2020年07月01日

第104話 軍神カイザルのプライドP3


◆◆◆

 ロデニウス大陸上空 空中戦艦パル・キマイラ 艦橋

 足下の床に地上の状況が写しだされる。
 天井にはロデニウス大陸、現在地、そしてグラ・バルカス帝国艦隊本隊の位置が反映された地図が映し出されていた。

 仮面をかぶったメテオスは地上を眺めながらワイングラスを右手に取る。

「ふむ、優雅な旅だ」

 皇帝陛下からは無理をしてパルキマイラを失わないよう指示を受けている。
 しかし、本艦隊にあの忌々しい艦、グラ・バルカス帝国の持つ、この世界においても最大であろう戦艦、グレードアトラスターだけは沈めたいという気持ちもうずく。

 しかし、すでに1機パル・キマイラは落とされている。明らかな強敵。

 まあ、海上要塞パルカオンが仮に出て、艦隊が向かってくるならば艦隊をすべて沈める事も可能ではあるだろうが。  

 メテオスは悩みながらも忠実に仕事をこなそうと考えていた。

「艦長!日本国自衛隊のナハナート防衛指揮官から通信が入っています!」

「ほう?なんと。こんな所まで彼らの電波は届くのかね?」

 基地が近くにあり、中継しているのだがメテオスは通信してきたこと、そして自分たちの位置をある程度把握されている可能性に至り、驚きの声を発す。
 
 パチン!

 彼が指を鳴らすと、通信が接続された。

『私は空中戦艦パル・キマイラ艦長、メテオスという。
 まさか君たちがこんな辺境の地まで通信電波を届かせるという技術があるとはねぇ』

 一見上から目線のように見えるがメテオスに悪気はない。
 純粋に通信電波を届かせる事を驚いている。
 歴史上長きにわたって続いた神聖ミリシアル帝国の1強状態。
 その中でも、最強である古代兵器の艦長たる地位が、どうしても他国の軍を過小評価してしまう。
 グラ・バルカス帝国のように世界と衝突した訳でも無い無難で技術の高い新興国家。
 
 そういった認識がメテオスにはあった。

『私は日本国自衛隊ナハナート基地航空管制司令の八神といいます。
 今回の日本国防衛に関する遠征、感謝いたします』

 八神は差し支えない対外的なお世辞から入る。
 
『なぁに、皇帝陛下のご指示があったからだよ。
 我が艦は古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国の遺跡空中戦艦パル・キマイラだ。
 空を飛ぶ戦艦などは君たちには持てないだろうが、友軍なので誤射しないでくれたまえよ』

『その事でご相談があります。
 我が国の攻撃は不可視の領域まで届きます。
 万が一にでも、誤射を防止するため、まずは我が国だけで戦いたいと思いますが、よろしいか?』
 
 神聖ミリシアル帝国の魔導戦艦の主砲も30km程度までは届く。
 きっと同じようなものなのだろう。
 不可視の領域と言えば、そうなるかもしれない。
 日本国の軍人は情緒ある言葉使いをするとメテオスは考える。
 言葉の通りの意味なのだが。

『ほう、相手はあのグラ・バルカス帝国、しかも1000隻だよ?
 本気で言っているのかね?
 あのムーでさせ先の海戦では全滅に近い被害を出した。
 勝算の無い戦いを挑むことは蛮勇というものだよ』

『はい、我が方には我々なりの作戦があります。
 今回の侵攻、敵は我が国を標的としている。
 まずは我が国の軍で挑みたいと考えております。
 空中戦艦はとっておきの兵器だと聞き及んでいます。
 それを出撃させて下さった貴国には感謝しかありませんが、よろしければ我らの戦いを観戦していただき、とっておきの空中戦艦は、ここぞというタイミングで出て頂けないかと』
   
(ふむ……皇帝陛下は日本国の戦い方も確認出来たらするようにおっしゃった。
 どうせ1000隻は防ぎ切れまい。
 日本の戦い方を見た後、ここぞのタイミングで出て戦う。
 彼らの提案は好都合だ)

『どの程度離れてほしいのかね?』

『200km。戦闘海域から200kmは離れて頂きたい』

 200kmも離れろというのは、自分たちの国の戦いを見せたくないのだろう。
 メテオスはそう判断した。
 しかし……。

『解った。君たちの提案を受け入れようじゃないか』

 無線の通信が終わった。
 隣に立つ幹部がメテオスに話しかける。

「艦長、彼らは自分たちの戦いを見られたくないのでしょうな」

「そうだねぇ。ただ、我らには超望遠魔導波検出装置がある。
 200kmならギリギリだが、彼らの戦いは見ることが出来るだろう」

 純粋に誘導弾が着弾してはいけないため、距離を指定したが、神聖ミリシアル帝国側は日本国の意図を拡大解釈するのだった。

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第104話 軍神カイザルのプライドP2

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国連合艦隊 旗艦グレードアトラスター
 艦橋において、司令長官カイザルが海を睨んでいた。
 横には艦長ラクスタルが立つ。

 先ほど軍本部から、
 ○ リーム王国基地からの陸軍航空隊及び超重爆撃連隊の部隊が壊滅し、リーム王国前線基地が全滅した
 ○ 敵に、ほとんど被害を与えていない可能性が高い

 との連絡があった。
 さらに、帝王府から日本国へダメージを与えよとの通達が付け加えられる。
 現場と本国の解離、そして未だ大艦隊を有しており、主力艦隊は日本軍と衝突していないという現実。
 今までの被害。
 グラ・バルカス帝国が投じ、失ったものが多すぎて後には引けなくなっていた。 

 帝国3将のなかでも最も階位の高いとされ、軍神カイザルとも呼ばれた男は無言で海を睨み付けていた。

「やるしか無いのか……」

 一言発して沈黙する。
 目を瞑り、精神を収集させた。
 カイザルはカット目を見開く。

「ラクスタル艦長!!」

「はっ」

「奴らは先遣隊を全滅させ、本土の超重爆撃連隊並びに50隻の駆逐艦を主体とした艦隊を全滅させた。
 当たってほしくなかった……が、最悪の中でも最も最悪な想定が当たってしまった」

「……」

「しかも……おそらく被害を全く与えていないというではないか」

 艦橋に沈黙が流れる。
 軍本部からのあまりにも衝撃的な連絡は、まぐれや偶発的に起こる奇跡的な戦闘結果を遙かに超えたものであり、艦隊司令部にも衝撃が走っていた。
 もはや艦橋に日本国を侮る者はいない。

「我らはユグドでNo1、最強の国家、グラ・バルカス帝国だ。化け物どもめ!!ただではやられんぞ!!」

 軍人は命令に忠実である。
 帝王府が死ねと言えば死ぬ。やれと言われれば、どんなに困難であってもやらなければならない。
 軍神カイザルの絶望などまったくしていない姿を見て、他の幹部達は希望の光を心に灯した。

 カイザルは、ラクスタル艦長に他の者に聞こえぬようそっと話す。

「ラクスタル艦長、日本国に味方したナハナートを落とす事は、短い視点においての軍事的な意味はあまりないが、政治的意味合いは大きい」

「そうですな。帝国に刃向かい、日本に味方したにも関わらず国土を灰にされた……となると、今後日本へ味方する敵も少なくなりましょう」

「今回はナハナートを叩くことに全力をかける。現実的に日本国本土への刃は届かん」

「敵は強力です。帝王府の思惑との乖離はあるでしょうが、現実的に考えて致し方ありません」

「艦長、次の戦場が我らの……いや、我が艦隊の死に場所となるやもしれん。すまん」

「軍に拝命した時から、覚悟の上です」

 戦場は動き続ける。

◆◆◆
 文明圏外国家 ナハナート王国郊外 日本国自衛隊ナハナート基地 基地司令室

「南西航空方面隊第9航空団F-15、間もなく到着します」

「第4護衛隊群がナハナート海域防衛に間に合いそうです」

「陸自の地対艦ミサイル連隊も配置を完了しました」

 航空基地管制センターの司令 八神 は胃がキリキリと痛む状況を覚える。
 
 防衛省ではグラ・バルカス帝国の侵攻ルートを多数想定し、弾薬や燃料を相当数この南方の基地、ナハナートに渡してきた。
 しかし、日本本土に相当数の航空攻撃が仕掛けられ、さらに同時に敵艦隊の本隊が燃料補給もせずに東進しているという。
 当初の予定では、彼らの侵攻にタイムラグが生まれ、補給が十分間に合う想定だったのだが、現実は想定どおりにはいかない。 

 本省は、もっとも攻撃目標である可能性が高い地域として、このナハナートを上げた。

 急ピッチで航空機が到着し、着々と防衛体制は整えられつつあるが、いかんせん敵の数が多すぎる。

 近代軍では滅多に無いが、敵が被害無視で、決死の覚悟で攻撃してきたならば、防ぎきれないかもしれない。
 それほどまでに敵の数が多すぎる。
 彼が悩んでいる中、さらに彼の胃を痛めつける情報が入る

「司令、神聖ミリシアル帝国から、空中戦艦が向かってきています。
 このままでは衝突時に戦場に突入する事になります!!」

「な……なんだって!?あのゆっくり低空を飛ぶ艦か?敵味方識別装置は……」

「付いておりません!!現在基地にある弾薬のうち、対艦誘導弾は対空目標アップグレード前のものですので、おそらく当たらないのでは?」

「対空誘導弾はそれでも当たるだろう。それに『おそらく当たらない』で使えるか!!
 一応友軍なんだぞ。万が一当たって撃墜したら外交問題に発展してしまう。
 しかし、応援のつもりなんだろうが……なんというタイミングで来てくれるんだ。
 なんて迷惑な……。
 通信は出来るのか?」

「確か、アナログ電波であれば送受信可能でしたので、ええと……現在ロデニウス大陸の北西を飛行中です。
 防衛作戦展開中の陸自から電波を発してもらい、変換と中継を行えば出来ると思います」

「すぐに準備してくれ。
 戦場で邪魔しないよう語りかけたい」

「直で言うと外交問題になりませんか?」

「本省を通じると間に合わないかも知れないしな、言葉遣いには当然気をつける。
 俺を何だと思っているんだ??」

 八神は、空中戦艦パル・キマイラに無線で通信を行う事を決めるのだった。

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第104話軍神カイザルのプライド P1

 神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス

「アルネウス様、失礼いたします」

 帝国の運営に重大な影響を及ぼす「情報」が集まる場所、情報局。
 同局長室に、緊張した面持ちの情報局員ライドルカが入室する。

 ライドルカは、主に帝国の東方、第三文明圏を担当する。
 いつも有力な情報を集めてくる優秀な局員、通常はただの局員が直に局長室に入ることなど許されてはいないが、数々の実績を持つライドルカは特別な存在だった。

「どうなった?」

 グラ・バルカス帝国が日本国に本格攻撃をしかける一環として、大規模な航空戦力を派遣していたところまでは情報局の把握するところだ。
 そろそろ第1波攻撃の結果が出る頃だろう。
 アルネウスがそう感じていた時のライドルカの入室。
 彼は、緊張の面持ちで資料を手渡し、口頭で概要説明を開始した。

「帝国は500機以上に及ぶ大規模戦力を日本国に差し向けました。
 戦闘機、攻撃機はもちろんの事、帝国本国に存在する超重爆撃連隊と呼ばれる爆撃機も200機ほど含まれています。
 超重爆撃機は、多くの爆弾を搭載可能な航空機、我が天の浮き船に同様の物が無いので説明しずらいのですが、高高度を飛行可能な爆撃主体の機体であるのですが、搭載能力は所詮空力を使用しているのでパル・キマイラの足下にも及びません」

「500以上か。
 日本国がいかに高性能な航空機を持っているとはいえ、彼らの国家所有主力戦闘機の2倍以上の数、しかも我が国のエルペシオ3型制空戦闘機を相手に有利に戦う敵となると、相当に被害が出たのではないか?」

 事前説明が長かったライドルカにかぶせるように話す情報局長アルネウス。

「いや、結論から申し上げますと、グラ・バルカス帝国の作戦機は大半が日本海海上で撃ち落とされ、リーム王国の帝国基地は壊滅いたしました。
 日本本土へ向かっていた50隻以上の艦隊も殲滅し、防衛に成功しています。。
 また、自国も攻撃に巻き込まれたパーパルディア皇国がリーム王国に艦隊を派遣し、王都ヒルキガは魔導砲艦隊の制圧攻撃により全壊状態となりました」

「日本軍……いや、自衛隊の被害はどの程度なのだ?」

「現在調査中ですが、まだ裏は取れていないのですが、とある情報によると被害が無い……と……」

「まさか……まさか、彼らの強さは我らの想定を大幅に上回るというのか?」

「日本国は相当に強いと我らは評価していましたが、その想定すらも遙かに上回る強さを有する可能性が高いと思慮されます。
 すでにグラ・バルカス帝国の先遣艦隊約440隻が日本国と衝突したと思われますが、先遣艦隊の行方が我が国の哨戒網に引っかかりません。
 まさかとは思いますが……」

「まさか……世界連合艦隊と対峙した時よりも数が多い大艦隊が全滅したのか?
 敗北ではなく全滅??
 いくら日本国の評価を大幅上方修正したとしても、さすがにそれは無いだろう」

「私も、さすがにそこまでは無いかと考えます。哨戒網から漏れているだけかと。
 引き続き、情報収集を行います。
 あと2点、奴らの本隊1000隻にも迫る大艦隊が、ニューランドで補給を行わずに東進した模様です」

「1000……数の上では凄まじいな。最後の1点は何だ?」

「メテオス艦長が乗艦する空中戦艦パル・キマイラが、どうやら本隊に追いつきそうです。
 想定より魔力供給がスムーズにいったようで」

「ほう?思ったよりも早いな。慎重派なメテオス艦長が空中戦艦を本気で運用したならば、相当な被害を与えるだろう」

 情報局はミリシアル帝国のため、必死に情報を集め続けるのだった。
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