「私だ」
『報告いたします。先ほどデズデモーナ駐屯地から、攻撃を受けつつあるという報告を最後に連絡が途絶えました』
「なにっ!?すぐに行く、訓練中の機にも警戒するように伝えろ!!」
ファンターレは電話の受話器を強く置く。
「どうしました?」
「デズデモーナ駐屯地が攻撃を受けたようだ。
すぐに指令室へ行くぞ。
ランボール、結局直掩は5倍以上、お前の考えに近い数になりそうだな」
2人は指令室に向かって走る。
廊下を曲がり、階段を駆け上がった。
息を切らしながら指令室へはいると、騒然として怒号が響き渡っていた。
「どうしたっ!!」
ファンターレが大声を出すと、部下が駆け寄ってきて報告を開始した。
「はっ!!現在 シコラクス基地、ペルディー基地、陸軍デズデモーナ駐屯地、クレシダ駐屯地の連絡が途絶えました」
「そんな……そんなはずは無いっ!!各基地は有線で繋いであるんだぞ!!
まさか無線でやりとりしてるんじゃないだろうな」
「無線はすでに使用不能です。
唯一デズデモーナ基地が有線で攻撃を受けつつあるとの連絡を最後に通信が途絶えています」
背筋に悪寒が走る。
故障であってほしいと願うが、故障の可能性をさらに低くする報告が入る。
「対空レーダー5基すべて使用不能!!これより予備基3基を稼働させます……だめです、使用できませんっっっ!!!!」
ファンターレがレーダー監視員の画面をのぞき込む。
各レーダー用に用意された8個の画面はすべて真っ白になっていた。
「くそっ!!すべて周波数が異なるのだぞっ!!同時に白くなることなどありえんっ!!
故障では……」
「故障ではありません!!すでに調べました」
監視員はファンターレの言に被せるように話す。
「い……いかん!!敵の攻撃が予想される。
上がれる機はすべて上がれっ!!
総員戦闘配置!!!」
「すぐに指令します!!」
ウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーッ
基地に設置されたスピーカーから、大音量のサイレンが鳴り響いた。
「総員戦闘配置、これは訓練ではない。
繰り返す、これは訓練ではない、総員戦闘配置!!!」
部下により、ファンターレの命令が基地全体に伝えられる。
グラ・バルカス帝国軍人達は、それぞれが持ち場に向かって走り出す。
飛行場に設置された航空機はすぐに離陸するために滑走路に向けて走り始めた。
ファンターレは窓から外を見る。
大規模基地超大型滑走路から整然と友軍機が離陸するために滑走している。
その姿は圧倒的な力強さを感じさせ、負けるはずが無いという確信すら持つ。
「出来る事はやった。これほどの規模と技術、練度を誇る我らが負けるなら、何をやっても勝てん」
レーダーが8基同時に使用不能となった。
考えられない技術力であり、もしかしたら本当に何をやっても勝てないのかもしれない。 司令官としてはあるまじき考えが一瞬脳裏をよぎる。
アンタレス型戦闘機3機が同時に滑走していた。
間もなく離陸しようとしたその時ーーーー。
閃光が走る。
続いて、何かの衝撃波が放射状に広がった。
「え??」
耳を劈く爆音が響き渡り、離陸滑走中のアンタレス型戦闘機を巻き込む。
各アンタレス型戦闘機は衝撃で主翼が折れて内部の燃料をまきちらかし、燃料に引火して壮大な炎が出現した。
ガァァァァァァン!!!
爆発の衝撃波で窓ガラスが割れる。
「うぉぉぉぉぉっ!!!!!」
ファンターレは飛び散ったガラスの破片を浴びた。
「何が起きたっ!!」
「事故か?」
誰かが叫ぶ。
しかし、次の瞬間、皆事故ではない事を確信する。
連続して閃光が走り、基地内のレーダー施設及び山に偽装して設置してあるレーダー塔付近から猛烈な爆発が上がる。
元々レーダーは何らかの原因で使用不能であったが、レーダー施設が破壊されたため、完全に使用不能となる。
「て……敵襲!!!!!」
「何処だっ!!」
何処から攻撃されているのかすら見えない。
ファンターレは空を見渡した。
「なっ!!!」
整然と……力強く飛んでいた友軍機が激しく震えた。
空に連続して衝撃が走る。
空に40もの爆発が発生、友軍だったそれは火だるまとなって青い空に赤い炎を描き、黒い煙の尾を引く。
平和だった空は一瞬で地獄絵図と化した。
空から炎の雨が降る。
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