2022年03月27日

第122話終末のレイフォリアP4

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 まるで海が割れるかのように、イヴァンの前にいたワイバーン達が割れる。
 多くの竜騎士達はワイバーンが操作不能状態に陥っており、極みの雷炎龍から逃げるように飛んでいた。
 まるで海が割れるかのように、ワイバーンの群れが極みの雷炎龍の動線から待避する。

「フフフ……あれがグラ・バルカス帝国の要塞か……小さきものよ。
 科学……だったか。
 所詮人間のお遊びの領域を出ることは出来ない。
 下等生物め……龍魔大戦の時に出現した我らの真の力を思い知るが良い」

 イヴァンは、前方の要塞を睨み付ける。

「エモールを見くびりしお前たちの罪、死をもって償え」

 巨大な龍は空中に静止し、口を大きく開ける。
 光弾が口の前に出現し、あやしく太陽のように光輝いて雷が弾を包む。

 魔力によって雷を操る雷炎龍。
 何億電子ボルトにも達する電力で出来た弾は、内部の空気流を活発化させる。
 強大な粘性発熱が起こり、分子は原子に分解、そして原子から電子が飛び出してプラズマ化する。
 それを強大な電磁力で中心に固定し、恐ろしいほどのエネルギーを秘めた球が出来上がった。
 超高熱の巨大な光弾。
 雷と魔力によって閉じ込められた空気はさらに超圧縮された。

「喰らうがよい……雷神龍のブレスを!!!」

 亜神龍の攻撃は開始された。

 

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 次話は8日以内に投稿します。

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第122話終末のレイフォリアP3

◆◆◆

 炎の雨は、山に衝突して火炎を作り出す。
 多くの場所から同時多発的に山火事が発生し、山は猛烈な煙に包まれる。
 常軌を逸するほどの凄まじき火災は空を赤く焦がす。

 しかし……

「くっ!!!思ったよりも燃えない!!!」

 ニグラート連合第3飛龍隊長ダールは焦りを見せる。
 あくまで炎は散発的であり、煙は山全体を包み込んでいるが、炎で包み込むことが出来ない。
 これでは中の酸素まで一気に消失させる事が出来ず、表面を焼くだけの結果となってしまう可能性が出てきた。
 寄せ集めの軍隊、慣れない攻撃に連携を欠き、効果的な運用が出来ずにいた。

「まさかこのままでは作戦が失敗してしまうのではないか?!いったいどうすれば……」

 山を炎で包むということは、圧倒的なる火力がいる。
 数を揃えればなんとかなると想定されていたが、現実に攻撃を行ってみると、ワイバーンの導力火炎弾では火力不足が否めなかった。
 グラ・バルカス帝国の大部隊をここで消失させなければ、レイフォリアを落とすことは出来ない。
 この作戦に異世界の……多くの国家の興廃がかかっているといっても過言ではなかった。
「だめだっ!!これではっ!!!!」
 
 悔しさがこみ上げる。
 軍の総力を結集しても異界の要塞は倒せないというのか……。その時。

『ふむ、貴様らにしては良くここまでやったな、後は我が敵を消滅させてしんぜよう

 お前たちは下がれ』

「っっ!!!」

 脳に直接響くような声が魔信から聞こえる。
 ダールがワイバーンに命令を出す前に、震え上がったワイバーンが一目散に逃げ出す。 
「お……おい!!!」

 全力で羽ばたきながら急降下する。
 制御が全く出来ない。死しても進むほどに訓練されたワイバーンが本能的に逃げているのだ。
 ダールは東の空を見た。
 ワイバーンよりも遙かに大きい……頭から尻尾までの長さが1000mにもなろうかと思われる巨大な龍が羽ばたく。
 その姿は黒く、目は鋭い輝きを発する。
 その巨大な龍を鷹と例えるならば、ワイバーンは蚊にしか見えない。
 それほどの大きさの差があった。

「あ……あれはっ!!!馬鹿な!!もしかして極みの雷炎龍!!?そんな……三龍の一人が出てきたというのかっ!!!」

 魔信が鳴る。

『我は誇り高き竜人族、エモール三龍が一人、イヴァンである。
 竜王ワグドラーンの御心により、戦場に使わされた。
 お前たちは良く戦った。そして運が良い。
 インフィドラグーンの力の片鱗をその目に焼き付けろ』

 その場にいたすべての竜騎士は驚愕し、極みの雷炎龍の戦いが見られる事に感謝した。
 竜騎士達は、竜に憧れ、厳しい訓練を経て採用される。

 誇り、そして何よりも好きでなければ続きはしない。

 何度も読んだ竜の神話に、かつて龍神達の治める国、インフィドラグーンがあった。
 古の魔法帝国との激しい戦争、龍魔大戦。
 かつての龍神の軍は、大量の極みの雷炎龍を使役したと伝えられている。
 インフィドラグーンは高い技術は持っていたものの、魔帝と龍神の戦いは、主に魔法技術対圧倒的なる竜の身体能力の戦いだったとも伝えられている。

 魔帝のコア魔法によってインフィドラグーンの都市が消滅し、敗北によって各地に散った竜人族が再び集まって出来た国、列強エモール。
 極希に古龍を操る超天才が生まれる。
 そのなかでも特に能力の特化した者が、亜神龍である「極みの雷炎龍」を操る事が出来る。

 列強エモールには、亜神龍を操れる竜人が3人いた。
 彼等は「三龍」と呼ばれ、その圧倒的なる力に本土防衛任務以外、国外で戦う事を禁止されていた。

 しかし、エモールの竜王ワグドラーンの指示により、三龍の内の一人が戦場に現れたのだった。


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第122話終末のレイフォリアP2

◆◆◆

 シエリアは、レイフォリアにあるとある家の屋上からダイジェネラ山を見ていた。
 何処から来たのか、青い空が黒く染まるぼどの……とてつもない数のワイバーンが空を舞う。

 帝国の対空砲が大量の光弾を空に打ち上げた。
 対空砲弾が命中したワイバーンはバタバタと血だるまになって墜落していった。
 対空砲の数も多く、すでに200騎は落とされたのではないだろうか?

 しかし、敵の進行速度は変わること無く、ダイジェネラ山に近づいていった。

「あああっ!!!」

 シエリアは、目を見開く。
 大量のワイバーンは首を伸ばし、大きく口を開ける。
 口の前に火球が形成されていった。

 大量の魔力が共鳴して甲高い音が響き渡る。
 多くのワイバーンから一斉に火球が放出された。

 雨のような大量の攻撃、最大魔力を込めた一つ一つの火球は大きい。

 導力火炎弾の一斉攻撃。

「ひ……火の雨っ!!」

 ガアァァァアァン!!!

 放出された粘性を持つ火炎弾は山に命中し、付近を燃やす。
 1発1発は大した威力ではないが、何しろ数が多い。
 湿気の多い山も、途轍もない量の火炎弾に見舞われ、たまらず燃え始める。

 後の歴史書に火の雨と呼ばれた攻撃、怒りの異世界連合は止まらない。

◆◆◆

 ダイジェネラ山作戦統合本部

「森林火災が発生しています」

 敵の攻撃は、レイフォリアの街から監視している監視員から、有線で報告がなされ、作戦統合本部は状況をリアルタイムに把握出来ていた。

「奴らの狙いはこれか……」

「はん、森林を焼くだけか?表層を焼く程度ではダイジェネラ要塞は落ちん!!」

 会議途中、バタンと音を立ててドアが開いた。
 軍の幹部達が集まる司令室に、免れざる客が入ってくる。

「お……おい!!どうなっている!!本当にここは大丈夫なんだろうな!!」

 外務省のゲスタだ。
 ランボールはうんざりとした表情を浮かべるが、ゲスタに状況を整理して話した。

「敵の攻撃はワイバーンによる大量の火炎弾です。
 粘性を持った火球は脅威ではありますが、要塞の機能には何の影響も与えないでしょう。 要塞表層部は森林火災によって高熱に達し、付近の酸素も消耗しますが、この要塞は2重3重の防火扉があります。
 砲は要塞内への収容作業が開始されています。今回の攻撃で壊れる事も無い。
 敵が山を焼く事は想定済みであり、防御態勢に徹すれば酸欠に陥る事も無い。
 ワイバーンは生物であり、火炎弾も限界が来ます」

 彼は一呼吸置いて続けた。

「つまり今回の攻撃では、いかにワイバーンを揃えようと完全なる火力不足です。この攻撃で要塞は傷つきません」

「おおぉ、そうかそうか、効果の無い攻撃をしてくるとは、やはり異世界は蛮族どもの集まりだな」
 
 焦っていたゲスタは胸をなで下ろし、自分の命に危機が及ばない事を知って安堵するのだった。

「ただ、対空砲の秘匿が難しくなるな……」

 ランボールは火災の後の日本国による攻撃を懸念する。
 

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