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グラ・バルカス帝国 中央第2艦隊 旗艦 コルネフォロス
「敵艦から攻撃来ます!!」
地球よりも大きいこの惑星は、空気が澄んでいると遙か遠くまで見通せる。
それでも100kmもの距離は見えない。
しかし、大きな青色のオーラのようなものを身に纏い、長い尾を引いた物体が3つ、高空に上がる様は、はっきりと見えた。
間違いなく敵の攻撃だと判断した見張り員は伝令管に向かって声を張り上げる。
「この距離で撃ってきたのかっ!!」
あり得ないほどの長距離での砲撃は、僅かに転進するだけで避ける事が出来るため、例え届いたとしても無誘導であれば全く脅威は無い。
敵もそれを解っているはずだった。
「まさかっ!!誘導弾かっ!!!対空戦闘用意!!」
「対空戦闘よーい!!」
兵達は走り回り、対空機関砲の準備を開始した。
青いオーラを纏う兵器、やがて尾の部分が見えなくなり、丸く空に停止しているようにも見え始めた。
「直撃コースかっ!!!」
上空で止まった点のように見える場合、砲弾であれば直撃コースを取っている事が多い。 艦隊は司令官の指示で右に旋回する。
しかし……。
「弾が向きを変えている!!やはり誘導弾だっ!!!」
艦隊からは対空砲火が放たれる。
連続して発射される曳光弾は、空に多くの火線を引いた。
敵の誘導弾は徐々にはっきりと見え始め、前を走る戦艦フノールへ一直線に降下した。
「だめだっ!!当たる!!!」
アケイルは叫ぶ。
敵の誘導弾は真ん中に本体があり、光りのオーラに包まれて青い尾を引いて天から真っ直ぐにフノールへ落下していく。
キィィィィンといった甲高い音が先に聞こえ、光りはフノールへと落ちていった。
猛烈な光りと爆発が戦艦フノールを直撃する。
「ああっ!!」
神聖ミリシアル帝国オリハルコン級魔導戦艦コスモの放った艦対艦誘導魔光弾「天の火」は、戦艦フノール主砲塔部分に上空から直撃した。
超高速魔導性流体と化したコア前部は鋼鉄の金属を貫き、内部に至る。
内部に突入したコアの後部は爆裂魔法による爆縮で魔力融合反応を起こし、膨大なエネルギーが出現した。
その力は凄まじく、まるで戦艦の装甲が紙であるかのように鋼鉄を吹き飛ばし、付近の海水も吹き飛ばす。
猛烈な光と爆風が出現し、戦艦の何十倍はあろうかと思われる爆発が現れた。
「のわぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
アケイルは反射的に身を屈める。
戦場に出現した猛烈な爆発。
巻き上げられた水と共に、艦橋すらももげて空中に放り出される。
やがて上がった水が海に落ちる頃、戦艦フノールの姿は海面上から消えていた。
「フノール轟沈!!」
「まずい!!まずいぞっ!!!」
艦隊司令アケイルは為す術も無く、嘆く。
さらに攻撃は降り注ぎ、続いて右を走っていた戦艦マジャールに直撃した。
「なんて威力だ!!戦艦の防御力が意味をなしていないではないかっ!!」
たったの1撃で蒸発しているのではないかと思われるほどの威力に、アケイルはどうしようも無い無力感にさいなまれる。
爆発力はグレードアトラスターの主砲や、日本軍の誘導弾の比では無い。
まさに、神の怒りの如き圧倒的な爆発だった。
「戦艦マジャール轟沈!!!」
「な……な……何てことダッ!!!」
たったの1発で数千人が運用して来た艦艇が消滅する。
たったの1発当たると確実に数千の死者が出る。
背筋に悪寒が走った。
キィィィィンーーー
戦場にこだまする甲高い音。
アケイルはまるで死に神の笛のようにも感じる。
対空火砲の轟音。
様々な砲が火を噴くが、敵の誘導弾には全く当たっていない。
技術力の差はそのまま戦力の差に直結する。
「だめだっ!!ぶつかる!!!!」
誰かが叫んだ。
次の瞬間、グラ・バルカス帝国中央第2艦隊旗艦 オリオン級戦艦コルネフォロスに誘導魔光弾が直撃。
艦を包み込む猛烈な光り爆発は、一瞬で戦艦を引き裂いた。
艦艇に乗っていた火薬は誘爆し、爆発は威力を増す。
数々の戦歴を残すグラ・バルカス帝国中央第2艦隊旗艦コルネフォロスは艦隊司令アケイル、艦長イライガ、その他様々な人生を歩んできた多くの兵達と共にこの世を去った。
艦隊の主力である戦艦を失った後のグラ・バルカス帝国海軍の最後は壮絶であった。
巡洋艦1隻が誘導魔光弾で消滅し、残りの巡洋艦3隻と駆逐艦3隻は、威力を増した魔導砲によるアウトレンジ砲撃で海の藻屑と化す。
この日、神聖ミリシアル帝国 オリハルコン級戦艦コスモはただ1隻で、グラ・バルカス帝国中央第2艦隊10隻を撃沈した。
この戦いは、日本国の最新鋭護衛艦をもってしても不可能な偉業として後日、帝国が広報したことから情報が世界中を駆け巡り、神聖ミリシアル帝国は落ちかけていた威信を取り戻す事となる。
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