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グラ・バルカス帝国レイフォル防衛艦隊 旗艦 マルゼラン
司令長官アンダールは旗艦の艦橋から、空母から次々と発艦する航空機を眺めていた。
「やはり我が軍は圧倒的だっ!!」
「はっ!!そのとおりでございます」
参謀シビエが同意する。
「これで、統合基地ラルス・フィルマイナに日本軍が侵攻してきていたら、空で滅する事が出来るな」
「はい、先手を打つとはさすがでございます。
敵もいきなり海の方向から大量の戦闘機が現れるのですから、たまったものではありませんな」
「そうだな、空母は力だ。
シビエ、知っておるか?私は大艦巨砲主義者なのだよ」
「え??」
シビエは困惑する。
アンダールは空母至上主義で、大艦巨砲主義を否定している人物。
そんな彼が大艦巨砲主義だと話す。
「大艦巨砲は砲を遠くに飛ばすアウトレンジが基本だ。
空母は爆弾を数百キロに渡って飛ばすのと同様、つまり結局はアウトレンジ戦法の延長なのだ。
つまり、空母こそ今後帝国が力を入れるべきであり、空母こそが力なのだ。
日本軍もひねり潰してくれるわっ!!」
ああ、なるほど。
大艦巨砲主義を否定する強烈な皮肉だった。
「ははっ!!その通りでございます」
アンダールは自分の言葉に酔う。
「我が軍は……圧倒的……ダッ」
ダァァァァァァン!!!!
突如として目視していた空母に衝撃が走る。
最初に光りが走り、衝撃波が空気を振動させた。続けて猛烈な炎が出現する。
炎は空母を包み込む程に大きくなり、上部に整然と並んでいた戦闘機や爆撃機をなぎ払う。
なぎ払われた爆撃機の爆弾が誘爆し、炎は力をつけて膨らんだ。
続けて耳を覆いたくなるほどの爆発音が起こり、鼓膜のみではなく、体ごと振動させる。
「リュウセイ被弾!!!」
続けてもう1発、同じ空母中央部から爆発と共に炎が上がる。
敵の攻撃を再度受けた証拠だった。
「ちくしょう!!!」
2度に渡る対艦誘導弾の直撃を受けたペガサス級航空母艦リュウセイは機体を真っ二つに折り、乗組員を救助する暇も無く海に消えた。
「空母リュウセイ、轟沈!!!」
外周に展開する駆逐艦隊が対空砲を打ち上げ始めた。
「ほ……報告にあった誘導弾かっ!!そんな」
誘導弾が来るならば、発射母体が付近にいるはずだった。艦隊外周にも航空警戒機を飛ばしていたはずだ。
「敵の射程は150kmをさらに上回ると言うのかっ!!!」
「ぐっ……対空戦闘!!!」
アンダールが指示するよりも先に、戦艦マルゼランからも猛烈な対空砲が上がる。
艦隊から打ち上げられる対空砲の雨、見た目は凄まじいが、もどかしいほど当たらない。
「空母ドラルゴ被弾!!戦艦ラス・セレナール、ガーネットスター被弾!!駆逐艦ハラヘイル、オルナカ、セルナーカ、ヒルツク轟沈!!!」
艦隊の至る所で火の手が上がる。
その炎はたったの1回で、艦を航行不能にするほどの威力を持ち、あまりにも大きい爆発を引き起こす。
降り注ぐミサイルの雨。
「なんて……何てことだ……戦闘にならんではないかっ!!!」
アンダールは圧倒的な戦力差を実感する。
眼前で部下が万単位で死ぬ。
日本国とグラ・バルカス帝国では、帝国と現地人以上に差があるのかもしれない。
1撃で航行不能になる威力の攻撃をすべて当てるなど、反則にもほどがある。
帝国の超戦艦グレードアトラスターの主砲が150km以上飛翔し全弾命中するようなものだ。
「おのれ日本軍め、おのれおのれ……おのれぇぇぇぇぇっ!!!」
ガァァァァン!!!
艦が激しく揺れる。
アンダールは頭を柱に打ち付けた。
敵誘導弾は戦艦マルゼランの側方を貫き、内部で爆発。
主砲砲塔付近から黒い煙が出ていた。
「い……いかん!!!」
次の瞬間、炎は弾薬庫に引火、高き火柱が海上に出現した。
グラ・バルカス帝国旗艦マルゼランは艦隊を真っ二つに折って海に沈む。
ほんの数分の出来事だった。
たったの数分の攻撃で、威容を放ち、世界最強、永久無敗と言われた大規模艦隊が海に消えた。
沈まなかった船は水の上で燃えるスクラップと化している。
異世界を恐怖に陥れていたグラ・バルカス帝国レイフォル防衛艦隊は日本国海上自衛P-1編隊18機による対艦誘導弾の飽和攻撃を受け、駆逐艦3隻及び潜水艦を残して全滅した。
posted by くみちゃん at 01:17|
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