2021年06月25日

第114話反撃の異世界軍3P2

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 レイフォル西側空域

 晴れ渡った空に、1機の航空機が高度10000m以上の高空を飛行する。
 早期警戒管制機(AWACS)と呼ばれるその飛行機は機体上に直径9.14mの円盤状の物体があり、同円盤はゆっくりと回転していた。
 
 遙か遠くを見通す圧倒的な『目』を持つ早期警戒機によって、海上自衛隊P-1飛行連隊18機と、F-15J改がグラ・バルカス帝国艦隊の方向へ導かれる。
 後方ではF-15J改の足を伸ばした空中給油機が旋回していた。
 
 P-1哨戒機
 防衛省技術本部と川崎重工業が開発し海上自衛隊が保有する哨戒機である
 ターボファンエンジンを4発登載した中型機であり、航続距離は8000kmにも及ぶ。 各機はそれぞれが91式空対艦誘導弾を8発抱えて空を飛んでいた。 

 艦隊までの距離は200kmを切る。

 P-1哨戒機18機の編隊は遙か高空に飛行機雲を引く。

「目標、グラ・バルカス帝国艦隊」

 AWACSがミサイルが無駄にならないよう、最適に目標が振り分けられていく。
 撃沈後の乗組員救助のため、駆逐艦3隻は目標から外された。
 極めて効率化した殺傷が行われようとしていた。

 P-1内において、隊員長田は思考を巡らせていた。

 グラ・バルカス帝国は度重なる警告を無視し続け、海上保安庁隊員をも手にかけた。
 さらに、日本国に殲滅戦をしかけたのでは無いかとも思える、空前絶後の大艦隊を送り込んできた。
 その数は、まるで第二次世界大戦中のアメリカ保有艦隊がすべてやってきたかのような大艦隊だった。
 弾薬を量産してなんとか退けた。

 しかし、これほどの物量を持つ彼等を放っておけば……奴らが核と大陸間弾道弾を仮に手に入れてしまえば、30年後にはとんでもない事になるだろう。
 彼等をこのままのさばらせてはならない。
 解っている。解ってはいるが……。

 このP-1には8発の対艦誘導弾が搭載されその内の一撃は巡洋艦を大破に追い込むほどの威力がある。
 駆逐艦なら撃沈してしまうだろう。
 つまり、自分がこのボタンを押せば、8発の誘導弾はどんなに少なく見積もっても1000人は殺してしまう。
 場合によっては数千人が死ぬだろう。

 必要な事は解っているが、彼等も命令して戦っている身だと思うと、こみ上げてくるものがある。
 一隊員如きが命令に逆らう訳にはいかない。しかし一際正義感が強い彼は、強いストレスを感じ、胃に穴が開きそうだった。

『攻撃開始!!攻撃開始!!!』

 無線が攻撃開始を告げる。
 彼は、命令通り、いつもの訓練と同じようにミサイル発射ボタンを押し込んだ。
 連続してミサイルは発射される。ガコンと音がして、少し機体が軽くなっただけだった。

「すまんな」

 長田は目を瞑り、黙祷する。
 見えない人の死は感覚を麻痺させる。
 やった事は、ボタンを押しただけ。大量に人を殺す感覚は、ひどくあっけないものだった。
 
 先頭を飛んでいたP-1哨戒機から連続して8発もの91式空対艦誘導弾が切り離される。
 次々と発射される空対艦誘導弾。
 弾はジェットエンジンで飛行を始めた。

 18機ものP-1哨戒機から連続して発射された91式空対艦誘導弾、144発は、グラ・バルカス帝国海軍レイフォル防衛艦隊を撃滅するため、徐々に高度を下げながら飛翔していった。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 01:16| Comment(25) | 小説

第114話反撃の異世界軍3P1

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レイフォル西側沖合約300km付近海上

 晴れ渡った空、太陽は今日も東から上り、僅かに波打つ海が光を反射して輝く。
 海の魚達はゆっくりと泳ぎ、海鳥たちはのんびりと浮かんでいた。

 そんな平和な海上に、水を裂き、白く海面を泡立たせながら緊張を走らせる者達が列を組んで進む。

 グラ・バルカス帝国レイフォル防衛艦隊 旗艦 戦艦マルゼランは東へ向かっていた。 マルゼランの艦橋で、レイフォル防衛艦隊司令長官アンダールは東を睨む。
 
「まだ、何があったのか判明しないのか?」

 横に立つ参謀シビエにアンダールは問うた。
 先刻から、レイフォル統合基地ラルス・フィルマイナからヒノマワリ王国と連絡が取れなくなっている。
 敵攻撃の可能性有りとの無線を最後に音信不通となり、さらにレーダーは使用不能となったため、先ほど偵察機を飛ばした。

 参謀は言葉を選んで報告する。

「現時点、不定期で起きる磁気嵐が原因か、もしくは人為的なものなのかは判明しておりません。
 日本軍は電子技術において優位性を持っているようで、彼等の攻撃の前にはレーダーが使用不能となる現象が報告されています。
 何らかの干渉を行っていると思われ、攻撃の可能性は捨てきれません。
 現在直掩を増やして空からの侵攻を警戒しております。
 先の海戦の大敗は、レーダーによって目が奪われ、相手の位置も解らずに一方的に殴られたものによります。
 よって、目の特に良い者を直掩には選抜しております」

「日本軍め、我が艦隊を先の遠征艦隊を同じと思うなよ」

 司令長官アンダールは辺りを見回す。

 圧倒的存在感と機能美、そして強さを誇る戦艦マルゼランを始め、
 ヘルクレス級戦艦(長門型に酷似)ラス・セレナール
 オリオン級戦艦(金剛型に酷似)ガーネットスター
 ペガサス級航空母艦 リュウセイ
           ドルラゴ
 他、強力な艦隊が進む。
 海中にはシータス級潜水艦隊27隻が潜んでいる。
 
 圧倒的な機能美と力強さを誇る戦艦群。
 エリートをかき集めた艦隊の練度は間違いなくグラ・バルカス帝国本国艦隊よりも上だろう。
 さらに、レイフォルが最前線となると判断したグラ・バルカス帝国は、新鋭機であるアンタレス型戦闘機改をも同艦隊に優先配備していた。

 アンタレス型戦闘機改の性能は驚愕に値するもので、本国で行われた模擬空戦では、熟練パイロットがアンタレス型戦闘機に乗り、中程度の練度を持つ者がアンタレス型戦闘機改に乗り、機の特性を生かして戦った。

 結果はアンタレス型戦闘機改が圧勝し、不敬な乗務員が
「赤子の手をひねるかのごとし」
 と発した言葉に熟練パイロットが激怒したという逸話を残す。

 この逸話は軍幹部のアンタレス型戦闘機改に対する信頼を深めていった。

 アンタレス型戦闘機改
 形が似ているため改と称したが、設計は1から成されており、全く別の戦闘機と言える。 防弾装備はもちろんの事、エンジン出力のさらなる向上で高度5000mで時速660kmを記録。
 従来のアンタレス型戦闘機よりも大幅に速度性能がアップしてた。
 

 司令長官アンダールもまた、優秀な軍人であったが、先の派遣艦隊の壊滅は圧倒的技術差によるものではなく、練度と運用に問題があったと考えていた。
 また、帝国軍部では先の派遣艦隊の多くは日本軍の戦闘機を見る前に撃沈されていたため、大敗は誘導弾によるものであると判断されていた。

 戦闘機の圧倒的性能差の目撃例は少なく、未だ戦場伝説ではないかとの見方も軍部内に根強く残っている。 

 冷静な分析に基づけば見えるものが見えなくなる。
 古き人間は生き方を変えることは出来ない。
 大敗という状況下であっても、どうしても受け入れられないものがあった。

「うむ、先手を打つか。
 ラルス・フィルマイナからの連絡が途絶えている。
 偵察機の帰還を待つこと無く、日本軍による攻撃が行われている事を想定し、これより戦闘機群による制空権確保を行う。
 直掩戦闘機以外の戦闘機部隊は直ちに発艦し、レイフォリア空域に向かえ!!!」

「直掩戦闘機は艦隊直上ではなく、旗艦から東に50km付近で警戒にあたれ」

「また、敵誘導弾発射の爆撃機を迎撃する必要があるため、直掩のうち半分は東側150kmまで警戒範囲を広げろ」
 
「はっ!!!」

 命令は正確に伝達された。
 空に舞う戦闘機は編隊を組んで東へ向かい、空母は風上に向かって全力疾走を開始した。
 迅速に発艦準備を整えた彼等は自信をもって東へ飛び立つのだった。



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posted by くみちゃん at 01:14| Comment(25) | 小説

2021年06月20日

第113話反撃の異世界軍2P6


「こんなに……差があったのね……」

 守るべき帝国が猛烈な危機に瀕しているのが理解できた。
 絶望すべき場面で何故か冷静な自分がいる。

「終わりね……」

 命令されたとはいえ、自分は日本人の捕虜を処刑した張本人として世界中に顔が知られている。
 日本に捕まったら死罪は免れないだろう。
 同期に比べれば昇進は速く、エリートと言われた、でも所詮は社会の歯車の一つにすぎなかった。
 しかし命令は絶対であり、自分の意見で防げる事象ではなかった。

 あがらう事の出来ない運命の大波、人生の不条理がただただ悲しかった。

「え???」

 気付けば涙が頬を伝う。
 シエリアは燃え続ける基地を、呆然と眺めるのだった。


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 次にくるマンガ大賞のWebマンガ部門に日本国召喚がノミネートされました。
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posted by くみちゃん at 01:09| Comment(1367) | 小説