2020年06月20日

第103話 リーム王国の落日P5


「!!!!」

「ナハナート?ここにあの大艦隊が全力で向かってくると……」

 1個護衛隊は間に合うが、他の護衛隊群は今からではとても間に合わない。
 BP3ーC爆撃連隊や、F-2戦闘機は間に合うが、現地基地の弾薬が不足する。
 最悪本土からのピストン攻撃となる。
 一定数の自衛隊員が同島の防衛についているが、現場の戦力は少なすぎると言わざるを得ない。
 何よりも敵の数が多すぎる。
 そして、攻撃目標がナハナートでは無かった場合のリスク……。

 場が……凍り付く。
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第103話 リーム王国の落日P4


◆◆◆

 日本国 首都 東京 防衛省

「BP-3C爆撃連隊作戦完了、これでリーム王国に存在するグラ・バルカス帝国の航空基地はその機能消失を確認しました」

 通信員からの報告に、防衛作戦司令室はざわつく。

「なお、敵海上侵攻部隊、グラ・バルカス帝国艦船は戦力消失。リーム王国竜母艦隊も撃滅、航空戦力もすべて撃滅を確認しました」

 場が拍手に包まれる。
 敵の侵攻勢力。数の上では圧倒的に多く、技術差はあるものの不安が無いわけでは無かった。
 しかし守り切った。
 海上自衛隊の護衛艦や、陸自の対空部隊の出番が無かったことはむしろ喜ばしく思うべきだろう。

「報告します。パーパルディア皇国北部から飛行物体230が出現、リーム王国首都へ向かっています。
 速度から考慮し、ワイバーンロードと思われます」

 ざわついた場が静まりかえる。
 リームはワイバーンでパーパルディアの商業都市デュロを攻撃していた。主に日本の施設を狙ったようだが、パーパルディアの竜騎士によって、そのほとんどが撃ち落とされていた。
 
「パーパルディア皇国より外務省を通じて入電。
 皇国はリーム王国より攻撃を受けた。
 敵基地攻撃のため、竜騎士団及び魔道戦列艦隊42隻により攻撃を実施する。
 この出撃はリーム王国による我が国への攻撃に対する自衛権の発動であり、日本国に対するものでは無い」

 自国が攻撃を受けた国が反撃しようとしている。

「これはどう解釈する?」

「自国が攻撃を受けた国が反撃しようとしている。日本にこれを止める権利は無いのでは?」

「外務省も同様の見解です。日本に止める理由が無いと」

「しかし、パーパルディア皇国だぞ?我が国のように、軍民区別をするとは思えんが」

 この日、ワイバーンロードの反復攻撃および魔導戦列艦隊の砲撃により、リーム王国首都ヒルキガは炎の海に包まれるのだった。

◆◆◆

 防衛省

 防衛省幹部 三津木は、嫌な予感がしていた。
 今回の第1波日本国本土侵攻は防ぎきった。これは間違い無いだろう。
 しかし、どうも腑に落ちない。
 自分がやるなら大艦隊の到着を待って同時に作戦を行う。
 それを想定して今回の配置ではあったのだが……。

「至急報告!!」

 今回の日本国侵攻第1波を皆が防ぎきったと考えていた。
 そんな中、通信士が至急を叫ぶ。

「今度は何だ!?」

「ニューランド西側を進んでいた敵艦隊本隊が、ニューランド島を迂回し、東へ向かったとの報告が上がりました。
 艦隊速度を上げて侵攻中!!」

 衝撃が走る。

「バカなっ!!ニューランドでの補給をしなければ航続距離が足りないはずだ」

「どう考えても日本本土まで侵攻するのは無理だ。
 敵は何を考えている??」

 場がざわつく。

「敵は……一矢報いるつもりですよ」

 三津木の発言に、場が静まった。
 彼は続ける。

「おっしゃるとおり、どう考えても日本本土への航続距離は不足しています。
 ただ、私たちは本土侵攻を防ぐ事を第一と考え、本土に戦力を集結させた。
 これは正しいと思っています。
 しかし、敵もバカじゃ無い。
 日本本土侵攻は無理だと考え、日本の信用を落とす。日本側に付いたのに国が滅ぼされたという実績を作りに……一矢報いに来るのだと思います。
 侵攻ルートが判然としなかったため、弾薬の備蓄も分散しています。
 本土から遠く、敵が無補給で侵攻し、侵攻後に補給を行っても帰れる距離。
 かつ日本側に付き、あっさりと滅ぼせそうな国。
 敵の目標は……」

 手で世界地図をなぞっていく。

「ここ!!ナハナート王国の可能性が高いと考えます」


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第103話 リーム王国の落日P3


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国リーム王国前線基地 地下防空壕

「お……おのれ……おのれ……これほどまでとはっ!!」

 地上では爆炎が吹き荒れている。
 いつこの場所が消滅するかも解らない。
 死の恐怖と隣り合わせで幹部ムルノウは怒り燃え、そして恐怖に震えていた。
 傍らに立つ部下が話しかけてくる。

「帝国がこれほどの反撃を受けるとは……日本国への打撃作戦は……」

「ああ、失敗とみて良いだろう。我が方の攻撃は圧倒的だった。
 規模においては大部隊であり、これを迎撃せずに大規模な基地攻撃を加えることは考えにくい。
 小規模ならあり得るがな。
 いずれにせよ、我が方は司令機能を完全に消失してしまった。
 攻撃が終わり、我が方の攻撃の戦果が確認出来たらすぐに脱出するぞ」

「はっ!!」

「帝国に……この情報を持ち帰らなければ……」
 
 ムルノウは、命を失わずに帰国する算段を考えるのであった。
 
◆◆◆

 パーパルディア皇国 皇都エストシラント

「お……お……おのれぇぇぇぇぇっ!!!」

 カイオス……かつてパーパルディア皇国の第3外務局局長として勤務し、現在は国家元首となった男である。
 普段は感情的になることの無い彼が、珍しく怒りに燃えていた。

 きっかけはリーム王国の竜騎士団がデュロを奇襲し、他国の商船と自国民に被害が出たことにある。
 
「かつての力は失ったとはいえ、我らはパーパルディア皇国ぞ!!我が国土を……街を……しかもたかがリーム王国如きが攻撃してくるとはっ!!」

 元々パーパルディア皇国の工業都市であったデュロは、パーパルディア皇国戦後、一時的にドーリア共同体という都市国家の一部となった。
 しかし、デュロレベルの工業都市では、日本の工業レベルに太刀打ち出来るわけではなく、独立したものの、物が全く売れずに失業者が続出する。
 軍事物資を求めて来る国家はあるものの、日本の圧力により軍事物資の輸出は見送られた。
 顧客はパーパルディア皇国がほとんどであり、関税がかかるため独立にはデメリットの方が多く、また市民は皇国人として生きていたため、パーパルディアへの回帰運動が起こり、民意によってパーパルディア皇国に再び吸収されていたのだった。

 カイオスは怒りが収まらない。
 日本国から攻撃が予想されるとの情報はあった。
 しかし、竜騎士団を集結させる前に攻撃が行われてしまったため、大多数は撃墜したがすべて防ぎきれるものではなく、被害も出たのだった。
 初老の秘書がカイオスに話しかける。

「グラ・バルカス帝国の基地があるので増長したのでしょう」

「リームの寄生虫どもめぇ!!聖地攻撃からあの国はいつか刃を向けてくると思っていた ワイバーンロード竜騎士団はリームを攻撃、艦隊もリーム王国首都へ派遣せよ!!奴らの首都を殲滅してやる!!!」

「日本国は大丈夫でしょうか?彼らが我が軍事行動をどう捉えるのか」

「日本なら大丈夫だ。我が国は国土に攻撃を受けた。
 自衛権を発動し、敵の軍事力を攻撃するだけだからな。
 自衛権発動に文句を言う国では無いし、むしろ裏では歓迎するかもな」

「では、首都殲滅は出来ないのでは?」

「軍事力には何が必要だ?」

「人員に装備、兵站でございます」

「それを支えているのは経済力だ。その源を根絶しようというのだ」

「暴論でございますが……私はカイオス様を支持いたします」 

 パーパルディア皇国は、リーム王国へ軍事力を差し向ける事を決定した。


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