2022年04月06日

第124話未開の大文明P3

◆◆◆
 
 文明圏外国家 シルカーク王国

 晴れ渡った空、少し暖かく、南国の心地良い風が吹く。
 東へ向いた窓の外は、遙か先まで続く広大な海が見えた。
 小鳥はさえずり、人々はのんびりと行き交う。

「ふう……良いところに来たな」

 日本国外務省の朝田は、連日の激務続きだった事もあり、本人の希望もあって、外務省で最も暇だと言われるシルカーク王国に着任していた。

 周辺に敵対的国家は無く、南東方向約700kmの位置に交流の無い島はあるが、高速海流によって、王国から行くことは出来ても来ることは出来ない。

 もっとも、日本の船であれば行き来は可能であった。

 人工衛星により、空を飛ぶ船のようなものを確認していたが、行動半径が150km
程度しか無いようであり、シルカーク王国に来ることは出来ず、「安全」という判断が
されていた。
 現在外務省ではその国と国交を結ぶための事前調査を行っていたが、完全に交流が遮断されている国であり、独立した文明を築いており、事前調査は難航している。

 この世界の敵対的国家の多さ、そして今までに被った痛手から、アプローチの方法については省内で意見が分かれていた。

 朝田の仕事内容に、同国家の調査も含まれていたが、一切手がかりすら無い。

「ええと、昼からは、王国の外務郷との会談か。
 ヘリポートだけだと不便だから、飛行場の設置許可がほしいものだな」

 朝田はゆっくりと仕事の準備を進める。

◆◆◆

 シルカーク王国日本大使館

 大使館前に数台の馬車が横付けされ、中からきらびやかな服を着た者が大使館に向かう。 その人数は一人では無く、行列で向かっていた。

「すごいですね、日本の影響力は」

 同じ異動でやってきた事務員が、大使館に向かってくる外務郷を見て感嘆する。

「彼等はこの国の貴族……。
 まあ日本で言えば、外務大臣、副大臣、次官が部下を引き連れて来るようなものですからね。
 普通は我らが行くものですが……。
 彼等は最大限の礼を示しているのでしょう。
 さあ、大会議室に向かいましょう」

 朝田と事務員は、会議室に向かう。


 大会議室〜
 会議室のドアが開く。

「カルク外務郷、わざわざ大使館までご足労いただき、ありがとうございます」

 朝田と事務員は席を立ち、一礼した。

「とんでもございません。
 我らのためにこのような場を設けていただいて、真にありがとうございます」

 挨拶が終わり、会議が始まった。

 シルカーク王国側は平身低頭で、会議は進む。
 ただし、飛行場建設のみ、シルカーク王国の国内法の問題で先送りとなった。

 シルカーク王国側からは、日本の機嫌を損ねると、とんでもないことになるという、恐怖と畏敬の念が伝わってきた。

 会議も終盤にさしかかろうとしたとき。

「ん?あれは何ですかな??」

 カルク外務郷が窓から外を見る。
 船が3隻空に浮かんでいた。
 上部には各2つづつ軸が伸び、上で竹とんぼのプロペラのようなものが回転している。

「朝田様、あれは日本のヘリコプターという乗り物ですかな?」

 大使館のある王都タカクで外国の飛行許可は出していないはず。
 しかし、この世界で回転翼機を運用しているのは日本国だけだった。

 カルク外務郷は、日本の機嫌を損ねる訳にもいかず、事実確認しない訳にもいかないので、とりあえず朝田に尋ねた。

 朝田は双眼鏡を取り出し、それを見た。

「なんとファンタジーな……」

「朝田様、首都上空は他国の飛行禁止エリアでございます。
 このまま進むと王都上空に到達しますので、何かの間違いであれば取り急ぎ連絡していただき、転進をお願いしたいのですが」

「あ、いえ、日本国はあのような機体を持っていません」

「え……????」

「あれほどの大きさの船を、しかも回転翼で飛ばす技術を日本国は持ち合わせていません。 ヘリコプターとして見るなら凄く大きい。
 空気力学以外の方法で飛んでいるとしか思えませんね」

 朝田が双眼鏡を外し、カルクに振り返ると彼は顔面蒼白になっていた。

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第124話未開の大文明P2


◆◆◆

 クルセイリース聖王国、聖都テンジー城において、国の幹部達が会議を行っていた。

 王座には聖王ジュウジが鎮座し、
 軍王ミネート
 外務郷サトシル
 聖王女ニース
 を中心に国の幹部達が並ぶ。
 
 内政担当郷が会議開始を宣言して話し始めた。

「お手元に配布しているのが、今年の属領からの収入と支出になります。
 すでに属領に求める税金は限界の域に達しており、反発も相当に強まっています。
 これ以上の増税は無理かと……」

 重苦しい雰囲気が漂う。
 自国の民の税は上げられず、属国からは限界まで搾り取っている。
 無い袖は振れなかった。

 軍王ミネートが話し始める。

「しかし、支出を押さえる訳にはいかない。
 民は富み続ける事によって良く働き、富む事に慣れてしまっている。
 成長が止まれば必ず統治方法が問題となるだろう」

 彼は続けた。

「やはり東方国家を侵略し、新たな属領とするしかあるまい。
 ジュウジ聖王様、東方国家遠征の許可をいただきたい。
 これは、思いつきでは無く、前々から考え抜いた結果です」

 強硬派として知られる軍王ミネートの突然の派兵意見に、皆驚きを隠せない。

「お……お待ち下さい!!」

 穏健派たる聖王女ニースが慌てて止めに入る。

「今属領があるのは、飛空艦隊のおかげといっても過言ではありません。
 この飛空艦隊による圧倒的な空の強さがあってこそ、他国を圧倒出来ているのです。
 東方国家群までは飛空艦の航続距離が不足するはず。
 軍事的アドバンテージが無ければ、被害が大きすぎます。
 まして、飛空艇団抜きで一国を簡単に落とせる力があるとは到底思えません。
 戦争ではなく、他の方法で国が富む方法を模索するべきです!!」

 一瞬の沈黙、軍王が言葉を発す。

「ほう……さすがは王女様、軍について良く勉強しておられる。
 最後に報告しようと思って、資料をお持ちしていた所ですが、今お話しましょう。
 その飛空艦は、最近の技術改良によって、航続距離が300kmから1500kmへ改善されました。
 これで東方国家の一部が攻撃可能圏に入ります。
 また、高速海流が原因で、ほぼ未開拓だった北西新世界の調査、討伐も実施出来るでしょう」
 
 場がざわつく。

 軍王は続けた。

「また、今までは他国と大差無かった騎士団も魔道具の発展によって大幅に強化されます。 研究中だった振動波増幅装置が完成いたしました。
 これで、騎士の魔法も大幅に威力が上がります。
 つまり、我が国は他国を圧倒出来る軍事力、神にも等しい軍事力を手に入れたのです!!!」

 国の財政が厳しく、このままでは国民の不満が出始める頃合いに、軍事力の技術革新による大幅増強。
 国家を運営する物達にとって、あまりにも甘い誘惑だった。

 聖王ジュウジが手を上げる。

「ミネート軍王の国を想う気持ちは嬉しく思う。
 しかし、他国にも民がおり、それぞれが生活を営んでいる。
 東方国家群の侵略を前に、まずは交易で栄える事が出来ぬか可能性を探るべきだ」

 聖王ジュウジは強硬派が多くを占めるクルセイリース大聖王国において、相当な穏健派だった。
 彼は続ける。

「軍事力を振りかざすのは最後の手段とすべきであろう。
 ミネート軍王、北西世界の調査も慎重にするべきだ。
 確か、北西世界には、単独国家のみではなく、文明圏と呼ばれる高度文明の共同体があるというではないか……」

 ロデニウス大陸南東1300kmに位置するシルカーク王国、同国周辺から南東方向に高速海流が流れ、クルセイリース大聖王国の属領である島国、タルクリスへ時折漂流物や、漂流者がいた。

「ジュウジ聖王様、それは思慮が過ぎます。
 3年前の漂流軍艦拿捕で、北西世界の文明程度はたかが知れています。
 彼等が列強国と恐れるパーパルディア皇国でさえ、帆船の魔導戦列艦程度のレベルです。 空の戦力も改良型ワイバーンということではありませんか。
 我が飛空艦隊をもってすれば、あっさりと勝利を治める事が出来るでしょう」

「しかし、北西方向は規模の大きな国家も多い。まずは調査だ」

「解りました……聖王様はおやさしい」

 クルセイリース聖王国は、航続距離の伸びた飛空艇で、属領タルクリスを経由し、北西方向への調査団派遣を決定した。

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posted by くみちゃん at 22:30| Comment(16) | 小説

第124話未開の大文明P1

クルセイリース建国神話第2章1項
 かつて世界に大きな災厄が訪れた。
 突如として現れし8つの首と、8つの尾を持つ山よりも巨大な邪竜は、人々を襲い、多くの町を飲み込み、人類を恐怖のどん底に陥る。
 人々が絶望したとき、北西より神の化身が現れ、十時の大地にこれを封印す。
 神の化身、多くの英知と力を我らに授けん。
 我らは選ばれし民、クルセイリース
 この大いなる力は人類の為に使用し、いつの日か復活する邪竜討伐のため、さらなる力を手に入れなければならない。

◆◆◆

 ロデニウス大陸から南東方向約1300kmの位置に、文明圏外国家であるシルカーク王国がある。
 そこからさらに南東1700kmの位置に、縦500km、横500kmの十字型の土地を持つ国があった。
 名をクルセイリース大聖王国という。

 クルセイリース大聖王国 聖都 セイダー

 セイダーのメインストリート、軍王門の周辺は活気に溢れていた。

「へいラッシャイラッシャイ!!セイダーに来たらこれを飲まなきゃ始まらねぇ。
 ほら、そこの兄ちゃん、田舎から出てきたんだろ?これを飲んでみな!!」

 上京をしてきたであろうまだ童顔の残る少年に、緑色の液体を渡す。
 少年はそれを飲んで渋い顔になった。

「う……美味い!!」

「そうだろそうだろ。……お?ほれ、見てみな。
 飛空艦隊が飛んでるぞ!!
 田舎じゃあれを中々見ないだろ??」

 少年の反応に気をよくした店主は笑顔で空を指さした。

「わあ!!!」

 大小様々な船が5隻空を飛ぶ。
 日本人が見たならば、船にヘリコプターの回転翼のようなものが取り付けられて空を飛んでいるように見える。
 古きロールプレイングゲームの最後の移動手段、飛空艇のようにも見えるだろう。

「おじさん、僕は軍の士官学校に入るんだ!!
 僕もいつか、あそこにたどり着いて見せる!!」

 周辺に属国を持ち、力による支配を可能とした超兵器群、飛空艦隊はエリートの象徴であり、多くの士官候補生の憧れだった。

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posted by くみちゃん at 22:29| Comment(17) | 小説