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シルカーク王国 王都タカク サルカ城
「クルセイリース大聖王国の使節団の方々をお連れしました」
王都の……しかも王城に直接乗りつけた飛空艇団、日本国の機体が故障したものと思い込んでいた軍部は、日本国のものではないと知り、大騒ぎになっていた。
着陸した機体の調査を進めたところ、クルセイリース大聖王国なる国の外交官が乗っている事を知る。
本来ならば外交担当の職員が対応をする所であるが、直接王都に乗り付けてきた未知なる高度文明国家が相手であるため、シルカーク王国外交の最高責任者、カルク外務郷が急遽対応することとなった。
クルセイリース大聖王国と名乗る5名の使者は、カルクの対面に着席、挨拶を交わした。
「クルセイリース聖王国の皆様、初めて我ら2国がお会い出来た事を光栄に思います」
彼は社交辞令から入る。
「さて、この度はどのようなご用件でしょうか?」
「最初に訂正しよう。クルセイリース 大 聖王国だ。
私は軍外交担当のカムーラという。
貴国とは国交を結びたいと思い、やってきた」
カムーラは事前に準備してきた資料をカルクに渡す。
事前の打ち合わせには無い行動に、ミラは怪訝な顔をした。
「カムーラ殿、資料は私が用意しているが?」
刺すような視線でカムーラを見る。
「案ずるな、ミラ。これは軍王様からの指示だ。
資料はこれで正しい」
カルクは資料を読み進める。
次第に顔が赤くなっていった。
「クルセイリース大聖王国の皆様、これは本気でしょうか?」
「ん?何か問題でもあるのか?」
無礼な言に、カルクはさらに顔を赤くする。
あまりの怒りで青筋が額に浮かぶ。
「大ありです!!この内容では従属国、いや、奴隷国家ではないですか!!!
初めて来た者達が王都上空に乗り付け、このような無礼な文を、無礼な態度で手渡す。
国家として非常識極まりない!!」
「非常識ではない。
従属か死かを問うているのだ」
「ちょ……お待ち下さい!!」
あまりにも事前に聞いていない展開に、ミラが割って入る。
「カムーラ殿、越権行為が過ぎる!!
聖王ジュウジ様の決裁を取った文章は私の手元にある。
そのような強硬な姿勢は示されておりませんぞ!!!」
「何だミラ。お前は聞いていないのか?
聖王ジュウジ様は先ほどお亡くなりになった。
理由は解らんがな。
今後は聖王子ヤリスラ様が全権を握る。
ヤリスラ様は外務に関しては、軍王ミネート様にお任せするとの御言葉を発せられた。
ミラよ……お前こそ出る幕ではない」
「なっ!!」
ミラは思考を巡らせる。
聖王子ヤリスラはまだ5歳の子供であり、親である第3女王ラミスの言いなりだった。
ラミスは軍王ミネートに絶対の信を置いている。
「しかし、カムーラ殿、ここは外交。国内に有事があればこそ、意見調整を行った後に出直す事が重要ではないのか」
「お前の意見等は聞いていない。
先ほど魔信文が来た。
マジックチェーン技術により封がされていて、複製は不可能だ。
これは国の決定事項である」
ミラは苦虫をかみつぶしたような顔でカムーラを睨む。
カムーラはそんなミラを無視して、シルカーク王国外務郷カルクを見た。
「従属はお前たちにとって、悪い話しばかりではないぞ。
貴様らのような低文明国が、我が国の高度文明に触れる事により、国民の生活レベルは向上する。
お前たちが国民の事を真に想うのなら、従属すべきであろう」
「……検討したい。
今日のところはお帰り願う」
「ふ……私は寛大だ。
国の命運を左右する重要な決定事項。
良いだろう。2ヶ月後……2ヶ月後にまた来よう。
その時までに、従属か死かを選ぶが良い」
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