2021年04月19日

第111話ヒノマワリ王国3P6

 パタパタパタパタ……空気を叩くような音が遠くから聞こえてくる。
 
「徐々に大きくなっていくように思えますね」

 聞き慣れない音、そして微かに混じるエンジン音。

「これは……敵が来るぞっ!!!」

 シーン暗殺部隊は戦闘態勢に移行する。
 
 陸上自衛隊の攻撃ヘリ AH-64D 4機はヒノマワリ王国王都 ハルナガ京東門へ距離を詰める。



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第111話ヒノマワリ王国3P5

◆◆◆

 ヒノマワリ王国 首都ハルナガ京 東門付近

「第1遊撃隊配置完了!!」

「重機関銃1から15、配置完了」

 周辺の民家は徴用し、屋上には重機関銃を配置した。
 敵の空爆から逃れるために空から見えぬよう、袋を被せ、闇夜に紛れる服を着た兵が配置につく。
 小型の迫撃砲(放物線を描いて砲弾を飛ばす兵器)も持ち出し、効率的に配置した。

「来るなら来やがれ!!!!」
 
 暗殺部隊の副部隊長フル・ハートは部下の練度に絶対の自信を持つ。
 敵の空爆は狙いこそ正確であるものの、投射量は少ない。

 ムーは手強いが、この配置ならば大半の蛮族どもの大軍でさえも防げるはず。
 警戒するべきは敵特殊部隊だが、この重機関銃や迫撃砲、擲弾筒の配置、そして備え付けられた爆弾。
 東門周辺はどの位置からでも攻撃は可能であった。
 元々あった帝国の施設には配置せず、民家のみに配置しているため、敵に事前情報は無く、現に攻撃も受けてはいない。

 かつて、ケイン神王国の大軍を少数精鋭で足止めしたとされる作戦を、彼等は実践していた。

「フアッハー……我が軍は完璧だ!!」

 懸念すべきは敵が東門周辺を縦断爆撃された場合、及び日本軍正規軍の大規模参戦。
 その場合は建物を爆破して瓦礫の山を気付き、後退しつつ次の作戦に備えるしかない。

「フルハート副部隊長殿、民間人は東へ追い出して本当に良かったのでしょうか?」

 帝国は付近の民家からヒノマワリ王国人を追い出していた。
 追い出した民間人は東方向、つまり制統府から遠い方向へ追い出していた。

「奴らは戦場では邪魔だ。
 そして帝国に降っている国の奴らに人質の価値もない。
 食料の確保も問題だしな。
 唯一使えるのは、敵の来る方向に追い出し、特殊部隊もしくは大軍を前に逃げ惑う事。
 敵将によっては容赦なく殺されるだろうが、敵の弾を消費することとなる。
 属国の民がいくら死のうが全く問題ない」

「おおぉぉぉ、さすがはフルハート副隊長、そこまで思い至りませんでした」 

 王国の要人を暗殺し、ヒノマワリ王国第3王女フレイア邸宅での暗殺を指揮した彼等は負けたことが無かった。
 不敗が自信を加速させる。

「シーン暗殺部隊は不敗をこれからも貫いていくであろう!!!」

 彼等の士気は上がり続ける。
 決して負ける事は無いと、確信しそうになるほどに。

「ん?何だ??この音は」

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posted by くみちゃん at 21:45| Comment(9) | 小説

第111話ヒノマワリ王国3P4

◆◆◆

「はあっ!!はあっ!!はあっ!!」

 息が切れる。
 いったいどれほど歩いただろうか。

 ダラスは木々の間から差し込む僅かな月明かりを頼りに山道を歩いていた。
 草の茂みで肌を切り、ズタズタになりながらも歩き続ける。
 この山を超え、250kmほど行けば帝国の支配する街があるはずだった。

(何とか帝国勢力圏まで逃げ切ってやる!!)

 未だに轟音が聞こえ、閃光が闇夜を切り裂く。

 彼は見通しの良い場所に出て、ハルナガ京を見た。

「……何と言うことだ。これは……現実か?!!」

 制統府、そして帝国の重要施設がある付近が燃えている。
 建物が燃える光は猛烈の一言であり、空は赤く焦げて見える。
 ふと我に返った。
 
 顔は土に汚れ、服は所々破れる。鼻水と涙で顔が湿っていた。
 無様だ。
 帝国の外交官、エリートの代名詞……そんな自分が恐怖のあまりに逃げ回っている。
 
「おのれ……おのれぇ……おのれぇぇぇぇぇっ!!!日本国めぇぇぇぇぇっ!!!」

 怒りのあまりに闇夜に叫ぶ。
 大声で叫んだため、少しだけ恐怖が和らぐ。
 
 俺は帝国のエリート外交官、そんな自分をこんな無様な姿にさせた原因は日本だ。
 絶対に許さん!!

 ゴォォォォォッ!!!

「ひいぃっ!!」

 F-2 戦闘機のアフターバーナーの音が響く。
 反射的に情けない声を出してしまう。

「ぐぅっ!!」

 怒りと恐怖が入り交じった。
 彼は、帝国勢力圏に向かって歩き続ける。

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posted by くみちゃん at 21:44| Comment(13) | 小説