「はっ!!!」
「あ……あ……あ……あぐ……あ」
殴りかかろうとしていた者の目が見開かれる。
あまりにも驚いていたため、帝国軍人の目線の先をレイフォル人達も見つめた。
海の先、遙か遠くに艦影が見える。
その艦影は、見慣れた帝国艦艇では無く、敵国の艦影。
距離は20km超といった所だろうか。
ある者は、双眼鏡を手に、注視した。
「あっ!!!あれはっ!!!!」
双眼鏡を見る者が叫ぶ。
彼が見た先、白地に赤い太陽が強力な光を八方に放つ旗。
絶望を払拭するような、太陽が強力な光りを放つシルエットの旗が目に入る。
その隣には一際大きな戦艦も見えた。
「あれは……何処の魔導戦艦だ??……おっ!!神聖ミリシアル帝国艦隊もいるぞ!!!!」
双眼鏡で見た者は、日本国の旗を知らなかった。
ただ、グラ・バルカス帝国と敵対する強力な艦隊が現れた事は理解する。
もはや、制海権はグラ・バルカス帝国には無い事が証明された瞬間だった。
「お………うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
人々は叫ぶ。
魂の底から雄叫びを上げる。
たったの1艦に海軍のみではなく、すべての竜騎士団が負けた。
圧倒的な敗北と、超高性能な武器を操る異界の軍に、為す術も無く敗北し、屈辱的支配を受ける。
頼みの綱であった機械文明超大国「ムー」ですらもグラ・バルカス帝国の前に手も足も出ず、異次元の強さを誇る神聖ミリシアル帝国でさえも苦戦する。
誰もが絶望した。
しかし……絶望の淵を静かに朝日が昇る。
白地に赤の模様を持った天翔る鋼鉄の竜が超強力とされる基地ラルス・フィルマイナを燃やし、レイフォル人達の目の前に艦隊を引き連れて現れる。
日本国を知るものは、噂以上の強さに驚き、大半の知らぬ者達は世界最強たる神聖ミリシアル帝国艦隊の最新鋭戦艦の登場で、心に希望が灯された。
「おい!!愚帝人!!お前らは終わりだ!!さっさと帰った方が良いんじゃ無いか?」
誰かが叫ぶ。
集団心理が働き、帝国軍人に石を投げる者も出てきた。
「き……貴様らぁあぁぁぁ!!!」
ヒステリックに叫ぶが、もはやグラ・バルカス帝国軍人の言うことを聞く者はおらず。
石が投げられ続ける。
彼等は凄まじい憎悪を感じ、仮に銃を使えば八つ裂きにされる事を理解する。
圧倒的多数の住民に勝てるはずもなく、彼等は逃げ帰るようにラルス・フィルマイナへ走るのだった。
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