2021年10月13日

第118話列強国の意地3P3


「はっ!!!」

「あ……あ……あ……あぐ……あ」

 殴りかかろうとしていた者の目が見開かれる。
 あまりにも驚いていたため、帝国軍人の目線の先をレイフォル人達も見つめた。
 海の先、遙か遠くに艦影が見える。
 その艦影は、見慣れた帝国艦艇では無く、敵国の艦影。
 距離は20km超といった所だろうか。

 ある者は、双眼鏡を手に、注視した。

「あっ!!!あれはっ!!!!」

 双眼鏡を見る者が叫ぶ。
 彼が見た先、白地に赤い太陽が強力な光を八方に放つ旗。

 絶望を払拭するような、太陽が強力な光りを放つシルエットの旗が目に入る。
 その隣には一際大きな戦艦も見えた。

「あれは……何処の魔導戦艦だ??……おっ!!神聖ミリシアル帝国艦隊もいるぞ!!!!」

 双眼鏡で見た者は、日本国の旗を知らなかった。
 ただ、グラ・バルカス帝国と敵対する強力な艦隊が現れた事は理解する。

 もはや、制海権はグラ・バルカス帝国には無い事が証明された瞬間だった。

「お………うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 人々は叫ぶ。
 魂の底から雄叫びを上げる。

 たったの1艦に海軍のみではなく、すべての竜騎士団が負けた。
 圧倒的な敗北と、超高性能な武器を操る異界の軍に、為す術も無く敗北し、屈辱的支配を受ける。
 頼みの綱であった機械文明超大国「ムー」ですらもグラ・バルカス帝国の前に手も足も出ず、異次元の強さを誇る神聖ミリシアル帝国でさえも苦戦する。

 誰もが絶望した。
 
 しかし……絶望の淵を静かに朝日が昇る。

 白地に赤の模様を持った天翔る鋼鉄の竜が超強力とされる基地ラルス・フィルマイナを燃やし、レイフォル人達の目の前に艦隊を引き連れて現れる。

 日本国を知るものは、噂以上の強さに驚き、大半の知らぬ者達は世界最強たる神聖ミリシアル帝国艦隊の最新鋭戦艦の登場で、心に希望が灯された。
 
「おい!!愚帝人!!お前らは終わりだ!!さっさと帰った方が良いんじゃ無いか?」

 誰かが叫ぶ。
 集団心理が働き、帝国軍人に石を投げる者も出てきた。

「き……貴様らぁあぁぁぁ!!!」

 ヒステリックに叫ぶが、もはやグラ・バルカス帝国軍人の言うことを聞く者はおらず。
 石が投げられ続ける。

 彼等は凄まじい憎悪を感じ、仮に銃を使えば八つ裂きにされる事を理解する。
 圧倒的多数の住民に勝てるはずもなく、彼等は逃げ帰るようにラルス・フィルマイナへ走るのだった。
 
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posted by くみちゃん at 00:15| Comment(24) | 小説

第118話列強国の意地3P2

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国領 レイフォル地区 レイフォリア 

 放射冷却によって急激に下がった空気中の温度が海水温よりも低くなったため、海の水分は急激に蒸発し、濃い霧が発生する。。

 少しだけ高台にある、海の見えるオープンテラス風の食堂、雰囲気の良いオープンテラスだが、霧のせいで台無しである。

 食堂では2人の男が食事を取っていた。
 一人は人間、そしてもう1人はドワーフ族だった。
 洒落た食堂には似合わない2人であったが、彼等はそんなことは気にせず、朝食のパンとミルクを食べながら話す。
 
「おいおい、聞いたか?どうもグラ・バルカス帝国の本国艦隊が、神聖ミリシアル帝国のたった1艦に敗れ去ったらしいぞ」

 昨日酒場で聞いた話を、ドワーフの男が大声で話す。
 酔っ払っていたので詳細は覚えていないが、どうも憎きグラ・バルカス帝国が敗れ去ったようだと聞き、テンションが上がる。

「それが本当なら、とんでもない事だ!!」

 聞いた人間族の男も、久々の朗報に、全身が震えた。

「おい!!何を話している!!!!」

 声が大きすぎた。グラ・バルカス帝国兵に聞こえたようだった。

「おい!!何を話していたかと聞いているっ!!!」
 
 真っ直ぐこちらに向かって歩いてくる。

「いえ、最近の天候の話しをしていました」

「嘘をつくな!!帝国の本国艦隊という話しが聞こえたぞっ!!卑しい蛮族の貴様らがこの帝国軍人様に隠し事をする気か?」

 どうも冗談の通じないガチガチの頭をもった軍人のようだった。
 
 長い間に渡って蓄積した抜け出ることの無い閉塞感、そしてたまりきった鬱憤が、2人のレイフォル人の行動を狂わす。

「……ってんだよ!!」

「はぁ!??」

「お前らご自慢の本国艦隊が、神聖ミリシアル帝国艦のたった1艦にあっけなく全滅させられたって話してたんだよ!!」

 敗戦の報を聞いていない末端の帝国陸軍軍人は、蛮族共の不遜極まる態度に怒りを覚えた。

「お前ら蛮族は、まだ我がグラ・バルカス帝国軍の強さを的確に認識できないのか??
 お前らの言う本国艦隊とは、おそらくイルネティア王国周辺に展開する空母機動部隊の事を指すのだろう。
 それらの部隊の打撃力は、お前らこの世界では列強だったレイフォル国すべての艦隊が100倍いたとしても、この1部隊に決して勝てぬほどの戦力だ。
 増してこの世界の最高国家とはいえ、たった1隻が勝てる艦隊ではない!!」

「お前は下っ端だから、教えられてないんだろう?
 それに、お上様から教えられたことがすべて本当だと思っているのか?ラルス・フィルマイナの現状を見てみろ。
 少しは与えられた情報だけではなく、自分の頭で考えてみたらどうだ?」

 軍人は目を丸くした。
 今まで不遜な輩はいたが、帝国軍人をこれほどまでに侮辱する人間はいなかった。
 衝動的に拳を振り上げる。

「貴様ーーっ!!!」

 ドワーフの頬から鈍い音がする。

「仮に、イルネティア王国周辺艦隊がいなくなっても、すぐに本国から強力な艦隊が送られてくるはずだっ!!
 たった1隻で覆るような戦力では無い!!!」

「てめぇ!!殴りやがったなっ!!」

 ドワーフも、帝国軍人に強力な一撃を加える。
 人間族も混じって、大声を張り上げ、殴り合いに発展した。

 やがて人だかりが出来、他の帝国軍人にも知られる事となる。

「お前らぁ!!何をやっとるかぁ!!!」

 怒号に軍人の拳が止まり、直立不動となった。

「はっ!!この者達が、帝国艦隊が神聖ミリシアル帝国艦に敗れ去った等とぬかしたものですから……」

 階級が上の者なのだろう。

「貴様ら、現地人のぶんざいで、帝国軍人を殴るとは……覚悟は出来てるのだろうな?」
 
 加わったグラ・バルカス帝国軍人はがドワーフに襲いかかろうとした時だった。
 強く照り尽くす太陽により、急激に暖められた空気の温度は、海水温よりも高くなる。
 驚くほど早く、霧が晴れていった。
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posted by くみちゃん at 00:14| Comment(2) | 小説

第118話列強国の意地3P1

ムー大陸 グラ・バルカス帝国領 レイフォル地区 都市レイフォリア

 グラ・バルカス帝国軍統合基地 ラルス・フィルマイナ

 人や物が焦げたにおいが鼻につく。
 すでにすべての消火活動を終えたはずだが、消し炭となった戦闘機や人だったものから、人間が拒否反応を示すほどの刺激臭が漂う。

 生き残った者や広場に集まった幹部達は今後の作戦について激論を交わしていた。
 自分や部下、そして入植した帝国臣民達の命のかかった作戦立案。
 かつてない敗北と戦力喪失に焦りが加速していた。
 
 明らかになってきた敵の戦力評価と残存兵力から導き出される結論。陸軍司令ファンターレはどうしようも無い現状に、胃がキリキリと痛む。

 統合ラルス・フィルマイナへの攻撃と、各拠点となる基地や駐屯地には順次敵の攻撃が加えられた。
 航空戦力は軒並み破壊され、対空火砲もまるで狙われたかのようにピンポイントで破壊される。
 粗方対空兵器が破壊された後に、敵地に近い各駐屯地に対してはムー国の旧式戦闘機部隊による反復攻撃が行われる。
 ラルス・フィルマイナに対しては航続距離が足りないのだろうか、ムーによる航空攻撃は行われなかった。

 主たる航空戦力、そして対空火砲が失われた陸軍にとって、ムーの旧式戦闘機部隊は脅威であった。
 欺罔した対空砲や、破壊し損ねた対空砲で敵を何機かは落としたが、敵の量は多く、徹底的な反復攻撃によって破壊が行われる。

 主な機械化師団はすでに無く、歩兵を主力とした残留戦力の寄せ集めで戦わなくてはならない。

「では、まとめるが……」

○ 陸軍総司令は統合基地ラルス・フィルマイナに置き、各地に展開する陸軍駐屯地への 指揮をとる。
○ レイフォリア防衛戦力主力として、レイフォリア南部にある要塞化した山(海抜高度 429m)ダイジェネラ山に兵器をかき集めて籠城作戦を取る。
  これで、敵が仮にレイフォリアを制圧しても、後方から襲撃を受け続けるため、ダイジェネラ山を攻略せざるを得なくなる。 
○ 補給の絶たれる可能性が高い各駐屯地主力兵力は後退しつつ、敵が侵攻してきた場合 はその戦力を削ぎ、レイフォリア東側まで後退し、東側森林地帯に潜伏して絶対防衛ラインを構築する。
  後退時は、少数のゲリラ部隊、狙撃部隊等を必ず残して敵の足止めを行うこととする。
○ 破壊を免れた陸軍航空隊は、直ちにラルス・フィルマイナ方面へ撤収し、レイフォリア周辺の空域を警戒する。

 重火器と補給が絶たれた軍に残された選択肢は少なく、せめて食料の補給が可能なレイフォリアを落とさない事を目標とした。
 屈辱的な作戦、同作戦は迅速に各地に伝達されるのだった。
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posted by くみちゃん at 00:13| Comment(12) | 小説