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翌日ーー快晴
空は澄み、不純物も無い空気は遠くまで視界を良くしていた。
小鳥たちはさえずり、美しい朝日、陽光が山を照らす。
小川は水の流れる美しき音色を奏で、まるで戦争中であることが嘘の様だ。
要塞の頂上に設置された監視塔から周囲を監視していた陸軍兵ディーエムは、あまりの美しい空気に深呼吸をした。
澄んだ空気を奥まで吸い込み、気分が良くなる。
「良い朝だ……異世界軍か、来るなら来やがれ!!」
戦争の最中に有りながらも、彼は楽天的に考えていた。
制海権は奪われ、制空権も奪われ、陸軍は敗退を繰り返している。
しかし、ダイジェネラ山を元に作られた要塞は、難攻不落。
十万の軍勢に取り囲まれても耐えうるはずだ。
空爆が通用しない事はいうまでもなく、艦砲射撃で森が消し飛んでも中は安全。
現に、神聖ミリシアル帝国の艦砲射撃を多少受けたが、被害は無い。
対処するべきは歩兵だが、ダイジェネラ山にも多くの兵が詰めており、食料の備蓄も多い。
3倍どころか、10倍の兵力に攻められても落ちはしないだろう。
日本軍が今回の戦いで使った空爆による対空兵器の破壊も、ダイジェネラ要塞には通用しないだろう。
欺瞞されつくし、小さな穴が開いているだけの砲をすべて破壊するのは実質的に不可能だ。
圧倒的な兵糧と、大深度地下水で食料の蓄えも多い。
例え、1年攻め続けられても決して落ちることは無い。
圧倒的要塞ダイジェネラ山は、彼に絶対の自信を抱かせるほどに強固に作られていた。
■ 同山 作戦統合本部
「レイリングが落ちました。
次は必ずレイフォリアを狙ってきます」
もはや自分達が最後の砦となり、陸軍幹部達の緊張感は増していく。
ついに来た自分たちの戦う出番が巡ってくる。
誰もが決戦が近い事を感じ取り、緊張感が高まっていた。
幹部達は、自分の命を奪うために進軍してくる圧倒的な数の軍勢を前に、武者震いする。
「来るなら来い、めにものを見せてくれるわっ!!」
幹部達の気持ちが先走る。
作戦統合本部では、新たに判明した事象が報告されつづける。
「対空火砲及び山岳砲等、重火器の配置は完了」
また、敵の陸軍兵力は計10万を超えている模様」
「ふん、10万如きでは、我が山岳要塞は落ちない。
仮にレイフォリアが落とされたとしても、この要塞から敵を砲撃してくれるわ!!」
「この山岳要塞をなんとかしないかぎり、首都は落とされないだろう。
ならば、首都は落とされないと言うことだ。」
ダイジェネラ山が他の基地と遙かに異なり、とてつもない規模の要塞であることが、陸軍将兵達の楽観を招く。
ランボールはその楽観論に不安を覚えたが、持てる駒は限られている。
難攻不落のダイジェネラ山要塞が彼にとっても切り札。
確かに、強力な切り札。
やれるだけのことをやるしか無かった。
彼は全力で戦う事を決意する。
様々な気持ちが交錯する中、無情にも時は過ぎゆく……。
posted by くみちゃん at 09:06|
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