イルネティア王国東側 水中
静かなる海、光さえも届かぬ漆黒の深き海中で、息を潜める黒い船体があった。
日本国海上自衛隊第1潜水艦群第5潜水隊 そうりゅう は、海を無音で航行していた。
先ほどから海中に探信音が響いている。
海上自衛隊の誇る そうりゅう は船体すべてが水中吸音材・反射材で覆われ、探信音が来たとしても、入射音を音源と異なる方向に反射させる装備も持つ。
入射側への反射が少ないため、グラ・バルカス帝国は付近に潜水艦が潜んでいる事を全く捕らえられないでいた。
さらに巡航時もグラ・バルカス帝国の潜水艦と比べて航行時の雑音が極めて低く抑えられている。
「敵は気付いていないようだな」
「はい、全く気付く気配がありません」
「確認だが他の第5潜水隊はどうしている?」
「うんりゅうは、レイフォル西側海域で、グラ・バルカス帝国の潜水艦隊を壊滅させ、補給のためにムー大陸北側へ向かっています。
はくりゅう、せきりゅうはレイフォリア西側海域で待機しております」
「了解だ。さてと……数を減らすとするか。攻撃用意」
そうりゅう艦首上部にある6門もの魚雷発射管に89式魚雷が装填される。
第1目標は敵空母。
そうりゅう艦長 恒星 次男 は、部下に聞こえぬようつぶやく。
「すまんな、悪く思うなよ」
それは、これから死ぬ者達へ向けられた言葉だった。
僅かな黙祷の後、目をカッと見開いた。
「攻撃開始!!!」
微かな発射音と共に、海中に誘導魚雷が放出される。
雷速40ノットで射程50kmとも言われる89式魚雷6発は、グラ・バルカス艦隊空母を撃滅するため、海中を疾走していった。
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