2020年09月18日

第107話世界に満ちし希望P6

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 日本国 首都 東京 

「ぬぅ……なんということだっ!!すまん、すぐに日本の外交担当者に取り次いでくれ!!」

 帝国海軍主力艦隊の敗退は皇太子グラ・カバルの耳に入ることとなる。
 彼は日本での生活の中で、軍事技術においても彼らには勝てない事を肌で感じていた。

「このままでは……私の愛する帝国臣民に不幸が訪れてしまうっ!!
 ここにいるのは天啓だ!!神がグラ・バルカス帝国を救えと我をここに残したのだっ!!!」

 すこし思い込みの激しい皇太子グラ・カバルは彼なりに帝国を救うために動き始めるのだった。



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第107話世界に満ちし希望P5


 帝都防衛隊長の口から帝都が危機に瀕していると聞き、皆戦慄する。
 今まで勝ちすぎたグラ・バルカス帝国。軍に疎い大臣達の征服欲も、今回の海戦結果は沈黙せざるを得ない内容だった。
 世界征服や、さらなる領土拡大だけでも危うい事を、会議の面々は理解するのだった。

 急遽入室した軍幹部が軍本部長サンド・パスタルと帝都防衛隊長ジークスに耳打ちする。
 サンド・パスタルの顔は白から青に変わっていった。

「どうした?何があった」

 軍本部長の変化に気づいた皇帝が問う

「い……いえ……その……」

 返答に窮する軍本部長、見かねてジークスが報告した。

「イルネティア地区沖に展開中の中央第2艦隊、戦艦リゲルU他12隻が魚雷による雷撃を受けたようです。現在停泊中の他の艦艇も攻撃を受けています!!!
 また、停泊していたカルスライン社のタンカーも攻撃を受けたと
 敵は潜水艦のようですが、捕捉出来なかったようです」
 
「そこまで……来ているというのか」

 イルネティアはムー大陸レイフォル地区の西側に位置する島で、元はイルネティア王国であったが、帝国によって武力制圧された。
 レイフォルの西にあるため、明らかに帝国の勢力圏内で起きた一方的攻撃。

 勢力圏内を自由に移動されるのでは、ここも安全とは言えない事を理解する。
 
 安全な場所など無いと言われているようで、自分も攻撃を受けるかもしれないという事実に背筋が凍る。

 騎乗で人を動かし、数値で戦死者を管理していた人間は、自分がその一文字に加わるかもしれないという事実に衝撃を受けた。
 滅せよと命じてきた自分たちが滅せられるかもしれない。

 死の可能性を理解し、全員が固まった。

「ここも安全とは限らぬというのか……」

 帝王グラ・ルークスは目を瞑る。

「……今後の作戦会議は戦時会議室で執り行う」

 勢力圏内で攻撃が起きたのであれば、敵が帝都へ来る可能性が捨てきれない。
 帝都において逃げなければならないという、あまりの屈辱。
 彼らはすぐに地下に作られた戦時会議室へ移動を開始する。
 
 呉基地に所属する日本国海上自衛隊第1潜水艦群 第1潜水隊
 じんりゅう しょうりゅう まきしお いそしお
 の4隻は、ムー国で燃料給油を行い、旧イルネティア王国沖に展開するグラ・バルカス帝国艦隊に雷撃、戦艦1隻を含む12隻を撃沈した。

 
 艦隊の燃えさかる炎は、その光をある者は恐怖の対象として、そしてある者は希望の光ととらえる。

 燃えさかる赤き光は王国の夜空を赤く焦がすのだった。

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第107話世界に満ちし希望P4


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 夜

 低気圧が帝都を覆い尽くし、雲は低く、雨が降り注ぐ。
 帝都ラグナ、帝王グラ・ルークスの住まう邸宅の1室において、緊急の帝前会議が開催されていた。

 会議上では皆暗く、特に軍上層部の面々は苦渋の表情を浮かべる。
 
 帝王 グラ・ルークスを中心に
 帝王府長官 カーツ
 帝王府副長官 オルダイカ
 その他各省庁の長官、次官、そして軍本部の大幹部達が並ぶ。
 軍部の中には軍本部の本部長サンド・パスタル、帝国三将最後の一人、帝都防衛隊長ジークスも含まれていた。

「ようやられたようだな、サンド・パスタルよ。
 今後の予定を聞かせよ」

 軍本部長サンド・パスタルの額からは、滝のような汗が流れる。

「は……はっ、現在主力艦隊再建のため、カルスライン社はもちろんの事、ド・デカテオン社、ゲールズ社、ベルディエンチェ社の各主要企業には兵器の量産を指示しております」

 サンド・パスタルは声を震わせて答える。

「で?」

「はっ!!兵員を拡充し……」

「聞きたいのはそこではない」

「………」

 サンド・パスタルは声が出なかったため、帝都防衛隊長ジークスが話し始めた。

「今回帝国艦隊は日本国と交戦し、甚大な被害を受けました。
 しかも日本国に対しては全くと言って良いほどダメージを与えていない。
 強いて言うなら弾代と燃料代程度の経済的ダメージしか与えていないといっても過言ではありません。。
 我々は過去の経験則から導きだした日本国はそこそこ強いと判断していました。
 しかし、現実は規格外に強かった。
 荒唐無稽な前線での報告はほぼすべて本当の事だった。
 かなり強力な国と想定していましたが、それでも甘く見すぎていた……としか言い様がありません」

 ジークスが話を続けようとしたとき、帝王府長官カーツが吼えた。

「馬鹿者っ!!甘く見すぎていたでは収まらんぞっ!!
 我が国は世界に宣戦布告をしているのだっ!!
 敵が思ったより強かったから、ごめんなさいで済むかあっ!!!!!!
 グラ・カバル皇太子殿下の件と言い、軍部は弛んどるのかっ!!」

「軍部は決して弛んではいません。
 カバル皇太子殿下の件は、軍部は反対意見を出しましたが、帝王府からの強い要請があったと聞いています」

「ぐっ!!今後はどうするのか言ってみろ!!」

「しばらくは軍備を強化し続け。防衛に徹するべきでしょう。
 守る方が、攻めるよりは簡単です。
 敵の出方を見て対応するしかありません」

「なんだとっ!!栄えあるグラ・バルカス帝国が守りに徹するだとぉ!!」

 会議室に怒号が飛び交う。
 グラ・ルークスが手を上げると皆黙った。

「それほどまでか……日本国は?」

「……はい」

「解った。ジークス、本土防衛はお前に任せる。今後どうなると考える?」

「日本国の兵器の性能は想定を遙かに超えます。
 今回の海戦ではそもそも兵器の発射位置すら掴めていません。
 レーダーすらも使用不能にされます。
 よって、基本的に日本国との戦いではレーダーに頼りすぎる事無く、哨戒機を多数出して消息を絶った所に大量の航空機を投入、圧倒的物量でたたきつぶす方向性で行きたいと思っています。
 無線も使用不能にされることもある事から、有視界飛行と発光信号の面制圧哨戒を物量で行うしかありません。
 現在同戦法を行うための研究にとりかかっています」

 彼は続ける。

「敵はおそらくレイフォルに攻撃を仕掛けてきます。敵陸軍兵力の大規模上陸は行われていない事から、ムーが主力、日本国がサブとなって攻めてくるでしょう。
 日本国のこれまでの戦法ならば、レイフォル沖に展開する海軍を無力化し、兵糧攻めをしつつ空爆で陸軍を弱体化、最後にムーが攻め込んでくる……という戦法を取ると考えられます。
 しかし、ムー国の最寄りの基地でさえレイフォル沖から800kmは離れている。
 日本国の戦闘機の戦闘行動半径は、現在調査中ですが、800km以上あるなら脅威と言って良いでしょう。
 ただ、我が軍の兵糧攻めを使用とした場合、主力は海軍になります。
 北回りの海域に、機雷を大量に設置して完全封鎖します」

「北回りの海域を封鎖したら、今後の神聖ミリシアル帝国戦で苦労するのではないか?」

「現在はそのような状況ではありません。
 帝都防衛隊長として、帝国本土だけは敵の侵略から守る必要があります。
 本土防衛のため、レイフォルの陥落だけは避けたい。
 レイフォルさえ陥落しなければ帝都は安全であると断言できるでしょう」
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