2022年05月22日

第130話 世界の防衛線P1

シルカーク王国 日本大使館

 文明圏外国家であるシルカーク王国、日本国としては特に重要視している国では無かったため、大使館の人員は少ない。
 人員が少ない場合、ひとたび大事が起これば地獄の忙しさとなる定めだった。

 本国から応援は来ていたが、元々の収容人数が少ないために多くは望めない。
 また、応援をもらっておいて当該職員が悠々と休む訳にもいかないため、朝田もまた、望まぬ忙しさに追い込まれていた。

 シルカーク王国から発せられた、「圏外文明国侵攻の可能性」という報告は世界中を駆け回る。
 中央世界や第二文明圏から日本国へ圧力は高く、日本国にあってもシルカーク王国における邦人の命を守るという名目で自衛隊の派遣を決定した。
 この世界に転移した後、流れるように次々と戦いに巻き込まれていた日本国の意思決定は早く、異例の速度で派遣が決まる事となる。

 しかし、事は日本国のみでは収まらなかった。
 同情報は国際問題となり、各国が防衛力を強化する中、海上遠征能力を持つ国、パーパルディア皇国も海軍及び竜騎士団を派遣する事を決定。
 20隻もの大型竜母を含む魔導戦列艦隊と、シルカーク駐留を含めて200騎にも及ぶ竜騎士団を派遣してくる事となった。

 外務省事務員が朝田に話しかける。

「しかし、圏外文明国侵攻の可能性とはそれほどまでの事なのですか?」

「そうらしい……。
 パーパルディア皇国も国際社会の信用を取り戻そうと必死だな。
 カイオス首相の方針転換は大きい」

 パーパルディア皇国は日本国との戦争の後、多くの国へと分裂した。
 しかし、永らく国家としての運用実績が無い1地方が国際社会の枠組みが無いこの世界で国家としてやっていける訳では無く、様々な弊害が生じる事となる。

 カイオスは各国平等の元、権利を残しつつ各国を一つの州とし、州の集まりとして国を成す合衆国制度を提案した。
 江戸時代における日本国のような国の集合体、いや、アメリカ合衆国のような共同体が近いかもしれない。
 多くの国の賛同の元でパーパルディア皇国再建にかかっている。

 よって、一部反対する国は取り入れず、賛同する国のみで構成されていた。

 悪名が高かったパーパルディア皇国の名を残したのは、かつての列強国時の影響力を考慮しての事であり、影響力を残しつつ、他国の信頼を勝ち取りたいと、一見矛盾する二つの果実を得るために舵取りを行っている。

 国際社会では、パーパルディア皇国は生まれ変わったと見る者が多く、一定の効果が出ており、カイオスの国家運営は見事であるとの意見も多い。
 そんな国際社会の信用回復という意味においても、彼等は第3文明圏と周辺国家のため、皇国軍を派遣してくるのだった。

「自衛隊はパーパルディアとの共同作戦に難色を示しています。
 なんでも、敵味方識別装置が無いと撃墜してしまう可能性が高いため、足手まといになって逆に戦いにくいと」

「国際的に協力するよう求められているからな。
 なるべく担当区域を分けて運用するしか無いらしいぞ。
 現場は本当に大変みたいだ。さあ、仕事仕事!!」

 朝田は窓の外を見る。
 上空には陸自のヘリと、パーパルディア皇国竜騎士団が空を舞うのだった。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 22:32| Comment(15) | 小説

2022年05月19日

第129話初めての新世界3P4


「軍王様、我らの切り札は、キル・ラヴァーナルだけではありません」

「まさか、お主が国家級殲滅魔法を知っているとは……。
 まあ、我らの負けは絶対に無い!!!
 クワーッハッハッハッハーーッ!!!」

 国を動かす者達は大いに笑うのだった。


ーーーーーーーーー
 遅くなってすいません。
 パソコンをいじる暇が確保出来ませんでした
 5月週一平均を守るために、今月はここから巻き返していきます。
 次話更新  土曜もしくは日曜予定

 なお、なろうの投稿が遅れているのは、先行ブログ版とちょっと変えられないか検討中だからです。
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 23:27| Comment(1134) | 小説

第129話初めての新世界3P3

◆◆◆

 クルセイリース大聖王国首都 セイダー 夜

 ロウソクの炎が部屋を微かに照らす。
 揺らめく炎はテーブルを挟んで2つの影を写し出していた。

 金色の正装を身に纏った短髪の初老の男が上座に座る。
 男の前にあるテーブルを挟んだ向かい側に、白色のローブを着た男が座っていた。

「軍王ミネート様、この報告書をどうなさるおつもりで?」

 テーブルの上には1冊の報告書が置かれていた。
 しかも、王家の印が押印されているため、極めて重要視しなければならない公文書だった。

「日本国とは敵対するな、日本国は強すぎる……か。
 しかし内容は荒唐無稽だ」

 ミネートは不機嫌そうに報告書の評価を行う。
 国のために、国富むために動こうとしているのに、荒唐無稽な報告書を入れて阻害しようとする。
 彼にとって、これを書いた者が、仕事の邪魔をしているようにしか思えなかった。
 それはつまり、国民が富む事への邪魔であり、国民の敵に思えてならない。

「こんな物は、幻惑魔法をかけられたに違いありません。
 しかし……」

「そう、王家の印のある公文書を軽視する訳にはいかん。
 北西には多くの可能性と、世界が広がっている。
 北西新世界をあきらめる訳にはいかないのだ。
 頭の片隅に入れつつ、考えるとしよう」

「では、シルカーク王国は?」

「簡単な事、聖王子前会議で否定すれば良い。
 そもそも当初の報告書では、日本国にも飛空艦はあるが、小さくて武装は貧弱であったとの報告が上がっている。
 その飛空艦そのものが、彼等にとっても旧式だった可能性もあるが、旧式と新型でそこまで戦闘力が変わるとは思えん。
 それに……。」

「はい、万が一、いや億が一、日本国が飛空艦隊を破ったとしても、我が国には『あれ』があります」

「黒月族の対ラヴァーナル用決戦兵器、キル・ラヴァーナル……か。
 あれを見つけた時は、うれしさに震えたぞ。
 貴殿の占いは凄まじいな」

「軍王様にお褒めの言葉を頂けるなど、光栄の至り」

「キル・ラヴァーナルがあれば、地上を制圧される事は絶対に無い」

「はい、その他にも『あれ』がありますしね」

「それにしても、我が国に黒月族の遺産があるとは……」

 軍王は棚から1冊の本を取り出してパラパラとめくった。

 伝承にはこうある
 黒月族……遙か古代、古の魔法帝国に立ち向かった少数民族。
 ラヴァーナル帝国とは異なる独自の魔法技術形態を持ち、少数の人数で大きな軍事力を動かす術に長ける。
 性格は民族のためならば、多種族をあっさりと殺す、極悪非道であった。
 例示として、同族の擦り傷を癒やす為に他民族の命が必要だとしたら、何万何百万人を殺傷したとしても、何とも思わない。
 一説によれば、何処に住んでいるのか全く掴めず、いつしか空に見えない黒い月があり、そこに住んでいるのだと世界は思い始める。
 いつしか彼等は黒月族と呼ばれるようになった。

 ラヴァーナル帝国は黒月族の首に大きな賞金をかけ、集落を見つけたら即座に軍を派遣して殲滅していった。
 数百人が他民族の都市に紛れていれば、都市ごとコア魔法で消滅させる等、徹底した殲滅戦を行った。
 黒月族のラヴァーナル帝国に対する憎悪は凄まじく、たった1人で動かすことの出来る超巨大決戦兵器を世界の各地に残す事となる。
 現在、黒月族が何処へ行ったのか、知る者はいないが、まれに遺産が世界の何処かで発見される事があった。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 23:23| Comment(29) | 小説