軍本部では噂になっている日本国の対艦戦闘がついに見れられる。
艦隊司令タキオンは、最新式の電磁レーダーと、天の浮き船とのリンクシステムを持つ戦艦コスモで日本国の攻撃を監視していた。
「現在の日本の航空機の位置、敵艦隊から約180kmです」
コスモの先進的艦橋では、想定される敵艦の位置と、天の浮き船を媒介した電磁レーダーに映るP-1哨戒機5機 の位置がリアルタイムで映し出される。
「速い……これほどまでに速いと、敵は迎撃が間に合わないのではないでしょうか?」
艦長イレイザは率直な感想を述べる。
時速850kmも出ていると、敵が200km手前で接近を感知したとしても、艦隊到着まで17分以下。
一方、想定される敵航空機の上昇力は、海抜高度6000mまでの到達時間が7分30秒程度である。
敵の到達最高高度は解らないが、高度1万メートルまで上がるならば、迎撃時間は相当に限られる。
敵はすでに直掩を上げているため単純にこの時間は適用出来ないが、850kmという速度ならば、転進するだけで敵は対応出来まい。
「うむ、航空機の速さとは、これほどまでに脅威となるのだな……しかし、たったの5機では……」
「はい、我が誘導魔光弾も質量がありますが、日本の誘導弾も重いと聞いています。
量は運べないでしょう」
いくら航空機の速さが優れていたとしても、たったの5機では空母機動部隊にそれほど有効な打撃は与えられまい。
物量は重要だ。
おそらく、空母など重要な艦艇にダメージを与えるつもりだろう。
日本国の高度な戦闘を見ることが出来るため、タキオンは少しワクワクしてきたのだった。
「ん??」
艦橋のスクリーンに映し出された光点が、多くに分裂した。
「自衛隊機、物体を多数射出!!これは……おそらく誘導弾だと思われます!!
出現数40!!
自衛隊機は射出後に転進を開始」
レーダーは大量の光点で埋め尽くされ、光点の海抜降度はどんどんと下がり、速度は上がる。
「40?40だとっ!!まだ150km以上離れているというのに……各機が8発も発射したというのかっ!!」
タキオンは目をカッと見開く。
一つの航空機が8発も誘導弾と思われるものを発射した。
かつての報告によれば、日本軍の誘導弾は、威力において我が方の艦対艦誘導魔光弾には劣るものの、1発で敵巡洋艦クラスを大破させるほどの威力を誇っていたという。
ミスリル級魔導戦艦の主砲よりも明らかに威力は上で、そんなものが、40発も飛んでいく。
この数の攻撃が誘導性を持っているなど、とんでもない事である。
攻撃を行った5機はすでに戦線を離脱し、安全な領域を飛行している。
日本の航空機は敵の迎撃機がいる空域よりも遙か手前で転進した。
「このような戦い方か、日本の航空機を捕らえれるものなどこの世界におらんぞ。
一方的な攻撃とは、この事か」
圧倒的な速度と、長大な距離を飛行する誘導兵器。
神聖ミリシアル帝国、いや、この世界のいかなる艦隊も決して捕らえる事が出来ない攻撃に、タキオンは日本が敵でなくて良かったと胸をなで下ろす。
徐々に敵艦隊に近づく光点、やがて40もの光が敵艦隊付近で消えた。
「どうなった?当たったのか?」
「現時点不明なるも、敵艦隊からの電波は途絶えました。
敵の直掩機15機が、艦隊周辺を旋回中」
「目視したいところだな。足の速い偵察機を敵艦隊上空へ飛ばせ」
命令は実行され、時が経つ。
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