2020年09月18日

第107話世界に満ちし希望P6

◆◆◆

 日本国 首都 東京 

「ぬぅ……なんということだっ!!すまん、すぐに日本の外交担当者に取り次いでくれ!!」

 帝国海軍主力艦隊の敗退は皇太子グラ・カバルの耳に入ることとなる。
 彼は日本での生活の中で、軍事技術においても彼らには勝てない事を肌で感じていた。

「このままでは……私の愛する帝国臣民に不幸が訪れてしまうっ!!
 ここにいるのは天啓だ!!神がグラ・バルカス帝国を救えと我をここに残したのだっ!!!」

 すこし思い込みの激しい皇太子グラ・カバルは彼なりに帝国を救うために動き始めるのだった。



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第107話世界に満ちし希望P5


 帝都防衛隊長の口から帝都が危機に瀕していると聞き、皆戦慄する。
 今まで勝ちすぎたグラ・バルカス帝国。軍に疎い大臣達の征服欲も、今回の海戦結果は沈黙せざるを得ない内容だった。
 世界征服や、さらなる領土拡大だけでも危うい事を、会議の面々は理解するのだった。

 急遽入室した軍幹部が軍本部長サンド・パスタルと帝都防衛隊長ジークスに耳打ちする。
 サンド・パスタルの顔は白から青に変わっていった。

「どうした?何があった」

 軍本部長の変化に気づいた皇帝が問う

「い……いえ……その……」

 返答に窮する軍本部長、見かねてジークスが報告した。

「イルネティア地区沖に展開中の中央第2艦隊、戦艦リゲルU他12隻が魚雷による雷撃を受けたようです。現在停泊中の他の艦艇も攻撃を受けています!!!
 また、停泊していたカルスライン社のタンカーも攻撃を受けたと
 敵は潜水艦のようですが、捕捉出来なかったようです」
 
「そこまで……来ているというのか」

 イルネティアはムー大陸レイフォル地区の西側に位置する島で、元はイルネティア王国であったが、帝国によって武力制圧された。
 レイフォルの西にあるため、明らかに帝国の勢力圏内で起きた一方的攻撃。

 勢力圏内を自由に移動されるのでは、ここも安全とは言えない事を理解する。
 
 安全な場所など無いと言われているようで、自分も攻撃を受けるかもしれないという事実に背筋が凍る。

 騎乗で人を動かし、数値で戦死者を管理していた人間は、自分がその一文字に加わるかもしれないという事実に衝撃を受けた。
 滅せよと命じてきた自分たちが滅せられるかもしれない。

 死の可能性を理解し、全員が固まった。

「ここも安全とは限らぬというのか……」

 帝王グラ・ルークスは目を瞑る。

「……今後の作戦会議は戦時会議室で執り行う」

 勢力圏内で攻撃が起きたのであれば、敵が帝都へ来る可能性が捨てきれない。
 帝都において逃げなければならないという、あまりの屈辱。
 彼らはすぐに地下に作られた戦時会議室へ移動を開始する。
 
 呉基地に所属する日本国海上自衛隊第1潜水艦群 第1潜水隊
 じんりゅう しょうりゅう まきしお いそしお
 の4隻は、ムー国で燃料給油を行い、旧イルネティア王国沖に展開するグラ・バルカス帝国艦隊に雷撃、戦艦1隻を含む12隻を撃沈した。

 
 艦隊の燃えさかる炎は、その光をある者は恐怖の対象として、そしてある者は希望の光ととらえる。

 燃えさかる赤き光は王国の夜空を赤く焦がすのだった。

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第107話世界に満ちし希望P4


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 夜

 低気圧が帝都を覆い尽くし、雲は低く、雨が降り注ぐ。
 帝都ラグナ、帝王グラ・ルークスの住まう邸宅の1室において、緊急の帝前会議が開催されていた。

 会議上では皆暗く、特に軍上層部の面々は苦渋の表情を浮かべる。
 
 帝王 グラ・ルークスを中心に
 帝王府長官 カーツ
 帝王府副長官 オルダイカ
 その他各省庁の長官、次官、そして軍本部の大幹部達が並ぶ。
 軍部の中には軍本部の本部長サンド・パスタル、帝国三将最後の一人、帝都防衛隊長ジークスも含まれていた。

「ようやられたようだな、サンド・パスタルよ。
 今後の予定を聞かせよ」

 軍本部長サンド・パスタルの額からは、滝のような汗が流れる。

「は……はっ、現在主力艦隊再建のため、カルスライン社はもちろんの事、ド・デカテオン社、ゲールズ社、ベルディエンチェ社の各主要企業には兵器の量産を指示しております」

 サンド・パスタルは声を震わせて答える。

「で?」

「はっ!!兵員を拡充し……」

「聞きたいのはそこではない」

「………」

 サンド・パスタルは声が出なかったため、帝都防衛隊長ジークスが話し始めた。

「今回帝国艦隊は日本国と交戦し、甚大な被害を受けました。
 しかも日本国に対しては全くと言って良いほどダメージを与えていない。
 強いて言うなら弾代と燃料代程度の経済的ダメージしか与えていないといっても過言ではありません。。
 我々は過去の経験則から導きだした日本国はそこそこ強いと判断していました。
 しかし、現実は規格外に強かった。
 荒唐無稽な前線での報告はほぼすべて本当の事だった。
 かなり強力な国と想定していましたが、それでも甘く見すぎていた……としか言い様がありません」

 ジークスが話を続けようとしたとき、帝王府長官カーツが吼えた。

「馬鹿者っ!!甘く見すぎていたでは収まらんぞっ!!
 我が国は世界に宣戦布告をしているのだっ!!
 敵が思ったより強かったから、ごめんなさいで済むかあっ!!!!!!
 グラ・カバル皇太子殿下の件と言い、軍部は弛んどるのかっ!!」

「軍部は決して弛んではいません。
 カバル皇太子殿下の件は、軍部は反対意見を出しましたが、帝王府からの強い要請があったと聞いています」

「ぐっ!!今後はどうするのか言ってみろ!!」

「しばらくは軍備を強化し続け。防衛に徹するべきでしょう。
 守る方が、攻めるよりは簡単です。
 敵の出方を見て対応するしかありません」

「なんだとっ!!栄えあるグラ・バルカス帝国が守りに徹するだとぉ!!」

 会議室に怒号が飛び交う。
 グラ・ルークスが手を上げると皆黙った。

「それほどまでか……日本国は?」

「……はい」

「解った。ジークス、本土防衛はお前に任せる。今後どうなると考える?」

「日本国の兵器の性能は想定を遙かに超えます。
 今回の海戦ではそもそも兵器の発射位置すら掴めていません。
 レーダーすらも使用不能にされます。
 よって、基本的に日本国との戦いではレーダーに頼りすぎる事無く、哨戒機を多数出して消息を絶った所に大量の航空機を投入、圧倒的物量でたたきつぶす方向性で行きたいと思っています。
 無線も使用不能にされることもある事から、有視界飛行と発光信号の面制圧哨戒を物量で行うしかありません。
 現在同戦法を行うための研究にとりかかっています」

 彼は続ける。

「敵はおそらくレイフォルに攻撃を仕掛けてきます。敵陸軍兵力の大規模上陸は行われていない事から、ムーが主力、日本国がサブとなって攻めてくるでしょう。
 日本国のこれまでの戦法ならば、レイフォル沖に展開する海軍を無力化し、兵糧攻めをしつつ空爆で陸軍を弱体化、最後にムーが攻め込んでくる……という戦法を取ると考えられます。
 しかし、ムー国の最寄りの基地でさえレイフォル沖から800kmは離れている。
 日本国の戦闘機の戦闘行動半径は、現在調査中ですが、800km以上あるなら脅威と言って良いでしょう。
 ただ、我が軍の兵糧攻めを使用とした場合、主力は海軍になります。
 北回りの海域に、機雷を大量に設置して完全封鎖します」

「北回りの海域を封鎖したら、今後の神聖ミリシアル帝国戦で苦労するのではないか?」

「現在はそのような状況ではありません。
 帝都防衛隊長として、帝国本土だけは敵の侵略から守る必要があります。
 本土防衛のため、レイフォルの陥落だけは避けたい。
 レイフォルさえ陥落しなければ帝都は安全であると断言できるでしょう」
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第107話世界に満ちし希望P3


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 レイフォル地区 レイフォリア

 昼食時、ダラスは食堂で食事をとる。
 いつものように、情報収集の一環をかねてムーのテレビ放送をつけていた。

 軽快な音と共に、ムー国の放送が始まる。
 
『こんにちは』

 イケメンの男と、美人のニュースキャスターがおじぎをして、ニュースは始まった。

『ムー国政府の発表によりますと、先月未明、日本国自衛隊と神聖ミリシアル帝国の空中戦艦が、グラ・バルカス帝国主力艦隊と大規模な戦闘を行っていた事が判明いたしました』

 現時点、軍部から外務省へは特段の連絡が無い。
 食堂はざわついた。

 続けて、テレビに映像が映し出され、(ムー国政府提供)というテロップが流れた。
 日本国政府がムー国政府へ送った映像データの一部が国営放送で放映される。
 明らかに上空から移した映像、ぐちゃぐちゃに破壊された上部構造物、汚れたグラ・バルカス帝国海軍旗……そして旗艦のみが持つ事の出来る旗が一部破れた状態で映し出され、敵国……日本国の旗を揚げる艦が曳航していた。

「あ……あれはっ!!!」

 声が詰まる。
 グラ・バルカス帝国の象徴的な艦
 歴史上最大にして最強とも言える艦。戦艦グレード・アトラスターがズタズタになり、見るも無惨な姿を晒していた。

 テロップに、(グラ・バルカス帝国主力艦隊旗艦グレード・アトラスター)という文字が流れ、食堂は騒然となった。

『先日未明、グラ・バルカス帝国主力艦隊は、日本国自衛隊および神聖ミリシアル帝国空中戦艦連合艦隊と、ロデニウス大陸南西海上にて交戦し、グラ・バルカス帝国は数百隻を失って敗走いたしました。
 繰り返しお伝えしますーーー』

 ダラスは執務室に向かって走り出していた。

「バカなっ!!バカなバカなバカなバカなバカなアッ!!!」

 執務室に駆け込み、急ぎ軍部に確認を取るため、電話を取ろうとした。

「お食事中に失礼します。軍部から至急連絡が来ています!!」

 優秀な部下は、食事中に暗号信号を文章化し、すでに形にしていた。部下から文章を奪い取る。

「な……な……何だとっ!!そんな事がッ!!!」

 そこに記された事実は、外交官ダラスに衝撃を与えるには十分すぎる内容だった。

 指でなぞりながら、何度も見間違いでないか確認していく。
 見間違いであってほしいという気持ちが、何度も同じ文章を読ませる。
 そして、絶望が上塗りされていった。
 
 なぞる指は震え初め、汗で書類が濡れた。

 帝国海軍連合艦隊と、日本国との戦いの推移が記されていた。

○ 帝国海軍 第1先遣艦隊230隻、第2先遣艦隊210隻 全滅
○ 帝国海軍 連合艦隊 ナハナート王国西方海域で撤退
  被害甚大 現在詳細調査中
○ ナハナート王国西方海域にて敵艦隊と交戦、100発を超える被弾に耐えるも戦艦グ レードアトラスターは敵に捕獲される
○ 帝国陸軍リーム王国基地 全滅
○ 帝国空軍爆撃連隊   消息不明(未帰還)
○ 帝国海軍潜水艦隊   消息不明(未帰還)
○ 帝国陸軍特殊作戦群  通信途絶

 甚大とも言える損害、しかも相手の撃墜、撃破は1隻も確認出来ていないという文章も伏してある

 敵を見ることも無く一方的に撃破された……とある。

 彼の背中は汗でびっしょりと濡れ、足は震えさえも来ていた。

「まさか……まさか……」

 ダラスは目を見開く。
 かつて、日本の外交官が言っていた。
 日本国が参戦した場合、グラ・バルカス帝国は日本国に手も足も出ずに負けると。
 技術格差が70年以上の開きがあると……。
 
「あいつの言うことは……あいつの言っていたことは……ほ……本当だったのかぁっ!!!」

 基地バルクルスが落ちた時、大規模な物量でも落とせると考えていた。
 本国の懲罰艦隊がムー沖で敗れたのも、敗れた事事態は衝撃的ではあったものの、そもそも派遣した数が大国の首都を狙うには少なかった。
 おそらくは物量で敗れたのであって、軍事的な戦略ミスの可能性も捨てきれなかった。

 しかし今回は帝国は本気だった。
 誰がどう見ても本気だった。

 それが手も足も出ずに敗退したという事実。
 今回は神聖ミリシアル帝国の空中戦艦も参戦したらしいが、それでも敵に全く被害を与えた確認が出来ないなどあり得ない事だった。

「まずいっ!!まずいまずいまずい……まずいぞっ!!!」

 いともあっさりと滅ぼしてきた異界の蛮族達。
 それを可能にしたのは圧倒的な文明格差、軍事技術格差だった。

 この戦闘結果が突きつける事実は一つ。

 日本の方が圧倒的に軍事技術が上。

 我が国は強い。それは疑いようの無い事実。
 しかし、この結果はまぐれや偶然の成せる技ではない。
 もはや敵の強さに目を瞑り、帝国の強さを信じ続けることなど出来ぬほどの圧倒的敗北。

 このままではいともあっさり滅ぼしてきた異界の蛮族共と同様に我が方が滅ぼされるかもしれない。
 栄えあるグラ・バルカス帝国が……歴史あるグラ・バルカス帝国が……。

「そんな事……あってはならないっ!!!」

 彼は自分に出来ることは何かを考える。 

「同化政策をとればあるいは……」

 今までただの土地と考えていた各国の使い道を考える。
 ダラスはグラ・バルカス帝国の未来のため、動き続けるのだった。
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第107話世界に満ちし希望P2


◆◆◆

 中央世界 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス とある酒場

 この日の夕方、酔っ払い共はいつものように酒を飲み交わしていた。
 ドワーフ風の男が豪快にビールを一気飲みした後、話し始める。

「プハァーーうめぇ。一仕事の後のこの酒、染み渡るぜ」

 仕事後のキンキンに冷えた日本製ビールは格別だった。

「そういえば、グラ・バルカス帝国の大艦隊が日本へ向かってたんだっけ?あれ、どうなったんだろうな」

「ああ、知らねぇのかい?何でも先日大規模な戦闘が行われたようで、本日政府発表があるんだぜ」

「ああ、それで今日はこんなに人が多いのか」

 カルトアルパスは世界交易の拠点であり、情報が集まる。
 画像受信式魔導通信モニター(いわゆるTV)があるこの酒場も、情報を早く得たい商人や、各国の関係者、そして地元労働者で繁盛していた。

「ほらほら、来たぞ!!」

 美人のエルフキャスターのお辞儀からニュース番組が始まる。

「こんにちは、本日は神聖ミリシアル帝国広報部が先ほど重大な情報を文章にて発出いたしました。
 本日はこのニュースについてお伝えしていきます」

 酔っ払い共はモニターに注目した。

「先日未明、グラ・バルカス帝国主力連合艦隊と、我が国の空中戦艦パル・キマイラ及び日本国海上自衛隊が戦闘し、グラ・バルカス帝国艦隊の旗艦を含む数百隻を撃破、もしくは撃沈したため、敵艦隊は撤退を開始。
 我が国及び日本国の作戦部隊に被害はありませんでした。
 繰り返しお伝えします」

「被害無し?被害無しだって??おいおいおい、本当かよ」

「世界連合艦隊でも被害甚大だったのにな」

「あのグラ・バルカス帝国主力艦隊をやっつけたのか???」

 酔っ払い共はざわつく。
 ニュースは続く。

「我が国の空中戦艦パル・キマイラ及び日本国海上自衛隊は1000隻にも上るグラ・バルカス帝国主力艦隊と交戦し、数百隻を撃沈、グラ・バルカス帝国艦隊は撤退いたしました。
 現在撃沈した艦の具体的数値は情報を整理した後に発表されます。
 広報部によると、これは空中戦艦の効果的運用及び日本国海上自衛隊との連携がうまく取れた結果であり、今後も各国と連携した運用を行いたいとの事です。
 なお、軍事専門家によれば本海戦は圧勝であり、グラ・バルカス帝国製兵器の運用方法を我が国の軍隊が研究して対応した成果……」

 淡々と政府発表について伝えるニュースキャスター。
 政府は嘘は発表していなかった。
 グラ・バルカス帝国艦隊は実質的に日本国の前に敗れたが、神聖ミリシアル帝国は、さも自分が撃退したかの如く自国の強さを誇張して発表し、抱き込んだ軍事専門家に発言させる。

「おぉぉぉぉ、やっぱり神聖ミリシアル帝国は世界一だな」

「違いねぇ」

「魔帝製兵器を持っている我が国に、非魔法国家が勝てる訳がないんだ」

 敗戦続きだった彼らの、どんよりとした心に光が差す。
 神聖ミリシアル帝国の民はこのニュースを心から喜び、そして他国のこのニュースに触れた物達は、グラ・バルカス帝国でさえも退ける神聖ミリシアル帝国の圧倒的力に畏怖を覚える。

 日本を良く知る物達は、放送に情報操作が加えられたと見抜き、日本国の強さに震えるのだった。

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第107話世界に満ちし希望P1

日本国 防衛装備庁

 日本国の防衛装備に関する最前線とも言える防衛装備庁。
 とある1室、昼休みに職員である天城と町陰が話をしていた。
 少し尖った目をしている町陰が岡田に話始める。

「聞いたか?呉にあるグラ・バルカス帝国海軍のグレードアトラスターだが、射撃管制装置と機関を除いて、本当に大和型戦艦に構造が似ているらしい」

 似ているとは聞いていたが、内部構造までそっくりという事実に岡田は目を丸くする。

「そっくりなん??」

「いや、似ているとだけ報告が上がっている。
 そもそも大和型の完全なデータは今失われているから、詳細な部材までそっくりかどうかなんて誰にも解らんよ。
 しかし、それを改造して海自で一線に配置する案があるらしいぞ」

 突拍子も無い話、岡田は税金の無駄ともいえるその策に怒りすら感じた。

「は?いくらなんでも設計が古すぎる。改造より新規に護衛艦作った方が安く付く。
 壊れた部分の再構成など、金がかかりすぎる。実質的に無理だろう」

「いや、政府は本気らしいぞ。
 この国は覇権国家が多すぎるため、相手に強さを伝えるには一番解りやすい戦艦を採用したい。
 しかも大和に似ているなら、なおさら一線に出したい。
 このままでは古くて使えないから、近代戦にも耐えうる改装はどうやれば良いか、上層部には話が来ている。
 間もなく我らにも降りてくる。
 大変な作業になりそうだ。しかも……」

 いくら何でも無理なことを町陰は言っている。
 岡田は彼の話の途中にかぶせて話す。

「いやいや、無理だって。
 予算も限られている。海自の人員も足りない。
 それに直すより作る方が安いんじゃ無いか?
 大体、強さを伝えるために確かに戦艦は解りやすいが、1隻しか持っていないと解ったら作る力が無いと逆に舐められるじゃないか」

「お前の悪い癖だ。話は最後まで聞け。
 予算は特別予算が付くそうだ。今の日本は未曾有の好景気、政府にも金があるのだろう。 今の構想では戦艦……いや、大型の護衛艦は3隻が新造、1隻がグレード・アトラスター改良型になる。
 相当な省力化が図られる。 
 防衛省はパーパルディアに引き続き、今回のグラ・バルカス帝国の侵攻での教訓、圧倒的物量かつ攻撃力の高い相手を敵にした場合、護衛艦では火力不足であると判断した。
 人員不足も逆に効いている。
 海自の限りある人員を効率的に配置し、最大の効果が得られるようにするためにも、艦の大型化は仕方ない。
 中途半端に大型化するくらいなら戦艦を作ってしまえと……戦時特別補正予算があるうちに、金のかかる高性能艦に予算を割り当ててしまえと、まあそういうことだ」

 説明を要約、捕捉する。
 ○ 政府予算は潤沢である
 ○ 自衛隊は転移後実戦続きであり、実戦の伴う職種になっている。
   命の割に合わない給料で、採用が思うように行かず、人員不足に陥っている
 ○ コスト的には護衛艦を量産した方が遙かに良い
 ○ しかし、人的資源が少なく、今回のような圧倒的物量を前にするとどうしても護衛  艦のみでは火力が不足しがちである
 ○ 核は現在無く、作っても簡単に使用できない
 ○ まだこの星には国交を結んでいない国家が多数あり、不確定要素が多すぎる
 ○ よって、単艦の性能をとことん上げる事とした
 ○ 本来ならば、そこそこ高性能かつ大型化した方が効率は良いが、一時的な補正予算  がついている今のうちに、現在の人員で動かせる最高性能艦の計画を立てた。
 ○ 艦の大型化は手探り状態であるため、4隻のみに予算が充てられた

「アセーナルシップ(ミサイルを大量に積んだ船)という選択肢もあるだろう」

「あれは防御が弱いからな。敵か味方か解らない状態でいきなり攻撃を受ける事も今まで多々あった。
 とにかくこの星の敵は数が多いことが多々ある。単艦で対応する可能性も捨てきれない
 防御力はいるんだよ。
 ならば、考え得る限りで最大、最強の艦を作ってしまえって事になるんだよ」

「費用対効果が悪すぎる気がするが」

「そうでもないぞ。他の国家が日本を恐れて戦争が1回回避出来るなら、戦艦数隻でもおつりが来るほどの経済的負担が減る。
 金は好景気によりいっぱい入ってきたが……繰り返すが海自の入隊は少ないから、人的資産の方が遙かに大切なんだよ
 今考えうる限りの案が出ているから、どんな艦になるかは解らんがな。
 大型化は手探り、試験的な意味合いもある。
 4隻は確定だが、その後どうなっていくかは解らん」

「作れというなら、どうせなら最強の艦が良いな……」

「ああ、ちなみに新造の3隻はヤマト型護衛艦というらしいぞ。
 ひらがなでは無く、カタカナ。
 グレードアトラスター改がなんて名前になるかは知らん。
 各護衛隊群に1隻ずつ配置される予定だ。
 ただ、長期的には空母も持つ予定があるため、護衛隊群の編成はこのまま4個で行くのかどうかは確定していない。
 威圧も目的の一つなので、ステルス製の他にも見た目も重視するってさ
 新造の護衛艦には46cmリニアレールガンなども検討しているんだとさ」

「り……リニアレールガン??射程が長すぎると当たらんだろ……しかし本格的だな……電力が足りないんじゃ」

「砲弾は誘導翼砲弾、動力も通常だと電力は足りなくなるは、燃料は喰うわで、この広い星を自由に何処までも行けるよう、原子力も検討されている」

「なら、対空砲は……」

「レーザー兵器も合わせて搭載予定、今ある最新技術のてんこ盛りになる。夢だな。
 間もなく俺たちも忙しくなるぞ!!
 まあ……実戦配備は相当先になりそうだがな」

 岡田の否定的な気持ちは消える。
 開発完了は遙か先であろうが、二人の職員は未来的兵器の開発に携われる事、最強の艦を作ろうと闘志をもやすのだった。


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