作戦である。
 なお、我らが部隊の他、呼応していくつかの作戦を実行する予定がある」

 呼応して行われる作戦は、本国艦隊主力のナハナート突撃作戦であるのだが、軍本部幹部は具体的内容には触れない。
 詮索する者もいなかった。

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