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同日夜ーーー
「会議は上手くまとまって良かったですね」
フレイアとの会談の後、第2文明圏連合軍との午後の会議を終え、大内田と国岳は、事務室で話しをしていた。
「しかし、今回の作戦は本当に大規模ですね、陸さんも大変だろうけど、私の所も作戦が複雑かつ大規模で、準備にてんてこ舞いですよ。
海の方も本国が頑張って、神聖ミリシアル帝国との調整も上手くいったようです」
国岳も、仕事に追われていた。
「限られた空港での海自と連携も、思ったより大変ですね。しかしやらなければ!!!」
「第2文明圏連合とも調整が取れた。しかし最後の部分が上手くいくか……」
「やるしかないでしょう」
大内田は眼前にあるメモを手に取り、考える。
メモにはヒノマワリ王国奪還作戦だけではなく、その後の流れも記されていた。
「それにしても、ヒノマワリ王国のグラ・バルカス帝国軍の施設が事前情報より具体的に解った事は本当に良かった。
把握していない施設も含まれていましたし」
「フレイア王女の正式要請で政府もやりやすくなったと感じている事でしょうね」
「とにかく、自分たちに出来る仕事は、作戦の完全なる遂行、そして部下から死者は出さないようにしなければ」
敵は第2次世界大戦レベルの兵器を所持している。
陸上戦闘はハイテクが空や海に比べて効果が低くなる傾向がある。
大内田は決して部下を死なせないと決意するのだった。
準備は進む。
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日本国 防衛省 作戦会議室
会議室モニターに映し出されたムー大陸の地図。
地図上に自衛隊の配置状況が反映される。
「第1、第2潜水艦群、ムーのパテル港を出港、イルネティア王国海域へ向かいます」
ムー国北側の港町、パテルから潜水艦隊が出撃する。
「神聖ミリシアル帝国艦隊、出撃準備完了」
「各基地への燃料、弾薬は規定の数値に達しました」
「ムー国エヌビア基地、空自F-15,F-2出撃準備完了、海自P-1部隊燃料補給完了、対艦兵装装着開始」
「AWACS(早期警戒機)離陸、ハルナガ京周辺空域の警戒開始」
無機質な報告がなされ、モニター上に何処に何がいるのかが映し出される。
着々と準備は進んでいた。
「いよいよですね」
自衛隊幹部の三津木は、隣に立つ幹部に話しかける。
彼等は思い出す。
日本国による度重なる和平交渉はことごとく無視され、グラ・バルカス帝国は全世界に宣戦布告、さらなる交渉も、弱者のたわごとだと一蹴さた。
そして彼等は日本国へ大艦隊を派遣するに至る。
激戦だった。
日本国はミサイルを雨のように打ち込み、グラ・バルカス帝国の大艦隊を退けた。
「我々が守ってばかりでは無いと……彼等に気づかせなければ。
本気にさせた彼等が悪い」
三津木はまるで自分に言い聞かすように話す。
彼はこの作戦で多数のグラ・バルカス帝国軍の死者が出ると見積もっていた。
レイフォル奪還ともなると、他国軍も参加するため、民間人にも相当な死者が予想される。
作戦立案者の一人として、人の命という意味合いにおいての責任の重さを感じずにはいられなかった。
今帝国を排除しないと、彼等の刃は日本国民に向いているのだ。
(彼等にも家族がいるんだろうな)
ふとした考えが脳裏に浮かび、胸が締め付けられる。
日本国を守るため、極めて短期間での効率的破壊を立案した。
おそらく効率的に敵は破壊され、命を散らすだろう。
守るため、日本を守るためと自分に言い聞かせるが、想定される死者の多さに震えが来る。
前回の大艦隊は純粋な軍人が相手だった。
艦隊が東京に至った場合、敵を消滅させないと20万の単位の日本人が命を落とす試算がなされ、やらざるを得なかった。
しかし、今回は攻める側となる上に、レイフォル等の民間人が巻き込まれる可能性がある。
日本の為とは言え、解っていても気持ちは沈む。
三津木はグラ・バルカス帝国上層部の頭の硬さに苛立ちを覚えた。
奴らが対話に最初に応じていれば、今から行われる作戦で大量の兵が死ぬことも無かったろうに。
敵には残忍な人もいるだろうが、善人もまた多くいるに違いない。
こんな考えをする事事態間違っていると自分に言い聞かす。
三津木の脳裏に、様々な思いが交錯した。
個人の思いなどとは関係なく、作戦の第1段階、ヒノマワリ王国攻略作戦の開始が宣言されるのだった。
posted by くみちゃん at 17:10|
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