日本国 首都 東京 総理大臣官邸
『という訳で、間もなく返信があるかと思います。』
総理大臣及び集まった各大臣は、まずは戦闘にならず、接触が上手くいった事に安堵する。
「しかし、日本語が通じているというのは、どういった事象なのでしょうか?」
文部科学大臣が皆に問うが、答える者はいない。全く解らないのだ。
「魔信という通信手段があるようですね。経済力や、軍事力、そして生産力も見た目の文明レベルよりは、高いのかもしれません」
「このクワ・トイネ公国という名の国から、なるべく多くの情報を引き出そう。我々は、この世界では右も左もわからない赤子と同然だ」
大臣たちの考察はつづく。
「仮に、相手が中世のレベルだった場合、どうやったら日本の文明レベルを理解してもらえるだろうか?例えば、地球の技術水準で超技術の国が現れ、政治体制も技術も聞いたことの無いものばかりであった場合、我々はその国の水準を図る事が出来ないだろう。
おそらく、クワ・トイネ公国という国も、外交官がいくら説明したところで、なんとなく理解はできるかもしれないが、本当に理解してくれる事は無いだろう」
「プロジェクターを使用して説明すれば良いではないでしょうか?」
「相手の街に電気は無いだろう。発電機ごと移動する必要があるが、そもそも町が内陸にあるかもしれない。
車が通行できる道があるとは限らないため、江戸時代水準の街道しか無い場合、ほぼ山道と言っても良いため、燃料ごと運んで行くのは至難の業だ。
国交も結んでいない国に対して、ヘリの使用を許可するとも思えない。」
彼らは沈黙する。
武田総理は、少し笑い、話始める。
「彼らが我が国を理解するためには、彼ら自身に体験させ、彼らの国の者たちの口から話すようにした方が良い。交通はこちらですべて持ち、使節団を派遣してもらうよう働きかけよう。
日本を体験して頂こうと思う」
日本国政府は、クワ・トイネ公国に、使節団派遣を働きかける方向で一致した。
◆◆◆
護衛艦いずも
「我が国の外交担当が公都クワ・トイネの港まで向かいに来るため、そちらも10人弱程度の人員でお願いします。
港の位置は、先ほどお伝えしたとおりです。
港から約5km離れた位置で、会談を行う予定であり、会場までは馬車でそこまではお送りいたします」
魔信を終えた、軍船に乗っていた艦長ミドリが、我が方に報告する。
「対応感謝いたします。では、明後日の朝にクワ・トイネ港でよろしいですね?」
「はい、そのとおりです。」
このクワ・トイネ公国の軍人と話して解った事だが、この国には時計が無い。つまり、明日朝といっても、かなり流動的で、何時と聞いても意味が無い。
「では、本日中にクワ・トイネ港沖合まで移動し、沖合で待機いたします。明後日の朝、港に向かえが来たのを確認した後に、ボートで港に接岸いたします」
ミドリは意味が良く理解できずに、怪訝な顔をする。
「クワ・トイネ港は、先ほどお教えした場所ですが……」
「はい、理解いたしました」
「いや、そうではなく、船の足ならば2日はかかります。日本国側の移動日数も考慮して、明後日の会議と、クワ・トイネ公国政府は会議の日を決定いたしました。地図の縮尺ですが……」
艦長ミドリは、日本国に渡した会議会談箇所の地図の縮尺について説明する。
田中は、技術格差による認識の違いが生じている事を理解する。
「ミドリ艦長、クワ・トイネ港の位置は、我々の認識した場所で間違いはありませんでした。
その距離であれば、今から出て今日の夕方には到着する事が出来ます。この船は、見た目は大きいのですが、船速度もそれなりに出ますよ」
「なっ!!!」
ミドリは絶句する。
鉄で出来ていると思われるこの大型艦が、それほどの速度で移動すれば、この船に乗り移る事も、バリスタ(大型弩弓)を当てる事も出来ないだろう。
彼は、日本国と名乗る国の者達に、自分の焦りを悟られまいと、平静を装う。
「ところで、ボートで港に接岸するとの事でしたが、この船で港には入らないのでしょうか?」
ミドリは疑問をぶつける。
「はい。この船は、浮かんでいる部分も大きいのですが、船の底もかなり深くまであります。
水深が足りない可能性も考えられるため、沖合に一時停泊という形をとろうと思います」
「なるほど……解りました。では、私はこれにて失礼します。我が海軍と、竜騎士には貴船を攻撃しないように連絡を入れておきます」
ミドリは、軍船に戻るのだった。
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