2020年11月15日

第109話ヒノマワリ王国P6

◆◆◆
 
 ヒノマワリ王国領 バルクルス 仮設基地第3会議室 

 航空自衛隊国岳と、陸上自衛隊の大内田は会議室のドアを開けた。
 並べられた長机と、日本から輸入されたパイプ椅子に、異国の装束を着た者3名が座る。 3人とも顔の整った女性でありきれいな黒髪。
 日本人がコスプレをしているようにも見える。

 会議進行役の男によって、導かれるままに席に座る。

 後にヒノマワリ王国の歴史書に記される事となる重要な会議が始まった。


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第109話ヒノマワリ王国P5

◆◆◆

 航空自衛隊幹部国岳と、陸上自衛隊の大内田は昼休みに入り、休憩室へ向かう。

「大内田殿!!大内田殿!!!」

 休憩室近くの廊下前で、ムーの現場指揮官ミックが話しかけてきた。

「先ほどは失礼しました。事前資料では、日本は夜間精密爆撃可能と記載があったのですが、どうしても信じられなくて、資料が間違っていてはいけないと思い、確認しました」

 急に敬語を使い始めるミックに大内田は違和感を覚えるが、国際的な軍事会合の場ではムー国としての立場もあるのだろうと理解する。

「いえいえ、軍事は確認に確認を重ねる必要がありますので、ミック殿の問いは当然の事かと」

「正直、ヒノマワリ解放は本来ムーが行うべき案件であると理解はしています。
 しかし、我らが行うと必ず民衆に多大な被害が出るのです。
 何百通りシミュレーションしても、やはり多大な被害が出てしまうのです。
 被害想定を軍本部に提出したのですが、難色を示されました。
 これは建物が王城に近すぎる事と、昼間は王国の民が働いている事が原因でした。
 またも日本国へ頼ることになって、お恥ずかしい。
 主要軍事施設破壊後は、当然我らで制圧いたします」

 ミックは頭を下げた。
 彼は続ける。

「ヒノマワリ王国は、元いた星の、ヤムート人の末裔です。
 ヤムートの民とは友好関係を持っていたため、レイフォルに実行支配されていた時も、我が国と彼等は友好関係にありました。
 元いた世界の民とあってムー国民にとっても思い入れの強い人々です。
 そういえば、日本は昔ヤムートだったという、テレビ特集も見ました」
 
「ほう……一度遺伝子解析もしてみたいものですね」

「遺伝子解析??」

 ミックには意味が解らない。
 彼は本題に入る。

「ところで、お伝えしたいことがあります。
 先ほど部下から報告があったのですが、ヒノマワリ王国の王女フレイアという者が、亡命して来ました。
 夜通し馬で走ってきたようです」

「ほう?」

 ムー国にお願いしたヒノマワリ王国の要望が取れそうで、ほっとする。

「彼女らは酷く汚れておりまして、今湯浴みをしていますが、すぐにでもムー国及び日本国の方と会いたいとの申し出がありました」

「しかし、夜通し走ってきたなら相当な寝不足ではないのでしょうか?」

「目の下にクマはできていましたが、寝不足など言ってはおれぬ事態が生じたのでしょう」

「うーん、会うのは良いのですが、私はあくまで自衛官です。
 外交官ではありませんので、本省に問い合わせないと……」

「解りました。
 ムー国は14時からヒノマワリ王国フレイア王女と協議を行いますので、日本国も参加するのであれば、第3会議室に来て下さい」


 大内田が後刻、本省に問い合わせたところ、『何の事かが解らないので、まずは話しを聞いてみてくれ』
 との回答であった。 

 国と国とに関わること、外交官不在の中で自分が会うと言うことは、とんでもない量の書類の作成がふりかかるという意味である。
 相当重要な仕事であり、かつ現在部下達は本来業務で負担があまりにも大きい状況にあるため、丸投げも出来ない。
 ただでさえ、戦闘準備に忙しいこの状況下において、外務省に渡されるであろう公文書(外交文書ではない)を作る事が確定してしまった。

「とにかく少しでも休みがほしいな……」

 連日働きどおしの大内田、脳内には月月火水木金金の音楽が再生される。
 食事の後、がっかりした顔で、彼は第3会議室へ向かうのだった。
 

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第109話ヒノマワリ王国P4

◆◆◆

 ヒノマワリ王国領内 バルクルス基地
 最前線のこの基地では、グラ・バルカス帝国に対する次なる1手のために会議が行われていた。
 第2文明圏列強ムーを筆頭に、文明圏内国家の陸軍幹部が顔を揃える。
 会議には陸上自衛隊第7師団、そして航空自衛隊幹部も参加していた。

「失礼、もう一度確認したい」

 ムー統括軍の現場指揮官ミックが地図を示して日本国航空自衛隊幹部に問う。
 
「ハルナガ京にあるグラ・バルカス帝国制統府は実質的に軍の指揮所となっているのは先ほどお伝えしたとおりだが、この建物は王城の近くにある。
 制統府は昼間は多くの王国民が働き、夜はグラ・バルカス帝国の職員のみが働いている
 また、陸軍施設と航空隊の駐屯地も貴族の建物が密集している地域の直近に作られている」

 彼は続ける。

「我がムー国は、ヒノマワリ王国の王室に被害が出ることは望まない。
 民にも同様に被害を最小限に食い止めたいと考えている。
 最小限となるためには、夜間攻撃とならざるを得ないが夜間は日本国やムー国と異なり、明かりがほとんど無い。
 こんな真っ暗な中、空爆で本当に建物や軍事施設だけ破壊出来るのか?」

 キールセキ攻防戦、そしてバルクルス基地への大規模攻撃。
 ミックは日本国自衛隊の力を良く理解したつもりだった。
 しかしどの作戦も太陽が出ている時に行われたものであり、夜の完全に見えない施設へ攻撃など出来るものかと考えていた。
 空や海への誘導弾ならばレーダーの反射波をとらえれば夜間攻撃可能な兵器も出来るのだろうが、夜間精密爆撃など、どうやって対象施設をとらえるというのか。
 誘導弾などはレーダーの反射波をとらえる兵器だと聞いている。
 そもそも見えない物で、周りに似たような建物が多い中、どうやってレーダーを照射するというのか。

「ムー国としては、ヒノマワリ王国の帝国基地は、規模も小さく、大した影響は無いと考えている。
 無理に破壊してヒノマワリ王国の被害を出したくない」

 ムーの政治的な本音だったが、その発言に、他の第2文明圏国家はざわつく。

「なんだって?そんなことで、グラ・バルカス帝国をたたき出す作戦を否定するというのですかっ!!!」

「ヒノマワリ王国は帝国に降った国、国民がどれほど傷つこうが知ったことでは無いっ!!!ムーは第2文明圏連合軍の足並みを乱すのかぁ!!!」

 血気盛んな軍人が叫び出す。
 ミックとしても、国の意向をそのまま伝えただけなので、怒鳴られてもどうしようもない。

 見かねた航空自衛隊幹部が話し始めた。
 日本国の自衛隊員が話し始めると、今まで叫んでいた軍人もすぐに静まった。
 すでに日本国が強い事は皆知っており、自衛隊員に対しては最大限の配慮がされていた。
「対象施設のみの破壊は可能です」

 第二文明圏の軍幹部は驚きの表情を浮かべ、再び会議室がざわついた。

「なんとっ!!」

「夜でも精密な攻撃が可能というのか?」

 改めて日本国の強さに驚きを示す幹部達。

「日本国としてはレイフォルからグラ・バルカス帝国をたたき出す作戦のために、このバルクルス基地周辺から、グラ・バルカス帝国基地を極力排除したい。
 大小問わずに、です。
 日本国としても、ヒノマワリ王国のグラ・バルカス帝国基地を叩く事は決定事項であり、民衆の被害も極小にとどめたい。
 夜間の精密爆撃は可能です。
 ただ……」

「ただ?」

「ムー国に先日お願いしていたとおり、可能な限りヒノマワリ王国の要望で動いた形にしたい。
 なるべくなら他国にグラ・バルカス帝国軍が駐留するというだけでその国を爆撃するのは避けたいのです」

 帝国軍がいるだけで爆撃されるのであれば、ロデニウス大陸近海の国家群でも未だ多くの敵基地が残っている。
 自衛隊の装備も限られているため、選択と集中は必要事項であるし、直接日本に刃を向ける敵基地以外はなるべく攻撃したくない。
 これは敵に配慮しているのではなく、武力によって降った他国に配慮した結果であり、戦後を見据えた政策であった。

「それについては、第2文明圏連合軍の意思によって行われ、その要請に基づいて日本国が戦闘に参加する形で落ち着いたはずですが」

「そうなのですが……なるべくなら、と言うことです」

 難しい国内問題に、自衛隊幹部は苦笑いをする。
 午前の会議は終わる。
 次回、夕方の会議に向け、各国が調整を行う時間に入る。

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第109話ヒノマワリ王国P3

◆◆◆

 ダラスは先ほどのやりとりを思い出す。
 理想論に走った無能な小娘が先走って無礼を働いただけ。
 それだけのことなのに、真顔で理想を掲げる顔が脳裏に焼き付き、何故か苛立ちを覚える。
 若かりし頃、理想と現実の狭間で、失われてしまった「真っ直ぐな気持ち」が彼を苛立たせているのだが、その原因には気づかない。 

「おい」

 ダラスは制統府職員を呼ぶ。

「はっ!!」

「先程の蛮族は、我がグラ・バルカス帝国に意見し、愚弄した。
 これは皇帝陛下を愚弄したも同然であり、不敬にも程がある。
 暗殺でもでっち上げた罪でも何でも良い。始末しておけ」

「は?……はい!」

「手段は問わない、多少人が巻き込まれようが構わん」

 制統府は他国を統治するため、実力行使を行う部隊が存在する。
 外交官ダラスはあの真っ直ぐな瞳を持つフレイアに何かしらの危険性を感じ、命令を降すのだった。

◆◆◆

 ヒノマワリ王国 首都ハルナガ京 第3王女フレイア居宅

 ヒノマワリ王国は代々民に寄り添って来た王国であり、民の王室への支持は高い。
 他国に比べると王室が質素である事も、支持を上げる一因でもあった。
 第3王女フレイアは、すでに成人しているため、家が与えられ、日本で言えば500坪の敷地に7LDK+Sくらいの大きさのレンガ造りの家に住んでいた。
(あくまで大きさの目安であり、LDKが在る訳ではない)
 敷地周りは不審者侵入防止のため、レンガの壁で囲まれていた。

 一つの家族として日本で考えると豪邸だが、大陸は土地が広く、従者の部屋も含まれているため、フレイアの使用できる範囲はさらに狭く、王室として見れば質素な部類に入る。

 夜ーーー

 フレイアは2階の寝室から窓を開け、月を眺める。
 晴れ渡った空、街灯の無いヒノマワリ王国ではあるが、今宵の月は非常に明るく、外の先まではっきりと見える。
 どうしようも無いことは解っていた。
 お願いに行ったからと言って、帝国が食料を易々と開放するとは思っていなかった。
 
 じっとしていられなかった結果であるが、国民を救えなかった事、涙が止まらない。
 
 人一倍国民を思うフレイアは、何とかしたいのに救うことが出来ない現状を憂う。

 ドンドンドン……。

「フレイア様!!フレイア様っ!!」

 部屋のドアが強くノックされる。

「何事です?」

 ただ事では無い焦った従者の声に、フレイアは日常とは違う何かが起こったと考える。

「すぐにお逃げ下さい!!」

「何があったというのですか?」

「帝国の制統府に働きに出ている料理人が、偶然にもトイレで聞いた情報です。
 フレイア様を暗殺しようと帝国が動いています。
 ここは危険です。一刻でも早くお逃げ下さい!!!」

「え?暗殺???」

 自分に向けられた殺意に背筋が凍る。
 帝国は、陳情に行っただけの者を消し去ろうというのか。

「手練れの女剣士を2名護衛につけます。
 時間が無い事と、少人数の方が見つかりにくいので、これで我慢してほしい。
 この2名は日輪級の剣聖です」

 ヒノマワリ王国の中でも最上位である日輪級剣士を護衛につける事態、本当の緊急事態であると理解する。

「しかし……いったい何処に行けば……それに国民が……」

 王国から自分の意思だけで外に出たことは一度も無い。
 命を守ってくれる事はありがたいが、職務もあるため、どうしてもフレイアは1歩踏み出せない。

「私の願いとしては、バルクルスへ、バルクルスへ行って、ムーの連合軍に接触してほしい!!
 そして、グラ・バルカス帝国を海戦で打ち負かしたとされる日本国に……国の代表として助けを求めてほしい。
 このまま食料が絞られれば、国民の多くが飢え死にしてしまいます!!
 ムーによれば日本国は……我々と同族である可能性があるそうです。
 きっと力になってくれるはず」

「早く!!早くご用意くださいっ!!地下通路の先に馬と剣士が待っています」

 万が一の時、脱出のための通用口があり、地下通路で裏山までつながっている。
 すでに手が回っている可能性を考慮し、従者はそこを行けとフレイアに伝える。

「でも……」

 突如として正面の門に閃光が走り、猛烈な爆発音と共に門が四散した。
 爆発音と振動が腹に響く。

「まずいっ!!こんなにも早いとは……。
 フレイア姫様、私は心優しき姫様の従者で幸せでした。これからも……ヒノマワリ王国の民をよろしくお願いします」

 従者は壁にかかっていた剣を引き抜き、フレイアに笑いかける。

「私の最後のお勤めです。姫様を必ず逃がします!!!」

 従者はやさしく微笑んだ。

 玄関ドアが破壊される音が響く。
 すぐに女性の悲鳴が聞こえた。
 いつも明るく料理を運んできてくれるメイドの声。

「えっ……えっ……」

 フレイアは動かない。
 いや、今まで経験したことの無い無慈悲な暴力を前に動けない。

「早くっ!!手遅れになる前にっ!!!!!」

 フレイアは従者を見つめる。

「行けっ!!!我らの為に行ってくれっ!!!!」

 従者はフレイアを強く押す。 
 はじかれたように彼女は地下通用口に向かって走り出した。
 足音のする方向とは逆側の階段を駆け下りる。
 
「ここは通さんぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」

 従者の怒号が響き渡る。
 ダダダダダッ!!
 フレイアにとっては聞き慣れない連続したはじける音……銃声が響き渡る。
 目に涙をためて走る。

 すぐに地下通路に入り、真っ暗な通用口を走る。
 途中僅かな突起に躓いて転び、土だらけとなった。

「ううっ……ううううっ」

 おそらく従者は、いや、お手伝いさんも、護衛の剣士も戦っているのだろう。
 私なんかのために命を投げ出して。
 明るく挨拶してくる若い剣士の顔が頭に浮かぶ。
 今日の料理は美味しいですよと、満面の笑みで料理を運んできたメイドの顔が頭に浮かぶ。
 すてきな人たち、家族の一員のように思っていた。
 
 走る、走る、走る。
 足は悲鳴を上げ、心臓はもう動くのは限界だと苦しさを伝えてくる。
 しかし、止まる訳にはいかなかった。
 泥だらけになり、汗にまみれて走った。
 
「ハアッハアっハアッ……」

 裏山の出口から出る。
 小高い場所に作られた出口から、町が一望出来た。
 すぐに屋敷の方を向く。

「そんな……」

 先ほどまで住んでいた屋敷が炎に包まれている。
 燃える業火は天を焦がす。

「そんな…そんなぁ……う……うあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」

「うあぁぁっぁあぁぁぁつ!!」

 自分の行動が招いた結果、自分がグラ・バルカス帝国に交渉に行かなければ。
 担当者の怒りを買わなければ……死なずに済んだ命がある。
 自分の行動の結果死んだ人たちがいるという事実に、彼女の心は壊れそうになった。
 
「フレイア様、すぐにこちらへっ!!」

 2人の女剣士が姫を抱えるようにして、早く馬に乗るよう促す。

「うあぁぁぁ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

「姫様、失礼」

 パチン
 頬を強く叩かれ、我に返る。

「処分は後ほど受けます。
 犠牲になった命のため、そしてヒノマワリ王国のためにも、すぐに馬に乗って下さい。
 グラ・バルカス帝国の鉄車は速く、そして戦士は強い。
 守り切れるか保証はありません。
 時は一刻を争うのです!!」

 感情が暴走する。
 しかし、王家の姫という立場が、フレイアの精神崩壊を止める。
 彼女は泣きながら馬に乗り、明るい月明かりの元、バルクルスへ向かって走る。
 

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第109話ヒノマワリ王国P2

◆◆◆

 ドアを開け、一人の男が入室してきた。
 襟元にはグラ・バルカス帝国外交官にのみ着けることが許されるバッチがある。

 ヒノマワリ王国第3王女フレイアは入室してきたダラスに向き、一礼した。

「グラ・バルカス帝国外交官のダラスだ、話しがあるなら私が聞こう」

 低く、威圧的な声が会議室に響いた。
 王女をあしらおうとしていた制統府職員は外交官の入室に驚く様子を見せる。

「ヒノマワリ王国第3王女フレイアです。今回は、食料に関してご相談するために参りました」

「食料?」

「はい、ヒノマワリ王国がグラ・バルカス帝国の配下に入る際、国民を餓えさせないというのが絶対条件でした。
 しかし、今、帝国軍が食料流通を押さえて備蓄しているため、国民まで食料が回っていません。 
 すでに餓死にする者が多数発生しています。
 帝国は誇り高いと聞いています。
 約束を違える事無く、すぐにでもため込んでいる食料を我が国民に行き渡るようお願いしたい!!」

「ほう……」

 黒髪で長髪、少女の面影を残す美しい女、フレイアは凜とした対応を見せる。
 今まで接して来た異国の外交官に無い堂々とした姿だった。

 ダラスは制統府職員に向く。

「そうなのか?」

「いっ、いえ、バルクルス陥落の後、補給が切れた場合に備えて食料備蓄を大幅に増やしている最中でございます」

 ダラスはフレイアに向く。

「聞いてのとおりだ。なら仕方ないな」

「なっ!!!民が……多くの国民が死んでいるのですよ!!軍の備蓄を放出しないのはおかしい、すぐに放出して頂きたい!!」

「おかしい?帝国の決定に意見すると言うのかっ!!!立場をわきまえない無礼者があっ!!!」

 ダラスの態度は豹変し、部屋中に大声が響き渡った。

「貴様ら蛮族は勘違いをしていないか?
 皇帝陛下は、異国の蛮族であってもいたずらに命を奪ってはならないとおっしゃった。
 海よりも深い慈悲ゆえに出たお言葉だっ!!」

 ダラスは皇帝の御言葉を思い出し、目に涙をためる。

「しかし、根本的な事だが、貴様ら蛮族の命と帝国臣民の命は当然釣り合わない。
 今、必要性があって食料備蓄をしているのだ。
 我らが宗主国のために命を投げ出して協力するのが植民地というものだっ!!
 貴様らは我らの高度文明に触れ、遙かなる高みの生活が出来る可能性を与えてもらったにも関わらず、自分たちは何も帝国に与えずに要求だけするつもりか?
 貴様らは皇帝陛下の言動に甘え、たかるウジ虫同様だっ!!」

「なにを言う!!武力で脅して国を乗っ取り、多くの富を奪い、食料さえも奪い、何もかも奪い去っていったくせにっ!!
 食料、生きるために必要なこの食料だけでも開放してほしいと頼みに来たっ!!
 民が死んでいるのだっ!!!
 帝国は奪い去るだけなのか?
 食料が不足しているならともかく、国民が餓えないだけの食料があるにも関わらずだ!!
 ただ1点のみ、国民を餓えさせないという約束すら守れないのかっ!!
 我らを騙したのかっ!!!」

「帝国を嘘つき呼ばわりするなど、万死に値するぞっ!!
 バカな小娘が、お前は根本的な事が解っていない。
 食料は説明したとおりだ。
 自然界を見ても解るだろう?世の中は弱肉強食だ。
 くやしければ、ヒノマワリ王国が帝国以上の技術と力を持てば良いこと。
 今まで弱小国に甘んじ、技術を研鑽する事も無く、国としての努力を怠った貴様らにはふさわしい現状だ。
 そんな基本的な事も知らずによくぞ外交の場に来られたな。しかも宗主国の上級職の者を前に無礼を働くとは……。
 感情だけで国は動かん。
 今までお前が基礎も何も教えてこられず、身分のみにアグラをかいていたのが良く解る」

 理不尽に怒りがこみ上げ、フレイアは言い返す。

「身分にアグラ?私は常に民に寄り添ってきたっ!!」

「民に寄り添ってきただと?笑わせる。
 国の上に立つ者の義務は民に寄り添う事では無い。
 国家をより強くすることだ。
 国が強くなることにより、富が集まり、栄え、国民の生活水準が上がる。
 そして何より他国から国家を守れるのだ。
 民に寄り添った貴様らは国を導く者として無能だ。
 今のお前たちの現状は、お前たちの歩んだ歴史の結果生み出された事実だ。
 解ったか?蛮族の無能の王に育てられた無能の姫さんよ」

 フレイアは悔しさに絶句する。

「もう良い、お前の顔は見たくない。
 さっさと去れ!!」

 フレイアは動かない。
 いや、国民のために引くわけにはいかなかった。

「早く去れと言っている!!!」

「…………」

「出て行け貴様ぁ!!」

 パシッ!!!
 フレイアが平手打ちされる音が室内に響く。
 フレイアはなおも残ろうとするが、他の職員に拘束されて退出した。
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第109話ヒノマワリ王国P1

ダラスは廊下を歩きながら思考を巡らす。

 本来ならば、この最前線とも言うべき場所に外交官が来ること自体に疑問符が付くが、日本国の力を得た敵軍は強力であり、一刻も早く次の手を打たなければ、早々に陥落してしまう可能性があった。
 外交官として、まだ出来ることがある。

 幸いにして、軍や制統府の施設は王国の主要施設直近に作っているため、バルクルスが陥落してしばらく経った今でもなお敵の攻撃は受けていない。
 おそらく敵軍はヒノマワリ王国の民に被害が出るのを恐れているのだろう。

「好都合だ」

 ダラスはにやける。
 日本国は強力だが、積極的介入をしていないようにも思える。

 先に奪還された基地、バルクルスは、グラ・バルカス帝国軍しか駐留していない基地であった。
 日本側からすると、ロデニウス南側の大海戦は、自分たちへ向けられた刃であり、リーム王国は自分たちへの直接攻撃に使われた基地。
 今まで自主的にグラ・バルカス帝国に降り、帝国軍が駐留している国で日本国に比較的近い海域であっても、日本国への攻撃能力を置いていない国家へ奴らは攻撃していない。

 あくまで自分たちが攻撃を受けた場合や、自分たちが攻撃を受ける可能性のある基地
に限って攻撃しているように思われる。

 ここから導き出される結論こそ、グラ・バルカス帝国が勝利するヒントになるだろう。
 
 彼は歩いている時さえも、帝国のために考え抜く。

 彼は廊下を曲がり、大声のする方向へ向かう。

「うるさいな、礼を知らない蛮族はこれだから……さてと、さっさと終わらせるか」

 ドアを開けて入室する。


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