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炎の雨は、山に衝突して火炎を作り出す。
多くの場所から同時多発的に山火事が発生し、山は猛烈な煙に包まれる。
常軌を逸するほどの凄まじき火災は空を赤く焦がす。
しかし……
「くっ!!!思ったよりも燃えない!!!」
ニグラート連合第3飛龍隊長ダールは焦りを見せる。
あくまで炎は散発的であり、煙は山全体を包み込んでいるが、炎で包み込むことが出来ない。
これでは中の酸素まで一気に消失させる事が出来ず、表面を焼くだけの結果となってしまう可能性が出てきた。
寄せ集めの軍隊、慣れない攻撃に連携を欠き、効果的な運用が出来ずにいた。
「まさかこのままでは作戦が失敗してしまうのではないか?!いったいどうすれば……」
山を炎で包むということは、圧倒的なる火力がいる。
数を揃えればなんとかなると想定されていたが、現実に攻撃を行ってみると、ワイバーンの導力火炎弾では火力不足が否めなかった。
グラ・バルカス帝国の大部隊をここで消失させなければ、レイフォリアを落とすことは出来ない。
この作戦に異世界の……多くの国家の興廃がかかっているといっても過言ではなかった。
「だめだっ!!これではっ!!!!」
悔しさがこみ上げる。
軍の総力を結集しても異界の要塞は倒せないというのか……。その時。
『ふむ、貴様らにしては良くここまでやったな、後は我が敵を消滅させてしんぜよう
。
お前たちは下がれ』
「っっ!!!」
脳に直接響くような声が魔信から聞こえる。
ダールがワイバーンに命令を出す前に、震え上がったワイバーンが一目散に逃げ出す。
「お……おい!!!」
全力で羽ばたきながら急降下する。
制御が全く出来ない。死しても進むほどに訓練されたワイバーンが本能的に逃げているのだ。
ダールは東の空を見た。
ワイバーンよりも遙かに大きい……頭から尻尾までの長さが1000mにもなろうかと思われる巨大な龍が羽ばたく。
その姿は黒く、目は鋭い輝きを発する。
その巨大な龍を鷹と例えるならば、ワイバーンは蚊にしか見えない。
それほどの大きさの差があった。
「あ……あれはっ!!!馬鹿な!!もしかして極みの雷炎龍!!?そんな……三龍の一人が出てきたというのかっ!!!」
魔信が鳴る。
『我は誇り高き竜人族、エモール三龍が一人、イヴァンである。
竜王ワグドラーンの御心により、戦場に使わされた。
お前たちは良く戦った。そして運が良い。
インフィドラグーンの力の片鱗をその目に焼き付けろ』
その場にいたすべての竜騎士は驚愕し、極みの雷炎龍の戦いが見られる事に感謝した。
竜騎士達は、竜に憧れ、厳しい訓練を経て採用される。
誇り、そして何よりも好きでなければ続きはしない。
何度も読んだ竜の神話に、かつて龍神達の治める国、インフィドラグーンがあった。
古の魔法帝国との激しい戦争、龍魔大戦。
かつての龍神の軍は、大量の極みの雷炎龍を使役したと伝えられている。
インフィドラグーンは高い技術は持っていたものの、魔帝と龍神の戦いは、主に魔法技術対圧倒的なる竜の身体能力の戦いだったとも伝えられている。
魔帝のコア魔法によってインフィドラグーンの都市が消滅し、敗北によって各地に散った竜人族が再び集まって出来た国、列強エモール。
極希に古龍を操る超天才が生まれる。
そのなかでも特に能力の特化した者が、亜神龍である「極みの雷炎龍」を操る事が出来る。
列強エモールには、亜神龍を操れる竜人が3人いた。
彼等は「三龍」と呼ばれ、その圧倒的なる力に本土防衛任務以外、国外で戦う事を禁止されていた。
しかし、エモールの竜王ワグドラーンの指示により、三龍の内の一人が戦場に現れたのだった。
posted by くみちゃん at 22:02|
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