2022年01月30日

第120話列強国の意地5P5

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 レイフォリア グラ・バルカス帝国要塞山  ダイジェネラ山

 レイフォリアの近くの山を改造して作られた要塞ダイジェネラ山
 要塞の奥深くに、グラ・バルカス帝国陸軍の総司令本部が設置されていた。

 海からの補給路は絶たれ、前線への橋が空爆によって破壊された。
 主要基地や駐屯地は日本の空爆によって大まかな対空兵器が攻撃を受けた後、ムー国による圧倒的物量で徹底的な破壊作戦が行われる。
 空爆によって瀕死になったところを航空支援の元、ムー国陸軍が攻め入ってくる。
 敵は夜間爆撃能力や、夜間の作戦能力をも手に入れているようであり、グラ・バルカス帝国軍は劣勢に追い込まれる。

 各駐屯地や基地から上がってくる戦況は絶望的な情報ばかりであり、陸軍大佐ランボールは焦りを隠せない。

 撤退、敗退を繰り返す。
 大部隊ごと降伏したという事例も多数出る。
 
 忙しく指示を出すランボール。
 そんな中、外務省の面々が部屋に入ってくる。

「おい!!この軍の体たらくは何だっ!!それでも精鋭の帝国兵か!」

 統合基地ラルス・フィルマイナの消滅から何とか逃げ延びた外務省東部方面異界担当部長ゲスタはランボールを叱責する。

「今ある兵力で最善の方法を考えております」

 日本軍の協力を得た異界連合国家の強さは圧倒的であり、要塞への籠城作戦しか手は無い。
 補給も無く、戦力比も絶望的であった。

「ぬぅぅぅっぅっ!!我は外務省の幹部だぞっ!!我ら非戦闘員だけでも本国へ撤退する方法はないのかぁ!!!」

「……ゲスタ部長、そのような手はありません。
 近海の海軍主力も全滅し、各駐屯地も敗退につぐ敗退を繰り返しております。
 敵の戦力を削ぐゲリラ作戦しか取れない現状です。
 レイフォリアの制海権も、制空権も敵の手に落ちております。
 現在飛ばせる航空機も無く、あったとしてもすぐに撃墜されるでしょう」
 
「私はっ帝国の大幹部だぞっ!!
 貴様らよりも、遙かに帝国に貢献してきた。
 そんな私を命の危機にさらすとは、なんたる醜態か。
 必ず責任を負わせるぞ!」

 ランボールは正直忙しい。
 すぐにでも指示を出さないと撤退が遅れる部隊もあり、有軍兵の命が失われていく。
 ゲスタの叱責など聞いている暇は無いのだ。

「大体お前ら陸軍は……」

「ゲスタ部長!!」

 ランボールは大声を出す。

「今は叱責を聞いている暇はありません。
 早く指示を出さないと、戦場での展開が遅れて被害が拡大するのです。
 それと……貴方が外務省において権威ある事は理解しています。
 ただし、さきほどから私に罵声を浴びせているが、私は貴方の部下では無い!」

「な……なんだとぉ、その言い方は何だ!!」

「ゲスタ部長を部屋にお連れしろっ!!」

 ランボールは大声を出し、部下が迅速にゲスタを部屋から追い出した。
 着いてきていたシエリアは、申し訳なさそうにランボールに一礼し、部屋を出ようとする。

「シエリアさん」

 ランボールはシエリアを呼び止めた。

「はい」

「後でお話があります。落ち着いたら伺います」

「……解りました」

 ランボールは指揮を取り続ける。
 一緒に逃げてきた非戦闘員達も、自分の命が風前の灯火だと理解し、心は荒れた。

 絶望的な空気が要塞全体を包み込むのだった。
 


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第120話列強国の意地5P4

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 グラ・バルカス帝国陸軍要塞 ラテ・アルマイ 

「敵は?」

「まだ来ていません」

 要塞長はにやりと笑う。

「やはりこの要塞ラテ・アルマイに手は出せんようだな」

 日本国による主要軍事工場への空爆、そして神聖ミリシアル帝国による海上封鎖によって、グラ・バルカス帝国の補給線は絶望的状況となっていた。
 整備された道路の主要な橋はあっさりと空爆により落とされ、物流は滞り、さらに各基地の地上へ駐機してある航空機、対空火砲陣地も空爆によって破壊される。
 その後、前線を拡大させて簡易航空基地を作った敵国ムーの複葉機が何百機も飛んできて、徹底した破壊を行う。
 
 対空兵器を削られた後の航空攻撃は脅威以外の何物でも無く、何機落としても空の物量で圧倒される。
 欺罔されたはずの弾薬庫や、食料庫は燃やされ、各地に散らばる基地、駐屯地の機能は著しく低下していった。
 そんな中、森と森の間、地下に作られた地下要塞ラテ・アルマイは、敵の攻撃を受けること無く現在に至る。

 全世界を敵に回す覚悟をしたグラ・バルカス帝国は、一時的に敵が物量によって攻勢に出た場合を想定し、統合基地ラルス・フィルマイナや首都レイフォリアへの緩衝地域として、旧レイフォル国第2の都市レイリングを守る要塞、ラテ・アルマイを陸軍絶対防衛ラインと定め、森と森の間に開かれた平地部分に地下にも至る要塞を築く。 

 長射程の回転砲塔を多数持つ要塞は、空から隠れるように作られ、攻撃を受けた場合も耐えうる高度な装甲を持ち、制空権下でも敵陸軍を圧倒出来る火力を投射できるように設計されていた。
 要塞を迂回し、森を進軍しようとした場合は木々が邪魔になって大した兵力は運べない。
 小規模の兵力であれば、レイリング駐屯地だけで対応出来る。
 ラルス・フィルマイナよりも東側400kmに位置するこの基地は同程度の敵が来ても難攻不落であり、基地にいる者達は圧倒的な自信を持って勤務に就いていた。

 ラテ・アルマイを統括する要塞長コルヒ・ミールは要塞地下に設けられた作戦本部指令室で、要塞すべてに繋がる放送を流す。

「諸君、敵は強大だが、我が要塞は落ちはしない。
 我らはグラ・バルカス帝国のムー大陸における絶対防衛ライン。
 帝国の守護者、帝国の盾であり、剣である。
 ラテ・アルマイの精鋭たちよ、防衛線を死守し、敵を蹴散らすぞ!!!」

 要塞はわき上がる。
 兵達は、自分の仕事に誇りを持ち、帝国絶対防衛ラインを守るために戦う事を決意するのだった。

◆◆◆

「………いったい敵は何処にいるのだ?」

 要塞長コルヒ・ミールの頬を汗が伝う。
 敵の大部隊がムーの国境を出たとの情報を入手してからすでに相当日数が経過している。
 一向に攻めてくる気配が無かったため、偵察を出すも、敵の発見には至らない。
 要塞には弾薬や食料の備蓄は多く、万全の体制だった。

「何故来ないのだ?」

 敵の動きに要塞長は不気味さを感じ始めていた。

「我らの要塞が難攻不落と知り、恐れおののいたに違いありますまい」

 楽観的な意見が幹部から出るが、やはり気持ちが悪い。
 噂に聞く日本軍の実力が本当ならば、そこまで甘い相手ではあるまい。
 コルヒ・ミールが思考を巡らしていると、部下が飛び込んでくる。

「報告!レイリング前に、日本の機械化師団及びムー陸軍が現れましたっ!!!」

 皆理解に苦しむ。
 師団がここを通らずにワープしていく事など考えられない事だった。

「そんな馬鹿なことがあるかっ!!森があるんだぞ、機械化部隊はこの要塞前を通過しないと行けないはずだっ!!
 南は斜面のきつい森、北は平野だが、アールの森があるんだぞ。
 森を機械化部隊が超えるなんて、無理に決まっている。一体何処から現れたというのだ?」

「日本の戦車部隊がアールの森の木をなぎ倒しながら進軍してきたとの事です。結果ラテ・アルマイは迂回されました」

「う……え……戦車が木をなぎ倒しながら進軍だと?そんな……え?そんなこと出来るのか?」

 要塞は動けない。
 
 グラ・バルカス帝国の要塞ラテ・アルマイは迂回され、戦うこと無く無意味な存在と化すのだった。

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第120話列強国の意地5P3

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「偵察機、敵艦隊上空に達しました。直接音声つなげます」

『旗艦よりアルファ1、状況を送れ』

『敵艦隊全8隻を確認、空母3隻は炎上し機能停止、巡洋艦は大破している模様、戦艦につあっても激しく炎上中、艦隊は機能していない。全滅だ。
 敵は全滅、繰り返す。敵は全滅している』

『敵は21隻いたはずだが、確認は取れないか』

『残煙痕が13カ所にある。残りの13隻は轟沈したもよう』

 艦橋にいた幹部たちは驚愕の面持ちで話す。

「全滅?空母機動部隊が短期間の攻撃で全滅だと??短期間といいうか、もはや一瞬だ。短すぎる」

「しかも、日本国はたったの5機が、1回だけ攻撃を加えただけだぞ。そんな馬鹿な事がありえるのかっ!」

「信じられん投射力だ」

 艦橋はざわついた。
 日本国海上自衛隊P-1哨戒機5機は、イルネティア群島に出現したグラ・バルカス帝国に攻撃を加え、これを全滅させた。
 神聖ミリシアル帝国は日本の戦闘を、先の大大戦よりも正確に記録することに成功する。

 ただ光りの点を見ていただけ。
 非常にあっさりとしている。まるで何事も無かったかのようだ。
 しかし、幹部達の受ける衝撃は大きかった。

 この日の海戦は後の歴史書に「神聖ミリシアル帝国が最も衝撃を受けた日」として記録される。
 この海戦以降、神聖ミリシアル帝国の日本国に対する脅威の認識は、軍部の末端に至るまで浸透することとなる。

 日本国の上空支援という名の殲滅攻撃は功を奏し、神聖ミリシアル帝国の海上封鎖は成功した。
 兵達の気は緩み、海上封鎖と言う名のバカンスを楽しむ事となる。

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