2020年08月23日

第106話軍神と呼ばれし者2P6


◆◆◆

 広島県呉市

「これは……すごいな……」

 白い髭を生やした老人の男がつぶやいた。
 徹底的に破壊された大戦艦が、港に停泊している。
 護衛艦よりも1周り、いや、3周り以上も大きい艦が痛々しい傷を晒す。

「これが、大和型に酷似していると言われる敵の主力艦です」

 防衛省の制服を着た者が、初老の男に戦いの概要を説明した。
 
「この世界は覇権に満ちあふれておる。今まで日本国が戦争に巻き込まれたのも前世界の常識に捕らわれ、軍事力を全く示してこなかった。
 そう思わないか?」

「防衛省の職員としては、お答えしずらい話です」

「まあ良い。私の父はね、戦艦大和の乗組員だったんだ。
 当時の私に艦名は明かされなかったが、最強の戦艦に乗っていると、いつも誇らしげに語っていたよ。
 戦後に父の戦死の報が届き、大和に乗っていたと知った。
 日本には戦艦が必要だ。私は戦艦を復活させたい」

「なんと!!」

「この敵戦艦、グレード・アトラスターがエンジンや射撃管制システムを除き、細部にわたって大和に似ているのも天啓かもしれん。
 まあ、まだ調査中だろうけどね。
 日本版イージスシステムを積み、最新鋭の兵装を施し、装甲も強化する。
 若いもんの言葉を使うなら、魔改造というらしいね」

「しかし、日本国の代表的な艦の名に、敵国の装備を使用するのはいかがなものでしょうか?
 グレードアトラスター事態には政治的な利用方法はあるでしょうが……」

「言い方が悪かったかな。君の早とちりでもあるな。
 ふむ、確かに祖国を愛する者達にとって、代表的な大和の名を敵の艦に付ける事は反発も大きく、おかしいと儂も思っておるよ。
 グレードアトラスターも改造する。
 別に現代技術を駆使し、ヤマト型戦艦を作りたい。
 日本国にヤマトあり、大きな象徴は他国への良い牽制となるだろう。
 私はこれを実現したい。政界を動かすとしようか」
 
 日本国の政治に多大な影響力を及ぼす男は、グレード・アトラスターを修理すると共に、国産戦艦の復活を夢見るのだった。

 
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第106話軍神と呼ばれし者P5


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 戦艦グレード・アトラスター

「被弾!!被弾!!被弾んんん!!!」

 ズガァァァン!!!

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!」  

 猛烈な……前が見えぬほどの爆炎が吹き荒れる。
 連続して命中する敵の砲撃。しかし、鉄壁たる重要区画装甲は健在だった。

 重要区画装甲は抜かれていないが、余りにも大きい爆発音の連続で耳がおかしくなりそうだった。

 艦橋に恐怖が伝搬する。

「うろたえるなぁっ!!!戦艦の装甲は抜かれていない!!!敵の攻撃恐るるに足りず!!!」

 艦長ラクスタルが吼える。
 かつて経験したことが無いほどの連続被弾。
 しかし、敵の砲撃など雨と同じが如く、関係なく突き進む戦艦。

「我が艦は不沈戦艦ぞ!!」
 
 艦橋にいた誰かが叫んだ。
 歴史上最強たる戦艦に、絶対の自信が芽生える。

 司令カイザルは鼓舞する。 

「このままナハナートへ侵攻、砲撃によってナハナートを日本軍もろとも灰燼に帰し、国へ帰るぞっ!!!
 この戦艦は最高だっ!!」

「おぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 未だ敵艦には一撃も当たっていない。しかし、敵の攻撃はいくらこちらに当たっても耐えれる。
 絶対の自信が生まれた。

 一瞬だけ砲撃が止む。
 艦橋は静けさに包まれた。

「主砲、次弾装填!!!」

 攻撃を続けようとしたその時だった。
 空に一筋の光が駆ける。

「敵誘導弾接近!!!!」

「なにぃ!!!」

 上を見る。
 上昇したロケットがこちらを向き、やがて点のようになった。

「直撃するぞ!!!!!!!!!」

 誰かが叫んだ。

「すまん」

 司令カイザルは死を覚悟してつぶやいた。
 誰に向けた言葉なのか、艦の乗務員、いや、グラ・バルカス帝国軍すべてに対する言葉なのかもしれない。
 彼の脳裏に、生まれてから今までの出来事が走馬燈のように駆け巡る。

 初めて日本国の名を聞いた時は、我が国以外にも転移国家があるのかという程度の認識だった。

 列強パーパルディアを降した時、以後の統治がなっていないのを見て、国力の無い国かと興味すら持たなかった。
 カルトアルパス沖海戦の戦果を見て、なんと脆弱な艦を運用する国かと、軍事的な意味合いでは脅威のかけらも感じなかった。

 しかし、陸軍バルクルス基地が陥落してから彼らの評価が一変する。
 情報収集も行ったが不確定な情報も多く、正確な分析が出来なかった。
 単艦での性能が想定よりも遙かに強い可能性も指摘されたが、帝国の勝ちすぎた軍事的常識が邪魔をして、組織としての正確な評価に至らなかった。

 今回の海軍主力艦隊の派遣は明らかに失敗、これ以上無いほどの、歴史上類を見ないほどの大敗だ。

 我が軍は艦艇の多くを失い、日本軍は未だ1艦すらも撃沈出来ていない。
 帝国の歴史に泥を塗るほどの大敗。

 練度では埋めようも無い、どうしようも無い兵器の性能差、このままでは我が国は滅亡へ向かって突き進むだろう。 
 私はそれを止めたい。
 止めたいが……私の命はこれまでだろう。
 帝国の真の過ち、それに気づけなかった自分に猛烈に反省する。
 しかし……

「もう遅いようだ」

 彼は静かに目を瞑る。
  

 陸上自衛隊第5地対艦ミサイル連隊の放った12式地対艦誘導弾は、グラ・バルカス帝国歴代最大かつ最強の戦艦、グレードアトラスターの艦橋付近に命中し、猛烈な爆発を引き起こす。
 
 艦橋内部の人間は一瞬で蒸発し、爆炎は艦を包み込んだ。
 一瞬で指揮系統と、操舵を失った艦はゆっくりと旋回を始める。

 しかし、攻撃は続く。
 1発、さらに1発が命中し、艦は激しく損傷した。


 海兵オカノールは恐怖に打ち震えていた。
 艦橋は敵の攻撃によってゴウゴウと炎があがり、空を黒く焦がしている。
 そして勝てる見込みの無い状態で、さらなる攻撃の手が加えられていた。

 1発1発が艦を包み込むほどの爆発を起こし、我が方の主砲を遙かに超える猛烈な爆発だった。

 このまま行けば確実に死んでしまう。
 オカノールのみならず、海兵すべてが恐怖していた。
 誰かが話す。

「このままでは死ぬ。退艦した方が良いんじゃ無いか?」
 
 オカノールは「退艦」という言葉だけを聞き取った。
 恐怖で押しつぶされそうになっている時に聞いた「退艦」という言葉。
 誰が言ったのかも解らない、しかし救いにすら聞こえる言葉。

 死を前にして、彼は自分に都合の良いように解釈する。
 彼は大声で叫んだ。

「総員退艦!!!総員退艦!!!」

 艦橋が破壊され、命令系統がぐちゃぐちゃな状況、そして死と隣り合わせの状態での「総員退艦」という言葉、それを聞いた物達が、まだ聞いてない物達の為に大声で復唱する。
 
 オカノールの発した言葉はさもそれが正規の命令であるかのように伝わり、兵達は我先にと海へ飛び込んだ。
 艦に残っていてもすぐに次の誘導弾が着弾するだろう。
 確実な死よりも、僅かな生の可能性を取るため、兵達は海に飛び込み続けた。

 やがて、超戦艦グレードアトラスターは漂流を開始する。

 一方、空中戦艦パル・キマイラに向かっていた八八艦隊も、慎重なメテオスの攻撃によって全艦戦闘不能に追いやられる。

 この日、1000隻に迫る大艦隊を送り込んだグラ・バルカス帝国海軍連合艦隊の日本国侵攻作戦は失敗に終わった。

 最後の特攻を行った戦艦グレードアトラスターは、6発もの地対艦誘導弾と、235発もの砲弾により大破。

 海に飛び込み、生き残った乗員は捕虜として収容される。


 戦艦グレードアトラスターという帝国最大の艦は捕獲され、広島県呉市に曳航され、徹底的に調査されることとなった。
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第106話軍神と呼ばれし者2P4


◆◆◆

 第4護衛隊群は二手に分かれ、グレードアトラスターと併走しながら砲撃を続けていた。 明らかに着弾している様子が伺えるが、敵の進撃速度は全く緩まない。

 近づけばもっと正確な射撃が出来、喫水線下を狙う事も出来るが、敵の砲弾に当たれば多くの死者が出る。
 今なお衰えぬ敵の砲撃に、中々さらに近づくという決断が出来ずにいた。
 
「第2次大戦中、戦艦武蔵を相手にした米軍兵はこんな気持ちだったのか……」
 
 司令坂野はつぶやく。

 西暦1944年10月24日、大日本帝国海軍 大和型戦艦2番艦 戦艦武蔵はシブヤン海でアメリカ軍と交戦し、沈没した。
 アメリカ軍の記録によれば、爆弾44発、ロケット弾9発、魚雷25本を命中させ、沈めたとある。
 総投下数は161発にも登り、78発もの命中弾を出してようやく沈んだ。

 沈んだ直接的原因は魚雷による浸水であったとされる。

 魚雷を撃つ距離まで近づくのは命がけ。戦争は基本的に命がけだが、出来ることなら隊員に死者を出したくない。

 迷いは時間を奪い、気づけばナハナート王国まで150kmの位置まで近づいていた。

◆◆◆

 ナハナート王国 陸上自衛隊第5地対艦ミサイル連隊

 ナハナート王国一の高さのある山、海抜高度1200mを誇る霊峰アクセイド山の約8合目付近の位置に、捜索標定レーダーが設置されていた。

 すでに島から西方向約150kmの位置からこちらへ向かっている敵艦については海自とリンクしているため、完全に捕捉している。
 山の中腹には中継装置、射撃指揮装置、発射機登載車両4両、弾薬運搬車4両がすでに配置についていた。

 12式地対艦誘導弾……発射された誘導弾はあらかじめプログラミングされたコース、山を縫うように突き進んだ後海上へ出る。
 その射程距離は百数十キロにも及び、地上発射型ミサイルで艦艇を撃滅可能である。

 攻める側からすると非常にやっかいな兵器であり、たとえば日本国に敵性国家が侵攻してくると、内陸数百キロまで面としての領域を確保しない限り、どこからともなく大威力のミサイルが飛んでくる。
 
「発射準備完了しました」

「ふぅん……そう」

 連隊長小坪はつまらなさそうにつぶやく。
 敵は1艦のみ、いかに巨大戦艦とはいえ、無謀にも程がある。
 特攻、その強烈な意思は伝わるが、現実的には無意味。
 良い訓練にはなるだろう。
 地対艦ミサイル連隊の力をもってすれば、あっさりと撃退出来る。

「まずは1台だけ使おうか。でないと税金を無駄にするかもしれないからね……。
 準備整い次第発射しろ、あそうだ。
 少し間隔を開けて撃ってあげなさい。どうせ防ぐことは出来ん。恐怖が倍増する方が良いかもね」

「はっ!!」

 陰湿な顔を持つ司令官は、残酷な指示を出す。

「てーーーっ!!!」

 12式地対艦誘導弾が霊峰アクセイド山の中腹から発射される。
 個体ロケットブースターで十分に加速された12式地対艦誘導弾は、ターボジェットエンジンに推進法式が切り替わる。
 誘導弾はあらかじめプログラミングされたコースを進み、海上へ出た。

 地を這うように突き進んだ12式地対艦誘導弾は、目標に向かって突き進むのだった。

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