2021年07月21日

第116話列強国の意地P6


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 神聖ミリシアル帝国 混成魔導艦隊デス・バール 旗艦オリハルコン級魔導戦艦コスモ

 日本人が見たならば、遙か未来の戦艦ではないかと思えてしまう程の極めて先進的な外観を持つ戦艦コスモの艦橋で、艦隊司令タキオンと、艦長イレイザは海の先を見ていた。

「日本国より再度通信、南西約300kmの地点にグラ・バルカス帝国海軍有り、数10」

 グラ・バルカス帝国艦隊の動きは相当に前から発見されており、逐次連絡が入りっていた。
 しかし、艦隊司令タキオンは空母から天の浮き船を発艦させる事を命じない。

「日本艦隊より再度確認の連絡が入っています」

「変更は無い。日本艦隊に伝えてやれ。敵10隻の艦隊は、我がオリハルコン級魔導戦艦コスモただ1隻でたたきつぶす。
 貴君らは手を出すなとな」

 本来ならば日本国が上空支援を要請し、空自及び海自による対艦誘導弾の波状攻撃で殲滅すべき規模の艦隊であった。
 しかし、神聖ミリシアル帝国艦隊からの「手を出さないでほしい」という、戦場の常識からするとめちゃくちゃな要請が来る。
 今回自衛隊はミリシアル艦隊の護衛という名目で派遣されていたため、中々動けずにいた。

 しかも旗艦という司令機能を持つ艦で単独突入など、日本の常識では考えられない事で、何度も確認の連絡を送っていた。

 神聖ミリシアル帝国側からすると、世界最強を自負する国にも関わらず、日本国に戦果において明らかな遅れをとり、各国からも日本国の方が質的戦力が上だと思われ始めている現状において、名誉を挽回する必要があった。
 たったの1隻で敵艦隊を殲滅する。
 しかも古の魔法帝国の発掘兵器に頼らずにそれを成し遂げるという戦場における伝説が欲されていた。

 また、日本国に対して優秀な艦艇を建造できると見せつけたいという政治的意思も見え隠れする。

「艦長、たのんだ」

 艦隊司令タキオンの指示により、艦長イレイザが指揮をとる。

「戦艦コスモ、敵艦隊に転進せよ!!!」

 発掘戦艦を除き、神聖ミリシアル帝国が作れる戦艦として最新鋭かつ最強たる、オリハルコン級魔導戦艦コスモは、グラ・バルカス帝国艦隊方向に転進するのだった。


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 後書き

 次に来るマンガ大賞で投票して下さった方、結果はどうなるか解りませんが、本当にありがとうございました。
 この場を借りてお礼申し上げます。

 

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第116話列強国の意地P5


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国海軍中央第2艦隊 旗艦 オリオン級戦艦コルネフォロス

「な……な……なんということだっ!!!」

 本来ならば指揮官はどっしり構えていなければ、動揺が部下に伝わる。
 しかし、艦隊司令アケイルは、あまりの衝撃に動揺を隠せずにいた。

「見えない敵にこれほどまでにやられるとはっ!!我々は敵の位置すら解っていないというのに!」

 空母機動部隊の中核戦力たる空母2隻を失い、巡洋艦、駆逐艦合わせて8隻も失ってしまった。
 現海域には戦艦3、巡洋艦4、駆逐艦4隻が残っているとはいえ、空母機動部隊としては戦力は消失したに等しい。
 駆逐艦1隻を救助用として残してきたため、実質的に残りの戦力は10隻。

 大艦隊が相手なら解る。
 しかし、おそらく敵はたった1隻の潜水艦であり、為す術も無く逃げ回った結果であるにも関わらず、これほどの損失が出たという事実が彼の絶望感を上塗りしていく。

 彼は胃痛により吐きそうになっていた。 

「司令、本国から通信が……」

「何だ?」

「レイフォリア北側海域……9045YX地点を敵艦隊33隻が南下中。
 神聖ミリシアル帝国と、日本国の連合艦隊であり、我が中央第2艦隊に迎撃指示が出ました」

「本国は、我が艦隊が打撃を受けた事を当然理解しているのだな?」

「はい、把握しています。我が中央第2艦隊が迎撃中に戦力を整えるとの事」

「……死ねと言うことか……」

 劣勢な軍隊は絶望的行軍を強いられる事が多い。
 かつて我が帝国に挑んできた敵国の指揮官達はこんな気分だったのだろうか。

 艦隊司令アケイルは目を瞑る。
 ふと家族の顔が脳裏によぎった。

 まさか自分の代に、このような強敵が現れるなんて、夢にも思っていなかった。
 敵は混成艦隊、神聖ミリシアル帝国だけでも侮れない敵である。
 日本国にあっては絶望的な軍事技術の差があるようだ。
 
 技術力においても、数においても、索敵能力においても負けている。しかも空母は無い。 絶望の行軍。
 しかし、命令は絶対だった。

「よし!!一花咲かせるか……艦隊転針、敵を殲滅するぞっ!!
 我がグラ・バルカス帝国海軍の意地を見せてやる!!!」

 様々な思いを抱え、帝国中央第2艦隊は南下中の連合艦隊へ向かう。

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第116話列強国の意地P4


◆◆◆

 潜水艦そうりゅう

 海中には、爆発音が響き渡っていた。

「敵は爆雷の連続投下を始めました。
 全く本艦とは関係ない位置で投下しており、爆雷の水深もずいぶんと浅いようです。
 敵の戦艦と巡洋艦は海域を離脱しようとしている模様」

「第2次大戦レベルの爆雷では、我が艦の深度まで信管調整は出来まい」

 そうりゅう が潜りし場所よりも遙かに浅い場所での爆発に、艦長である恒星は感想を述べる。

「敵さんには申し訳ないが、音響を乱されると迷惑なので消えてもらおう。
 ハープーン用意!海上の駆逐艦を一層せよ」

 恒星はハープーンによる艦隊の無差別攻撃を指示する。

「了解!!敵船の方角を入力、付近船団を無差別に攻撃、対艦誘導弾ハープーン、単発で発射準備!!」

 指示は的確に伝達され、前部発射管に対艦誘導弾が装填される。

「発射準備完了」

「発射っ!」

 微かな音と共に、耐圧カプセルに入った対艦誘導弾が水中に放出された。
 カプセルは高速で浮かび上がり、海面に姿を現す。

 海面にカプセルが到達した後、ハープーンの固体ロケットモーターが発動し、炎の尾を引きながら飛翔を開始する。

◆◆◆

 駆逐艦サリン

 爆雷投下作戦が開始され、海中の音響が乱れていたため、音響探知を一時中断した隊員クヤムは、艦橋で双眼鏡を使用して監視を行っていた。

 敵は潜望鏡を出して偵察している可能性もある。

 集中するクヤム隊員の目に、信じられない光景が飛び込んできた。
 何と報告して良いか解らぬ事象に、彼は見たままを報告する。

「う……海からロケットが飛び出しましたっ!!!爆雷投下中のマシムに向かって飛翔中!!」

「な……な……なんだとぉ!!!」

 実際にはカプセルから分離した対艦誘導弾ハープーンが飛び出してきたのだが、彼の目には海からロケットが直接飛び出してきたようにしか見えなかった。
 ロケットは、爆雷で音響をかき乱していた駆逐艦マシムに向かう。
 すぐに無線を入れた。

「マシムも気付きました!!回避運動開始!!」

 回避運動を開始すると共に、対空砲をロケットに向かって撃つ。
 単艦での対空砲は酷く貧弱に感じる。
 他の巡洋艦はあまりにも発見から時間が経っていないため、まだ迎撃態勢が整っていない。
 ロケットはマシムの方向に空中で向きを変えた。

「くそっ!!避けろ!!」

 クヤムは願うように叫ぶ。
 しかし、現実は物語のようにはいかず、敵の誘導ロケットは駆逐艦マシムに吸い込まれるように消える。

 閃光が走り、爆炎が駆逐艦マシムを包み込んだ。
 
「あああっ!!!!」

 クヤムは帝国の誇る超戦艦グレードアトラスターの、46cm砲による廃艦射撃を見たことがあった。
 その命中弾が出た際の爆発よりも遙かに大きく爆炎がふくれあがる。

 海面ごと吹き飛んだのでは無いかと思わせる程の大きな爆発……爆炎が収まった後、駆逐艦マシムは海面から消えていた。

「マシム轟沈!!」

「そんな!!そんなバカナッ!!ロケットが海中から飛び出してくるなど、聞いたことがないぞっ!!!」
 
 グラ・バルカス帝国兵に多少の誤解を与えながらも攻撃は続く。

「再びロケット4発が海面より出現!!」

 同海域から同時にロケット4発が出現し、付近の駆逐艦や海域から離脱中の巡洋艦に向かう。
 次の4発も、外れる事無く命中し、艦を死の海へ引き込んだ。
 海面ではパニックに陥った他の駆逐艦は逃げ惑い、爆雷を投下する者達はいなくなった。
 サリンの艦橋で、艦長は考え込む。

「駆逐艦マシムがあった海域に向かえ、生存者がいれば、救助を開始する」

 他の艦がパニックに陥る中、彼はゆっくりと指示を出す。

「そんなっ!!敵との戦力比は明らかです!!今は一刻も早くこの海域から離脱するべきです!!」

 皆の命が危機に瀕しているため、副長は、乗組員の命を救う立場から反対する。

「一度離脱してしまえば、もう同じ場所に戻っても海流で移動して乗組員はもういない。救助は行う。
 マシムの海域で生存者がいなければ、他の艦の沈没箇所へ向かう!!
 戦友を見捨てていくことなど出来ん!!
 海中から誘導ロケットを飛ばして地上の艦艇を撃沈するような化け物だ。
 狙われたらどのみち助からん!!
 ならばっ!!少しでも正義に、正義に生きるべきだっ!!!」

 サリン艦長の声は、場にいた物達の心を振るわせた。
 駆逐艦サリンは撃沈されたマシムのいた海域に向かうのだった。

◆◆◆

 潜水艦そうりゅう

「艦長、爆雷による音響攪乱は止みました。
 多くの艦が全速で東に離脱中です。ハープーンは残り1発、離脱中の艦艇まで考慮した魚雷射程内には駆逐艦が3隻おり、回避運動を続けている艦が2隻、残りの1隻は先ほど撃沈した艦艇に真っ直ぐ向かっているようです」

「駆逐艦はなるべく減らしておきたい……が……その1隻は救助だろう?」

 恒星は苦い顔になる。

「はい、真っ直ぐ撃沈地点に向かっている1隻は救助のためと思われます」

「……回避運動中の2隻は魚雷で攻撃、救助に向かっている1艦は狙うな。
 2隻への攻撃をもって、本作戦は終了する」

 命令は的確に実行された。

 日本国海上自衛隊第1潜水艦群第5潜水隊所属の潜水艦そうりゅうは、グラ・バルカス帝国海軍中央第2艦隊の空母機動部隊20隻と交戦し、空母2、巡洋艦1、駆逐艦6隻を撃沈した。

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第116話列強国の意地P3

帝国艦隊は必死に砲撃を行う。
 対空砲も曳光弾を交えて雨のように打ち込まれた。
 しかし帝国の対空砲は水平よりも下を撃つことはそもそも想定しておらず、なかなか狙いが定まらない。

 やがて魚雷は旗艦の近くをすり抜けて空母の方向へ向かう。

 撃つ。撃つ。撃つ。

 すでに付近海域は魚1匹生きるのが困難ではないかと感じるほどの爆発に包まれる。
 しかし当たらない。
 やがて魚雷のうち、1発が空母オグマの後部スクリューに命中した。 

「ああっ!!」

 旗艦の艦橋から双眼鏡で見ていた艦隊司令アケイルは、巨大空母オグマが振動し、艦隊後部に膨大な水柱が上がるのを見た。
 続けて他の2発が艦の中央部を捕らえる。

 海上自衛隊89式魚雷はグラ・バルカス帝国空母オグマのスクリューを破壊した後、艦底に2発命中し、魚雷に内蔵された267kgもの高性能炸薬は、その威力を開放した。
 空気に比べて密度が1000倍もある海水は爆圧を逃さずに封じ込め、船体に大きなダメージを与える。
 艦底を貫いた爆圧は、空母の区画をことごとく破壊し、物理的に弱い方向へ向かった。

 暴れ回る炎の嵐は一瞬で空母内部を駆け回り、艦内の航空機や爆弾に誘爆、圧倒的なエネルギーは、上へ向かい、最上甲板に火柱が出現する。

 火柱の周辺も圧倒的な熱波で燃え始めた。
 帝国空母の何十倍もの高さまで上がった火柱は、きれいな青い空を焦がす。

 艦底の大きな穴からは膨大な量の海水が流れ込んだ。
 あっという間だった。
 信じられないほどに早い時間で、空母オグマは航空機や乗員と共に海に消えた。

「空母オグマ轟沈!!」

 無機質な報告が艦橋に響く。
 眼前で、艦隊の中核戦力が為す術も無く沈むと言う現実に、艦隊司令アケイルは唖然としていた。

 さらに破壊は続く。

「空母スメルトリオス被雷!!!」

 莫大な水柱と、火柱がスメルトリオスから上がった。
 一方的にやられる理不尽に、艦隊司令アケイルは怒りがこみ上げる。

「ち……ちくしょう!!ちくしょうめぇぇぇぇっっ!!!!!」

 金属製の机を思いっきり拳で殴り、拳は血まみれになる。
 前世界の宿敵ケイン神王国の艦隊でさえ、自分は巧みな指揮で戦いを有利に進めてきた。
 この世界に転移してからは、連戦連勝だった。
 
 圧倒的な自信、戦場での指揮には絶対的自信があった。
 しかし、どうしようもないような圧倒的な強敵が目の前にある。

 どこから攻撃されているのかも解らず、一方的に殴られる。しかも敵の弾はほぼ当たる。 
 やり場の無い気持ちは敵への怒りへと代わり、彼は怒り狂った。

 怒っているからといって、攻撃が止む訳でもなく、空母スメルトリオスも為す術が無く海に沈んだ。
 
「敵は!!敵はまだ見つからんのかっ!!」

 金切り声に近い声で彼は叫ぶ。

「まだ解りません!!!」

「お……おのれぇ。おのれぇ……仕方ない」

 艦隊司令アケイルは屈辱的な決断をする。

「付近に爆雷を単発で投下し、水中音響を乱せ!!」

「え?」

「聞こえなかったのか?爆雷投下だ。何処にいるのか解らぬのでは、勝負にならん。
 敵も潜水艦である限り、音響探知によって我が方を把握しているはず。
 ならば、爆雷による音響をもって付近の海を攪乱し、敵の耳を潰しておけばその間は攻撃を防げるはずだ。
 くやしいが、駆逐艦が爆雷を連続して投下している間、戦艦及び巡洋艦は付近海域を離脱し、レイフォリア西側へ急行する。
 駆逐艦も爆雷投下後は艦の速力を生かして合流せよ」

 命令は正確に伝達され、駆逐艦は爆雷投下を開始した。

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第116話列強国の意地P2

◆◆◆

 旗艦コルネフォロス
 
「魚雷、再度向きを変えました。雷速55ノット!!!(時速約101.8km)各3発がそれぞれ空母オグマ、スメルトリオスに向かっている模様。
 艦の動きに応じて向きを変えています!!誘導魚雷です!!」

「ゆ……誘導魚雷だとぉ!!」

 艦隊司令アケイルは、突然現れた新兵器に頭をフル回転させる。

「位置は解るか!!」

「魚雷の位置は特定出来ます。敵潜水艦の位置は特定できません!!」

「空母は全速で魚雷から離れろっ!!
 駆逐艦は全艦を魚雷の来た方向に向かい、何としてでも敵潜水艦を特定して撃破せよ。 
 その他の艦は、魚雷の走行予想位置に準備が出来次第砲撃開始!!水中で迎撃せよ!!」

 指示は的確に伝達される。

「主砲よーい!!」

 旗艦コルネフォロスも、魚雷撃破のため砲撃に参加する。
 45口径35.6cm連装砲4基と、50口径15.2cm単装砲のうちの4基がゆっくりと海を向いた。

「仰角補正1.2……補正完了」

 ゆっくりと動く砲は見る者に重厚さを感じさせる。

「発射準備完了」

「てーーっ!!!」

 圧倒的な運動エネルギーが撃ち出される。
 砲弾発射の後、艦隊よりも大きな発射炎が出現し、衝撃が海を振るわせた。
 巨弾発射の運動エネルギーは反作用として巨艦を動かし、ゆっくりと艦が傾く。

 旗艦の発射を合図かのように、次々と巡洋艦が砲撃を開始する。

 付近海上には重い射撃音が次々と響き、海に浮いていた海鳥は驚いて空に飛び立つ。
 やがて一定の範囲に、次々と砲弾が落ち、巨大な水柱が上がる。

「撃てーっ撃て撃て撃て撃て撃てーっ!!必ず魚雷を破壊しろっ!!!」

 弾着による水の柱が山のように立つ。

「これで破壊できないはずがない」

 艦長アケイルはつぶやいた。彼だけではなく、皆がそう確信するほどに迫力ある攻撃であった。
 しかしーーー。

「魚雷6,なおも空母に向かっています!!!」

「ぐっ!!どうした!早く破壊しろ!!!」

 魚雷は空母に向かって爆進している。
 やがて対空砲の射程に入り、対空砲も混じって射撃を始めた。
 射撃密度が増す。
 爆音が多すぎて、音響による探知はすでに出来ない。
 しかし、澄みきった水を疾走してくる魚雷は、目の良い見張り員が目視出来るほどの距離に近づいていた。
 
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第116話列強国の意地P1

グラ・バルカス帝国 中央第2艦隊 最新鋭駆逐艦サリン

 グラ・バルカス帝国の水中音響学を駆使した装置を搭載する最新鋭駆逐艦サリン。
 探信儀を操る隊員クヤムは耳を澄ましていた。
 こちらが発する探信音に、特に反射する人工物は無く、周囲の海域が安全である事を確認する。

(よし、間もなく交代時間だな)

 日本国の潜水艦が付近海域にいる可能性が指摘されている。
 しかし、帝国技術を結集した最新鋭の機器を使った検査の結果、付近海域に人工物は無いと示していた。
 一瞬気が抜ける。

「ん?」

 耳に微かな雑音を捉える。
 アクティブソナーの広域捜索を行っていた彼は、明らかにそれが人工物の反射する音である事に気付いた。
 その数6……。
 この状態が示す答えは一つだった。
 背筋に悪寒が走り、全身から嫌な汗が噴き出す。
 他の計器で確認して確信に至る。

「魚雷接近!!!西方向距離5000!!本数6、雷速計算中!!!」

 クヤムの報告に、場の空気がピリリと緊張した。

「クヤムよ、良く見つけたな。5kmもあれば、簡単に避ける事が出来るだろう。
 すぐに各艦に伝達!!」

 彼等にはこの時、まだ余裕があった。
 艦長の指示で、迅速に各艦艇に連絡される。
 やがて、艦隊は左に旋回を始めた。

 クヤムは他に魚雷の接近は無いか、集中して聴音機を耳に当てる。

「なっ!!!」

 自分の常識とは明らかにかけ離れたその動き、想定外の衝撃に大きな声をあげてしまう。 信じられない現象に、報告を一瞬ためらう。
 しかし、計測結果から間違いないはず……。

「どうしたっ!!」

 クヤムが迷っていると、上司から早く報告するようゲキが飛ぶ。

「魚雷が向きを変えました!!!誘導魚雷……魚雷??」

 過去に停泊中の中央第2艦隊を襲った潜水艦。そのあまりの被害に、誘導魚雷存在の可能性を指摘されていた。
 誘導爆弾を持つのだから誘導魚雷を持つのではないかという議論もあった。
 ムーの首都オタハイトを攻撃を予定していたイシュタム艦隊が、ムーの改造戦艦ラ・カサミ改に負けた時、砲の口径からあの規模の艦隊を撃破出来るはずが無く、誘導魚雷が使用されたのではないかという憶測が流れていた。

 しかし、戦場は混乱し、艦隊ごと消滅していたため、誘導魚雷が本当に存在するのか、確証はとれずにいた。
 グラ・バルカス帝国に渡る日本国の情報には、欺瞞情報も多く含まれていたためである。

 戦場で確定してしまう事実。
 駆逐艦は騒然となる。

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