2021年11月22日

第119話列強国の意地4P5

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 日本国首都 東京 防衛省

「神聖ミリシアル帝国艦隊による艦砲射撃によって、レイフォリアの敵基地に大きな打撃を与えた模様、また、第5護衛隊がレイフォリア南東約200km海域で敵の潜水艦12隻と交戦し、すべてを撃沈しました。
 付近に敵艦隊は発見できず。
 我々は第2文明圏周辺の制海権を確保いたしました」

 想定された報告であったが、幹部達はどよめいた。
 ついに、グラ・バルカス帝国と第2文明圏との補給路を絶ったのである。

「制海権を取って補給を絶った。ついに陸戦が始まるな」

 陸自幹部が横に立つ三津木に話しかける。

「ええ……陸戦か……。陸自の被害は最小限に抑えませんとねぇ」

 陸戦は空や海に比べてハイテクが通じにくい部分がある。 
 被害を最小限に食い止めるため、使えるものは使う。
 防衛省幹部達は、必死に考えを巡らす
のだった。

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第119話列強国の意地4P4

◆◆◆

 E-400型潜水艦アリアロス

 友軍が撃沈された。
 我が艦隊は魚雷を多数前方へ発射、さらに対魚雷欺瞞装置を大量に射出して撤退を開始した。
 
「来るな……来るな……来るな……!!」

 聴音機を耳に当てる隊員は、死神の到来を恐れる。
 我が国最新鋭の魚雷欺瞞装置は水中音響を乱す。
 我が軍には試作品でさえ作れないほどの高性能魚雷を敵が持つと想定して作られた。

 欺瞞装置は効果があるはずだった。
 しかし、2艦は為す術も無く撃沈された。

 超高性能魚雷を想定したが、その想定すら遙かに上回る探知能力、そして追尾能力がある……一瞬の判断が死に直結する戦場で判明するという悲劇。

 敵が魚雷を投下したら、たったそれだけで死が確定する。
 
 家族の顔が浮かぶ。
 死と向き合うと言うことは、これほどまでに怖い事なのか。

(来るな……来るな……来るな……)

 彼は神に祈る。
 しかし、その祈りが届くことは無かった。

 彼の耳に、死神の足音が届く。
 心に重くのしかかる音。
 落ち込んでいる暇は無い。
 彼は生き残るため、すぐに報告する。

「!!!艦直上!!敵魚雷が投下されました!!!」

「何故だ!!何故我が位置が解るのだっ!!」

 ラトバリタが叫ぶ。
 艦長ネトリールは苦しそうに目を瞑る。

「水中音響学の次元が違うという事か……。
 デコイ全弾発射出!!!出力全開し急速潜行!!」
 
 命令はすぐに実行され、艦が急速に傾く。

 ピコーン……ピコーン……ピコーン……。

 魚雷の放つ探信音が響き渡る。
 聴音機を当てていなくても、艦に届く音が聞こえる。

 死に誘う音は徐々に……徐々に近づいてきた。

「あああっ……ああああっ!!!」

 死に直面したラトバリタが叫ぶ。
 人間は死と真に向き合ったときに本当の姿が出る。

 ピコーン……ピーン……ピーン……ピーン

「のあぁぁぁぁぁああああああああああああああああっ!!!!」

「総員衝撃に備えよっ!!!」

 ガァァァァアァァ!!!

 艦長が指示した瞬間、大きな衝撃が艦を襲う。

「ぐあぁぁぁぁっ!!!」

「……え?生きている……」

「助かった……のか?」

 隊員達はすぐに被害確認を行う。
 しかし……。

「エンジン停止……操舵不能!!」

「スクリュー……いや、後部約三分の一が消し飛んでいます!!!防水扉により浸水を防止」

 もはや戦闘能力を失った艦は、敵の的になるだけ。
 艦長はすぐに決断した。

「これまでか……急速浮上!!」

 艦は動かない。

「……どうした?早くメインタンクの海水を排水せよ!!」

「圧搾空気が作動しません!!ポンプも動きません!!!」
 
 何処がどう壊れたのか解らない。

 絶望が全身を支配した。
 急速潜行中の命中であったため、艦は高速で海底に向う。

 バキッ……バキバキ……バキバキバキバキ……。

 潜水艦は耐圧限界を超え、外部からつぶれ始める。
 艦内の配管から高圧の海水が流れ込み始めた。

「そ……そんな……そんなそんなそんなそんなぁ!!!」

 死を前にして、ラトバリタは叫んだ。

 バキバキバキバキバキ……ガギッ……………。

 大きな空気の放出、隊員達の絶叫、そして絶命と共に海中に静粛が訪れた。

 この日、日本国海上自衛隊第1護衛隊群第5護衛隊はレイフォリア沖合において、グラ・バルカス帝国の中でも屈指の練度を誇る リーテ潜水艦隊 と交戦、全艦撃沈した。


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第119話列強国の意地4P3

◆◆◆

 日本国 海上自衛隊第1護衛隊群 第5護衛隊 イージスシステム艦こんごう

 グラ・バルカス帝国潜水艦隊を探知していた第5護衛隊。
 イージス艦 こんごう は、垂直発射式のアスロックで敵潜水艦2隻を葬った。
 敵の欺瞞装置(デコイ)の性能が良く解っていなかったため、まずは単発で撃ったが、惑わされること無く魚雷は命中する。

「敵には申し訳ないが、一気に終わらせるぞ」

 艦長日高は、敵をすべて撃沈することを決意した。

「敵10隻、魚雷を連続発射しましたっ!!数20……射線がずれています。
 無誘導魚雷、5km左方を通過予定」

 魚雷発射に一瞬艦橋が緊張したが、無誘導で当たらないなら何の脅威も無い。

「ん?敵デコイを連続射出!!水中音響乱れます!!
 敵は全艦反転を開始しました」

「……逃げるつもりですね」

「判断の早い指揮官だな。
 逃がすと友軍や、民間船が犠牲になる……か。
 申し訳ないが、降伏していない限り攻撃の手を緩める訳にはいかない!!!」

 この攻撃指示で、100人以上の敵が死ぬだろう。
 しかし、これを逃がすと民間人や友軍が殺される。現に、ムー沖合では敵潜水艦に民間の自動車運搬船が攻撃を受け、民間人が機銃掃射を受けたこともある。
 非情な決断だが、自衛官として逃がすという選択肢は無い。
 日高は心の中でこれから死ぬ者達のために黙祷した。
 
「アスロック発射用意!!すべての敵潜水艦を撃沈せよ!!」

「はっ!!目標敵潜水艦隊!!」

 イージス艦こんごうに登載されたMK41垂直発射システムからミサイルのような物体が連続して射出される。
 炎を噴く飛翔体は、こんごう前方海域に向かい、パラシュートを展開、海中にゆっくりと魚雷を投射した。
 
 次から次へと海中に投下される魚雷は、グラ・バルカス帝国潜水艦隊を地獄へ導く。

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第119話列強国の意地4P2


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 本土防衛艦隊所属 潜水特殊作戦群 潜水艦隊リーテ
 旗艦E-400型潜水艦アリアロス
 
 静粛と漆黒が支配する深き海中を、艦隊は突き進む。
 すでにレイフォリア沖合まで侵入を許してしまった神聖ミリシアル帝国及び日本国の連合艦隊。

『艦隊同士の戦いは日本国を前にして効果が薄いが、潜水艦は一撃を与えうる可能性が高い。
 現に、神聖ミリシアル帝国相手には一定の成果を上げている』

 そのような発想から、潜水艦隊12隻は距離を開けつつレイフォリア沖合に向かう。

 潜水艦が艦隊を成すというのは、グラ・バルカス帝国の運用方法と戦術の一つだった。 

 グラ・バルカス帝国における潜水艦の未帰還は後を絶たなかったが、乗員もろとも未帰還で全滅するため、日本国の強さを伝える者はおらず、正確に力を測れなかった。

 久々の戦場、艦隊司令兼アリアロスの艦長、ネトリールは緊張の面持ちで前を見る。

「我が潜水艦隊が何処まで効果があるか……やるしかなかろうな」

「はっ!!我が最高練度の潜水艦隊をもって、敵艦隊を殲滅して見せます!!
 艦隊行動を取られては我が潜水艦隊も追いつけない。
 しかし、レイフォリア沖合に居続けるなど……我が艦隊に攻撃して下さいと言っているようなものだ」

 幹部ラトバリタは自信をもって発言する。
 
 前世界において、グラ・バルカス帝国の属領を一時的に奇襲し、ケイン神王国に奪われた事があった。
 ケイン神王国艦隊は属領の沖合に展開していたため、近くにいたリーテ潜水艦隊は急行し、展開するケイン神王国艦隊を次々と撃沈したという過去がある。

 栄光の再現、しかも帝国主力艦隊が手も足も出なかった日本国艦隊に対して一撃を加える事が出来ると思うと、ラトバリタは笑いが出そうだった。

 日本国に潜水艦が存在している事はすでに知られている。敵が対潜水艦対策を行っているであろうとの想定はある。
 さらに、日本国周辺への潜水艦が軒並み未帰還になっていることも知っている。

 しかし、未帰還は珍しい事では無く、グラ・バルカス帝国本国周辺でも大型海洋生物と衝突して海に沈みそうになった……といった事故もあり、すべてが日本国によるものとは考えられなかった。
 また、潜水艦が艦隊規模で日本国と衝突したことはなく、運営方法でなんとかなると考えていた。

 潜水艦隊リーテ搭乗員の練度は非常に高く、潜水艦には想定される敵誘導魚雷回避のための最新兵器も登載されていたため、ラトバリタの楽観を加速させる。

「ラトバリタ、気を抜くな。我が潜水艦隊は最高練度を誇る最新鋭艦隊だが、日本国は我らの大規模艦隊を押し返した実績を持つのだぞ」

 ネトリール艦長は警戒しすぎだ。
 大艦隊の敗北にしても、いくら何でも帝国海軍がそこまで一方的に負けるはずが無い。
 日本国は、戦術をもって油断につけ込み、神聖ミリシアル帝国と共闘して勝ったに違いない。
 私は自信はあるが、油断は無い。

「ネトリール艦長、我らに油断はありません。きっと彼等に大きな打撃を与える事でしょう」

 自信を持ち、潜水艦隊リーテの12隻は北東へ向かう。

「ん?」

 聴音機を耳に当てていた隊員がある音に気付く。

「爆雷か……いや、探信音!え??いや、魚雷!!」

「お前は何を言ってるんだ?いったい何なんだ?」

 妄言を吐く隊員にラトバリタはいらつく。

「!!探信音を放つ魚雷が移動中!!潜水艦ウルス直上!!!」

「な……なにぃ!!魚雷が探信音だと??……噂は本当だったのか??」

 驚愕したが、すぐに冷静を取り戻す。
 
「誘導魚雷か……だが想定済みだ!!」

 日本国が誘導魚雷を使用する可能性が高いと、想定していたが、本当に使ってくると、多少動揺する。

「魚雷を放った艦は何処だ??すぐ近くにいるはずだ。アクティブソナーを使ってかまわん!!敵を探せ!!」

「はっ!!」

 潜水艦アリアロスは最新のソナーを使用して深信音を放つ。
 光の届かない深海や、荒れた後の濁った海においては目視は役にたたないため、海中のレーダーとも言える音波を射出し、その反射波で相手の位置を探知する。
 全周に向かって放たれたアリアロスの探信音だったが、敵を探知する事は出来なかった。

「敵は確認出来ません!!……しかしこの伝播は……前方にシャドーゾーンが出現している可能性があります!!」

 全周に放たれた音波の探知距離外にいた護衛艦はグラ・バルカス帝国には探知出来なかった。
 
 音波は均一に伝わる訳では無く、海水温の違いにより、音波が上手く伝搬しないシャドーゾーンと呼ばれる領域が出来る。
 通常でも探知距離外であったが、護衛艦はシャドーゾーンにいたため、より探知は難しい。 

「敵艦探知出来ません。
 魚雷出現位置からして、空から投下されたものと思われます!!」

 艦長ネトリールは目を丸くする。

「航空機から投下されたというのか?」

 空から投下された誘導魚雷とは……これでは反撃手段は限られる。
 浮上してE-400に登載した戦闘機で迎撃するという手段はあるが、浮上と発艦に時間がかかるため、敵が上空にいる状態では現実的ではない。

 敵はこちらの存在に気付いている。
 事前に探信音は確認されておらず、一体どうやって我が方を知ったのか……。
 
 謎は深まるが、敵の攻撃はゆっくりと考察する暇を与えてはくれない。

「潜水艦ウルス、デコイ射出!!」

 敵の誘導魚雷を惑わすために最新のノイズメーカーが射出される。
 化学反応を利用した泡を放出しながら水中を漂い、探知行為を攪乱する。
 ノイズは大きく、旗艦からもすでにウルスの正確な位置は探知出来なくなってしまっていた。

 魚雷の探信音は聴音機を耳に当てていなくても船体に響き始める。
 近づいてきた証拠だ。

 ピーン……ピーン……ピーン……。

 不気味な音は緊張感を加速させた。

 ガゴッ……ガゴガゴガゴ……ボコボコボコ…。

 大きな破裂音が鳴り響き、静粛が訪れた。

 隊員は、すぐに聴音機を耳に当てる。

「こ……これはっ!!ウルスが沈んで行きます!!」

 ウルスの放ったノイズメーカーはまだ作動していたが、破壊されていくウルスの音は、はっきりと聞き取れる。
 バラバラになって友軍潜水艦が海に沈む。
 まだ残っていた区画が水圧によって時々圧壊していった。

 死に直結する圧壊の音はおぞましい。

「そんな……最新式デコイが……デコイが通用しないというのかっ!!!」

 空中から海面に魚雷を落とされる音が再度探知される。

「再度空から魚雷が現れましたっ!!潜水艦バールへ向かって進行中!!」

 ピーン……ピーン……ピーン……。

「まずいっ!!まずいまずいまずいまずいぞおぉぉぉっ!!!」

「バール、機関を最大にして急速潜行中……デコイ連続射出しましたっ!!」

 音と隊員の報告だけで戦場を見通さなければならない。
 暗く、狭い空間で外の様子が見えないというのは、本当にストレスになる。
 友軍が連続して撃沈されているのであればなおさらだった。

 ガッ……ゴォォォォォ……バギバギバギ……。

「……敵魚雷に被弾、バール沈んでいきます!!」

 艦長ネトリールとラトバリタは絶句する。
 幹部達の沈黙に、絶望の空気が生まれた。

 ネトリールはすぐに決断する。

「くそっ!!全艦反転180度、最大戦速で戦場を離脱する!!」

「えっ!!」

 撃沈されたのは2隻であり、まだ10隻も残っている。
 艦隊としての戦力を保持しているこの状況下での突然の撤退命令に、幹部ラトバリタは言葉を失った。

「何をしている!!さっさと撤退の信号波を出せ!!全員死にたいのか?」

「し……しかし、まだ我が艦隊は健ざ……」

「馬鹿者!!!」

 本来なら潜水艦内で大声を出すことは御法度だが、艦長ネトリールは大声で叱責する。

「お前は戦力比が理解出来ないのか??艦隊があるなら、敵艦が探知出来ているなら対応のしようもある。
 しかし、魚雷は空から投下された。
 我らが位置が完全に敵に筒抜けとなっている証拠だ!!」

「最新式の欺瞞装置(デコイ)は通じず、急速潜行も意味を成さなかった。
 しかも、我ら大型潜水艦を1撃で沈める程の威力を持つ魚雷。敵の位置も解らない状態から一方的に殴られる。
 戦力比は明らかで、これ以上戦えば全滅は確実だ!!」
 
 普段温厚なネトリールが吼えたため、ラトバリタは驚く。

「前方シャドーゾーンまでの距離は?」

「……は……はっ!!距離6km!!」

「航空機だけで我が位置が完全に把握されるとは思えない。我が方よりも探知距離の長い敵潜水艦もしくは駆逐艦が近くにいるはずだ。
 全艦前方シャドーゾーンに向かって長距離魚雷を発射!!
 持てるデコイを可能な限り射出し、反転180度。
 最大戦速で戦場を離脱せよ!!」

「は……はっ!!!」

 艦長ネトリールは誰にも聞こえぬよう静かにつぶやく。

「……賭けだな……」

 グラ・バルカス帝国潜水艦隊リーテは戦場を離脱することを決意するのだった。


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第119話列強国の意地4P1

ムー大陸 列強レイフォル 旧首都レイフォリア西側海上
 日本国 海上自衛隊第1護衛隊群 第5護衛隊 イージス艦こんごう 

 無慈悲に行われる艦砲射撃、爆炎による煙はレイフォリアを包み込む。

 神聖ミリシアル帝国は、殲滅作戦を開始するとの連絡の後に攻撃を開始した。

「これは……すごい。戦艦の艦砲射撃はこれほどの迫力か」

 レイフォリアを砲撃する神聖ミリシアル帝国艦隊はまるで、SFに出てくる宇宙艦隊のようだ。

 こんごう艦長日高は感嘆の声を漏らした。

 艦隊からは先進的な艦から青い光りを放つ砲弾を投射している。

 護衛艦の場合は砲弾の速度が速すぎて、曳光弾でも無いため、弾道が見えることはまずない。
 しかし、神聖ミリシアル帝国の艦砲射撃は、光が飛翔する姿がはっきりと確認できた。

 現代的な海戦ではおおよそ見ることが出来ないような戦い、見た目の力強さに日高は圧倒される。

「噂には聞いていたが、本当にSFの艦隊決戦のような砲撃だな」

「はい、大半の艦の技術力は第2次世界大戦程度、先の誘導弾も爆発力以外は見るべきものはありませんでしたが、強いて言うならこの見た目だけは、何者にも負けないほどの力強さを感じます」

 部下が率直な意見を述べた。

「毒舌だな……政治においてはこの見た目が極めて重要な場合もある」

 これほどまでに本土に接近しての射撃は政治的意味合いも強い。

 投射される青き光りは、グラ・バルカス帝国の統合基地とされる、ラルス・フィルマイナに落ちる。
 命中時の爆発は、護衛艦の主砲では作り得ない程強力であり、土煙の爆発による柱が多数出現する。
 二次世界大戦のビデオ映像を思い出させるその攻撃は、無慈悲に容赦なく続けられた。

◆◆◆

 砲の発射音、そして命中時の猛烈な爆発、耳を劈く轟音がレイフォリアを包み込んだ。

「す……すごい!!凄すぎるっ!!!」

 面積の広いグラ・バルカス帝国の大基地が燃える。
 爆発の轟音は耳だけで無く体で感じるほどで、燃えさかる火炎は空を焦がし、遠くこの丘まで熱線が伝わってくる。
 
 猛烈な爆発、いや、消滅していると言った方が正しいのかもしれない。

 レイフォリアが見渡せる丘の上には多くのレイフォル人が詰めかけ、夢では無いかと我が目を疑った。

「何という魔法力の投射量か!!信じられん」

「魔導砲はこれほどまでに高度化出来るものなのかっ!!」

 圧倒的な力、そして帝国の恐怖支配の象徴だったラルス・フィルマイナが神聖ミリシアル帝国の攻撃で消滅していく。
 その凄まじい攻撃に、レイフォル人達は驚きの声を上げた。

 火炎魔法と爆裂魔法を封入したコアは、命中と同時にその威力を開放し、付近の建物をなぎ払う。
 1発1発の威力は凄まじく、まだ投射後間もないが、もう生き物は虫1匹すら生きていないのではないかとさえ感じさせる迫力があった。

 何度も何度も爆風が吹き荒れ、ラルス・フィルマイナ全体を爆炎が包み込む。
 しかし神聖ミリシアル帝国は攻撃を止めない。
 
 レイフォリアの住人はその凄まじき攻撃にグラ・バルカス帝国からの開放を感じ、そして神聖ミリシアル帝国の容赦ない攻撃、そして圧倒的強さに恐怖するのだった。

◆◆◆

 ゴォォォォォォ……!!!

 爆裂音が山彦となってあたりに響き渡る。

 猛烈な光と爆発が、敵の基地を包み込み、爆炎による煙は都市という多大な面積を持つレイフォリア全体を包み込んだ。
 神聖ミリシアル帝国は効果確認のため、攻撃を一時中止する。

「もう何も残っていないのではないか?」

 改めて戦艦を含む海軍の投射力は凄まじい。
 イージス艦こんごう艦長日高は、隣に立つ幹部に問う。

「基地から頻繁に発せられていた無線は、現在沈黙しています」

 日本国では人道的見地から、敵基地があるとはいえ、第三国の本土、しかも首都に対する艦砲射撃は難しいだろう。
 神聖ミリシアル帝国は容赦なく攻撃を行うため、この部分については正直助かっていた。
 破裂音の山彦が止むと静粛が訪れる。
 護衛艦のエンジン音のみが響き、不気味なほど静かに感じた。

「艦長、いずもから指令が入りました。
 第5護衛隊は、南西方向から接近中の潜水艦隊への対応にあたれ
 との事です」

「……はくりゅう と せきりゅう は北西海域だったな……了解だ」

 南東方向から水中において大きな音を出しながら接近してくる潜水艦12隻を自衛隊は探知していた。
 事前の情報収集から得た音紋により、グラ・バルカス帝国の潜水艦であることは間違いは無い。

 旗艦からの指令により、第5護衛隊は南東方向へ転進し、潜水艦隊がいる海域へ向かう

「あれで隠れているつもりらしい……」

 潜水艦隊対応下命の時点で、張り巡らされた対潜哨戒網により、グラバルカス帝国潜水艦の位置がすでに判明している。
 日本の潜水艦とは異なり、雑音が酷く、はっきりと相手のいる位置をリアルタイムで探知出来ていた。

「技術による戦力比とは凄まじい」

 技術的アドバンテージに感謝し、日高は苦笑いをするのだった。
 
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