2022年04月03日

第123話終末のレイフォリア2P5

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 ムー国日本大使館

「朝田さん、異動内示が出ました。
 良かったですね、シルカーク王国へ赴任となっていますよ」

 対グラ・バルカス帝国の外交は山場を超えたと判断された。
 激務が続き、休みの無かった朝田は、ずっと異動願いを出していたが、やっと暇な部署への異動が認められたようだ。
 外務省本庁としての計らいでもあった。

 彼はロデニウス大陸の南東に位置する島国、シルカーク王国への赴任が決まる。

 ここには文明圏間の紛争も無く、グラ・バルカス帝国勢力圏からもほど遠い。

「ほ……本当に?やった!!やっと休めるのか」

 朝田は安堵する。

 外務省 朝田 泰司 は、シルカーク王国へと向かうのだった。

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 次話は3日以内に投稿します。
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第123話終末のレイフォリア2P4

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グラ・バルカス帝国  帝都ラグナ 帝王府

 帝王府において、帝前会議が行われる。
 
 帝王グラ・ルークスを初めとして
 帝王府長官カーツ
 帝王府副長官オルダイカ
 外務省事務次官パルゲール
 軍本部長サンド・パスタル
 軍の顧問として、帝国三将が一人、帝都防衛隊長ジークス
 他、国の中枢達が顔を揃える。

 帝王府長官が司会進行を努める。

「それでは帝前会議を始めます。
 サンド・パスタル、今の惨状をどう考えるのかっ!!報告しろっ!!」

 軍全体を管轄する本部長として、胃に穴が開きそうだった。
 握りしめた拳が小刻みに震えている事を自覚する。

「異世界軍事態の評価は、依然と変わりません。
 すべては日本国が原因です。
 彼等さえいなければ、帝国は世界を支配出来ていたでしょう」

「貴様、国家の命運を左右するこの場で〜たら、〜れば、を話すというのかっ!!!」

 帝王府長官カーツは怒りが収まらない。

「前回の海戦もそうですが、これほどまでにっ!!!これほどまでに日本国と差があるというのは、本当に想定外なのです。
 日本国の書物を参考に、再想定した戦争では、どうあがいても日本国の武器を我が方が封じる事は出来ません!!
 戦闘機は何百回出撃しても、敵戦闘機を1機も……1機たりとも落とせない。
 戦艦を何隻建造しても、敵のミサイルと呼ばれる誘導弾の攻撃は防げない。
 さらに、電子的欺瞞装置は全く効果が無い事が判明しました。
 潜水艦でさえ、敵には筒抜けです。
 本土防衛に徹しつつ、日本国を刺激せずに和平を結ぶしかありません!!!」

「サンド・パスタル!!軍の統括がなんたる言いぐさか!!!貴様は帝国の誇りを失っているのかっ!!
 そのような気概で勝てると思っているのかぁっ!!」

 カーツは怒鳴る。

「カーツ殿っ!!!」

 大声をあげるサンド・パスタル

「気概で勝てるならいくらでも勝てるわっ!!!
 その現実を直視しない精神論こそが、我が国がここまで追い込まれるようになった原因ぞっ!!
 冷静な分析を行った結果、どうあがいても勝てないのだ!!
 この世界の異世界軍ならば勝てよう、しかし、日本国ただ1国に勝てないのだっ。
 私だって悔しい!!皇帝陛下にこのような報告をするなど、身を切られる思いだっ!!!
 しかし、このまま現実を直視せずに我らが突き進むと無駄に兵が失われ、帝国臣民を地獄にたたき落とす事になるのだぞおっ!!!!
 負けない事ならば出来る!!!
 軍を増強しつつ、外務には和平の道も探るべきだと考える」

「なんたる腑抜けよ。恥ずかしくないのか?」

「恥で勝てたらいくらでも恥をかく。
 このままだと亡国の道をたどるからこそ、本当の真実を皇帝陛下にお伝えしなければならないのだっ!!!」

 ムー大陸からたたき出され、さらに海軍の多くを失って劣勢となったグラ・バルカス帝国。会議は紛糾する。

 帝王グラ・ルークスが手を上げると場が静まる。

「カーツよ、サンド・パルタルは優秀な男だ。
 この男がここまで言うのだ。日本国は真に強いという事……。
 軍を強化しつつ、和平の道も探るのだ。
 パルゲールよ、外務をたのんだぞ」

「ははっ!!!」

 軍が大負けした後の和平。
負けを宣言したも同然な事象であり、今までの帝国運営からは考えられない方針転換。
帝王府に衝撃が走る。
 グラ・バルカス帝国は、軍事力を強化しつつ、和平の道も模索する事となった。

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posted by くみちゃん at 20:20| Comment(20) | 小説

第123話終末のレイフォリア2P3

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 日本国 首相官邸

「では……しばらく時間がかかるというのか」

 総理は、防衛省及び外務省幹部達に、今後の流れの説明を受けていた。
 神聖ミリシアル帝国が、急遽方針を転換し、グラ・バルカス帝国の本土攻撃に時期的な懸念を伝えてきたため、日本国としては予定が狂う形となっていた。

「はい、次はイルネティア王国、そしてグラ・バルカス帝国の本土攻撃が視野に入ってきます。
 陸軍を投入するとなると、海を隔てているため、攻める側は守る側の5倍の兵力が必要となりますので、量の多い彼等すべてを制圧するのは現実的に難しいでしょう。
 となると、落としどころが必要となってきます。
 定期的に本土空爆を実施し、軍事工場は破壊しようと考えていますが、空中給油機を使ってもかなり難しい距離ですので、火力が限られ、限定的な効果しか発揮出来ません。
 神聖ミリシアル帝国やムーにかかっていますが、彼等も大量の船と兵力を失っており、魔導戦艦は増産体制に入っていますが、実戦配備されるまで準備期間を要します。
 外交を続けつつ、準備するしかありません」

「しかし、当初の予定だと、大艦隊で敵の首都沖合に現れて砲撃の威嚇をするとなっていたではないか。
 何故突然の方針転換を伝えてくるのだ?」

「本土防衛がおろそかになる……との懸念もあるようです」

「そんな事は事前に解っていた事ではないか」

「神聖ミリシアル帝国周辺海域には、まだグラ・バルカス帝国の残存潜水艦が時折出没し、商船破壊を行っています。
 彼等の潜水艦の航続距離から考えて、未だ中央世界周辺の何処かに我らが把握していない基地があるとしか思えません。
 となると、その基地をすべて明らかにしないことには、本土防衛をおろそかにしてまでも戦力の投入は難しいというのが彼等の考え方です。
 さらに、敵本土へ侵攻するとなると、彼等の抵抗もさらに激しくなることが予想されます。
 おそらく多くの艦艇を失うことになるかと。
 その点も含めて防衛力を確保したい……との事です」

 追撃するなら今というこの時に、反撃の主たる戦力となる神聖ミリシアル帝国が、戦力を揃える時間がほしいと言い始めた。
 他国のことなので仕方ない事ではあるのだが、心情的には総理は納得のいくものでは無かった。

「国民が納得しそうにないな……で、どの程度時間が必要なのだ?」

「2年です。我が国も、決戦に向けて兵器の増産体制に入ります」

 体勢の立て直しには時間がかかることが予想され、首相は頭を痛めるのだった。

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第123話終末のレイフォリア2P2

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「ハアッハアッハアッ」

 食料は尽き、水ももうない。
 服はボロボロとなって、靴の中は泥だらけだった。

 ヒノマワリ王国から逃げるように西へ向かったダラスは、ようやく帝国の勢力圏であるはずの土地にたどり着く。

 最初は250km程度なら耐えて歩けば良いと考えていた。
 しかし、すぐに食料は尽き、何よりも水の確保が大変だった。
 
 喉の渇きに耐えきれず、木々に溜まった水を飲んだ後に猛烈な下痢に悩まされる。
 当然トイレットペーパー等は無く、服も体も汚れて眠れぬ夜も体力を削る。
 食料の確保も大変な苦労があった。

 空腹に耐えかねて虫を食べた事もあった。

 山道の250kmは、彼が思っているよりも遙かに体力を削り、耐えがたい苦痛を与える。
 さらに、道路が崩れ落ちている所は、たったの100m進むのに大きく迂回が必要だったため、数日を要することすらあった。

「おのれ……日本国め、許さぬぞぉ!!」

 自分をこんな目にあわせる原因になった日本への怒りがこみ上げる。

「帝国勢力圏に着いたら総力をあげて殲滅してやるわっ!!!」

 数刻の時を経て、ダラスは大きな門にたどり着いた。
 深い霧が出ており、ただの門だが幻想的に見える。
 彼にとってはやっとたどり着いた救いの門。

 異世界の蛮族が作った門だが、帝国の勢力圏を象徴するのには都合が良く、そのまま使用しているものであるが、彼には門が輝いて見えた。

 人影が見える。

「おおい!!!」

 やっと助かる。
 まずは食事を取り、風呂にゆっくり入ってフカフカのベットで安心して寝たかった。
 手を振るが、反応が鈍い。

「外務省のダラズという!!早く門を開けろ」

 反応の鈍さに怒りがこみ上げるが、ふと自分の姿を見て納得する。
 これほどまでにボロボロの姿だと、不審者と見られて仕方の無い事なのかもしれない。
 軍人はきっと自分たちの任務をきっちり全うしているのだろう。

 不意に、多くの人が動く気配がした。

「え???」

 3人もの鎧を着た物達に囲まれて剣を向けられる。
 ここは帝国の勢力圏のはず……。

「グラ・バルカス帝国のダラスだな」

 女剣士がのど元に剣を突きつける。

「ぐっ!!!」

 一瞬でも抵抗すれば、そのまま殺されるだろう。
 女の眼光は鋭く、凄まじい殺気を放っていた。

「我はヒノマワリ王国、第3王女フレイア様の騎士、日輪級剣聖コウ。
 貴様をフレイア様の前に突き出す事が仕事だ」

 彼女は剣を治め、鋼鉄で覆われた拳で思いっきり顔をぶん殴った。

「ぶはぁっ!!!」

 ダラスは醜く顔を押さえて転げ回る。

「い……痛い!!痛い!!!きっ!!貴様ぁ帝国外交官たる我にこんなことをしてただで済むと思っているのかぁ!!」

 コウは、同じ場所を再度殴る。

「ぐはぁっ!!」

「黙れ愚か者!!貴様はヒノマワリ王国の平穏を害し、王家殺害を企てた。
 我が国の法律で裁く!!!」

「何だと?我が国に治外法権を認めないというのか?
 いったいどうなるのか解っているの……ぐはぁっ!!!」

 彼女は再度殴る。

「グラ・バルカス帝国はムー大陸からたたき出された。
 もうお前を助ける者はいない!!!」

「へ??嘘を!!嘘をつくなぁ!!ゲハッ」

 コウはダラスの顔が2倍に腫れ上がるまで殴り続けて牢屋に放り込むのだった。
 腫れ上がるまで叩かれたダラスであったが、のちのヒノマワリ王国の裁判記録には
小さく記される。
 被疑者が逮捕を免れようとしたため、逮捕に伴って多少の有形力の行使を行った……と。
 グラ・バルカス帝国外務省ダラスの身柄はヒノマワリ王国へ引き渡されるのだった。
 
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posted by くみちゃん at 20:18| Comment(23) | 小説

第123話終末のレイフォリア2P1

とてつもない大きさの龍がやってくる。
 情報を得たグラ・バルカス帝国ダイジェネラ山要塞総司令部は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

「大きい!!大きすぎます!!体格が1kmはある!!!」

「対空砲は何をしている!!!」

「対空砲を使用するには防火扉を開ける必要があります!!ご決断を!!」

 外は多く森林火災が起きている。
 3層にも及ぶ防火扉を開く事によって攻撃は可能だが、防火扉を開くと、要塞内の大量の酸素を失い、最悪森林火災によって発生した1酸化炭素が要塞に入ってくる可能性すらある。
 猛毒たる1酸化炭素が入ってくる事だけは避けたい。

 しかし、あれほどの大きさの龍が仮に山に降りて暴れられると防火扉ごと破壊してしまう可能性もあった。

「付近は火に包まれている。防火扉は開けない」

 帝国は決断する。
 歴史の分岐点となる判断が降された。

◆◆◆

「ひいぃっ!!」

 みっともない声をあげてしまう。
 恐ろしい。恐ろしい。本能的に恐ろしい。
 シエリアは、その龍を見て生物としての圧倒的な力の差、本能的に震え上がる。

 黒き龍は口を開き、ダイジェネラ山に狙いを定めた。

「だ……ダメ!!!」

 大きい。
 龍も大きいが、光弾もあまりにも大きい。

 山と龍の比が解るからこそ、そのとてつもない大きさが理解出来る。
 いったい何を食べて生きているのだろうか。

 グオォォォォォオッォオォォ!!!

 龍は、大きな咆哮をあげる。
 街全体が震えた。

 レイフォリアの市民達は町中に響き渡るその声にパニックに陥った。
 家の窓を閉める者、巨大な龍を見上げて震える者。
 そして、その戦いを目に焼き付けようと、恐怖を押し殺して目を見開く者、レイフォリアの民達は望む、望まないに関わらず、歴史に残るであろう戦いを体験する。

 キイィィィィィィン!!!

 光弾のエネルギーは付近の空気を振るわせ、甲高い音が鳴り響く。

 巨大な龍は光弾を発射した。

 雷を纏った光弾は、一気に山との距離を詰め、山にぶつかった。

 ガアァァァン!!!
 開放されたエネルギーは山を包み込み、雷が山を包んだ。
 雷の嵐。
 開放された高温高圧のプラズマは渦を巻きながら上へと向かう。
 
 ゴォォォォォォガアァァァァァン!!

 雷と、猛烈な竜巻が発生した。

「か……火炎竜巻!!!」

 山を包み込むほどの火炎竜巻が発生し、火災によって岩山と化しつつあった山の森は一瞬で消失。
 比熱をもろともしない猛烈な熱に、岩石は個体を保っていられずに表層部は液体化した。

「あああっ!!!」

 火炎の後に水蒸気を含んだ煙が山を包み込む。
 一定の時間が経過し、徐々に山の姿が明らかになった。

 表面が溶岩となった山だった者が姿を現す。

「な……なんて……」

 シエリアは声を絞り出すのがやっとだった。

 ダイジェネラ要塞に3層まであった防火扉はそもそも周りの岩が溶けたため、全く意味を成さなかった。
 
 要塞内部の空気は一瞬で外部に排出され、急激な圧力変化をもたらす。
 中にいた人間はこの圧力変動に耐えられず、肺がつぶれた。
  
 ここで気を失った者はまだ幸運であったろう。
 流れてくる液体岩石……気を失わなかった物達は、この溶岩に焼き尽くされる事になる。
 ダイジェネラ要塞にいた物達は、その大多数が苦しみながら死ぬ事となる。

 列強エモールの極みの雷炎龍の攻撃により、グラ・バルカス帝国のダイジェネラ山要塞は文字通り崩れ落ち、守備隊は全滅した。

 陸軍将校ランボールは戦死、そして外務省東部方面異界担当部長ゲスタは相当に苦しみながら死亡した。

 この戦いをもって、指揮系統を完全に失ったグラ・バルカス帝国陸軍は敗走し、多くの物達が戦死または降伏する事となる。

 世界連合軍がグラ・バルカス帝国をムー大陸からたたき出したとういニュースは世界を駆け回り、多くの人々に希望を与えることとなる。
 
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posted by くみちゃん at 20:17| Comment(39) | 小説