◆◆◆
グラ・バルカス帝国リーム王国前線基地 地下防空壕
「お……おのれ……おのれ……これほどまでとはっ!!」
地上では爆炎が吹き荒れている。
いつこの場所が消滅するかも解らない。
死の恐怖と隣り合わせで幹部ムルノウは怒り燃え、そして恐怖に震えていた。
傍らに立つ部下が話しかけてくる。
「帝国がこれほどの反撃を受けるとは……日本国への打撃作戦は……」
「ああ、失敗とみて良いだろう。我が方の攻撃は圧倒的だった。
規模においては大部隊であり、これを迎撃せずに大規模な基地攻撃を加えることは考えにくい。
小規模ならあり得るがな。
いずれにせよ、我が方は司令機能を完全に消失してしまった。
攻撃が終わり、我が方の攻撃の戦果が確認出来たらすぐに脱出するぞ」
「はっ!!」
「帝国に……この情報を持ち帰らなければ……」
ムルノウは、命を失わずに帰国する算段を考えるのであった。
◆◆◆
パーパルディア皇国 皇都エストシラント
「お……お……おのれぇぇぇぇぇっ!!!」
カイオス……かつてパーパルディア皇国の第3外務局局長として勤務し、現在は国家元首となった男である。
普段は感情的になることの無い彼が、珍しく怒りに燃えていた。
きっかけはリーム王国の竜騎士団がデュロを奇襲し、他国の商船と自国民に被害が出たことにある。
「かつての力は失ったとはいえ、我らはパーパルディア皇国ぞ!!我が国土を……街を……しかもたかがリーム王国如きが攻撃してくるとはっ!!」
元々パーパルディア皇国の工業都市であったデュロは、パーパルディア皇国戦後、一時的にドーリア共同体という都市国家の一部となった。
しかし、デュロレベルの工業都市では、日本の工業レベルに太刀打ち出来るわけではなく、独立したものの、物が全く売れずに失業者が続出する。
軍事物資を求めて来る国家はあるものの、日本の圧力により軍事物資の輸出は見送られた。
顧客はパーパルディア皇国がほとんどであり、関税がかかるため独立にはデメリットの方が多く、また市民は皇国人として生きていたため、パーパルディアへの回帰運動が起こり、民意によってパーパルディア皇国に再び吸収されていたのだった。
カイオスは怒りが収まらない。
日本国から攻撃が予想されるとの情報はあった。
しかし、竜騎士団を集結させる前に攻撃が行われてしまったため、大多数は撃墜したがすべて防ぎきれるものではなく、被害も出たのだった。
初老の秘書がカイオスに話しかける。
「グラ・バルカス帝国の基地があるので増長したのでしょう」
「リームの寄生虫どもめぇ!!聖地攻撃からあの国はいつか刃を向けてくると思っていた ワイバーンロード竜騎士団はリームを攻撃、艦隊もリーム王国首都へ派遣せよ!!奴らの首都を殲滅してやる!!!」
「日本国は大丈夫でしょうか?彼らが我が軍事行動をどう捉えるのか」
「日本なら大丈夫だ。我が国は国土に攻撃を受けた。
自衛権を発動し、敵の軍事力を攻撃するだけだからな。
自衛権発動に文句を言う国では無いし、むしろ裏では歓迎するかもな」
「では、首都殲滅は出来ないのでは?」
「軍事力には何が必要だ?」
「人員に装備、兵站でございます」
「それを支えているのは経済力だ。その源を根絶しようというのだ」
「暴論でございますが……私はカイオス様を支持いたします」
パーパルディア皇国は、リーム王国へ軍事力を差し向ける事を決定した。
posted by くみちゃん at 23:04|
Comment(15)
|
小説