「なんか信号弾が上がりましたね」
「大規模侵攻と勘違いしてくれていれば良いが……」
「敵の地上軍を勘違いさせるのに何の意味がおありで?」
「うむ、日本国によれば……地上軍もそうだが、主たる目的は周辺の航空戦力をヒノマワリ王国周辺に向かせる事に意義があるらしい」
「しかし、グラ・バルカス帝国の空の鉄竜を壊滅させ、無線……だったか?それも無力化出来るのですよね?
気付かない可能性もあります」
「まあ、帝国が気付かず壊滅したらそれはそれで良いのでは無いか?とにかく我らは与えられた仕事を完璧にこなすだけだ」
ヒノマワリ王国の国境監視塔から見える位置、第二文明圏連合軍の特務隊が横一列に薄く配置する。
多くの旗が並べられ、無人のたいまつが焚かれた。
後方では馬が必死に枯れ草を引き、僅かな明かりでも土煙が確認出来た。
通常であれば、空から確認が行われて作戦は失敗する。
しかし、日本国によって彼等は目を奪われている。
猛烈に立ち上る土煙に、グラ・バルカス帝国兵は大規模侵攻と誤認した。
第二文明圏連合軍特務隊による陽動作戦の第一段階は成功することとなる。
◆◆◆
ヒノマワリ王国 制統府 統治軍地下指令室
敵大規模侵攻の可能性、残った兵力の少なさ、
指令室は沈黙に包まれていた。
「おのれ、オル・ブーツめ!!」
副主任ジャギーナはオル・ブーツのいなくなった部屋で吐き捨てる。
「兵達は配置についたか?」
「現在各橋に爆薬をもって走っています。
橋にバリケードを張り、突破されたと見せかけ、橋の中央部まで敵が侵攻した時に爆破し、橋を落としますがよろしいですね?」
指示を出す前にすでに最適解の対策を考えてを考えて動く。
優秀な部下達をもって、本当に良かったと感じる。
「了解だ。シーン暗殺部隊の配置状況は?」
シーン暗殺部隊……部隊長シーンの名を冠し、暗殺部隊としての成功率は極めて高く、帝国本国の評価もすこぶる高い。
音も無く忍び寄り、暗殺する事もあれば、重兵器を操り殲滅することもある。
単刀直入な名前であるが、ヒノマワリ王国において特殊作戦全般を行う実力行使部隊であり、通常の陸軍歩兵に比べて遙かに強靱な精神と肉体を持っていた。
「敵特殊部隊が投入される場合は警備の薄い東門から以外には考えられません。
よって、東門周辺での監視体制を強化しております。
すでに周辺の建物から住民をすべて排除し、敵が隠れる可能性のある建物に爆薬を仕掛ける等、準備を整えつつあります」
民間人は攻撃が行われた際に逃げ惑うため、戦場では邪魔以外のなにものでも無い。
グラ・バルカス帝国は戦場になりそうな範囲から民間人の排除を進めていた。
「我が本国の特殊部隊のように、空から来る可能性もあるのではないか?」
「空から直接街中に降りる場合は滑走路や広場に限られます。
同場所は狙撃を受けやすい。
東門であれば、門周辺にも民家が広がり、浸透しつつ来る可能性が高い」
暗殺部隊は東からの侵攻を見越して各建物に重機関銃や迫撃砲、擲弾筒(手榴弾のような爆発する弾を遠くに飛ばす兵器)を配置しようとしていた。
敵の特殊部隊だけではなく、大規模侵攻も東から来る事は間違いない。
兵装はそれらの排除にも役だってくれるだろう。
「そうか……敵は我が方の重要な建物をピンポイントで狙ってきた。
おそらくあらかじめ情報が漏れていたのだろう。
それにしても凄まじい精度の空爆だ……奴らは強い!!」
「はっ!!重要施設が把握されていた可能性を考えて暗殺部隊は民家を徴用し、偽装を施して配置準備を進めております。
航空機が空爆するような高空からは絶対に見えません!!」
「よし!!援軍が来るまで耐えるぞ!!敵は大軍とはいえ、ほとんどは所詮この世界の蛮族どもだ。
我ら一人一人が力を発揮し、一致団結すれば突破できない壁では無いっ!!」
副主任ジャギーナの指揮に微かな光を見た部下達は、自分たちが生き残るために必死に動く。
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