2020年08月23日

第106話軍神と呼ばれし者2P6


◆◆◆

 広島県呉市

「これは……すごいな……」

 白い髭を生やした老人の男がつぶやいた。
 徹底的に破壊された大戦艦が、港に停泊している。
 護衛艦よりも1周り、いや、3周り以上も大きい艦が痛々しい傷を晒す。

「これが、大和型に酷似していると言われる敵の主力艦です」

 防衛省の制服を着た者が、初老の男に戦いの概要を説明した。
 
「この世界は覇権に満ちあふれておる。今まで日本国が戦争に巻き込まれたのも前世界の常識に捕らわれ、軍事力を全く示してこなかった。
 そう思わないか?」

「防衛省の職員としては、お答えしずらい話です」

「まあ良い。私の父はね、戦艦大和の乗組員だったんだ。
 当時の私に艦名は明かされなかったが、最強の戦艦に乗っていると、いつも誇らしげに語っていたよ。
 戦後に父の戦死の報が届き、大和に乗っていたと知った。
 日本には戦艦が必要だ。私は戦艦を復活させたい」

「なんと!!」

「この敵戦艦、グレード・アトラスターがエンジンや射撃管制システムを除き、細部にわたって大和に似ているのも天啓かもしれん。
 まあ、まだ調査中だろうけどね。
 日本版イージスシステムを積み、最新鋭の兵装を施し、装甲も強化する。
 若いもんの言葉を使うなら、魔改造というらしいね」

「しかし、日本国の代表的な艦の名に、敵国の装備を使用するのはいかがなものでしょうか?
 グレードアトラスター事態には政治的な利用方法はあるでしょうが……」

「言い方が悪かったかな。君の早とちりでもあるな。
 ふむ、確かに祖国を愛する者達にとって、代表的な大和の名を敵の艦に付ける事は反発も大きく、おかしいと儂も思っておるよ。
 グレードアトラスターも改造する。
 別に現代技術を駆使し、ヤマト型戦艦を作りたい。
 日本国にヤマトあり、大きな象徴は他国への良い牽制となるだろう。
 私はこれを実現したい。政界を動かすとしようか」
 
 日本国の政治に多大な影響力を及ぼす男は、グレード・アトラスターを修理すると共に、国産戦艦の復活を夢見るのだった。

 
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第106話軍神と呼ばれし者P5


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 戦艦グレード・アトラスター

「被弾!!被弾!!被弾んんん!!!」

 ズガァァァン!!!

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!」  

 猛烈な……前が見えぬほどの爆炎が吹き荒れる。
 連続して命中する敵の砲撃。しかし、鉄壁たる重要区画装甲は健在だった。

 重要区画装甲は抜かれていないが、余りにも大きい爆発音の連続で耳がおかしくなりそうだった。

 艦橋に恐怖が伝搬する。

「うろたえるなぁっ!!!戦艦の装甲は抜かれていない!!!敵の攻撃恐るるに足りず!!!」

 艦長ラクスタルが吼える。
 かつて経験したことが無いほどの連続被弾。
 しかし、敵の砲撃など雨と同じが如く、関係なく突き進む戦艦。

「我が艦は不沈戦艦ぞ!!」
 
 艦橋にいた誰かが叫んだ。
 歴史上最強たる戦艦に、絶対の自信が芽生える。

 司令カイザルは鼓舞する。 

「このままナハナートへ侵攻、砲撃によってナハナートを日本軍もろとも灰燼に帰し、国へ帰るぞっ!!!
 この戦艦は最高だっ!!」

「おぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 未だ敵艦には一撃も当たっていない。しかし、敵の攻撃はいくらこちらに当たっても耐えれる。
 絶対の自信が生まれた。

 一瞬だけ砲撃が止む。
 艦橋は静けさに包まれた。

「主砲、次弾装填!!!」

 攻撃を続けようとしたその時だった。
 空に一筋の光が駆ける。

「敵誘導弾接近!!!!」

「なにぃ!!!」

 上を見る。
 上昇したロケットがこちらを向き、やがて点のようになった。

「直撃するぞ!!!!!!!!!」

 誰かが叫んだ。

「すまん」

 司令カイザルは死を覚悟してつぶやいた。
 誰に向けた言葉なのか、艦の乗務員、いや、グラ・バルカス帝国軍すべてに対する言葉なのかもしれない。
 彼の脳裏に、生まれてから今までの出来事が走馬燈のように駆け巡る。

 初めて日本国の名を聞いた時は、我が国以外にも転移国家があるのかという程度の認識だった。

 列強パーパルディアを降した時、以後の統治がなっていないのを見て、国力の無い国かと興味すら持たなかった。
 カルトアルパス沖海戦の戦果を見て、なんと脆弱な艦を運用する国かと、軍事的な意味合いでは脅威のかけらも感じなかった。

 しかし、陸軍バルクルス基地が陥落してから彼らの評価が一変する。
 情報収集も行ったが不確定な情報も多く、正確な分析が出来なかった。
 単艦での性能が想定よりも遙かに強い可能性も指摘されたが、帝国の勝ちすぎた軍事的常識が邪魔をして、組織としての正確な評価に至らなかった。

 今回の海軍主力艦隊の派遣は明らかに失敗、これ以上無いほどの、歴史上類を見ないほどの大敗だ。

 我が軍は艦艇の多くを失い、日本軍は未だ1艦すらも撃沈出来ていない。
 帝国の歴史に泥を塗るほどの大敗。

 練度では埋めようも無い、どうしようも無い兵器の性能差、このままでは我が国は滅亡へ向かって突き進むだろう。 
 私はそれを止めたい。
 止めたいが……私の命はこれまでだろう。
 帝国の真の過ち、それに気づけなかった自分に猛烈に反省する。
 しかし……

「もう遅いようだ」

 彼は静かに目を瞑る。
  

 陸上自衛隊第5地対艦ミサイル連隊の放った12式地対艦誘導弾は、グラ・バルカス帝国歴代最大かつ最強の戦艦、グレードアトラスターの艦橋付近に命中し、猛烈な爆発を引き起こす。
 
 艦橋内部の人間は一瞬で蒸発し、爆炎は艦を包み込んだ。
 一瞬で指揮系統と、操舵を失った艦はゆっくりと旋回を始める。

 しかし、攻撃は続く。
 1発、さらに1発が命中し、艦は激しく損傷した。


 海兵オカノールは恐怖に打ち震えていた。
 艦橋は敵の攻撃によってゴウゴウと炎があがり、空を黒く焦がしている。
 そして勝てる見込みの無い状態で、さらなる攻撃の手が加えられていた。

 1発1発が艦を包み込むほどの爆発を起こし、我が方の主砲を遙かに超える猛烈な爆発だった。

 このまま行けば確実に死んでしまう。
 オカノールのみならず、海兵すべてが恐怖していた。
 誰かが話す。

「このままでは死ぬ。退艦した方が良いんじゃ無いか?」
 
 オカノールは「退艦」という言葉だけを聞き取った。
 恐怖で押しつぶされそうになっている時に聞いた「退艦」という言葉。
 誰が言ったのかも解らない、しかし救いにすら聞こえる言葉。

 死を前にして、彼は自分に都合の良いように解釈する。
 彼は大声で叫んだ。

「総員退艦!!!総員退艦!!!」

 艦橋が破壊され、命令系統がぐちゃぐちゃな状況、そして死と隣り合わせの状態での「総員退艦」という言葉、それを聞いた物達が、まだ聞いてない物達の為に大声で復唱する。
 
 オカノールの発した言葉はさもそれが正規の命令であるかのように伝わり、兵達は我先にと海へ飛び込んだ。
 艦に残っていてもすぐに次の誘導弾が着弾するだろう。
 確実な死よりも、僅かな生の可能性を取るため、兵達は海に飛び込み続けた。

 やがて、超戦艦グレードアトラスターは漂流を開始する。

 一方、空中戦艦パル・キマイラに向かっていた八八艦隊も、慎重なメテオスの攻撃によって全艦戦闘不能に追いやられる。

 この日、1000隻に迫る大艦隊を送り込んだグラ・バルカス帝国海軍連合艦隊の日本国侵攻作戦は失敗に終わった。

 最後の特攻を行った戦艦グレードアトラスターは、6発もの地対艦誘導弾と、235発もの砲弾により大破。

 海に飛び込み、生き残った乗員は捕虜として収容される。


 戦艦グレードアトラスターという帝国最大の艦は捕獲され、広島県呉市に曳航され、徹底的に調査されることとなった。
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第106話軍神と呼ばれし者2P4


◆◆◆

 第4護衛隊群は二手に分かれ、グレードアトラスターと併走しながら砲撃を続けていた。 明らかに着弾している様子が伺えるが、敵の進撃速度は全く緩まない。

 近づけばもっと正確な射撃が出来、喫水線下を狙う事も出来るが、敵の砲弾に当たれば多くの死者が出る。
 今なお衰えぬ敵の砲撃に、中々さらに近づくという決断が出来ずにいた。
 
「第2次大戦中、戦艦武蔵を相手にした米軍兵はこんな気持ちだったのか……」
 
 司令坂野はつぶやく。

 西暦1944年10月24日、大日本帝国海軍 大和型戦艦2番艦 戦艦武蔵はシブヤン海でアメリカ軍と交戦し、沈没した。
 アメリカ軍の記録によれば、爆弾44発、ロケット弾9発、魚雷25本を命中させ、沈めたとある。
 総投下数は161発にも登り、78発もの命中弾を出してようやく沈んだ。

 沈んだ直接的原因は魚雷による浸水であったとされる。

 魚雷を撃つ距離まで近づくのは命がけ。戦争は基本的に命がけだが、出来ることなら隊員に死者を出したくない。

 迷いは時間を奪い、気づけばナハナート王国まで150kmの位置まで近づいていた。

◆◆◆

 ナハナート王国 陸上自衛隊第5地対艦ミサイル連隊

 ナハナート王国一の高さのある山、海抜高度1200mを誇る霊峰アクセイド山の約8合目付近の位置に、捜索標定レーダーが設置されていた。

 すでに島から西方向約150kmの位置からこちらへ向かっている敵艦については海自とリンクしているため、完全に捕捉している。
 山の中腹には中継装置、射撃指揮装置、発射機登載車両4両、弾薬運搬車4両がすでに配置についていた。

 12式地対艦誘導弾……発射された誘導弾はあらかじめプログラミングされたコース、山を縫うように突き進んだ後海上へ出る。
 その射程距離は百数十キロにも及び、地上発射型ミサイルで艦艇を撃滅可能である。

 攻める側からすると非常にやっかいな兵器であり、たとえば日本国に敵性国家が侵攻してくると、内陸数百キロまで面としての領域を確保しない限り、どこからともなく大威力のミサイルが飛んでくる。
 
「発射準備完了しました」

「ふぅん……そう」

 連隊長小坪はつまらなさそうにつぶやく。
 敵は1艦のみ、いかに巨大戦艦とはいえ、無謀にも程がある。
 特攻、その強烈な意思は伝わるが、現実的には無意味。
 良い訓練にはなるだろう。
 地対艦ミサイル連隊の力をもってすれば、あっさりと撃退出来る。

「まずは1台だけ使おうか。でないと税金を無駄にするかもしれないからね……。
 準備整い次第発射しろ、あそうだ。
 少し間隔を開けて撃ってあげなさい。どうせ防ぐことは出来ん。恐怖が倍増する方が良いかもね」

「はっ!!」

 陰湿な顔を持つ司令官は、残酷な指示を出す。

「てーーーっ!!!」

 12式地対艦誘導弾が霊峰アクセイド山の中腹から発射される。
 個体ロケットブースターで十分に加速された12式地対艦誘導弾は、ターボジェットエンジンに推進法式が切り替わる。
 誘導弾はあらかじめプログラミングされたコースを進み、海上へ出た。

 地を這うように突き進んだ12式地対艦誘導弾は、目標に向かって突き進むのだった。

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第106話軍神とよばれし者2P3


◆◆◆
 
 神聖ミリシアル帝国 空中戦艦パル・キマイラ

 空中戦艦は八八艦隊へ向けて攻撃を開始し、メテオス独自の安全圏から撃つ戦法により、着実に命中弾を増やしていた。
 また、同時に日本国護衛艦隊と、グラ・バルカス帝国戦艦グレードアトラスターの戦いも監視していた。

「戦艦グレードアトラスター、再び6発の主砲を発射、弾道計算……3発が着弾の可能性有り」

 艦橋に無機質な報告が流れる。

「日本軍、3発の誘導魔光弾様のものを放出……命中、命中、命中……迎撃しました」

 艦橋上に映し出されたディスプレイには、日本国が放った艦対空誘導弾が、帝国の砲弾を空中で迎撃し、砲弾が爆発する姿が映し出されていた。
 艦長メテオスは仮面の下で目をカッと見開く。

「何と言うことだ……彼らは敵が発射直後の弾道を直ちに計算し、脅威度の高いものを選別して対空誘導魔光弾様のものを放出、空中で迎撃しているというのかね??」

「信じられない……」

 対空誘導魔光弾……古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国の伝承には記されているものの、未だ神聖ミリシアル帝国では解析に至っていない。
 自国が古の魔法帝国の発掘戦艦を使用してもとうてい追いつけぬ技術が目の前で実戦として使用されている。

 もはや日本国の力を疑う余地は無く、列強第1位たる神聖ミリシアル帝国、その中でもスーパーエリートたる古代兵器運用課、その中でも艦長たる地位についたメテオスのプライドは激しく打ちのめされるのだった。
 
◆◆◆

 日本国 海上自衛隊第4護衛隊群 イージス艦 ちょうかい

 敵の攻撃は、主砲のみならず副砲も加わり、激しさを増す。
 しかし彼らは正確な迎撃で、脅威度の高い砲弾のみを迎撃し続ける。
 やがて「ちょうかい」の主砲、127mm単装速射砲の射程内に敵が入った。

「敵、最大射程に入りました」

「主砲、撃ちぃ方はじめ!!」

「主砲、撃ちぃ方はじめ!!」

 砲手が復唱し、発射トリガーを引く。

 オート・メラーラ製54口径127mm単装速射砲は、毎分45発の弾数を最大射程で発射し始めた。
 砲安定システムにより、砲身を安定させ、FCS射撃管制システムにより敵との相対速度を計算、敵の未来位置に向けて射撃を行う。

 ちょうかいの後ろを航行していた護衛艦すずつき、護衛艦しまかぜ も砲撃に加わった。 また、左舷から侵攻してきていた第4護衛隊のうち、護衛艦さざなみ も攻撃に加わる。 ただし、護衛艦いなづま、さみだれ、きりさめについては未だ最大射程に達しておらず、攻撃は見送られた。

 ダンダンダンダン……ダダダダン、ダダダダダン、ダンダンダンダン!!!!

 海上に軽快な砲撃音が響き渡る。
 計4隻の護衛艦から放たれる砲弾の嵐。
 各砲が毎分40発以上の連射速度を誇り、護衛艦しまかぜ にあっては2門の主砲が
装備されている。
 毎分200発以上、毎秒おおよそ3.5発もの砲弾、大砲の弾幕ともいえる攻撃がグレードアトラスター周辺に降り注いだ。

 戦艦周辺には、轟音と共に猛烈な着弾の炎が出現、至近弾は海の水を巻き上げる。
 水への着弾音、そして金属同士がぶつかる不快な音が鳴り響く。

「命中!!命中!!命中!!」
 
「沈め!!沈め沈め沈め沈めぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 出現する炎と爆炎で敵戦艦は包み込まれ、どの程度ダメージを与えたのか全く解らない。 通常は一定時間以上撃つと効果確認をしたくなるところだが、護衛隊群は攻撃の手を緩めなかった。
 
「撃て撃て撃て撃てぇぇぇぇぇ!!!!!」

 127mm砲、数字を口で言えば小口径砲のようにも聞こえる。
 しかし、その一撃……威力を目の当たりにすれば、決して砕けぬ物は無いと思い込んでしまうほどの猛烈な一撃。
 それらが一分で200発以上も打ち込まれる。
 最大射程であるため、精密な攻撃は出来ない。
 至近弾や外れ弾も多くあるが、明らかに命中弾も多い。
 しかし……。

 爆炎の中で敵の主砲及び副砲が旋回、猛烈な発射炎が出現した。

「敵艦発砲!!弾数12!!」

 すぐに迎撃ミサイルが発射され、再び空中で7発もの砲弾が爆発する。
 距離が近くなってきたため、46cm砲等は斜角が低く、迎撃が明らかに難しくなってきていた。

「敵、健在!!!」

「くそっ!!!硬い……硬すぎる!!!なんて硬さだっ!!」

 爆炎の中、敵戦艦は健在で、爆炎の中からも撃ってくる。
 司令坂野はその正確な砲撃に舌を巻く。

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第106話軍神と呼ばれし者2P2


◆◆◆

 海上自衛隊 第4護衛隊群 イージスシステム艦 ちょうかい

「敵、第2射を発射、弾数6、内1発が至近弾になる可能性有り!!」

「なんだって?二射目で合わせて来たというのか!?」

 このまま進むと至近弾を食らう可能性がある。
 第2次世界大戦の測量方式だと、2射目でいきなり至近弾など考えにくかった。
 まさかFCS(射撃管制システム)でも付いているのかという疑問が頭に沸く。
 艦長千月は敵の技量の高さに舌を巻いた。
 至近弾、直撃弾ではないとはいえ、46cmほどの巨弾が相手だと非防御区画に相当なダメージを与える可能性があった。
 避けるという手もある。
 しかし……。

「迎撃するぞ、SAM(艦対空誘導弾)発射!!」
 
 すでに火器管制レーダーによって、砲弾を追尾している。
 Mk41垂直発射システムのふたが開き、猛烈な煙と共に、空に向かって光の矢が放たれる。
 イージス艦 ちょうかい は艦対空誘導弾を発射する。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 超戦艦 グレードアトラスター

「敵、爆発!?」

 目標として射撃していた敵が一瞬煙に包まれる。

「着弾??いや、誘爆か??まだ砲弾は飛翔中のはず……む!!?」

 敵から空に向かって光の矢が放たれる。
 着弾では無く、ロケットの発射煙のようだった。

「ロケットカッ!!???攻撃が来るぞっ!!対空戦闘部隊、気を引き締めろ!!」

 あの超威力のロケットがまだ残っていたようだ。
 ラクスタルの額に冷や汗が伝る。

 次の瞬間、上空に閃光が走った。
 
 ガァァァッ…ゴォォォォォォォォ

 艦対空誘導弾は飛翔中の46cm砲弾に正確に着弾、砲弾の信管が作動し、空に猛烈な火球を出現させた。

 爆発の轟音は、付近の海域に響き渡った。

 数十秒後、5発の主砲弾が海に落ち、大きな水柱を上げる。

「バカなっ!!何故だ。何故5発しか着弾しないっ!!!」

 メイル砲術長は額に脂汗をびっしりとかきながら驚愕の声を発する。
 上空で一つの爆発が起きたとき、うすうすは感づいていた。

 まさか……まさか……
 
「上空で……砲弾を迎撃したと言うのかっ!!!」

 あり得ない事、いや、あってはならない事。
 目視出来ないほどの速度で飛翔する砲弾が迎撃される。
 装甲で耐えるのでも無く、高速で避けるのでも無く弾が迎撃される事実。
 これはこちらの手が封じられるのと同義であると同時に、航空戦力については絶望的だと思い知らされる。

 すべての戦略が根底から覆されるという衝撃。
 戦場で……命をかけた現場でそれが判明する。
 敵はあり得ないほど長射程の槍を持つと同時に、考えられないほど正確に迎撃する盾すらも持っている。

 どうすれば良い……。
 メイル砲術長にかつてない恐怖がこみ上げた。

「メイル砲術長、うろたえるな。今敵は1発しか迎撃出来なかった。
 砲弾が全て迎撃出来る訳では無いという証拠だ!!」

 話は続く。

「敵が主砲を撃ってこない所をみると、射程距離に入っていないのだろう。
 敵の砲は我が砲の副砲よりも口径は小さい。
 敵の射程距離に入る頃には我が砲の副砲も使用可能となるだろう。
 力で押し通す!!」

 日本国は自艦にダメージを与える可能性のある砲弾だけを迎撃していたが、そこまでの精密射撃が可能であるという事まで、帝国軍人はそこまで考えが至らない。

 さらに距離は詰まり、再度主砲は発射された。

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第106話軍神と呼ばれし者2P1

ナハナート王国 西側海域 日本国海上自衛隊第4護衛隊群 
 イージスシステム護衛艦 ちょうかい

 海を裂き、鋼鉄の艦隊が進む。
 まるでポリゴンで作られたかのような……直線の組み合わせで作られた形、他の魔法文明からすると強力な艦隊に見え、逆にグラ・バルカス帝国艦艇を見慣れた者からすると、力強さは感じぬだろう。

 第4護衛隊群はイージス艦ちょうかいを先頭に、一列となる単縦陣で突っ込んでいく。

「前方敵、単艦で突っ込んできます!!」

 艦長千月は超巨大戦艦を睨み付ける。
 拝命以来、まさか自分が大和型戦艦と砲撃戦を繰り広げるなど思ってもいなかった。
 伝説とまで言われた不沈戦艦に類似した戦艦、砲撃だけでどこまでやれるのか?
 なるべく砲撃で決めたい。敵の砲撃の嵐が吹き荒れる短魚雷の射程まで近づきたくない。
 第2次世界大戦中の大艦巨砲主義の極み、地球史でいうところの究極とも言える砲撃に特化した戦艦、「大和型戦艦」 に酷似した化け物にどれほど砲撃が通用するのか。
 千月の額に汗が流れる。
 
「砲撃戦用意!!!目標、敵巨大戦艦!!」

「砲撃戦よーい!!射程まであと14分!!」

 敵の射程距離内を13kmも進まなければならない。
 千月の額に汗がにじみ出る。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 最大最強戦艦 グレードアトラスター

 全長263m、幅38.9m、満載排水量72809トンにも及ぶ巨艦が海を裂いて突き進む。
 最高速度は日本の大和型戦艦よりも速く、巨艦としては異例の30ノット(時速約55km)もの速度が出る。
 主兵装である45口径46cm3連装砲3基、1基は対艦誘導弾で壊れてしまったが、2基は健在であり、その巨砲は帝国の技術力の高さが伺えた。

 司令カイザルは艦長ラクスタルに話しかけた。

「艦長、日本国の技術力は想定以上だ……自信はあるか?」

「今まで日本は射程の外から、何処から撃ったかも解らぬ状況で撃ってきました。
 しかし、今彼らは視認できる距離にいる。
 このグレードアトラスターの砲撃距離に間もなく敵は入る。
 艦隊決戦で負ける艦ではございません……そうだな?メイル砲術長」

「はい……攻撃範囲内で我が艦が負けることは考えられません。世界最大最強の砲撃をもって、敵を粉砕してくれましょうぞ!!!」

 歴戦の連勝、空中戦艦すらも撃沈した偉業が、絶対的自信を生み出す。

 髪が少し禿げ上がり、白髭を生やした初老の男、砲術長メイルが絶対の自信をもって答えた。


 彼らは艦隊決戦が行えることを神に感謝した。

 前世界において、艦隊決戦が行われる機会は減ってきていた。
 空母こそが艦隊の主力であり、大艦巨砲主義は過去の遺物であるとの指摘もあった。
 しかし、国ごと異世界へ転移したことにより、戦艦は見直される。

 近接信管を用いた対空砲を突破出来る航空戦力は無く、破壊神の如き戦艦の主砲は1撃で敵艦を砕いた。
 その圧倒的とも言える強さは敵の反撃の意思を挫き、絶対に勝てない象徴として、グラ・バルカス帝国に対する恐怖の対象として、戦艦の存在価値が見直される。
 帝国海軍内では再び大艦巨砲主義が浸透しつつあった。

 日本国との今回の海戦、衝撃が駆け抜ける。

 日本国は空母をあっさりと砕き、戦艦を見えぬ位置から攻撃してきた。
 どちらの主義であっても勝てない相手。しかし戦艦は少なくとも空母よりは頑丈であり、敵の強力な一撃に耐えることが出来る事も証明された。

 見つけることの出来ない敵、一方的にやられる悔しさに握りしめた拳からは血が滴った。
 悔しさに悔しさを重ねたが、ようやく敵が目の前に現れる……待ちに待ったこの時、我が牙が届く位置まで来た。
 後部主砲も使用するため、徐々に艦は回頭し、敵と確度がつく。

 艦長ラクスタルの目が光る。

「主砲用意!!」

 全長2m、砲弾重量1460kgにも及ぶ巨弾が装填される。
 敵との距離を測定し、必要な事項が高速で計算された。
 毎秒10度の角度で主砲の仰角がつき、仰角45度となった。
 
 敵との距離は約40km

「発射準備完了!!」

「てーーっ!!!」

 自艦よりも巨大な発射炎が出現する。
 その威力、衝撃波は海上にも伝わり、海が震えた。
 時速2808kmで打ち出された巨弾3発は放物線を描き飛翔する。

 1.5トンに近い重さの弾は富士山よりも遙かに高い高度、海抜高度11900mにも達した。

「敵艦隊、二手に分かれます!!!」

 まだ距離があるため、発射から到達まで50秒以上を要する。
 着弾前に単縦陣で近づいてきていた敵は左右に分かれる。

「おおぉぉぉ!!」

「艦隊が割れたぞっ!!」

 まるで単身で突き進む巨大戦艦から逃げるかのように二手に分かれた敵。
 突き進むグレードアトラスター。

「弱い方が逃げるのだ!!」

 初めて敵を怯ませたかのようにも見え、艦橋はざわめく。 
 
 海に巨大な水柱が3本出現した。

 直ちに着弾地点が観測され、必要な修正が成される。
 計算しながら次弾が装填された。

「後部主砲も使用して射撃を行う」

 ゆっくりと主砲が回転し、敵を捕らえた。

「てーーっ!!!」

 再び破壊が海上に出現した。

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