2022年05月29日

第131話世界の防衛線2P4

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 クルセイリース大聖王国 属領 タルクリス

 本国から北西方向約1000kmの位置に、四国の四分の一ほどの面積を持つ菱形の島、タルクリスがある。
 同島に新設された北西世界開拓用の総合基地セキトメイは、クルセイリース大聖王国の基地の中でも2番目に大きく、本土以外の基地としては1番大きい。

 基地を見渡すと、王国の誇る最新鋭の100門級魔導飛空戦艦ダルイアを始めとし、多くの飛空艦が見える。
 その数は100隻を超え、飛行場に入れなかった船は海上にも浮かんでいる。

 聖王国の北西世界開拓の圧倒的意思が伝わってくる。

 同基地において、シルカーク王国侵攻計画作戦会議が始まろうとしていた。

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 次話 5月中に更新予定
 漫画6巻もよろしくお願いします。
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posted by くみちゃん at 00:41| Comment(653) | 小説

第131話世界の防衛線2P3


「王女様、その後では遅いのです。
 シルカーク王国は確かに弱い。しかし、弱者なりに国を滅ぼされないために考え得るあらゆる対策を行う事でしょう。
 この地の列強パーパルディア皇国に軍事支援を申し出る可能性もあります。
 時間がかかればその分敵は強化されます。
 我が方も強化すれば良いのですが、予算も多くかかりますし、何より兵の死者が増えるのです。
 優位性は確保出来ても、人が死なぬ戦争など存在しません」

 有無を言わせぬ正論に王女は黙る。
 ミネートは、たたみかけた。

「それに、万が一、いや億が一、作戦が失敗して日本国やパーパルディア皇国が、我が国に攻め入って来たとしても、絶対に負ける事は無いのです。
 軍は先日、黒月族の遺産、しかも神話級古代兵器を発見いたしました」

 場がざわつく。
 総務郷が興奮してミネートに尋ねた。

「ミネート殿、神話級古代兵器とはいったい?」

 一時の沈黙……ミネートはニヤリと笑って話し出す。

「黒月族の対魔帝決戦兵器、キル・ラヴァーナルです。
 しかも残存魔力は最大で、兵器が100%可動出来る事も確認されています」

『オオォォォォォ!!!!』

 ムードは一気に戦争開始に傾く。

「キル・ラヴァーナルか。
 圧倒的なる神話の遺産。負けん……負けるはずが無いっ!!」

 総務郷は目を輝かせた。

「私も見つけた時は震えが来ました。
 クルセイリース大聖王国は、現代においても神の祝福を受けているとしか思えません」

 ミネートの発言で、場が盛り上がる。
 彼は誰にも聞こえぬ小声でつぶやいた。

『それに……黒月族と我が国の技術融合と、伝説の国宝、古代アーティファクトを組み合わせた超魔法があれば、仮にラヴァーナルが攻めてきたとしても、1回であれば、必ず艦隊を消滅させる事が出来る』

 ミネートは絶対の自信をもって宣言する。

「この戦いは決して負けません。
 クルセイリース大聖王国は更なる栄華を極め、1000年以上に渡って繁栄し続ける事となるでしょう。
 皆さん、異論はありませんな?」

「我が国の更なる繁栄が約束されているのに、異論などあるはずが無い!!!」

 総務郷のワイデスが賛成する。

「全く、ミネート殿の手腕は素晴らしい」

 外務郷サトシルも満足して頷く。

「ま……待ってください!!!」

 このままでは亡国の道をたどる。
 聖王女ニースは立ち上がる。
 日本国の国力を知る者として、愛する国が滅びへ向かう事を見過せない。

「日本国の国力は規格外です。
 このままでは取り返しのつかない事になります。
 仮に、相手に時間を与えたとしても、攻め難くなったとしても、日本国の国力を確認してから事を運ぶべきです」

 ニースは食い下がった。
 しかし……。

「ニースさん!!!」

 聖母ラミスはニースを睨みつける。

「軍王ミネートは、事前に新世界漂流者からの調査により、日本国などと言う国の影響力は新世界には無いとの調査結果が出ている。新興国とするならば、短期間にそこまで国力を上げることは出来ない。
 それは理解出来ますね?」

 聖母ラミスはニースに問う。

「……はい」

「で、あるならばシルカーク王国の発言は、強力な後ろ盾があるように見せようとする小国の足掻きです。
 そして、これ以上調査期間を長引かせ、敵の戦力が上がると我が国の兵の被害が大きくなる。
 これも解りますね?」

「……はい」

「あなたの調査団は幻惑魔法にかけられた可能性が高い。
 もしも貴女の意見を取り入れ、その結果我が国の兵の被害が増大し、死ぬことになった者達の家族、妻や子供に貴女は何と説明するつもりですか!?
 国民の命は単に数字で表すべきものではありません。
 1つ1つが意思を持ち、家族を持っているのです!!
 貴女の意見は不幸の増大にしかなりません!!!」

「しかしっ!!!」

「くどいっ!!!」

 聖母の一括に、場が静まった。

「軍王ミネートの今までの数々の実績は、今更言うまでもありません。
 ミネートには絶対の信頼を置いています。
 私は今回の新世界への侵……開拓に賛成いたします。
 聖王子様もよろしいですか?」

「はい、母様」

 会議は難航したが、暫定的に実権を握る5歳の聖王子ヤリスラの決定により。、クルセイリース大聖王国は北西新世界への侵攻を決定、文明圏外国家シルカーク王国へ軍を派遣する事となった。

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posted by くみちゃん at 00:39| Comment(18) | 小説

第131話世界の防衛線2P2

「ニース様、失礼ながら、ニース様の派遣した者達は幻惑魔法にかけられた可能性が多大にあります。
 まず、シルカーク王国と接触した際、国籍不明の国が、我が国で300年前に使用していた程度の大きさと速度を有する軍用飛空艦を運用していた事を確認しています。
 これには主立った武装も無く、空の機動力は取るに足りない、輸送用程度にしか使えない艦です。
 シルカーク王国との接触時も、迎撃にはワイバーンが上がってきております。
 仮に日本なる国がシルカーク王国へ駐留支配していたとして、国籍不明の航空戦力が来た際、自らの航空戦力を使用せずにワイバーンをけしかけるでしょうか?」

 彼は続ける。

「軍用機を運用している場合、当然基地があると考えるのが自然であり、同基地を脅かす航空戦力が来た際に、ワイバーンをけしかける。
 その時点で航空戦力は取るに足りない事を証明しています。
 それに……数年前の漂流者からの記録によれば、新世界の東部に位置する部分は第3文明圏と呼ばれ、同地域は世界の5大列強国の一つ、パーパルディア皇国が多大な影響力を持つ。 ニース様の派遣した者達の記録による日本国なる国家の位置は、そもそも群島で原始的な生活をする原住民が住んでいたとのこと。
 たったの数年で強力な国が出来、それが同地域を支配する列強国を超える存在になる。
 それこそ現実的ではなく、幻惑魔法にかけられていたと考えるのが自然です。
 そもそも、日本国なる国が本当に存在するのかも怪しい」

 場が静まる。

「第3文明圏と呼ばれる地域に、パーパルディア皇国なる列強国が居座り続ける事が出来たという事は、この国は他の文明圏からの侵攻を退ける力を持っているという事になります。 そして我が国の飛空艦隊はこのパーパルディア皇国を圧倒する力を持ちます。
 北西新世界の開拓は我が国のさらなる繁栄を約束し、我らが名は英雄として歴史書に大きく記される事となるでしょう」

「しかし、幻惑魔法などではなく、本当に日本国が圧倒的な力を有していたならば、我が国は亡国の道をたどります。
 さらなる調査団を派遣し、真実が判明した後でも遅くは無いのではないでしょうか?」

 聖王女ニースは必死で食い下がる。
 自分の目で見てきた物は、確かなものであった。
 幻惑魔法の類いでは決して無い。
 王家の者として、臣民を守る義務がある。
 決して引くわけにはいかない。


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posted by くみちゃん at 00:38| Comment(5) | 小説

第131話世界の防衛線2P1

聖王国大方針会議
 国の大きな舵取りを行う時に行われるクルセイリース大聖王国の重要な会議である。
 聖王子ヤリスラはまだ5歳であるため、母である聖母ラミスも出席していた。
 ○ 聖王女ニース
 ○ 軍王ミネート
 ○ 外務郷サトシル
 ○ 総務郷ワイデス
 その他国の重鎮達がテーブルにつき、後ろに部下達が並んだ。

「これを見ていただきたい」

 各人の前に置かれた石盤に魔力が注入され、淡い青に輝く文字が浮かび上がる。

「つっ!!」

 軍王ミネートによる北西新世界への侵攻計画だった。

「説明いたします。技術革新によって、飛空艦の航続距離が伸びていることはご存じかと思います。
 これにより、本土から北西方の属領タルクリスへの飛空艦隊の派遣が可能となりました。
 同タルクリスの空王基地建設がまもなく完了いたします。
 今まで強力な海流により、到達することが出来なかった北西新世界へ強力な軍を送り届ける事が可能になります。
 すでに一時接触は成功し、記載のとおりシルカーク王国なる国を正式に確認、同国の軍事力は弱く、我が飛空艦隊を派遣すれば鎧袖一触、すぐに攻め落とせるでしょう」

 軍王ミネートが、具体的侵攻計画の説明をしようとした時。

「お待ちください!!」

 聖王女ニースが割って入った。

「北西新世界には強力な国家の共同体が存在します。
 仮にシルカーク王国が弱かったとしても、1国のみで図るべきではありません。
 私は北西世界の1国、日本国に調査団を派遣し、強大な軍事力と技術力を確認しています。 この件はすでにここにいる方々もご存じと思われます。
 広大な領域が広がる北西新世界に軍を送る事は危険です。
 貿易によって国を富ませる方法を模索すべきです」

 王女は日本国を見てきている。
 このまま戦争に突入すれば、国が滅びる。
 必死だった。

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posted by くみちゃん at 00:37| Comment(6) | 小説