2020年11月29日

第110話 ヒノマワリ王国2P2


 鳩が異世界にいるのかと、少し驚きはしたものの、元々地球にあった国であることを思い出し、自分で納得する。

「どうやってここまで……いや……すごいな」

 日本国において、伝書鳩は鳩の帰巣本能を利用している。
 よって、基本的に手紙も片道切符であり、その場で飼っていた所にしか戻れない、とされている。
 しかし、第1次世界大戦中、他国においては基地を移動してもその移動先に伝書鳩が来る方法があったらしい。
 現在その技術は伝承されておらず、ロストテクノロジーとなってしまっていた。
 伝書鳩が使われていた事に、そしてその技術の高さに感嘆せざるをえない。

「会議に重要な影響を及ぼすかも知れませんので、確認してもらって構いません」
 
 王家の紋章の入った鳩、重大な情報を運んでいるのかもしれなかったため、ミックはフレイアに手紙を見るようにした。
 窓を開け、鳩の足から手紙を外す。
 ゆっくりと紙を開く。

「つっ!!!!!!」

 あまりにも衝撃的な事が記載してあった。
 耐えよう、耐えようとしているたが、耐えきれずに涙が頬を伝う。
 無言で震え出すフレイア。

「フレイア王女、大丈夫ですか?」

 国と国とのやりとりに個人的感情は不要であるが、皆、娘ほどの年の少女が泣いているのを見ると心が痛んだ。
 ミックが王女を気遣う。

「王と王子が幽閉され、お姉様……王女達は殺されてしまったようです」

「え??それはいったいどういう……」

「失礼、ヒノマワリ王国の諜報部とでも言いましょうか、情報に精通する貴族からの手紙です」

 同貴族は王家の紋章の入った鳩の使用を許されていた。
 フレイアは続ける。

「私が……グラ・バルカス帝国に食料を融通するよう、交渉に行った事は先ほどお話ししたとおりですが……帝国の実働部隊は……私の顔は知っていますが、姉妹の見分けが出来ません。
 帝国外交部門から私への暗殺指示を受けた部隊は私だけでは無く……おっ……おっ……お姉様達まで……」

 フレイアの感情があふれ出す。
 外交の場で、泣き出してしまうなどあってはならない事だと心では理解している。
 しかし、優しかったお姉様達が……殺された。
 もうあの笑顔、楽しい日々は決して戻ってこない。

「ううっうううっ…」

 自分が行かなければ死なずに済んだかもしれない。
 自分が……原因。

「うわああぁぁつ!!」

 ダラスから暗殺指示を受けた制統府は、王女暗殺を実働部隊へ指示する。
 しかし、確実に暗殺せよとの指令を受けた実働部隊は、姉妹の見分けがつかない。
 姉妹達は交流が多く、その家にいたからフレイアだとは限らないと判断した。

 被害の規模は問わないと言われていた。
 逃げられてはならないと判断し、同時に作戦を発動する事を決めた。
 フレイアを襲った夜、別の王女達はグラ・バルカス帝国によって暗殺されていたのだった。
 
 制統府は、王女暗殺が王家に伝わり、反旗を翻されては面倒なので、王家とヒノマワリ王国軍の連絡を遮断するため、すぐに王と王子達を幽閉したのだった。

「ひっ……ひっ……失礼ひっ、しました。ひっ」

 フレイアは強烈に決意する。
 グラ・バルカス帝国をヒノマワリ王国から排除すると。
 そして、ダラス、あいつを必ずヒノマワリ王国の法で裁いてやると。

 一時して彼女は落ち着きを取り戻し、ゆっくりと話し出す。

「ヒノマワリ王国の王家は幽閉され、実質的に国内の権限を失いました」

 復讐の炎が魂に宿る。

「私はヒノマワリ王国第3王女フレイアです。
 現在国内の王家の機能は停止しているため、非常時国家保護法により、現時点をもってヒノマワリ王国の実質的権限は、すべてこのフレイアに移行いたしました」

 狂気に染まりそうな心を必死で押さえる。

「非常時国家保護法により、ヒノマワリ王国内法はすべて、一時的にこのフレイアの意思により決定されます」

 非常時を想定した国家保護法。ずべての国内法を乗り越え、権限を集中させた1人によりすべてが決定可能となる。
 
「ヒノマワリ王国として、対グラ・バルカス第二文明圏連合国家及び日本国へ、正式に要請いたします。
 王国内において、国民を苦しめ続けているグラ・バルカス帝国を国外へ排除したい。
 協力を……要請致します!!」

 強烈な決意を示すフレイア。
 歴史は動き出す。

 ヒノマワリ王国からの正式要請に基づき、攻めにくいと考えていたムー及び日本国の枷は外れたのだった。 

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 17:08| Comment(21) | 小説

第110話 ヒノマワリ王国2P1

 ヒノマワリ王国領内 バルクルス仮設基地 第3会議室

 コの字型に並べられた椅子の中央部に見慣れない衣装を着た女性3人が座る。
 
 見た目は日本人のようにも見えるが、衣装が明らかに異なる文化を歩んできた事を物語る。

 娘3人の座る机の右側には、ムー統括軍現場指揮官のミックをはじめとし、他幹部が並んでいる。
 陸上自衛隊の大内田と、航空自衛隊幹部国岳、他数名の自衛官は左側に座る。

「それでは、3カ国協議を開始します」

 ムー国の進行役が場を進める。
 手で即されると、中央部に座る若い女性が立ち上がって、深く礼をした。

「ヒノマワリ王国 第3王女 フレイアといいます。
 このような場を設けて頂き、誠に感謝申し上げます」

 列強国であるムー国、そして列強に並ぶ強さを持つとされる日本国の関係者を前に、フレイアは少し緊張気味に話し始めた。

 深く礼をした後、彼女は現在のヒノマワリ王国の現状の説明、そしてヒノマワリ王国がグラ・バルカス帝国に降った経緯が説明される。

 グラ・バルカス帝国による外圧が生じた際、圧倒的な軍事技術と規模の差がある国という事は容易に理解出来た。
 そして降る事を拒否し、戦った国家の民の行く末も十分に調査された。
 帝国と戦えば、ヒノマワリ王国の民が奴隷となる可能性が高く、王政を捨ててでも、民の命を最優先とする決断がされる。
 ヒノマワリ王国はグラ・バルカス帝国の支配下へと入ったのであった。

 食料だけは絶対に取り上げない、民を餓えさせないという条件の元に。
 これは文章による調印だけでは無く、外交の場でも再三にわたって確認した。

 やがて制統府が王城の近くに設置され、職員と軍隊が派遣されてきた。

 帝国の統治は過酷そのものだった。
 現地民と馬鹿にされ、土地や資産はすべて帝国のものとされる。
 町ですれ違う民に対するグラ・バルカス帝国軍人の屈辱的な仕打ちも多々目撃された。
 
 帝国軍人は土足で家に上がり込んで金目の物は奪い、本能のままに様々な事が行われた。 ストレスのはけ口、植民地という悲惨さがそこにあった。

 逆らう者はすぐに殺される。
 尊厳も何も無い、奴隷と変わらない生活。
 それでもヒノマワリ王国の民は耐えた。耐えて耐えて耐え抜いていたが、ついに帝国は食料に手を着ける。
 
 ついには餓えが蔓延し、餓死者が続出する。
 
 たまりかねたフレイア王女が陳情に行ったところ、暗殺されかけたので亡命という形を取らざるをえなかった。
 フレイアは涙を流しながら説明した。

 王室という温室で育てられた少女にとって、命の危機を感じ、逃げ出してきた事はさぞかしつらかっただろう。
 他の物達は胸を痛める。

 バサバサっバサバサっ。

「ん?何だ??」

 窓ガラスに何かがぶつかる音がする。
 窓の方を見た。

「え??鳩??」

 鳩が、窓に何度もぶつかってきている。

「姫様、胸に王家の紋章が入っています!!!」
 
 よく見ると、足に手紙のようなものが結びつけられていた。

「まさか……伝書鳩ですか??」

 大内田は驚きの声を発す。
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 17:07| Comment(1256) | 小説

2020年11月25日

小話 接触2P4(日本視点)

◆◆◆

 クワ・トイネ公国 公都

「おいおい!!いったい何なのだ?あれは!!!」

「知らん!!あんな大きな船は見た事が無い。しかし、海軍や竜騎士様たちによれば、敵では無いので安心せよとの事だ」

「信じられんな……」

 港には、公都に住まう民が、列を作り、沖合を見つめる。
 その雑踏をかき分け、騎士数名が前に出る。

「あぶないぞ!!あまり前に行き過ぎると海に落ちてしまうぞ!!!」

 大声を張り上げるが、群衆は全くいう事を聞かない。
 時々、後ろから押されて海に落ち、他の騎士から拾い上げられる者もいる。

「やれやれ、「あれ」のせいで、連日大忙しだ……。」

 騎士は、群衆に聞こえないようにつぶやいた。
 その日、公都に激震が走った。
 見た事も無い大きな山のような船が数隻、沖合に停泊している。自分たちの船の概念を遥かに超える大きさを持つそれに、一時公都はパニックとなった。
 しかし、治安担当を担う騎士や、海軍、そして竜騎士が敵では無い事を民衆に伝えると、パニックは落ち着きを見せる。
その後は、その物珍しさから港への見物人が後を絶たず、彼らは大忙しとなるのだった。

「騎士長殿、あの船、そして新たに現れた国を、どう見ますか?」

 若手騎士が、海を見ながら騎士長に話しかける。

「そうだな、日本という国らしいが、まだ海軍が最初に接触しただけ。
外交担当が会うのも、明後日の予定らしい。ロウリアのように、覇を唱えなければ良いが……」

「ロウリアだろうが、列強国だろうが、攻めてくれば戦うのみです。私が国を守ります」

「フッ威勢が良いな。しかし、剣や弓であの船は沈まんぞ。しかし……とんでもない大きさだ」

 街は、この船の話題でいっぱいになった。

◆◆◆

「では、参ります」

 クワ・トイネの港に、受け入れ許可の目印として聞いていた狼煙が上がる。
 外務省の田中は、ボートに乗り換え、港に向かう。
 双眼鏡で港を眺めると、大勢の群衆がこちらを見ているようだった。

「田中さん!!田中さん!!!!」

護衛としてついて来ていた、警視庁の西野が話しかけてくる。

「あれ見てください!!あれ!!ほら!!人間じゃない人がいます」

「な……何だって!?」

 田中は西野の指さす方向を見る。

「なっ!!!」

 人間のような顔立ちだが、花と耳が猫のような生物が、服を着て立っており、こちらを見ているのが見える。

「なんと!!かなり人種が豊なようですね。これは、驚きすぎて失礼の無いようにしなければ!!!」

 田中は肝に命じ、港へ向かった。
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posted by くみちゃん at 21:27| Comment(1241) | 小説