2020年11月25日

小話 接触2P4(日本視点)

◆◆◆

 クワ・トイネ公国 公都

「おいおい!!いったい何なのだ?あれは!!!」

「知らん!!あんな大きな船は見た事が無い。しかし、海軍や竜騎士様たちによれば、敵では無いので安心せよとの事だ」

「信じられんな……」

 港には、公都に住まう民が、列を作り、沖合を見つめる。
 その雑踏をかき分け、騎士数名が前に出る。

「あぶないぞ!!あまり前に行き過ぎると海に落ちてしまうぞ!!!」

 大声を張り上げるが、群衆は全くいう事を聞かない。
 時々、後ろから押されて海に落ち、他の騎士から拾い上げられる者もいる。

「やれやれ、「あれ」のせいで、連日大忙しだ……。」

 騎士は、群衆に聞こえないようにつぶやいた。
 その日、公都に激震が走った。
 見た事も無い大きな山のような船が数隻、沖合に停泊している。自分たちの船の概念を遥かに超える大きさを持つそれに、一時公都はパニックとなった。
 しかし、治安担当を担う騎士や、海軍、そして竜騎士が敵では無い事を民衆に伝えると、パニックは落ち着きを見せる。
その後は、その物珍しさから港への見物人が後を絶たず、彼らは大忙しとなるのだった。

「騎士長殿、あの船、そして新たに現れた国を、どう見ますか?」

 若手騎士が、海を見ながら騎士長に話しかける。

「そうだな、日本という国らしいが、まだ海軍が最初に接触しただけ。
外交担当が会うのも、明後日の予定らしい。ロウリアのように、覇を唱えなければ良いが……」

「ロウリアだろうが、列強国だろうが、攻めてくれば戦うのみです。私が国を守ります」

「フッ威勢が良いな。しかし、剣や弓であの船は沈まんぞ。しかし……とんでもない大きさだ」

 街は、この船の話題でいっぱいになった。

◆◆◆

「では、参ります」

 クワ・トイネの港に、受け入れ許可の目印として聞いていた狼煙が上がる。
 外務省の田中は、ボートに乗り換え、港に向かう。
 双眼鏡で港を眺めると、大勢の群衆がこちらを見ているようだった。

「田中さん!!田中さん!!!!」

護衛としてついて来ていた、警視庁の西野が話しかけてくる。

「あれ見てください!!あれ!!ほら!!人間じゃない人がいます」

「な……何だって!?」

 田中は西野の指さす方向を見る。

「なっ!!!」

 人間のような顔立ちだが、花と耳が猫のような生物が、服を着て立っており、こちらを見ているのが見える。

「なんと!!かなり人種が豊なようですね。これは、驚きすぎて失礼の無いようにしなければ!!!」

 田中は肝に命じ、港へ向かった。
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小話 接触2P3(日本視点)

◆◆◆

 日本国 首都 東京 総理大臣官邸

『という訳で、間もなく返信があるかと思います。』

 総理大臣及び集まった各大臣は、まずは戦闘にならず、接触が上手くいった事に安堵する。

「しかし、日本語が通じているというのは、どういった事象なのでしょうか?」

 文部科学大臣が皆に問うが、答える者はいない。全く解らないのだ。

「魔信という通信手段があるようですね。経済力や、軍事力、そして生産力も見た目の文明レベルよりは、高いのかもしれません」

「このクワ・トイネ公国という名の国から、なるべく多くの情報を引き出そう。我々は、この世界では右も左もわからない赤子と同然だ」

 大臣たちの考察はつづく。

「仮に、相手が中世のレベルだった場合、どうやったら日本の文明レベルを理解してもらえるだろうか?例えば、地球の技術水準で超技術の国が現れ、政治体制も技術も聞いたことの無いものばかりであった場合、我々はその国の水準を図る事が出来ないだろう。
 おそらく、クワ・トイネ公国という国も、外交官がいくら説明したところで、なんとなく理解はできるかもしれないが、本当に理解してくれる事は無いだろう」

「プロジェクターを使用して説明すれば良いではないでしょうか?」

「相手の街に電気は無いだろう。発電機ごと移動する必要があるが、そもそも町が内陸にあるかもしれない。
車が通行できる道があるとは限らないため、江戸時代水準の街道しか無い場合、ほぼ山道と言っても良いため、燃料ごと運んで行くのは至難の業だ。
国交も結んでいない国に対して、ヘリの使用を許可するとも思えない。」

 彼らは沈黙する。
 武田総理は、少し笑い、話始める。

「彼らが我が国を理解するためには、彼ら自身に体験させ、彼らの国の者たちの口から話すようにした方が良い。交通はこちらですべて持ち、使節団を派遣してもらうよう働きかけよう。
 日本を体験して頂こうと思う」

 日本国政府は、クワ・トイネ公国に、使節団派遣を働きかける方向で一致した。

◆◆◆

 護衛艦いずも

「我が国の外交担当が公都クワ・トイネの港まで向かいに来るため、そちらも10人弱程度の人員でお願いします。
 港の位置は、先ほどお伝えしたとおりです。
港から約5km離れた位置で、会談を行う予定であり、会場までは馬車でそこまではお送りいたします」

 魔信を終えた、軍船に乗っていた艦長ミドリが、我が方に報告する。

「対応感謝いたします。では、明後日の朝にクワ・トイネ港でよろしいですね?」

「はい、そのとおりです。」

 このクワ・トイネ公国の軍人と話して解った事だが、この国には時計が無い。つまり、明日朝といっても、かなり流動的で、何時と聞いても意味が無い。

「では、本日中にクワ・トイネ港沖合まで移動し、沖合で待機いたします。明後日の朝、港に向かえが来たのを確認した後に、ボートで港に接岸いたします」

 ミドリは意味が良く理解できずに、怪訝な顔をする。

「クワ・トイネ港は、先ほどお教えした場所ですが……」

「はい、理解いたしました」

「いや、そうではなく、船の足ならば2日はかかります。日本国側の移動日数も考慮して、明後日の会議と、クワ・トイネ公国政府は会議の日を決定いたしました。地図の縮尺ですが……」

 艦長ミドリは、日本国に渡した会議会談箇所の地図の縮尺について説明する。
 田中は、技術格差による認識の違いが生じている事を理解する。

「ミドリ艦長、クワ・トイネ港の位置は、我々の認識した場所で間違いはありませんでした。
 その距離であれば、今から出て今日の夕方には到着する事が出来ます。この船は、見た目は大きいのですが、船速度もそれなりに出ますよ」

「なっ!!!」

 ミドリは絶句する。
 鉄で出来ていると思われるこの大型艦が、それほどの速度で移動すれば、この船に乗り移る事も、バリスタ(大型弩弓)を当てる事も出来ないだろう。
 彼は、日本国と名乗る国の者達に、自分の焦りを悟られまいと、平静を装う。

「ところで、ボートで港に接岸するとの事でしたが、この船で港には入らないのでしょうか?」

 ミドリは疑問をぶつける。

「はい。この船は、浮かんでいる部分も大きいのですが、船の底もかなり深くまであります。
 水深が足りない可能性も考えられるため、沖合に一時停泊という形をとろうと思います」

「なるほど……解りました。では、私はこれにて失礼します。我が海軍と、竜騎士には貴船を攻撃しないように連絡を入れておきます」

 ミドリは、軍船に戻るのだった。

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小話 接触2P2(日本視点)

◆◆◆

 クワ・トイネ公国 第2艦隊所属 軍船ピーマ

 艦長ミドリは、困惑していた。クワ・トイネ公国の経済都市マイハーク上空に、正体不明の飛行物体が飛行してきた後、何度も旋回して立ち去ったという。
 ロウリア王国もしくはその息がかかった国等の奇襲を早期に探知するため、公国第2艦隊所属の軍船ピーマは、沖合へ向かっていた。
 水平線上に、なにか灰色の物を発見したのは、10分ほど前、ピーマは、その物体を調べるため、船に向かっていいたが、どうも彼らも自分たちの方向へ向かってきているようにも見える。

 ミドリ艦長の想定をはるかに上回る速度で、水平線上の物体は、徐々にその姿を大きくする。

「まだ大きくなるというのか!!」

「なんて大きさだ!!あれは船か!??」

「あんなのに、バリスタを撃っても意味があるのか?」

 あまりの大きさに、距離を誤認している事に気付く。
 彼の顔が引きつる。
 やがて、減速した不審船、その起こす波だけで軍船ピーマは揺れ動いた。
彼らはこちらに敵意が無いかの如く、手を振って来る。
こんな大きな船、そして見た事の無い船に臨検しなければならない。彼は、死を覚悟し、不審船に乗り込む事を決意した。

◆◆◆

 護衛艦いずもの最上甲板では、艦長、そして外務省の田中が、異世界でのファーストコンタクトを迎えるべく、小さな帆船に乗って来た者を出迎えるために整列していた。

「初めてですね。いったいどのような結果となるのか……」

 不安を押し殺し、田中は艦長へ話しかける。
今回のコンタクトは、新世界で初めてであり、どうあっても心証の悪い状態は避けたい。仮に敵対した場合、異世界全体を敵に回す可能性すらある。
 日本国は第一に食料を欲しており、1国で賄えるはずもないが、とにかく輸入先を一つでも増やす事、日本国民を飢えさせない事が、外務省に課せられた使命であった。
 彼の肩に、日本国民の命という、重圧がのしかかる。

「そうですな。しかし、全く言葉が通じないでしょうから、何も進展しないかもしれませんね。」

「言語学者も連れてきています。まずは有効にコンタクトが出来たら、彼らの出番となるでしょう」

 やがて、鎧に身を包んで来た者達が、階段を上がって来る。
 田中が第一声を話そうとした瞬間、異世界の民が話始めた。

「私は、クワ・トイネ公国、第2艦隊所属の軍船ピーマ艦長ミドリです。このまま進むと我が国の領海に入ってしまいます。貴船の国籍と、航行目的を教えていただきたい!!」

 ミドリと名乗った者は、臆する事なく、はっきりとした口調で田中たちに話しかける。

「日本語!?日本語を話している!!!」

 田中は日本語を話す男に疑問を持つと共に、彼が日本語を話す……そして言葉が通じる事に歓喜する。

「失礼しました。私は、日本国外務省外交官の田中と申します。我々は貴国と将来的に友好的な関係を持つため、最初にお話しをしたいと思い参りました。我々にとっては、初の接触……という事になります。」

 ミドリは目を見開く。

「友好的な関係?という事は、あなた方は日本国という国の使者で、我が国、クワ・トイネ公国と初めて接触をしたという事で間違いないでしょうか?」

「はい、そのとおりです。
外交担当部署にお取次ぎを願えませんか?我々に敵対の意志はありません」

 ミドリとその他の異世界人は、一瞬ほっとしたような表情となり、話す。

「解りました。では、外交官に連絡いたします。しかし、大きい船ですね。それに帆も無い。これが噂に聞く魔導船でしょうか?」

「魔導船?魔導船とは何でしょうか?」

 不思議な言葉が出てきたため、田中は彼に問う。

「?魔石を使用し、魔力を動力に変え、動く船の事でしょう?あなた方は、中央世界から来たのではないのでしょうか?このような高度な船は、文明圏外国家で作る事が出来ない事は言うまでもなく、文明圏内であっても第3文明圏では不可能でしょう。
 船の規模から考えて、おそらく中央世界からわざわざ我が国と国交を結ぶために来たのかとお見受けしましたが、違うのでしょうか?」

 田中は、魔力という言葉に困惑する。

「魔力?文明圏?よくわかりませんが、日本国は、ここから北東方向に約1000km行った位置に、南の島、沖縄があります。そこからさらに1000kmほど行ったところが日本国本土です」

「なんと!!中央世界ではないのですか?その位置は、群島の集まりだったはず……。しかし、それでは……。この船は、中央世界の国から購入したのでしょうか?文明圏外国家に、これほどの船を売るとは、通常は考えられない事なのですが……。」

「いや、この船は、我が国で製造しております。何と言っていいのか解りませんが、日本国は、突如としてこの世界に来た……としか、言いようがありません」

 ミドリは目を細める。

「国ごと転移ですか……。ムーの神話のような話ですね。ところで、先日マイハーク上空を飛んだ飛龍は、貴国のものでしょうか?」

 一瞬の沈黙。

「はい、突然の国ごとの転移により、我が国は他国と全く通信出来なくなり、状況把握のために各方面に哨戒機を飛ばしていました。
そのうちの1機が、貴国領空まで侵入したと思われます。その件につきましても、後日日本国政府から貴国へ公式に謝罪を行う予定であります」

「解りました。早急に、国ごとの転移という申し立ても含めて本国へ報告いたします。しばらく待っていただいてよろしいでしょうか?」

ミドリは立ち去ろうとする。

「はい、ええと……何日くらい待てばよろしいでしょうか?」

「?魔信ですぐに本国へ送るため、待っても1〜2時間程度かと思いますが。」

「解りました。では、お待ちします。」

 ミドリは、船を一時的に立ち去る。


「艦長、私は本国に、事の成り行きを報告してまいります。しかし……。中世のようにも見えましたが、本国への通信手段があるのですね。魔信……なんでしょうか?」

「解りません。しかし、見た目ほど戦力が弱い訳ではないという事を、我々は肝に命じなければなりませんね」

 田中は、無線を使用し、日本国に報告を行った。

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小話 接触2P1(日本視点)

 日本国 沖縄本島南方約850km先 海上

 異世界におけるファーストコンタクト、そのため、転移前に訓練のため、出撃準備が整っていた護衛艦いずもを中心とした艦隊が派遣されることとなった。
 ヘリコプター搭載型護衛艦いずも、自衛隊の保有する最大の護衛艦であり、軍事に興味の無い者が見たならば一見して空母に見える。その大きさは、全長248メートル、全幅38mにも及び、大日本帝国海軍の保有していた空母に迫り、見る者を圧倒した。
 ヘリコプターを最大14機搭載できるため、ファーストコンタクトでの様々な事態に対して対応が可能であり、同護衛艦は適任とされた。

 護衛艦いずもは、他の護衛艦と共に海を南下していた。日本を出発してから数日後〜

「ん?」

 レーダーを監視していた隊員が、海上に小さく映る船を確認する。

「艦長!!海上に、船と思われる物体が写っています!!」

「ほう!では、進路をその船の方に取れ。異世界船との、ファーストコンタクトだ!!!」

 護衛艦いずもを旗艦とした艦隊は、海上に確認した船の方向に向かっていった。


 日本国 首都 東京 内閣総理大臣官邸

「まもなく、異世界の船に海上自衛隊の護衛艦が接触します。」

 各大臣が集まった総理官邸、防衛省の幹部が彼らに説明する。
 本来ならば、映像がほしい所であるが、新しい星であり、データ中継の問題から、今回は音声のみのやり取りとなる。

「相手から攻撃してこない限り、決してこちらから撃ってはならない。最悪全世界を敵に回すことになりかねない」

 武田総理が司令を行う。
 レーダー上に映った船、その船に対し、まもなく海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦いずもが接触する。
 艦隊で大陸に近づきすぎると、異世界の国を刺激してはならないため、他の護衛艦はミサイルの届く後方で待機し、いずもだけが前に出る。

「船影を目視しました。帆船です。大きさは……小さいですね
大砲等も確認できません。戦列艦ではなく、それ以前の技術により作られた船と思われます」

 会議室は、静まる。

「帆船……帆船か……。この世界は、中世いや、下手をするとローマ帝国時代程度の文明しか無いのかもしれない」

 経済担当大臣が、頭を抱える。

「経済が持たないだけならば、まだ良い。中世程度の農作技術では、大量生産が出来ない。食料の大量輸入が必要なこの時に、余剰生産能力の乏しい中世では話にならない。
 まだ古米放出をしている間は、玄米を食べれば何とかなるかもしれませんが……、最悪経済の問題ではなく、命の問題になりかねません」

 農林水産大臣も頭を抱える。

「しかし、国家が超未来国家ではなくて良かったのではないでしょうか?超未来国家で、仮に好戦的だった場合、我が国はなす術もなく滅びます。まだ異世界全体の文明レベルは解りませんが、いきなり攻め滅ぼされるリスクは無くなった……。」

 防衛大臣が、意見を述べた。
 国のかじ取りの難しさを、武田は改めて認識する。

「異世界船の上に、大型弩級を確認いたしました。大型の弓が船の上にあります」

「弓……か、いずもが仮に攻撃されても、大した被害は受けないだろう」

 彼らは楽観するのであった。
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