2022年04月22日

第126話未開の大文明3P3


■ 会議室

 お互いの挨拶から会議が始まる。

「今日はどのような用件で来られたのでしょうか?」

 今までの異世界での経緯、そしてクルセイリース大聖王国がシルカーク王国へ提示した内容を知っている朝田は警戒して尋ねる。

「私はクルセイリース大聖王国の王家から命を受け、参りました。
 私としてはお互いの事を良く知らず、不幸な衝突を起こしたくないという願いがあります」

 朝田は今までとは異なる展開に目を丸くする。
 ミラは続けた。

「シルカーク王国の方々から、この周辺国に対する日本国の影響力は絶大だと伺っています。
 我々は日本国の事を良く知りたいと思います。なるべく早く、9名から成る調査団を日本国へ派遣したい。
 本日は、その調整をお願いにやって来ました」

「調査団受け入れは本国に報告したいと思います。
 先ほどおっしゃった、不幸な衝突を起こさないようにしたいというのは、国としての意思でしょうか?」

「申し訳ないが、国家としての意思ではありません。
 ただ、不要な衝突を避ける方法は常に模索したいと考える人間は王家にもいるという事です。
 よって、今回の派遣はあくまで調査団であり、使節団ではありません」

「……解りました。
 ちなみに日本国から貴国に対し、調査団もしくは使節団派遣を受け入れていただく事は可能でしょうか?」

「現時点では……出来ません」

 ミラは言葉に詰まる。

「……解りました。
 色々事情がおありなのでしょう」

 朝田はクルセイリースが一枚岩では無いことを察する。
 調整を実施し、後日日本国は調査団を受け入れる事となった。

◆◆◆

 シルカーク王国 王都 練兵場

「来たか……あれが……凄いな」

 船の上にプロペラが付いた機体が飛ぶ。
 日本国への調査団がやってくる。

 データがほしかったため、空飛ぶ船で日本国まで来れないか打診したが
○ 高純度液体魔力燃料が手に入らない
○ 日本国からクルセイリースへ迎えに行こうにも、船の入港を拒否される
 等の理由から、第三国で他の交通手段に乗り換える事となった。

 シルカーク王国が協力を申し出、王都練兵場で乗り継ぐ事となったのであった。
 
 シルカーク王国練兵場では相手の技術レベルを探るため、自衛隊はもちろんの事、多くの有識者や技師が待機する。
 また、クスセイリース大聖王国調査団9名を案内するため
  外務省 朝田
  自衛隊 田代
 そして、若手であるが航空工学、機械工学に精通した
  工学博士 井手
 が、案内人として専従する事となっていた。

 飛空艦が近づいてくる。
 おおよそ考えられない大きさの物が飛ぶその様子に、日本国の面々は息をのむ。

 フィィィィィン

「あれは……まいったな。航空力学や空気力学を使用した飛行ではありません」

 井手は隣にいた朝田に話しかけた。

「何故そう思えるのでしょうか?」

「ヘリコプターのダウンウォッシュ……簡単に言えば、下へと吹き付ける風が少なすぎます。
 また、あの程度の翼であれほどの大きさの機体は飛ばないでしょう。
 まあ、とてつもなく軽い素材なら別ですが」

「なるほど、自衛隊としてはどう見ますか?」

 朝田は今回案内人の一人である、航空自衛隊の田代に話しかけた。

「……初見のみなので、なんとも言えませんが、あれが多くの荷を積めるのであれば、運用方法によっては脅威となりうるのかもしれません。
 あれは航空戦力の主力では無いでしょう。おそらく我が国でいうところの護衛艦か、輸送ヘリに相当するのでしょう。
 あれに限定するなら、遅いのでヘリコプター程度の脅威度とは思いますが、彼等の国にはどれほどの機体があるのか解らないため、大きな脅威となる可能性は決して捨ててはならないと思います」
  
 様々な可能性を議論する日本国の専門家達。
 
 飛空艦は練兵場へ着陸するのだった。

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第126話未開の大文明3P2

◆◆◆

 クルセイリース大聖王国 聖都セイダー

「早く!!早く聖王女ニース様に報告しなければっ!!」

 たたきつけるような雨が降る中、騎士ミラは聖城テンジー城へ急ぐ。

 降りしきる雨の中、ダチョウよりも顔や体が大きく、黄色い体躯を持つ陸鳥に乗り、駆け抜ける。
 可愛い顔をした陸鳥は、日本人が見たならば古き良きロールプレイングゲームに出てくる黄色い鳥を思い浮かべるだろう。

 城門を抜け、城に着く。
 彼はベタベタに濡れた服を拭くこと無く、聖王女ニースの執務室に入室した。

「失礼します!!」

 部屋に入ってすぐに資料を広げる。
 これほど急いできたのであれば、重要な報告があるに違いない。
 ニースは多くは聞かず、まずは資料に目を通した。

「なるほど……よろしい、許可しましょう。
 貴方の日本国に関する報告書は、軍部ではもみ消されました。
 まるで無かったかのように軍部は戦の準備を進めています。
 平和的に衝突を止めるにはまずは相手を知ることです」

「ありがとうございます!!
 では早速、シルカーク王国の日本大使館を尋ね、調整の後に私を筆頭として各部門のエキスパートを集め、日本国調査団を編成いたします」

「本来は隠密で行きたいのですが、国の重鎮達に認めさせるには、ある程度軍部も巻き込む必要がありますね。
 私ではあなた方の行動に、国の決定権を握る王権の付与が出来ません。
 使節団とはなり得ないので、あくまで今回の派遣は日本への調査団に留まります。
 日本国が強かった場合、軍部をねじ伏せる強力な調査資料が必要となりますので、しっかりと調査をお願いしますよ」

「上手く事が進んだとして……一人私の知る人を調査団に参加させたいと思います。
 各部門のエキスパートと共に、私の推薦する人物を一人同行させます」

「はっ!!承知いたしました」

 彼等は戦争を止めるため、日本国へ調査団を派遣することを決定した。

◆◆◆

 シルカーク王国 日本大使館

「ここが……シルカーク王国が恐れていた日本国の大使館か」

 クルセイリース大聖王国の王族の使者という名目で、ミラは日本国の大使に面会を申し込む。
 通常はシルカーク王国との良好な関係のために存在する大使館であり、他国の担当大使が交渉することはありえないが、準有事に近い状況となったため、実績のある朝田が担当することとなった。
 
 日本国としては話し合いに来た者を断る理由も無く、会談が行われることとなった。

 
 ミラは室内に入って辺りを見る。

 質の良い統一された調光、室内の空気は外のジメジメとした空気と違い、涼しく、快適に制御されている。

「なっ!!!」

 入口から少し進み、ドアの先、エントランスに大型のモニターが設置されていた。
 モニターではDVDにより、日本国の紹介映像が再生される。

「これは……何だ!!このレベルの映像魔具を日本国は実用化しているのかっ!?」

 所々に見える高度文明の形跡。

「シルカーク王国が敬意を払うのも頷ける。
 日本国の秘密を探ってやる!!」

 ミラは緊張しつつ、会議室に入室した。

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posted by くみちゃん at 01:05| Comment(18) | 小説

第126話未開の大文明3P1

シルカーク王国 王都タカク

「何と言うことだ!!!」

 日本国外務省本庁からのメールを開き、朝田は頭を抱える。
 もう一度読み直し、大きなため息をついた。

「どうしました?」

 落胆する朝田を見て、事務員が問う。

「シルカーク王国に先日、クルセイリース大聖王国を名のる国が砲艦外交を仕掛けた件だ……」

「何と?」

「シルカーク王国は、神聖ミリシアル帝国、ムー国、そして日本国に、圏外文明国侵攻の可能性有りとの書簡を送った」

「圏外文明国??」

「そう、文明圏と文明圏外国家のどれにも属さない国家の内、多くの支配領域を持ち、全貌の判明していない文明圏に匹敵する共同体もしくは国家の事を指す言葉だそうだ」

 圏外文明国と文明圏外国家、何だか混乱する言い方だが、大層な表題に、事務員は察した。

「と、言うことは、未知の文明圏が我々の現在国交のある共同体に大規模侵攻をしてくる可能性があると?」

「そう、日本国政府が神聖ミリシアル帝国と、ムー国と調整した結果、東方の雄たる日本国が何とかしろと……。
 圏外文明国の侵攻は、過去に大災厄をもたらしたことがあるとか……」

「と、なるとシルカーク王国が最前線ですね」

「そう……これからとてつもなく忙しくなる事が確定してしまった。
 何てことだ」

 朝田は膝から崩れ落ちる。

「まだ……俺は休めないというのかっ!!」

 彼の落胆は2分程続いたが、気を取り直して職務をこなすのであった。


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