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翌日
少し寒く涼しい朝、太陽は昇り始め、空気は澄み切って遠くまで良く見通せる。
鹿児島県の鹿屋市にある海上自衛隊の空港からは、多くのターボフロップの爆音が鳴り響き、多数の哨戒機が飛び立とうとしていた。
彼らの任務は、陸地を探し、そこに文明があるか調べる事。
攻撃を受けるもしくは迎撃機等に威嚇された場合は、無理をせずにすぐに引き返すように司令を受けていた。
P3C対潜哨戒機は、翼に4つあるターボフロップエンジンによりプロペラを力強く回転させ、青空に白い機体を浮かべ、各方面に飛び去って行った。
日本国南南西方向約1800km付近上空
見渡す限りの海、鹿児島県鹿屋基地から飛び立ったP3C対潜哨戒機のうちの1機は、南方方向の哨戒を命じられていたため、沖縄において一時給油を行い、南方哨戒のため飛行していた。
地球に比べ、遥かに遠くまで見える水平線、ここが地球ではない事を隊員たちは実感する。空気も地球に比べ、遥かに澄んでいる。
彼らは目視で付近を見るが、海が広がるのみであった。
「レーダーに飛行物体が写っている。速度は200km程度であり、低速だが……」
P3Cのレーダーに、それなりに大きい飛行物体の機影が写る。
「200kmか、何かの生物かもしれないな」
「それにしては、レーダー反射面積が以上に大きい。空飛ぶ恐竜……翼竜のような大型生物が、時速200kmもの超高速飛行をしている事になる」
機長はその機影を調査する事を決意する。
「調査に向かう。各自細心の注意を払っていくぞ」
「了解!」
機体は少し右に旋回するのだった。
一時して、空の先に小さな点を確認する。
「目視しました。物体に進路をとります。」
「物体もこちらを確認した模様、こちらに向かって来ます。」
点のように見える物体は、徐々にその姿を大きくし、やがてその輪郭がはっきりと見えるようになる。
「りゅ……竜?翼竜のようなものが飛んでいます!!な!!!人だ!!上に人が乗っているぞ!!!」
コクピットの者は、その翼竜に釘づけになる。
やがて、その翼竜とすれ違う。漆黒の胴体、雄々しい姿、その上には人間と思われる者が騎乗し、こちらを見ている。力強く羽ばたくその姿は、皆にある種の感動を与える姿であった。
竜とすれ違い、竜は反転してこちらに向かっているようでもあったが、水平線に陸地のような輪郭が見えたため、哨戒機はそのまま陸地方向へ向かう事となった。
「おい!今の竜は撮影出来たか?」
「はい、まさに異世界の竜騎士、しっかりと撮影しました。」
「どうも通信状態が今悪いようだ。送信が出来そうにないため、帰ってから報告する。とりあえず、陸地方向に向かうぞ」
「了解!」
哨戒機は、陸地のある方向へ向かって飛行を続けた。
哨戒機は陸地に向かって飛行していた。
やがて、機のレーダーに、十数騎ほどの飛行物体が写る。
「飛行物体多数、先ほどの翼竜か、野生の生物かは不明ですが、高度速度ともにこのままではぶつかる可能性があります。機を上昇させますが、よろしいでしょうか?」
「了解、上昇し回避せよ。」
彼らの乗る自衛隊の哨戒機は、上昇を始める。ターボフロップエンジンの出力は最大値まで上がり、彼らはさらに上昇する。やがて眼下は陸地が見え始め、建造物がぽつぽつと見え始める。
「建造物があるぞ。高度を落とし、撮影を開始しよう」
監視員は周囲を見渡す。
眼下に街のようなものも見えたため、同街を観察するべく、P3C哨戒機は高度を落とす。
やがて街の上空に達し、見下ろすと、眼下には中世ヨーロッパのような風景、赤を基としたレンガが積み重なって作られたような建築物が立ち並んでいた。
規模の小さな街であったが、望遠レンズでよく見ると、中には鎧を着たものたちが、城壁と思われる場所に昇り、こちらを見つめている。
街を見下ろすと、飛行機にびっくりした馬が勝手に走り始めているような光景も見えた。
「まずいな。完全に領土に入り、しかも混乱まで発生している。とりあえず、この方向に国があるという事が判明した。一旦引き上げるぞ」
P3C哨戒機は、この日、日本国の友となる国に成り行きとはいえ、領空侵犯を行ったのであった。
posted by くみちゃん at 10:36|
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