2021年07月21日

第116話列強国の意地P3

帝国艦隊は必死に砲撃を行う。
 対空砲も曳光弾を交えて雨のように打ち込まれた。
 しかし帝国の対空砲は水平よりも下を撃つことはそもそも想定しておらず、なかなか狙いが定まらない。

 やがて魚雷は旗艦の近くをすり抜けて空母の方向へ向かう。

 撃つ。撃つ。撃つ。

 すでに付近海域は魚1匹生きるのが困難ではないかと感じるほどの爆発に包まれる。
 しかし当たらない。
 やがて魚雷のうち、1発が空母オグマの後部スクリューに命中した。 

「ああっ!!」

 旗艦の艦橋から双眼鏡で見ていた艦隊司令アケイルは、巨大空母オグマが振動し、艦隊後部に膨大な水柱が上がるのを見た。
 続けて他の2発が艦の中央部を捕らえる。

 海上自衛隊89式魚雷はグラ・バルカス帝国空母オグマのスクリューを破壊した後、艦底に2発命中し、魚雷に内蔵された267kgもの高性能炸薬は、その威力を開放した。
 空気に比べて密度が1000倍もある海水は爆圧を逃さずに封じ込め、船体に大きなダメージを与える。
 艦底を貫いた爆圧は、空母の区画をことごとく破壊し、物理的に弱い方向へ向かった。

 暴れ回る炎の嵐は一瞬で空母内部を駆け回り、艦内の航空機や爆弾に誘爆、圧倒的なエネルギーは、上へ向かい、最上甲板に火柱が出現する。

 火柱の周辺も圧倒的な熱波で燃え始めた。
 帝国空母の何十倍もの高さまで上がった火柱は、きれいな青い空を焦がす。

 艦底の大きな穴からは膨大な量の海水が流れ込んだ。
 あっという間だった。
 信じられないほどに早い時間で、空母オグマは航空機や乗員と共に海に消えた。

「空母オグマ轟沈!!」

 無機質な報告が艦橋に響く。
 眼前で、艦隊の中核戦力が為す術も無く沈むと言う現実に、艦隊司令アケイルは唖然としていた。

 さらに破壊は続く。

「空母スメルトリオス被雷!!!」

 莫大な水柱と、火柱がスメルトリオスから上がった。
 一方的にやられる理不尽に、艦隊司令アケイルは怒りがこみ上げる。

「ち……ちくしょう!!ちくしょうめぇぇぇぇっっ!!!!!」

 金属製の机を思いっきり拳で殴り、拳は血まみれになる。
 前世界の宿敵ケイン神王国の艦隊でさえ、自分は巧みな指揮で戦いを有利に進めてきた。
 この世界に転移してからは、連戦連勝だった。
 
 圧倒的な自信、戦場での指揮には絶対的自信があった。
 しかし、どうしようもないような圧倒的な強敵が目の前にある。

 どこから攻撃されているのかも解らず、一方的に殴られる。しかも敵の弾はほぼ当たる。 
 やり場の無い気持ちは敵への怒りへと代わり、彼は怒り狂った。

 怒っているからといって、攻撃が止む訳でもなく、空母スメルトリオスも為す術が無く海に沈んだ。
 
「敵は!!敵はまだ見つからんのかっ!!」

 金切り声に近い声で彼は叫ぶ。

「まだ解りません!!!」

「お……おのれぇ。おのれぇ……仕方ない」

 艦隊司令アケイルは屈辱的な決断をする。

「付近に爆雷を単発で投下し、水中音響を乱せ!!」

「え?」

「聞こえなかったのか?爆雷投下だ。何処にいるのか解らぬのでは、勝負にならん。
 敵も潜水艦である限り、音響探知によって我が方を把握しているはず。
 ならば、爆雷による音響をもって付近の海を攪乱し、敵の耳を潰しておけばその間は攻撃を防げるはずだ。
 くやしいが、駆逐艦が爆雷を連続して投下している間、戦艦及び巡洋艦は付近海域を離脱し、レイフォリア西側へ急行する。
 駆逐艦も爆雷投下後は艦の速力を生かして合流せよ」

 命令は正確に伝達され、駆逐艦は爆雷投下を開始した。

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第116話列強国の意地P2

◆◆◆

 旗艦コルネフォロス
 
「魚雷、再度向きを変えました。雷速55ノット!!!(時速約101.8km)各3発がそれぞれ空母オグマ、スメルトリオスに向かっている模様。
 艦の動きに応じて向きを変えています!!誘導魚雷です!!」

「ゆ……誘導魚雷だとぉ!!」

 艦隊司令アケイルは、突然現れた新兵器に頭をフル回転させる。

「位置は解るか!!」

「魚雷の位置は特定出来ます。敵潜水艦の位置は特定できません!!」

「空母は全速で魚雷から離れろっ!!
 駆逐艦は全艦を魚雷の来た方向に向かい、何としてでも敵潜水艦を特定して撃破せよ。 
 その他の艦は、魚雷の走行予想位置に準備が出来次第砲撃開始!!水中で迎撃せよ!!」

 指示は的確に伝達される。

「主砲よーい!!」

 旗艦コルネフォロスも、魚雷撃破のため砲撃に参加する。
 45口径35.6cm連装砲4基と、50口径15.2cm単装砲のうちの4基がゆっくりと海を向いた。

「仰角補正1.2……補正完了」

 ゆっくりと動く砲は見る者に重厚さを感じさせる。

「発射準備完了」

「てーーっ!!!」

 圧倒的な運動エネルギーが撃ち出される。
 砲弾発射の後、艦隊よりも大きな発射炎が出現し、衝撃が海を振るわせた。
 巨弾発射の運動エネルギーは反作用として巨艦を動かし、ゆっくりと艦が傾く。

 旗艦の発射を合図かのように、次々と巡洋艦が砲撃を開始する。

 付近海上には重い射撃音が次々と響き、海に浮いていた海鳥は驚いて空に飛び立つ。
 やがて一定の範囲に、次々と砲弾が落ち、巨大な水柱が上がる。

「撃てーっ撃て撃て撃て撃て撃てーっ!!必ず魚雷を破壊しろっ!!!」

 弾着による水の柱が山のように立つ。

「これで破壊できないはずがない」

 艦長アケイルはつぶやいた。彼だけではなく、皆がそう確信するほどに迫力ある攻撃であった。
 しかしーーー。

「魚雷6,なおも空母に向かっています!!!」

「ぐっ!!どうした!早く破壊しろ!!!」

 魚雷は空母に向かって爆進している。
 やがて対空砲の射程に入り、対空砲も混じって射撃を始めた。
 射撃密度が増す。
 爆音が多すぎて、音響による探知はすでに出来ない。
 しかし、澄みきった水を疾走してくる魚雷は、目の良い見張り員が目視出来るほどの距離に近づいていた。
 
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第116話列強国の意地P1

グラ・バルカス帝国 中央第2艦隊 最新鋭駆逐艦サリン

 グラ・バルカス帝国の水中音響学を駆使した装置を搭載する最新鋭駆逐艦サリン。
 探信儀を操る隊員クヤムは耳を澄ましていた。
 こちらが発する探信音に、特に反射する人工物は無く、周囲の海域が安全である事を確認する。

(よし、間もなく交代時間だな)

 日本国の潜水艦が付近海域にいる可能性が指摘されている。
 しかし、帝国技術を結集した最新鋭の機器を使った検査の結果、付近海域に人工物は無いと示していた。
 一瞬気が抜ける。

「ん?」

 耳に微かな雑音を捉える。
 アクティブソナーの広域捜索を行っていた彼は、明らかにそれが人工物の反射する音である事に気付いた。
 その数6……。
 この状態が示す答えは一つだった。
 背筋に悪寒が走り、全身から嫌な汗が噴き出す。
 他の計器で確認して確信に至る。

「魚雷接近!!!西方向距離5000!!本数6、雷速計算中!!!」

 クヤムの報告に、場の空気がピリリと緊張した。

「クヤムよ、良く見つけたな。5kmもあれば、簡単に避ける事が出来るだろう。
 すぐに各艦に伝達!!」

 彼等にはこの時、まだ余裕があった。
 艦長の指示で、迅速に各艦艇に連絡される。
 やがて、艦隊は左に旋回を始めた。

 クヤムは他に魚雷の接近は無いか、集中して聴音機を耳に当てる。

「なっ!!!」

 自分の常識とは明らかにかけ離れたその動き、想定外の衝撃に大きな声をあげてしまう。 信じられない現象に、報告を一瞬ためらう。
 しかし、計測結果から間違いないはず……。

「どうしたっ!!」

 クヤムが迷っていると、上司から早く報告するようゲキが飛ぶ。

「魚雷が向きを変えました!!!誘導魚雷……魚雷??」

 過去に停泊中の中央第2艦隊を襲った潜水艦。そのあまりの被害に、誘導魚雷存在の可能性を指摘されていた。
 誘導爆弾を持つのだから誘導魚雷を持つのではないかという議論もあった。
 ムーの首都オタハイトを攻撃を予定していたイシュタム艦隊が、ムーの改造戦艦ラ・カサミ改に負けた時、砲の口径からあの規模の艦隊を撃破出来るはずが無く、誘導魚雷が使用されたのではないかという憶測が流れていた。

 しかし、戦場は混乱し、艦隊ごと消滅していたため、誘導魚雷が本当に存在するのか、確証はとれずにいた。
 グラ・バルカス帝国に渡る日本国の情報には、欺瞞情報も多く含まれていたためである。

 戦場で確定してしまう事実。
 駆逐艦は騒然となる。

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