2021年06月20日

第113話 反撃の異世界軍2P2

不意に執務室の電話が鳴る。

「私だ」

『報告いたします。先ほどデズデモーナ駐屯地から、攻撃を受けつつあるという報告を最後に連絡が途絶えました』

「なにっ!?すぐに行く、訓練中の機にも警戒するように伝えろ!!」

 ファンターレは電話の受話器を強く置く。

「どうしました?」

「デズデモーナ駐屯地が攻撃を受けたようだ。
 すぐに指令室へ行くぞ。
 ランボール、結局直掩は5倍以上、お前の考えに近い数になりそうだな」

 2人は指令室に向かって走る。

 廊下を曲がり、階段を駆け上がった。
 息を切らしながら指令室へはいると、騒然として怒号が響き渡っていた。

「どうしたっ!!」

 ファンターレが大声を出すと、部下が駆け寄ってきて報告を開始した。

「はっ!!現在 シコラクス基地、ペルディー基地、陸軍デズデモーナ駐屯地、クレシダ駐屯地の連絡が途絶えました」

「そんな……そんなはずは無いっ!!各基地は有線で繋いであるんだぞ!!
 まさか無線でやりとりしてるんじゃないだろうな」

「無線はすでに使用不能です。
 唯一デズデモーナ基地が有線で攻撃を受けつつあるとの連絡を最後に通信が途絶えています」

 背筋に悪寒が走る。
 故障であってほしいと願うが、故障の可能性をさらに低くする報告が入る。

「対空レーダー5基すべて使用不能!!これより予備基3基を稼働させます……だめです、使用できませんっっっ!!!!」

 ファンターレがレーダー監視員の画面をのぞき込む。
 各レーダー用に用意された8個の画面はすべて真っ白になっていた。

「くそっ!!すべて周波数が異なるのだぞっ!!同時に白くなることなどありえんっ!!
 故障では……」

「故障ではありません!!すでに調べました」

 監視員はファンターレの言に被せるように話す。

「い……いかん!!敵の攻撃が予想される。
 上がれる機はすべて上がれっ!!
 総員戦闘配置!!!」

「すぐに指令します!!」

 ウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーッ
 基地に設置されたスピーカーから、大音量のサイレンが鳴り響いた。

「総員戦闘配置、これは訓練ではない。
 繰り返す、これは訓練ではない、総員戦闘配置!!!」

 部下により、ファンターレの命令が基地全体に伝えられる。

 グラ・バルカス帝国軍人達は、それぞれが持ち場に向かって走り出す。
 飛行場に設置された航空機はすぐに離陸するために滑走路に向けて走り始めた。

 ファンターレは窓から外を見る。
 大規模基地超大型滑走路から整然と友軍機が離陸するために滑走している。
 その姿は圧倒的な力強さを感じさせ、負けるはずが無いという確信すら持つ。

「出来る事はやった。これほどの規模と技術、練度を誇る我らが負けるなら、何をやっても勝てん」

 レーダーが8基同時に使用不能となった。
 考えられない技術力であり、もしかしたら本当に何をやっても勝てないのかもしれない。 司令官としてはあるまじき考えが一瞬脳裏をよぎる。

 アンタレス型戦闘機3機が同時に滑走していた。
 間もなく離陸しようとしたその時ーーーー。

 閃光が走る。
 続いて、何かの衝撃波が放射状に広がった。

「え??」

 耳を劈く爆音が響き渡り、離陸滑走中のアンタレス型戦闘機を巻き込む。
 各アンタレス型戦闘機は衝撃で主翼が折れて内部の燃料をまきちらかし、燃料に引火して壮大な炎が出現した。

 ガァァァァァァン!!!

 爆発の衝撃波で窓ガラスが割れる。
 
「うぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 ファンターレは飛び散ったガラスの破片を浴びた。

「何が起きたっ!!」

「事故か?」

 誰かが叫ぶ。
 しかし、次の瞬間、皆事故ではない事を確信する。

 連続して閃光が走り、基地内のレーダー施設及び山に偽装して設置してあるレーダー塔付近から猛烈な爆発が上がる。
 元々レーダーは何らかの原因で使用不能であったが、レーダー施設が破壊されたため、完全に使用不能となる。

「て……敵襲!!!!!」

「何処だっ!!」

 何処から攻撃されているのかすら見えない。
 ファンターレは空を見渡した。

「なっ!!!」

 整然と……力強く飛んでいた友軍機が激しく震えた。
 空に連続して衝撃が走る。
 空に40もの爆発が発生、友軍だったそれは火だるまとなって青い空に赤い炎を描き、黒い煙の尾を引く。

 平和だった空は一瞬で地獄絵図と化した。
 空から炎の雨が降る。


タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 01:05| Comment(9) | 小説

第113話反撃の異世界軍2P1

次にくるマンガ大賞のWebマンガ部門に日本国召喚がノミネートされました。
 本当にありがとうございます
 7月2日(金)11時00分までが大賞を決める投票受付期間となります。
 担当直入ですが、応援をお願いします!!
 1票を日本国召喚に入れていただければ嬉しく思います!!

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グラ・バルカス帝国 レイフォル地区 レイフォリア総合基地ラルス・フィルマイナ

 レイフォル地区には、多くの陸軍航空基地及び駐屯地が存在する。
 元列強国家、レイフォルの首都レイフォリアには、大陸国家群が侵攻してきた場合における最終の防衛手段として、グラ・バルカス帝国の大規模な基地が建設されていた。
 統合基地ラルス・フィルマイナはグラ・バルカス帝国がムー大陸統合のための総合司令基地として建設されたため、他の基地に比べても遙かに大きな基地である。

 陸軍と海軍の統合基地は、運用が極めて効率化された運用がされているため、他の帝国基地よりも純粋な軍事力は高い。

 幾何学的に配置された建物が特徴的なレイフォリア統合基地ラルス・フィルマイナの東側の空が微かに明るくなり、闇に支配された夜が終わり、星々が消えていく。

「失礼します!!」

 陸軍レイフォル守備隊長ファンターレの部屋に、陸軍将校ランボールが入る。
 昨夜からヒノマワリ王国との連絡が一切途絶えており、戦闘が行われている可能性
があると判断したグラ・バルカス帝国陸海軍は、厳戒態勢に移行しつつあった。

「ヒノマワリ王国とは未だ連絡が取れません。
 偵察に向かわせた機も次々と消息を絶っています。敵が本格侵攻している可能性が高いと判断します」

「そうだろうな……海軍には?」

「すでに連絡済みです。
 警戒態勢についてですが、直掩が少し少ない気がします。今の5倍に増やすべきです!!」

 ランボールの意見に、守備隊長ファンターレは怪訝な顔をする。

「ランボール大佐、何を言っている?
 敵の基地からここまで敵戦闘機の航続距離が持つとも思えん。
 戦闘機の護衛無しで攻撃機を出すほど敵もバカではないだろう?
 つまり、敵の航続距離不足により空爆は無い。
 あったとしても単発的なもので大規模なものにはならないだろう」

 ファンターレは、窓から基地を眺める。
 厳戒態勢に入った帝国陸軍航空隊は、いつでも発進出来るよう準備が整えられていた。
 機は整然と並び、軍人達の動きも鋭い。
 ファンターレから見ても、練度の高さは称賛に値する。

「直掩機の数は十分だ。このままで問題はない。
 レイフォリア近くには周波数の異なるレーダーが5基以上設置され、さらに予備が3基もある。
 敵の電波妨害で無線が通じなくなる可能性を考慮し、各基地は有線で、しかも地中化して繋いである。
 敵を見逃す事事態ありえん事だ。
 通常なら1基でも問題はないが……海軍の圧倒的敗退が原因で8倍もの数を設置している。
 本国の首都よりも遙かに凄まじいレーダー網と言って良い。
 そして付近の山々にも多数の偽装対空砲陣地を準備している。
 このラルス・フィルマイナの防空網は海軍の対空防衛陣よりも遙かに強力だ。
 敵の攻撃の可能性から推察するに、十分すぎる迎撃態勢だ」

 彼は続ける。

「それに……だ。
 お前も解っているだろうが、空爆のみで地上軍を攻略する事など出来ん。
 レイフォルにはまだ陸軍32万の大兵力が残っているし、基地や駐屯地も数多く存在する。
 また、東の海の果てには海軍のレイフォル防衛艦隊70隻が待機している。
 我が軍は圧倒的だ」

「我が軍が強いのは十分に解っています。
 ただ、相手は日本国です。
 この世界の者どもでははい。
 海軍の大艦隊は日本征伐のために派遣されましたが、大敗北を喫しました。
 陸と海は違う事は十分に解っていますが、日本国相手では警戒しすぎることは無いでしょう」

「ああ、確かに海軍は大敗した。
 これ以上無いほどの歴史的大敗だ。さらにリーム王国の陸軍航空隊も壊滅している。
 日本軍は強い。決して舐めてはいない。
 しかし、この迎撃態勢は厳戒態勢と言って良い。長期戦になる可能性を考えるとこれ以上の体勢というのは取りようがないだろう。
 直掩を上げたとして、いつまでも飛ばし続ける訳にはいかん。
 兵の数は圧倒的ではあるが無限では無い。
 まあ、現時点の話しをすれば、訓練飛行も行われていることから、空には5倍どころか、8倍以上いる計算にはなるがな。
 厳戒態勢に入るため、この訓練飛行も本日で取りやめで、かつ直掩の任務では無いため、ただいるだけだが」
 
 陸軍レイフォル守備隊長ファンターレはランボールの言を一蹴する。
 朝日は徐々に上り、基地を照らし始めていた。


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posted by くみちゃん at 01:03| Comment(20) | 小説