レイフォル西側空域
晴れ渡った空に、1機の航空機が高度10000m以上の高空を飛行する。
早期警戒管制機(AWACS)と呼ばれるその飛行機は機体上に直径9.14mの円盤状の物体があり、同円盤はゆっくりと回転していた。
遙か遠くを見通す圧倒的な『目』を持つ早期警戒機によって、海上自衛隊P-1飛行連隊18機と、F-15J改がグラ・バルカス帝国艦隊の方向へ導かれる。
後方ではF-15J改の足を伸ばした空中給油機が旋回していた。
P-1哨戒機
防衛省技術本部と川崎重工業が開発し海上自衛隊が保有する哨戒機である
ターボファンエンジンを4発登載した中型機であり、航続距離は8000kmにも及ぶ。 各機はそれぞれが91式空対艦誘導弾を8発抱えて空を飛んでいた。
艦隊までの距離は200kmを切る。
P-1哨戒機18機の編隊は遙か高空に飛行機雲を引く。
「目標、グラ・バルカス帝国艦隊」
AWACSがミサイルが無駄にならないよう、最適に目標が振り分けられていく。
撃沈後の乗組員救助のため、駆逐艦3隻は目標から外された。
極めて効率化した殺傷が行われようとしていた。
P-1内において、隊員長田は思考を巡らせていた。
グラ・バルカス帝国は度重なる警告を無視し続け、海上保安庁隊員をも手にかけた。
さらに、日本国に殲滅戦をしかけたのでは無いかとも思える、空前絶後の大艦隊を送り込んできた。
その数は、まるで第二次世界大戦中のアメリカ保有艦隊がすべてやってきたかのような大艦隊だった。
弾薬を量産してなんとか退けた。
しかし、これほどの物量を持つ彼等を放っておけば……奴らが核と大陸間弾道弾を仮に手に入れてしまえば、30年後にはとんでもない事になるだろう。
彼等をこのままのさばらせてはならない。
解っている。解ってはいるが……。
このP-1には8発の対艦誘導弾が搭載されその内の一撃は巡洋艦を大破に追い込むほどの威力がある。
駆逐艦なら撃沈してしまうだろう。
つまり、自分がこのボタンを押せば、8発の誘導弾はどんなに少なく見積もっても1000人は殺してしまう。
場合によっては数千人が死ぬだろう。
必要な事は解っているが、彼等も命令して戦っている身だと思うと、こみ上げてくるものがある。
一隊員如きが命令に逆らう訳にはいかない。しかし一際正義感が強い彼は、強いストレスを感じ、胃に穴が開きそうだった。
『攻撃開始!!攻撃開始!!!』
無線が攻撃開始を告げる。
彼は、命令通り、いつもの訓練と同じようにミサイル発射ボタンを押し込んだ。
連続してミサイルは発射される。ガコンと音がして、少し機体が軽くなっただけだった。
「すまんな」
長田は目を瞑り、黙祷する。
見えない人の死は感覚を麻痺させる。
やった事は、ボタンを押しただけ。大量に人を殺す感覚は、ひどくあっけないものだった。
先頭を飛んでいたP-1哨戒機から連続して8発もの91式空対艦誘導弾が切り離される。
次々と発射される空対艦誘導弾。
弾はジェットエンジンで飛行を始めた。
18機ものP-1哨戒機から連続して発射された91式空対艦誘導弾、144発は、グラ・バルカス帝国海軍レイフォル防衛艦隊を撃滅するため、徐々に高度を下げながら飛翔していった。
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