2022年04月28日

第127話初めての新世界P5

ミラは窓の外を見た。
 高層階から見下ろす景色は本当に美しい。
 快適な部屋、所々に見られる圧倒的な技術力に身震いする。

「国が……暴走しなければ良いが……」

 最近の軍王ミネートはおかしい。
 昔はもっと部下の言うことを聞く男だという噂があったが、今はあまり人の話を聞かずに突っ走る感がある。

「何が彼を変えたのか……」

 山積する問題に頭を抱えながら、ミラはフカフカのベッドで眠りについた。


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5月も大体週一更新行けそうな予感です。
 
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posted by くみちゃん at 23:18| Comment(1432) | 小説

第127話初めての新世界P4

◆◆◆

夜 帝国ホテル 小会議室

 調査団6名は小会議室を貸し切り、今日の出来事と明日の予定について会話する。

「よし、大丈夫。付近に人の気配はありません」

 クルセイリース大聖王国側の会話は日本国に聞かれてはまずいと判断したミラは周囲を確認した。
 生活調査員(仮)ニースが話し始める。

「正直、この街を見たとき、日本国がとんでもない国力と技術力を有する国である事が理解出来ました」

 ニースの話しにシエドロンがうなずく。

「移動手段1つにしても、極めて効率的で速い。
 今回乗ってきた飛行機、あれは我が飛空艦隊では全く捕らえる事が出来ない」

「つっ!!!」

 飛空艦隊は、クルセイリース大聖王国の軍事的優位を支えてきた部隊。
 そこに籍を置く歴戦の将、シエドロンの言は重い。

「アバドン殿、いたずらに日本国を刺激する事の無いようにお願いしますぞ」

「わ……解っている!!
 技術力が高い事は解った。
 しかし、軍は人間が運用するものだ。
 我が精鋭魔戦騎士団も、歴戦の猛者が多い。
 騎士団のみならず、魔法兵団も、最近は今までの数段上の武力を得た。
 私は魔戦騎士団長の立場として、日本国の武力見ずに、軽々しく負けるかも……などという言を吐くことは出来ない!
 もちろん国力が大きいことは東京の街を見れば理解出来る。
 決して舐めてかかることはない」

 ミラはテタルの方向を向いた。

「テタルさんは日本をどう見ますか?」

 魔法技師テタルに意見を求める。

「日本国は……完全に我が国とは異なる技術体系で国が成り立っています。
 街を高速で走る車、そして電車と呼ばれる大規模高速移動手段……。
 そのどれもが、全く魔力を検知出来ません。
 魔力を効率的に使いすぎて、外に漏れる魔力が無いため検知できないという可能性も考えましたが、そんな事はあの古の魔法帝国でさえ無理でしょう。
 技術体系が全く異なるので、強さの上限が見えません」

 各々が日本国について考察し、意見を交わす。

「明日からこの国をしっかりと見ていきましょう」

 ミラの言に皆同意した。
 会合が終わり、各々が部屋に戻る。


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第127話初めての新世界P3


◆◆◆

 彼等は機体へと向かう。
 途中、犬が人になったような種族が働いているのを見かけ、目を丸くする。

 やがてBー787に乗り、座席シートベルトも言われるままに装着した。
 機体は滑走路へ到達し、離陸を開始した。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー 

 低く重い音と共に、シートに体が押しつけられる。
 今まで経験したことが無い加速だった。
 
「は……速い!!」

 やがて機は飛空艦を遙かに超える速度となって、地上を離れた。
 機は信じられない速さと上昇力で空に昇る。

「!!!」

 シエドロンはあまりの衝撃に絶句した。
 機体は上昇を続ける。

「そんな……こんな事がありえる訳が無い!!」

 飛空艦の実用上昇限度を遙かに超え、B-787は遙かなる高みへと昇る。
 雲が……高き空にあるはずの雲が、まるで地面に貼り付いているかのように見えた。
 やがて飛行機は成層圏に達して水平飛行に移る。

 ポン

 機内に音が鳴り、シートベルトの付けるよう指示するランプが消える。

「皆様、シートベルトを外してもらって結構です」

 朝田が伝える。

「あ……朝田殿、この機はどのくらいの高度を時速何キロメートルで飛んでいるのでしょうか?」

 いつまでも驚いてばかりはいられない。
 適正な「調査」を行わないと、とんでもないことになる。
 
 飛空艦隊長シエドロンから慢心は消えた。

「そうですね、確か巡航高度は13000mで、速度はマッハ0.85なので概ね時速1000kmくらいだと思います」

「じ……じ……時速1000kmを超えるというのですかっ!!」

「はい、ヘリコプターでは時間がかかりすぎるので、乗り換えて頂きました。
 あと2時間半から3時間で、東京に到着する予定です」

「そ……そうですか」

(まずい、マズイマズイマズイマズイ!!
 これは民用機、これほどの高度と速度を出されたら、我が飛空艦隊が束になってもこの機を捕らえることが出来ぬ)

「ぐ……軍用機はもっと性能が?」

 帰ってくる答えは想定できる。
 しかし、聞かずにはいられなかった。

「ええ、軍用機には民間機よりも遙かに速く飛ぶ機体は当然あります。
 自衛隊の見学も、今回の案内には含まれております」

 シエドロンは背筋に悪寒が走る。
 やがて機は日本国の首都、東京上空に到達した。

 微かに暗くなり始めた空、東京の町は徐々に明かりが灯る。

「すごい……キレイ」

 ニースは飛行機の窓から町を見渡す。
 密集した超高層ビル群、それぞれに灯りがつけられ、宝石をちりばめたかのような輝きを放つ。

 これほどの大規模建造物群を作り出す日本国。
 国力に圧倒される。

 しかし、空から見る風景はあまりにも美しく、ニースは純粋に感動を覚えるのだった。


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第127話初めての新世界P2

◆◆◆

「乗り継ぎで申し訳ないのですが、あちらの飛行機に乗り換えをお願いします」

 クイラ王国に設置してある日本国が運用、管理する飛行場において、ヘリコプターから飛行機に乗り換える。
 エプロンには日本国政府がチャーターしたジェット旅客機、B-787があった。

「ほう?少しは大きい飛空艦があるじゃないか。
 しかし、武器を積むスペースが無いな」

 魔戦騎士団長アバドンは横に立つ飛空艦隊長シエドロンに話しかける。

「大きな翼がありますな。
 まるで鳥のようだ。
 魔素拡散器が見当たらない、本当に未知の文明だ」

「しかし威厳の無い形だ、戦になれば、あっさりと勝ちそうだな」

 二人のやりとりを聞いていた魔法技師テタルは話しに割って入る。

「アバドン様、シエドロン様、お話中のところ申し訳ないけど、あれ……たぶん途轍もなく速いです」

 テタルは国と国の対立に興味は無く、技術にのみ興味を持つ。
 純粋に技術的視点からB787を眺めた時、あまりの線形美にため息が出た。
 凄まじい性能を誇る機械は美しくなる。
 
 圧倒的な大きさ、流れるような流線型、空気圧縮放射で飛ぶなら、あの翼に2つ付いているのがエンジンだろう。
 たったあれだけの大きさであれほどの大きい機体を、魔力を使わず空に浮かべるなど、とんでもない出力だ。
 我が国の技術を遙かに上回る物が目の前にあるという事は疑いようが無く、感動さえも覚えるこの状況下において、軍人達は自分たちの国が上だとのたまっている。

 滑稽であり、日本人に聞かれたらたまらなく恥ずかしい発言。
 
 そのような思いから、テタルは軍人達の会話に割って入ったのであった。


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posted by くみちゃん at 23:13| Comment(7) | 小説

第127話初めての新世界P1

練兵場において、ミラは整列して朝田達案内人に挨拶する。
 今回のクルセイリース聖王国は、調査団長ミラをはじめとして
○ 生活調査員(仮)ニース(聖王女)
○ 飛空艦隊長 シエドロン
○ 第二魔戦騎士団長 アバドン
○ 魔法武具士 アニーナ
○ 魔法技師  テタル
○ 国政経済学者 イルサ
○ 銃神 ダルサイノ
 他1名から成る。
 各々がその道のプロであり、日本国の国力を測るための強力な布陣だとミラは考えていた。

「これより、こちら……CH47ヘリコプターに乗って頂き、北西のロデニウス大陸にあるクイラ王国を目指します。
 そこから機体を換え、日本国の首都、東京へお連れいたします」

 朝田がヘリコプターへと誘導する。

「ふん、何とも小さい飛空艦だ。こんな小さいのしか無いのか」

 アバドンが吐き捨てる。
 おそらく日本人にも聞こえる大きさの声であったため、ミラは焦る。
 失礼な言ではあるが、確かに小さいので、他のクルセイリースの者達はうなずいた。

 ただ一人を除いて……。

 甲高い音と共にヘリコプターが離陸した。

 聖王女ニースは日本人に聞こえないようミラの耳元で話す。

「アバドンさんの言うことはごもっともです。
 今のところ、我が方の技術が遙かに上だと感じます。
 日本国についてはそこまで警戒する必要は無いのかも知れませんね。
 しかし、弱小国といえども、むやみやたらに蹂躙するのではなく、平和的に物事を進めるべきですが」

「私は……日本国大使館に出向いたときに高い技術によって作られた物を多く見ました。 姫様、先入観を持たないようにお願いします」

「ええ、そうでしたね、おや??」

 ニースは魔法技師テタルを向く。

「テタルさん、どうしました?顔色が優れませんが」
 乗り物酔いでもしましたか?」

「い、いえ……ニースさんでしたね?
 これを見て下さい」

 テタルは魔力測定器を持っていた。
 針に動きが無い。

「魔力が……この飛行物体は魔力が計測出来ないのです!!!
 でも私が魔力を込めると測定器が反応するので故障ではありません」

「まあ……他の文明って面白いですね」

「そんな、そんなレベルの話しでは無いのです!
 魔力を使用せずに飛ぶとすると、空気を押し出して飛んでいる事になります。
 この大きさを飛ばすとなると、とんでもない出力が必要なのです!!」

「と、なると我が国の魔導機の出力はもっとすごいということですね」

「そういう話しではありません。
 飛空艦が時速にして200km後半の速度しか出ないのは、飛行方式の限界なのです。
 よって小型化しても速度が上がらない。
 理論上上げようが無い。
 しかし、日本のこれが空気を押し出して飛んでいるとすれば、理論上のスピード限界は遙かに上なのです」

「もっと速い飛空艦が日本にはあると?」

「可能性ではなく、間違いなくあると私は思います」

 魔法技師テタルは、日本国の兵器の理論限界に戦慄した。
 やがてヘリコプターはシルカーク王国群島での給油を経てクイラ王国の飛行場に到着するのであった。


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posted by くみちゃん at 23:12| Comment(18) | 小説