日本国 防衛装備庁
日本国の防衛装備に関する最前線とも言える防衛装備庁。
とある1室、昼休みに職員である天城と町陰が話をしていた。
少し尖った目をしている町陰が岡田に話始める。
「聞いたか?呉にあるグラ・バルカス帝国海軍のグレードアトラスターだが、射撃管制装置と機関を除いて、本当に大和型戦艦に構造が似ているらしい」
似ているとは聞いていたが、内部構造までそっくりという事実に岡田は目を丸くする。
「そっくりなん??」
「いや、似ているとだけ報告が上がっている。
そもそも大和型の完全なデータは今失われているから、詳細な部材までそっくりかどうかなんて誰にも解らんよ。
しかし、それを改造して海自で一線に配置する案があるらしいぞ」
突拍子も無い話、岡田は税金の無駄ともいえるその策に怒りすら感じた。
「は?いくらなんでも設計が古すぎる。改造より新規に護衛艦作った方が安く付く。
壊れた部分の再構成など、金がかかりすぎる。実質的に無理だろう」
「いや、政府は本気らしいぞ。
この国は覇権国家が多すぎるため、相手に強さを伝えるには一番解りやすい戦艦を採用したい。
しかも大和に似ているなら、なおさら一線に出したい。
このままでは古くて使えないから、近代戦にも耐えうる改装はどうやれば良いか、上層部には話が来ている。
間もなく我らにも降りてくる。
大変な作業になりそうだ。しかも……」
いくら何でも無理なことを町陰は言っている。
岡田は彼の話の途中にかぶせて話す。
「いやいや、無理だって。
予算も限られている。海自の人員も足りない。
それに直すより作る方が安いんじゃ無いか?
大体、強さを伝えるために確かに戦艦は解りやすいが、1隻しか持っていないと解ったら作る力が無いと逆に舐められるじゃないか」
「お前の悪い癖だ。話は最後まで聞け。
予算は特別予算が付くそうだ。今の日本は未曾有の好景気、政府にも金があるのだろう。 今の構想では戦艦……いや、大型の護衛艦は3隻が新造、1隻がグレード・アトラスター改良型になる。
相当な省力化が図られる。
防衛省はパーパルディアに引き続き、今回のグラ・バルカス帝国の侵攻での教訓、圧倒的物量かつ攻撃力の高い相手を敵にした場合、護衛艦では火力不足であると判断した。
人員不足も逆に効いている。
海自の限りある人員を効率的に配置し、最大の効果が得られるようにするためにも、艦の大型化は仕方ない。
中途半端に大型化するくらいなら戦艦を作ってしまえと……戦時特別補正予算があるうちに、金のかかる高性能艦に予算を割り当ててしまえと、まあそういうことだ」
説明を要約、捕捉する。
○ 政府予算は潤沢である
○ 自衛隊は転移後実戦続きであり、実戦の伴う職種になっている。
命の割に合わない給料で、採用が思うように行かず、人員不足に陥っている
○ コスト的には護衛艦を量産した方が遙かに良い
○ しかし、人的資源が少なく、今回のような圧倒的物量を前にするとどうしても護衛 艦のみでは火力が不足しがちである
○ 核は現在無く、作っても簡単に使用できない
○ まだこの星には国交を結んでいない国家が多数あり、不確定要素が多すぎる
○ よって、単艦の性能をとことん上げる事とした
○ 本来ならば、そこそこ高性能かつ大型化した方が効率は良いが、一時的な補正予算 がついている今のうちに、現在の人員で動かせる最高性能艦の計画を立てた。
○ 艦の大型化は手探り状態であるため、4隻のみに予算が充てられた
「アセーナルシップ(ミサイルを大量に積んだ船)という選択肢もあるだろう」
「あれは防御が弱いからな。敵か味方か解らない状態でいきなり攻撃を受ける事も今まで多々あった。
とにかくこの星の敵は数が多いことが多々ある。単艦で対応する可能性も捨てきれない
防御力はいるんだよ。
ならば、考え得る限りで最大、最強の艦を作ってしまえって事になるんだよ」
「費用対効果が悪すぎる気がするが」
「そうでもないぞ。他の国家が日本を恐れて戦争が1回回避出来るなら、戦艦数隻でもおつりが来るほどの経済的負担が減る。
金は好景気によりいっぱい入ってきたが……繰り返すが海自の入隊は少ないから、人的資産の方が遙かに大切なんだよ
今考えうる限りの案が出ているから、どんな艦になるかは解らんがな。
大型化は手探り、試験的な意味合いもある。
4隻は確定だが、その後どうなっていくかは解らん」
「作れというなら、どうせなら最強の艦が良いな……」
「ああ、ちなみに新造の3隻はヤマト型護衛艦というらしいぞ。
ひらがなでは無く、カタカナ。
グレードアトラスター改がなんて名前になるかは知らん。
各護衛隊群に1隻ずつ配置される予定だ。
ただ、長期的には空母も持つ予定があるため、護衛隊群の編成はこのまま4個で行くのかどうかは確定していない。
威圧も目的の一つなので、ステルス製の他にも見た目も重視するってさ
新造の護衛艦には46cmリニアレールガンなども検討しているんだとさ」
「り……リニアレールガン??射程が長すぎると当たらんだろ……しかし本格的だな……電力が足りないんじゃ」
「砲弾は誘導翼砲弾、動力も通常だと電力は足りなくなるは、燃料は喰うわで、この広い星を自由に何処までも行けるよう、原子力も検討されている」
「なら、対空砲は……」
「レーザー兵器も合わせて搭載予定、今ある最新技術のてんこ盛りになる。夢だな。
間もなく俺たちも忙しくなるぞ!!
まあ……実戦配備は相当先になりそうだがな」
岡田の否定的な気持ちは消える。
開発完了は遙か先であろうが、二人の職員は未来的兵器の開発に携われる事、最強の艦を作ろうと闘志をもやすのだった。